空を駆け 影に潜みて 敵解つ   作:エルンストレーム総統

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第2話 研鑽と天与呪縛

 

「『解』」

 

 

木の枝がスパッと切れ、枝先に実る木の実がカイの手へと落ちる。赤々とした瑞々しい果実を、カイは『御厨子』を用いて次々と木の枝から切り離していく。そして、背中に背負う籠へと投げ込んでいく。

 

 

「はふっ」

 

 

「そら、食っていいぞ」

 

 

幾つか果実を手に入れると、その一部はカイを挟んで歩く二匹の玉犬へと分け与える。玉犬を影に直すこともなく、常に控えさせている。

 

 

(ここ数年、山の中で暮らして呪術と身体の育成に時間と手間を注いできた。けど、この呪力出力と総量は、やっぱ異常だな)

 

 

玉犬を出してから、約一月。寝ている間も、食事を取っている間も玉犬は顕現させたままだが、呪力が切れる様子は無い。

 

 

(十中八九、天与呪縛だな。恐らく、「思い出」と「家族」の喪失だろう)

 

 

840年、8歳になったカイ。己の呪力出力と総量に疑問を抱いていた彼は、その疑問に答える一つの解を導き出していた。

 

 

(前世の記憶が……曖昧だ。『進撃の巨人』と『呪術廻戦』、現代の景色、科学知識は鮮明に残っている。けど、友人との関わり、恋人との付き合い、自分が何をしていたのか、何を学んできたのか、家族とどう過ごして来たのか、それらが一切皆無だ)

 

 

果実をムシャムシャと食べている玉犬の頭を撫でると、カイは近くの小さな木に向かって『解』を放ち、出来た切り株へと腰掛ける。

 

 

(何より、4年前の盗賊たち。俺は、街に行ったことがない)

 

 

強制的な記憶の消去、そして今世の家族を強制的に奪われるという天与呪縛。

 

 

(……クソッタレ。クソッタレも良いとこだ。クソッタレ……)

 

 

カイは頭を抱える。

日が昇る朝、優しい声で起こしてくる母親がいて。寝間着から着替えると、父親と母親が仲良くテーブルに朝ご飯を並べる。その朝ご飯は温かく、いつも美味しかった。

ご飯を食べると、父親と共に畑へと向かい、作物と畑の世話をする。虫を追い払い、山から流れる川から水を持ってきて作物へと掛ける。太陽が頭上まで来ると、母親が昼ご飯を持ってきて、地面に座って三人で食べる。

畑での用事が終わると山へ向かい、果実や山菜の収集、薪集めに精を出す。獣がいれば罠を仕掛け、弓で射掛け、上手く行けば夜は皆で肉を食べる。

 

 

 

そんな生活は、全部消えた。

 

 

 

カイは唇を強く噛み、身体を縮こませる。身体の奥から溢れ出す気持ちを抑えるために。

 

 

「わふっ」

 

 

その時、二匹の犬が声をかけた。カイは玉犬へと目を向けると、その頭を撫でた。

 

 

(強制的に二人を生贄にすること、前世の記憶を無くすことを考えると、これぐらいの対価が無いと割に合わない。擬似的な絶命の縛りが二回分。そして記憶や体験は、人を形成する重要な要素。それを無くすことは、人を消すに等しい。それも、単なる学術的知識ではなく、交友関係や日常の記憶ともなれば、尚更大きな支払いとなる)

 

 

 

目を細め、満足気な玉犬を見ていると、カイは心が洗われるような感覚に陥る。そして撫でるのを止めると、カイは自分の両手を凝視する。

 

 

(クソッタレな世界と、クソッタレな呪縛。けど、この『力』だけは、少なくともクソッタレではない。この4年間、ずっと鍛えてきた)

 

 

基本的な呪力操作は、独学で身に付けた。知識として脳内にある『呪術廻戦』の鍛錬方法。映画は無いものの、両親が殺された映像は頭の奥に強く残っている。人が死んでいく様は、強く印象にある。

無限とも言える呪力総量に物言わせ、絶えず呪力を練り続け、一般的な術師に並ぶ呪力操作は手に入れた。そこから、呪力による身体強化や術式行使に発展させ、『御厨子』や『十種影法術』のレベルを上げる。

 

 

(まずは、『御厨子』だな。立体機動と『御厨子』の合体技は凶悪だ。それに、呪術を隠すにも向いている。しっかり誤魔化せば、剣捌きが上手い、ということで説明できる)

 

 

籠から一つの果実を手に取ると、『御厨子』で一口サイズに小さく分解する。そして、一個ずつ口に放り込んで咀嚼する。

 

 

(生活の中に術式を取り入れ、鍛錬も兼ねる。呪術を極めることは、引き算を極めること。兎に角、必要な労力や時間を少なくする)

 

 

分解した果実を全て食べると、カイは立ち上がって歩き出す。既に食べ終えた玉犬は、再びカイを挟むように歩く。

果実の採集を続け、籠が果実で一杯になると、果実を籠に入れるのではなく、足元に落としていく。果実は重力に従い地面へ落ちると、そのまますり抜けていく。

 

 

(『死滅回遊』におけるレジィと伏黒の戦闘を思い出せば、影に入れた物の重量は術師が負担しなければならない。なら、こういう使い方をすれば、荷物運びと筋トレを同時並行で行える)

 

 

草むらからガサガサと音がしたかと思うと、一匹のウサギが飛び出してきた。血のように真っ赤な瞳に、雪のように白い肌だ。

そして、立て続けに同じ姿のウサギが四方八方から飛び出てくる。少なく見積もっても50匹以上はいる。

 

 

(最近調伏した『脱兎』は、燃費が良い。攻撃能力がそこまで高くない変わりに、呪力消費が少ない。原作でも呪力消費が同じかは知らんが、索敵に最適だな。巨人にも狙われないだろうから、周辺に撒いておける)

 

 

ウサギの一匹を持ち上げると、腕に抱く。フワフワとした体毛と温かい肌が、服越しに感じられる。

術式を用いた食料採集と筋トレ、絶えない呪力操作を生活の中に取り入れ、常に鍛錬をするようにカイは日常を設計した。

その生活を、カイは続けていた。

 

 

 

 

5年後の845年。カイが13歳になった時、人類は巨人を思い出す。そして、カイが本格的に『進撃の巨人』と向かい合うことになる。

 

 

 

 

 

本格的に原作介入を開始するのはどのタイミングが良いと思います?アンケートは、今回含めて3回ほど実施します。2回目は、第一回のアンケートにおける上位1位から10位で投票。第3回は、第2回の上位1位から3位で決選投票です。介入時期を作者に委ねる場合、(19)と(20)に投票してください

  • ①57回壁外調査 女型を先制攻撃
  • ②57回壁外調査 女型によるカイ先制攻撃
  • ③57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
  • ④ストヘス区 女型本体を生身で拘束成功
  • ⑤ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
  • ⑥ローゼ壁上 鎧と超大型に瀕死
  • ⑦エレン奪還作戦 ユミルは未定
  • ⑧王政編 リヴァイと共にケニー戦
  • ⑨王政編 礼拝堂で大暴れ
  • ⑩王政編 地上のロッド巨人を細切れ
  • ⑪王政編 反転術式でケニーを治癒
  • ⑫マリア 区内で鎧、超大型と交戦
  • ⑬マリア 区外で獣と交戦するだけ
  • ⑭マリア 特攻時、領域展開
  • ⑮マリア エルヴィンやアルミンを反転治癒
  • ⑯グリシャの手記と共に、呪術公開
  • ⑰イェレナの思惑阻止
  • ⑱マーレ襲撃で大暴れ
  • ⑲黒閃と反転術式を、①から⑥の間で会得
  • ⑳領域展開を①から⑪の間に会得
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