「『解』」
術式を使用し、不可視の斬撃が一体の巨人を襲う。
一直線に飛んでいった斬撃は巨人の肉を引き裂き、頭がパックリと二つに割れた。
その巨人は地に倒れ、傷口から蒸気を発しているものの、死んではいない。『うなじ』に損傷を与えたわけではないためだ。
(巨人化した人間が、その知性巨人の『うなじ』内に居ることと、無垢巨人の急所が『うなじ』であることは無関係じゃない。無垢巨人の本体は、巨人の肉体と同化してしまって消えているものの、その『魂』のようなものは維持されたまま残っている。『うなじ』が大きく損傷すると、『魂』を維持することができなくなり死に至る。恐らく、そんなとこだろう)
倒れた巨人が、ゆっくりと手を地面に置き、身体を起こしている様子を見る。徐々に損傷が修復されている。
(ここでやり合うと、他を巻き込むよな……良し)
「付いてこい、巨人ども」
頭上の壁に突き刺している立体機動装置のアンカーを片方外すとともに、そのアンカーを外門側の壁面へと射出。壁面に刺さったことを確認すると、未だ頭上の壁に突き刺しているアンカーを外した。
同時に、呪力で身体全体──特に下半身──を強化し、壁を垂直に走り始めた。
「おいおい、マジかよ巨人……」
カイが移動を始めた瞬間、先ほどまではノロマだった30体以上の巨人たちが一斉に走り出した。速度が尋常では無く、恐らく第57回壁外調査に出てきた足の速い巨人や、アニメ第2期でミケ・ザカリアスが交戦した巨人よりも速い。
(そうかよエレン。『戦え』ってか!)
更に、街中にいた巨人たちがカイを視界に捉えると、カイを追い掛ける巨人らと同様に走り出した。速度も同じくらいだ。
巨人たちが地を鳴らし、建物を破壊しながらカイへと真っ直ぐ向かって来る。
カイは外門に向かって移動しているため、必然として街中にいる巨人の密度は大きくなっていく。
気付けば、カイを追跡する巨人たちは60体を超えていた。
(速度もそうだが、数も尋常じゃない。だが、他の訓練兵や本部に向かう巨人も普通にいる。原作通りの流れになるだろうが……この巨人どもは、未来エレンが寄越してきた奴らだな)
刺していない右のアンカーを射出し壁上に刺す。左のアンカーを外し、ある程度移動すると射出して壁上に刺し込むと右のアンカーを外す。
ブラキエーションの要領で、アンカーを抜いては刺し抜いては刺しを繰り返す。
移動自体は、呪力で強化した肉体そのものを使ったモノのため、ガスは全く消費していない。
雪だるま式に増えていく、カイを追う巨人。
カイは一切気にすることなく、外門へと只管に向かう。
「やるか!」
トロスト区壁上。負傷していない班員は、負傷した班員を連れて壁上へと撤退し、応急処置を再度行う。この処置を『しているか、していないか』によって、最終的な生存率や後遺症の有無に大きく影響を及ぼす。
応急処置を終えて内門へと向かう前に、シュヴァルツ訓練兵はカイがいる方向を見る。
「カイ……」
撤退を進言したのは自分である。カイを見殺しにする選択をした訳では無い。しかし実際に、カイは自らを危険に晒し、自分を含めた班員を離脱させた。
その結果、シュヴァルツ訓練兵含む4名は壁上に辿り着くことができたが、カイは巨人に追われることとなった。
見れば、60体近くの巨人がカイを追い掛けている。それも、一般的なノロマ巨人ではなく、異常な程に足が速い巨人が追い掛けている。
調査兵団の熟練兵ですら、『アレ』を振り切って本部まで撤退することは出来ないだろう。
壁上まで上がらず、外門の方へ向かっている所を考えるも、その意図は容易に想定出来る。
『アレ』を放置したまま壁上に撤退すれば、即ち『アレ』を野に解き放つも同然。そうなれば、訓練兵は勿論のこと、駐屯兵も為す術なく殺されるだろう。
兵士だけではない。避難が遅れている民間人に、『アレ』が襲いかかることも想定出来る。
『カイのみ』にアレほどまでの速さを見せる、とは限らない。『突然足が速くなったのは何故か?』は分からない。奇行種の行動は、常に想定を超え、予想を裏切ると教わった。
彼は、班員だけでなく、他の訓練兵や駐屯兵、民間人すらも守るため、体を張っている。
「急ぐぞ!駐屯兵に報告して、避難を急がせる!」
カイを見殺しにしないためにも、疲労で限界の班員にもムチを打って、彼は負傷者を連れて内門へと向かった。
只管に移動を続け、カイは外門上部に到着した。
ガスは十分にあり、いざという時に壁上に逃げることも可能。
また、呪力も潤沢だ。そもそもの呪力量が膨大過ぎるため、身体強化程度の呪力消費なら訳ない。
(さて……)
60体程度だった巨人は更に増え、80体近くまでなっている。
肉の塊がカイへと殺到する。高度を取って、巨人が届かない場所にいるものの、巨人たちが折り重なって足場を作れば容易に届きうる。
アンカーを外し、壁を力強く蹴ると同時にガスを噴射して外門から離れ、大通りに足を付ける。
地面に降りたカイを喰らおうと、巨人が走っていく。地響きのような音と揺れが、カイの足と耳に伝わってくる。
最前にいる巨人がカイへと手を伸ばす。
呪力で拳を強化し、巨人の手を
「ぶっ飛べ!」
思い切り殴り飛ばした。
虎杖ほど、素の肉体が驚異的に強いわけではない。呪力を大量に使用し、その威力を大きく伸ばしただけである。
別の巨人が伸ばしてきた手を殴り、口を開いて突貫してくる巨人の顔面を蹴り飛ばし、上から叩き落としてくる巨人の掌を受け止めると肉を掴み、全身の力と足腰を用いて投げ飛ばす。
投げられた巨人は、他の巨人を巻き込みながら遠くに飛んでいく。
「死んどけ!」
回し蹴りで巨人を蹴り飛ばし、近づいてきた巨人の顔を張り手で吹き飛ばす。
カイが、蹴り、殴り、弾き飛ばす度に、巨人の血や肉、骨が辺りに飛び散る。撒き散った巨人の破片は、蒸気を上げながら消滅していく。
後退はしない。迫りくる巨人に対して前に進みながら攻撃をしていく。次第に、巨人たちはカイの周りを取り囲み始めた。
一体の巨人が、カイの背中に勢いをつけて手を伸ばしてきた。カイは後ろへ振り返ることなく、前にいる巨人を攻撃している。巨人の手が、カイの背中へ残り数メートルの距離まで近づいた。
しかし、呪力の光が巨人の手へと広がって衝突したその瞬間、巨人の手は弾かれ、弾かれた衝撃で大きく体を反らした。『呪力展開』である。
(グラニテ・ブラストや純愛砲、宿儺や五条のような打撃、漏瑚の火炎攻撃などの『点』的攻撃には弱い。だが、巨人は表面積がデカい、つまり『面』的攻撃だ。その攻撃に『呪力展開』は優位だ。『使えはする』な)
超大型の蒸気も、同じく『面』の攻撃である。
呪力消費が甚大かつ超悪効率、防御力も低く、万能ではない。
なれども、五条悟の『無下限バリア』を擬似的に再現することに成功している。
道沿いに立ち並ぶ家屋の屋根へと跳び移り、縦横無尽に駆け回りながら打撃を加えていく。一箇所に留まるのではなく、彼方此方へ移動しながら。
「広く使おう!」
カイを狙う巨人たちは、殴られて、蹴られて、持ち上げられて、張り倒されて、家屋や他の巨人を巻き込みながら吹っ飛んで行く。
カイは大胆に立ち回りながら、しかし呪力操作は繊細に。
トドメを刺すことに注力するのではなく、打撃を与えることと呪力操作に専念する。
その過程で、巨人の『うなじ』に大きく損傷を与えて死に至らしめるだけだ。
その目的は、ただ一つ。
(俺に微笑め!『黒い火花』!)
『黒閃』は、カイに微笑むのか!?
次回をお楽しみに!
アンケート第2回です。見た感じ、半分程度の方が、「私に委任する」という立場のようで……。この様子だと、3回目は不必要ぽいかな?取り敢えず、また好きな所に投票してください。後、恋愛要素って要ります?「作者に展開は委任する」立場の方は、①と②に投票してください。原作の展開的に、ヒロインはユミルやクリスタになるかも。
-
57回壁外調査 女型に先制攻撃
-
57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
-
ストヘス区 女型本体を生身で捕獲
-
ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
-
王政編 リヴァイと共にケニー戦
-
王政編 反転術式でケニーを治癒
-
マリア 区内で鎧と超大型と交戦
-
マリア エルヴィンとアルミンを反転治癒
-
グリシャの手記と共に呪術公開
-
マーレ襲撃で大暴れ
-
①恋愛要素は必要
-
②恋愛要素は不必要