空を駆け 影に潜みて 敵解つ   作:エルンストレーム総統

12 / 18
第12話 大立ち回り

 

 

「『解』」

 

 

術式を使用し、不可視の斬撃が一体の巨人を襲う。

一直線に飛んでいった斬撃は巨人の肉を引き裂き、頭がパックリと二つに割れた。

その巨人は地に倒れ、傷口から蒸気を発しているものの、死んではいない。『うなじ』に損傷を与えたわけではないためだ。

 

 

(巨人化した人間が、その知性巨人の『うなじ』内に居ることと、無垢巨人の急所が『うなじ』であることは無関係じゃない。無垢巨人の本体は、巨人の肉体と同化してしまって消えているものの、その『魂』のようなものは維持されたまま残っている。『うなじ』が大きく損傷すると、『魂』を維持することができなくなり死に至る。恐らく、そんなとこだろう)

 

 

倒れた巨人が、ゆっくりと手を地面に置き、身体を起こしている様子を見る。徐々に損傷が修復されている。

 

 

(ここでやり合うと、他を巻き込むよな……良し)

 

 

「付いてこい、巨人ども」

 

 

頭上の壁に突き刺している立体機動装置のアンカーを片方外すとともに、そのアンカーを外門側の壁面へと射出。壁面に刺さったことを確認すると、未だ頭上の壁に突き刺しているアンカーを外した。

同時に、呪力で身体全体──特に下半身──を強化し、壁を垂直に走り始めた。

 

 

「おいおい、マジかよ巨人……」

 

 

カイが移動を始めた瞬間、先ほどまではノロマだった30体以上の巨人たちが一斉に走り出した。速度が尋常では無く、恐らく第57回壁外調査に出てきた足の速い巨人や、アニメ第2期でミケ・ザカリアスが交戦した巨人よりも速い。

 

 

(そうかよエレン。『戦え』ってか!)

 

 

更に、街中にいた巨人たちがカイを視界に捉えると、カイを追い掛ける巨人らと同様に走り出した。速度も同じくらいだ。

巨人たちが地を鳴らし、建物を破壊しながらカイへと真っ直ぐ向かって来る。

カイは外門に向かって移動しているため、必然として街中にいる巨人の密度は大きくなっていく。

 

 

気付けば、カイを追跡する巨人たちは60体を超えていた。

 

 

(速度もそうだが、数も尋常じゃない。だが、他の訓練兵や本部に向かう巨人も普通にいる。原作通りの流れになるだろうが……この巨人どもは、未来エレンが寄越してきた奴らだな)

 

 

刺していない右のアンカーを射出し壁上に刺す。左のアンカーを外し、ある程度移動すると射出して壁上に刺し込むと右のアンカーを外す。

ブラキエーションの要領で、アンカーを抜いては刺し抜いては刺しを繰り返す。

 

 

移動自体は、呪力で強化した肉体そのものを使ったモノのため、ガスは全く消費していない。

 

 

雪だるま式に増えていく、カイを追う巨人。

カイは一切気にすることなく、外門へと只管に向かう。

 

 

「やるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

トロスト区壁上。負傷していない班員は、負傷した班員を連れて壁上へと撤退し、応急処置を再度行う。この処置を『しているか、していないか』によって、最終的な生存率や後遺症の有無に大きく影響を及ぼす。

 

 

応急処置を終えて内門へと向かう前に、シュヴァルツ訓練兵はカイがいる方向を見る。

 

 

「カイ……」

 

 

撤退を進言したのは自分である。カイを見殺しにする選択をした訳では無い。しかし実際に、カイは自らを危険に晒し、自分を含めた班員を離脱させた。

 

 

その結果、シュヴァルツ訓練兵含む4名は壁上に辿り着くことができたが、カイは巨人に追われることとなった。

見れば、60体近くの巨人がカイを追い掛けている。それも、一般的なノロマ巨人ではなく、異常な程に足が速い巨人が追い掛けている。

 

 

調査兵団の熟練兵ですら、『アレ』を振り切って本部まで撤退することは出来ないだろう。

 

 

壁上まで上がらず、外門の方へ向かっている所を考えるも、その意図は容易に想定出来る。

 

 

『アレ』を放置したまま壁上に撤退すれば、即ち『アレ』を野に解き放つも同然。そうなれば、訓練兵は勿論のこと、駐屯兵も為す術なく殺されるだろう。

兵士だけではない。避難が遅れている民間人に、『アレ』が襲いかかることも想定出来る。

 

 

『カイのみ』にアレほどまでの速さを見せる、とは限らない。『突然足が速くなったのは何故か?』は分からない。奇行種の行動は、常に想定を超え、予想を裏切ると教わった。

 

 

彼は、班員だけでなく、他の訓練兵や駐屯兵、民間人すらも守るため、体を張っている。

 

 

「急ぐぞ!駐屯兵に報告して、避難を急がせる!」

 

 

カイを見殺しにしないためにも、疲労で限界の班員にもムチを打って、彼は負傷者を連れて内門へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

只管に移動を続け、カイは外門上部に到着した。

ガスは十分にあり、いざという時に壁上に逃げることも可能。

また、呪力も潤沢だ。そもそもの呪力量が膨大過ぎるため、身体強化程度の呪力消費なら訳ない。

 

 

(さて……)

 

 

60体程度だった巨人は更に増え、80体近くまでなっている。

肉の塊がカイへと殺到する。高度を取って、巨人が届かない場所にいるものの、巨人たちが折り重なって足場を作れば容易に届きうる。

 

 

アンカーを外し、壁を力強く蹴ると同時にガスを噴射して外門から離れ、大通りに足を付ける。

 

 

地面に降りたカイを喰らおうと、巨人が走っていく。地響きのような音と揺れが、カイの足と耳に伝わってくる。

 

 

最前にいる巨人がカイへと手を伸ばす。

呪力で拳を強化し、巨人の手を

 

 

「ぶっ飛べ!」

 

 

思い切り殴り飛ばした。

虎杖ほど、素の肉体が驚異的に強いわけではない。呪力を大量に使用し、その威力を大きく伸ばしただけである。

 

 

別の巨人が伸ばしてきた手を殴り、口を開いて突貫してくる巨人の顔面を蹴り飛ばし、上から叩き落としてくる巨人の掌を受け止めると肉を掴み、全身の力と足腰を用いて投げ飛ばす。

投げられた巨人は、他の巨人を巻き込みながら遠くに飛んでいく。

 

 

「死んどけ!」

 

 

回し蹴りで巨人を蹴り飛ばし、近づいてきた巨人の顔を張り手で吹き飛ばす。

カイが、蹴り、殴り、弾き飛ばす度に、巨人の血や肉、骨が辺りに飛び散る。撒き散った巨人の破片は、蒸気を上げながら消滅していく。

 

 

後退はしない。迫りくる巨人に対して前に進みながら攻撃をしていく。次第に、巨人たちはカイの周りを取り囲み始めた。

 

 

一体の巨人が、カイの背中に勢いをつけて手を伸ばしてきた。カイは後ろへ振り返ることなく、前にいる巨人を攻撃している。巨人の手が、カイの背中へ残り数メートルの距離まで近づいた。

しかし、呪力の光が巨人の手へと広がって衝突したその瞬間、巨人の手は弾かれ、弾かれた衝撃で大きく体を反らした。『呪力展開』である。

 

 

(グラニテ・ブラストや純愛砲、宿儺や五条のような打撃、漏瑚の火炎攻撃などの『点』的攻撃には弱い。だが、巨人は表面積がデカい、つまり『面』的攻撃だ。その攻撃に『呪力展開』は優位だ。『使えはする』な)

 

 

超大型の蒸気も、同じく『面』の攻撃である。

呪力消費が甚大かつ超悪効率、防御力も低く、万能ではない。

なれども、五条悟の『無下限バリア』を擬似的に再現することに成功している。

 

 

道沿いに立ち並ぶ家屋の屋根へと跳び移り、縦横無尽に駆け回りながら打撃を加えていく。一箇所に留まるのではなく、彼方此方へ移動しながら。

 

 

「広く使おう!」

 

 

カイを狙う巨人たちは、殴られて、蹴られて、持ち上げられて、張り倒されて、家屋や他の巨人を巻き込みながら吹っ飛んで行く。

カイは大胆に立ち回りながら、しかし呪力操作は繊細に。

トドメを刺すことに注力するのではなく、打撃を与えることと呪力操作に専念する。

その過程で、巨人の『うなじ』に大きく損傷を与えて死に至らしめるだけだ。

 

 

その目的は、ただ一つ。

 

 

(俺に微笑め!『黒い火花』!)

 

 

 

 

 

 

 

 






『黒閃』は、カイに微笑むのか!?

次回をお楽しみに!

アンケート第2回です。見た感じ、半分程度の方が、「私に委任する」という立場のようで……。この様子だと、3回目は不必要ぽいかな?取り敢えず、また好きな所に投票してください。後、恋愛要素って要ります?「作者に展開は委任する」立場の方は、①と②に投票してください。原作の展開的に、ヒロインはユミルやクリスタになるかも。

  • 57回壁外調査 女型に先制攻撃
  • 57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
  • ストヘス区 女型本体を生身で捕獲
  • ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
  • 王政編 リヴァイと共にケニー戦
  • 王政編 反転術式でケニーを治癒
  • マリア 区内で鎧と超大型と交戦
  • マリア エルヴィンとアルミンを反転治癒
  • グリシャの手記と共に呪術公開
  • マーレ襲撃で大暴れ
  • ①恋愛要素は必要
  • ②恋愛要素は不必要
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。