空を駆け 影に潜みて 敵解つ   作:エルンストレーム総統

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第3話 845年

 

845年 

 

その日カイは、いつものように過ごしていた。この5年間で調伏した鵺と万象を携え、呪力操作をしながら食料採集に勤しみ、影の中に荷物を入れて筋トレを行う。なおかつ、帰宅してからも腕立て伏せや腹筋など積極的な筋トレに励み、呪術の鍛錬と身体作りを継続する。

その御蔭で、13歳にして身長は170センチを優に超え、体全体も太く厚く、ガッシリした体型になっていた。

 

 

そして日が沈み始める頃に、カイは最小限の荷物を鞄に入れ、重要な荷物は影に収納して、式神を解除してから家を出た。

目的はシガンシナ区。買い出しではなく、確認のために向かう。

超大型巨人の襲来が何時か、確認するためである。

845年にシガンシナ区が襲撃されることは知っている。だが、具体的な日時は知らない。

 

 

(さて……)

 

 

山から降り、森を抜ける。視界に広がるは、見渡す限り向こうまで続く平原だ。

カイは、ふっと息を吐き出すと、全速力で駆け出した。

 

 

(こういう時は、『投射呪法』が欲しくなるな)

 

 

13歳では、否、人類では到底辿り着けない筈の速度で、カイは平原を駆け抜ける。カイが駆け抜けた軌跡では、草は揺れ、花は散り、大きく土埃が舞っている。

 

 

1年前の844年から、カイは二日に一回の頻度で自宅からシガンシナ区へと足を運んでいる。壁が破られる日が何時なのかは知らない。そのため、山に住んでいて避難が遅れ、壁内での生活に支障が出ることを避けるためだ。『単純に力が強いだけ』で説明できることなら兎も角、周囲から疑われることは極力しないようにしている。

避難が一日遅れて巨人が大量にいる中、子供が一人でウォールローゼまで避難するなど、明らかに異常である。巨人化できるのではと『戦士』から疑惑を掛けられたり、王政やエルヴィンから『何かある』とマークされるのは回避したかった。

 

 

(……ん?)

 

 

そうして一時間強ほど走り続け、カイは妙な感覚を覚える。どこか血生臭く、喧騒に塗れ、負の感情が大量に噴出しているような、そんな感覚だ。

カイは速度を落とす。『人類とは思えない程明らかに速すぎる』速さから『人類の中では極めて速い』速度へと。

 

 

(まさか……今日だったか!)

 

 

次第に、カイの視界に建物が見える。一つや二つではなく、幾つも固まっている建物だ。ウォールマリア内壁側にある、シガンシナ区の街である。ウォールローゼへと向かう馬車や船が設けられ、交通の要でもある。

 

 

(……あれが……巨人か……)

 

 

その街から、明確に異常な存在が顔を出していた。人間のような顔つきで、しかし全裸である。ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる個体もいれば、無表情で身体を抱える個体もいる。その特徴は千差万別だが、共通して『デカい』ということは言える。

 

 

(時間的に、『鎧の巨人』がシガンシナ区内門を突破し、避難が完了し始めた頃かな……一部の巨人は、ウォールローゼに向かって、もう遥か先にいる)

 

足を止め、近くにある林の中に隠れる。

シガンシナ区内門から巨人が次々と雪崩込んでくるのが見える。彼らは、ドスドスと地を揺らしながら、ウォールローゼにいる獲物へと足を進めている。

 

 

(ちょっと出遅れたか?……まあ、考えはある。『少し』だけなら、許容範囲だな)

 

 

カイは、そのまま半刻ほど林の中で隠れ続けた。巨人が壁内へと侵入する姿を見ながら、周囲を見渡し、調査兵団や駐屯兵団の姿が見えないことを確認する。勿論、『戦士』の姿が見えないことも。

 

 

(居ないな……調査兵団は、壁を伝って撤退したか?原作でどうだったか覚えてないな。確りと調べてたらな……。まあ良い。ここまで来たんだ。巨人も居ることだし、ついでに調べるか)

 

 

「味見……といったところか」

 

 

徐に、カイは林から出ていく。それと共に、隠していた気配を外へ出していく。森の中で過ごし、獣を追い掛ける中で身に付けた技術だ。

すると、巨人たちがグリッと顔を動かし、カイへと視線を向ける。その瞬間、一斉にカイへと走り出してきた。

 

 

(キッショ……ゴキブリとムカデとタランチュラのキメラよりも気色悪いな。リアルで見るとヤバい)

 

 

自分へと向かってくる巨人たちを前に、カイは右手を翳し、呟く。

 

 

「『解』」

 

 

その言葉と共に、不可視の斬撃が巨人へと飛来し、その肉を断ち切った。首から切れる個体、腹が切れる個体、腕が切れる個体、足から切れる個体と様々だが、『切れない個体』は一体も居ない。

 

 

(普通に切れるな。アニメでは宿儺がビルを切断していた。それよりも柔らかい巨人の肉なら、当然か)

 

 

「『解』……『解』……」

 

 

カイはバックステップしながら、立て続けに『解』を放つ。その度に巨人たちが肉を切られ、その血を流す。だが、死に至る個体は居ない。『うなじ』を切ってはいないからだ。

 

 

(呪術を使っても、『うなじ』に大きな損傷を与えない限り死にはしない。そして……)

 

 

巨人たちは傷口から蒸気を発している。そして、その傷口は瞬く間に修復されていく。

 

 

(再生能力は健在。特に再生速度が落ちる気配は無い。これだけ情報があれば十分だな。後は……)

 

 

「『解』」

 

 

巨人を斬撃で薙ぎ払い、幾つもの個体を地面に倒す。そして、『うなじ』がカイに向かって丸見えになっている個体を見つけると、

 

 

「『解』」

 

 

『うなじ』へ斬撃を仕掛ける。肉が大きく切れ、巨人の『うなじ』がパックリと開く。すると、その巨人は体中から蒸気を吐き出し、次第に肉が消えていく。

 

 

(普通に殺せる。大きな情報だな。いざとなれば、術式を用いれば良い)

 

 

カイはそう考えると、ダッと駆け出して街から離れていく。

 

 

(もう、ここに要はない。後は、ウォールローゼ内に避難すれば良い。全ての民衆が、船を使って逃げている訳じゃないだろ。一部の商人や運の良い奴は馬車を使って先に逃げている筈。彼らを追い越し、『ウォールマリアへと向かう子供』の振りをして彼らと接触、そのまま一緒に逃げる)

 

 

驚異的な速度でウォールマリア内を駆けていくカイは、街道から少し外れた経路を走り抜ける。森林や山に度々ぶつかるが、カイは気にせず一直線に駆け抜ける。

走りながら、カイは今後の生活を思い浮かべた。

 

 

(避難民として壁内で過ごすのは良い。だが、その後はどうするか?そのまま生活するか?)

 

 

カイは、未だ答えを出せていなかった。

本格的に原作介入を開始するのはどのタイミングが良いと思います?アンケートは、今回含めて3回ほど実施します。2回目は、第一回のアンケートにおける上位1位から10位で投票。第3回は、第2回の上位1位から3位で決選投票です。介入時期を作者に委ねる場合、(19)と(20)に投票してください

  • ①57回壁外調査 女型を先制攻撃
  • ②57回壁外調査 女型によるカイ先制攻撃
  • ③57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
  • ④ストヘス区 女型本体を生身で拘束成功
  • ⑤ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
  • ⑥ローゼ壁上 鎧と超大型に瀕死
  • ⑦エレン奪還作戦 ユミルは未定
  • ⑧王政編 リヴァイと共にケニー戦
  • ⑨王政編 礼拝堂で大暴れ
  • ⑩王政編 地上のロッド巨人を細切れ
  • ⑪王政編 反転術式でケニーを治癒
  • ⑫マリア 区内で鎧、超大型と交戦
  • ⑬マリア 区外で獣と交戦するだけ
  • ⑭マリア 特攻時、領域展開
  • ⑮マリア エルヴィンやアルミンを反転治癒
  • ⑯グリシャの手記と共に、呪術公開
  • ⑰イェレナの思惑阻止
  • ⑱マーレ襲撃で大暴れ
  • ⑲黒閃と反転術式を、①から⑥の間で会得
  • ⑳領域展開を①から⑪の間に会得
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