空を駆け 影に潜みて 敵解つ   作:エルンストレーム総統

7 / 17

第1話から第8話の間で、アンケート第一回を実施中です。
第一回アンケートの期限は、4/26(日曜日)までです。

分岐が多すぎるんですよね、進撃の巨人……
とはいえ、マーレ編までの間に原作介入することは決定しています。まあ、マーレ編より後に介入したとしても、第三勢力を作るかエレンと激突するかの、ほぼ二択ですからね。

マーレ側に付くことは無いです。マーレと手を組んでエルディア滅亡を目指したと言っても、カイ自身がエルディア人なので……その後が、ね



第7話 適性判断

 

 

「まずは貴様らの適性を見る!これが出来ない奴は、囮にも使えん!」

 

 

(適性判断か……)

 

 

腰に装着したベルトから左右に合わせて二本のワイヤーが伸び、頭上の装置へと続く。その装置の下で、訓練兵がバランスを取っていた。

横に並ぶ装置で同時並行に試験を実施。ワイヤーによって体が持ち上げられ、己の体重と筋肉、重心移動などでバランスを一定時間保つ必要がある。

バランスは、基本的に足腰で取ることが多い。腰を低くする、地面に足全体を着けるなど。だが、立体機動中は空を飛んでいる。そのため、上半身と下半身、つまり体全体でバランスを取ることが出来なければ、体勢を崩して頭や体を強打し、最悪死に至る。

 

 

(エルディア人は骨が酷く丈夫だから、ある程度の無茶は出来る。俺も、呪力強化で体は頑丈になれる。けど、こういう『技術』は、会得しておくに越したことはない)

 

 

試験の順番が回ってきたカイは、助手に手伝って貰いながらベルトとワイヤーを繋ぎ、教官の合図で装置を操作して貰う。

 

 

ゆっくりと体が宙へ持ち上がり、足が地面から離れる。

カイは、全身を脱力させ、体を1本の芯が貫いているように振る舞う。前傾しても駄目、後傾しても駄目。重心が左右どちらかに偏っても駄目。

 

 

(……案外行けたな)

 

 

ワイヤーがギシギシと音を鳴らし、完全な安定はしていない。多少のブレはある。だが、突然バランスを崩すことは、その見た目からは想像出来ないくらいには安定している。

 

 

836年以来、重い荷物を常に影の中へ収納していたカイは、その重量を負担しなければならなかった。その重量は下半身のみに偏ることも、左右どちらかに偏ることもなく、全身に等しく負荷として掛かっていた。

故に、歩行や疾駆する時も、隠密行動するときも、己の重心を意識していた。847年に至る11年間、『それ』を日常の中に組み込んでいたことで、無意識に、自然に重心移動が可能となるまでになった。

 

 

『適性あり』と判断されると、ワイヤーは緩み、次第に体が落ち、カイは地面へと足をつけた。

ベルトからワイヤーを外すと、次の訓練兵が試験を行う。

カイは、装置付近で適性判断を見ている訓練兵たちの塊から少し離れ、全体が見える位置で座り込んだ。

 

 

「見ろ。全くブレがない。何をどうすれば良いのか、全て分かるのだろう」

 

 

白髪の男性が、若い男性を伴って適性判断を見に来た。

そして、ミカサを見ながら評価する。

ブレることなく、体勢を変えることもなく、プラプラとワイヤーに合わせて身体が揺れるだけ。バランスを崩すことなど、想像出来ない安定さである。

 

 

(流石、ミカサだな)

 

 

ミカサの他に、ジャンやコニーたちも適性判断を受けている。腕や足、体全体を動かしながら、バランスを何とか保っている。だが、崩れることは無い。

そして、ジャンとコニーの間でサシャも適性判断を受けているが、異常であることは明確に分かる。

 

 

(その体勢で、何でバランスが保てるんだ。『不安定だから揺れている』というより、『ワイヤーと体重の関係で自然と揺れている』ような感じだな。風が吹いて木の葉が揺れるのと似ている)

 

 

ミカサを除いた他の訓練兵は、バランスを何とか保とうと必死の表情だ。だが、サシャはどこ吹く風で、余裕のある表情で過ごしている。ブランコに乗る子供を感じさせる振る舞いだ。

 

 

「あの、彼は……」

 

 

「それこそ『素質』というモノだろう。たとえ気合が十分でも、人並み以上に出来ないこともある」

 

 

教官二人の視線の先にあるものへ、カイは目を動かす。

完全に逆さまとなり、ブラブラと両腕が地面へと垂れ下がっている兵士の姿があった。

 

 

「何をやっているエレン・イェーガー!上体を起こせ!」

 

 

キースの怒鳴り声を聞きながら──視界の上部に映る訓練兵たちの、自分を嘲るような顔を見ながら──エレンは、心の中で絶望していた。

 

 

(……何だこれ……こんなの、どうやって……嘘、だろ……)

 

 

 

 

 

 

「基本通りやれば出来る筈。『上手くやろう』とか考えなくて良い。前後のバランスに気を付けて、腰巻と足裏のベルトに、ゆっくり体重を乗せる」

 

 

ベルトにワイヤーを装着したエレンに向かって、ミカサがコツを伝える。アルミンはエレンの後ろ、装置の操作器具の近くに立っている。

カイは、今日の適性判断が終わった後もその場に残り、三人の様子を腕組みしながら見ている。

 

 

(ミカサ、言語化は出来るんだよな。脹相みたいに、『そら……そうよ……そらあれよ……』とか言ってバット振り出したら笑ったが)

 

 

「落ち着いてやれば出来るよ。僕にだって出来たんだから」

 

 

「基本、筋肉は必要ない。全体の重心、力の匙加減、体重の掛け方で殆ど決まる。エレンは、そういうのが苦手だとは思えないから、何とかなるさ」

 

 

カイは、エレンに向かってアドバイスにもならない事を伝える。一番の問題は、あの『傍観者』がベルトに細工をしていることであり、エレン自身に問題は無い。整備項目外の箇所が破損しているとなれば、訓練兵が気付かないのも当然である。

 

 

「良し、今度こそ、出来る気がする。上げてくれ、アルミン」

 

 

瞳が揺れ、どこか自信無さげな声音でアルミンへ言葉を掛ける。

そして、アルミンが器具を操作すると、エレンの体がゆっくりと持ち上がる。

エレンの両足が地面から離れた瞬間、

 

 

「うわっ!」

 

 

エレンはバランスを崩し、遠心力そのままに頭を地面へ強打した。

 

 

「ガッ!」

 

 

(『バランスが次第に崩れる』でも、『最初から姿勢が不自然で倒れる』でもない。ベルトの破損が原因という流れは、原作通りだろうな)

 

 

頭から血を流して倒れ伏すエレンへと駆け寄ったカイは、こうなると思って用意しておいた包帯を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあダズ。アイツ確か、昨日『巨人を皆殺しにしてやる』とか言ってた奴だよな」

 

 

「まあ、明日には開拓地行きだろ。役立たずに食わせるメシはねぇからよ〜」

 

 

包帯を頭に巻き、何処かボーッとしているエレンの頭から、薄っすら蒸気が出ているように見える。

啖呵を切っておいて、そもそもの適性判断で躓き、挙句今日は頭を強打するという流れは、エレン本人には予想外だったのだろう。

どうすれば良いのか、何故なのか、原因も方策も思い浮かんでいない様子だ。

カイは、そんなエレンを一つ離れたテーブルから見ていた。一人で食事を取り、ササッと食べ終わると、そのままテーブルに肘をついている。

 

 

「エレン」

 

 

「あイッテ」

 

 

(おい何か『グギッ』て音鳴らなかったか?)

 

 

エレンの近くにあるテーブルで食事を取っている殆どの訓練兵がエレンへと視線を向けているため、カイがエレンを見つめていても不自然では無かった。

 

 

「気にしても仕方ないよ。明日出来るようになれば良いんだから」

 

 

「情けねぇ……こんなんじゃ、奴らを根絶やしにすることなんか……」

 

 

「もうそんなこと目指すべきじゃない」

 

 

「何だって?」

 

 

「『兵士を目指すべきじゃない』と言っている。何も、命を投げ打つことだけが戦うことじゃない」

 

 

調査兵団を目指すエレンを止めようとする──愛する人に、死地へ向かうことを止めて欲しいとする──そういうミカサの想いは、彼女のポーカーフェイスからは見て取れない。

しかし、その言葉は、確かに思いを持って紡がれている。それが『エレンにとって好ましいかどうか』は別問題だが。

 

 

「お前な……!俺は『あの日』、『あの光景』を見ちまったんだぞ!そんな理屈で納得できると思うのかっ」

 

 

ミカサへ鋭い視線を向けるエレンの言葉に、マーレ大陸でのエレンを思い浮かべる。

 

 

(『納得出来ない』か。能力が無いなら去るべきだ、世界のためにエルディア人は死ぬべきだ、ということはエレンにも理解できる理屈ではある。だけど、その理屈はエレンにとって『納得出来ない』もの。『理解する』と『納得する』は別次元の話だ)

 

 

カイは、以降の展開を思い出す。

トーマスやミーナが食われ、マルコが見殺しにされ、調査兵団の熟練兵が命を落とし、獣の投石で調査兵団は凡そ全滅し、マーレを襲撃し、『地鳴らし』で人類の八割が踏み潰される。

 

 

呪術師以上に人が死に続けている『進撃の巨人』において、両親以外の『死』は必ず訪れるだろう。それは、展開通りかもしれないし、予定外かもしれない。

 

 

(その時、俺は『納得』出来るのか……?少なくとも、『地鳴らし』はエレンにとって『納得出来る』ものかもしれない)

 

 

鐘の音が響き、訓練兵たちが食器を持って立ち上がる。その音で思考の流れから戻ったカイは、エレンたちの方を見た。

話を続けるミカサを置いて、アルミンとエレンも立ち上がる。

 

 

(……聞いてあげようぜ、二人とも……)

 

 

カイも食器を持って立ち上がると、食堂の扉まで歩いていく。そして、ミカサの方へ振り返った。

 

 

「その時は私も、一緒に行くから……」

 

 

「……んんっ……ええと、つまり……」

 

 

エレンが座っていた場所、つまりミカサの隣に何時の間にか移動していたサシャは、ミカサの食器に載せられているパンを指さした。

 

 

「それ、貰っても良いって、ことですか?」

 

 

その言葉を聞いたミカサはパンを手に取り、サシャへと差し出す。輝きに満ちた目でパンを見つめるサシャは、パンを受け取ろうと手を出した。

そして、ミカサの手はスルリと己の口へと運ばれ、ミカサはパンを食べ始めた。

サシャの顔から、喜びの色がスッと消えた。

 

 

「……ふっ」

 

 

一部始終を見ていたカイは、静かに笑った。

 

 

 

 

 





第8話は、明日の12時に投稿します。第9話は、4/22の12時に予約投稿してます。


執筆するとき、DMM TVでアニメを見ながら書いているんですが、第3話の13分頃、エレンの頭から蒸気が出ているあの描写、あれって伏線かギャグか、どっちなんですかね?

前から疑問に思ってたんですけど……どっちだと思います?
鹿紫雲さん

本格的に原作介入を開始するのはどのタイミングが良いと思います?アンケートは、今回含めて3回ほど実施します。2回目は、第一回のアンケートにおける上位1位から10位で投票。第3回は、第2回の上位1位から3位で決選投票です。介入時期を作者に委ねる場合、(19)と(20)に投票してください

  • ①57回壁外調査 女型を先制攻撃
  • ②57回壁外調査 女型によるカイ先制攻撃
  • ③57回壁外調査 リヴァイ班と共闘
  • ④ストヘス区 女型本体を生身で拘束成功
  • ⑤ウトガルド城 ユミル巨人化と共に大暴れ
  • ⑥ローゼ壁上 鎧と超大型に瀕死
  • ⑦エレン奪還作戦 ユミルは未定
  • ⑧王政編 リヴァイと共にケニー戦
  • ⑨王政編 礼拝堂で大暴れ
  • ⑩王政編 地上のロッド巨人を細切れ
  • ⑪王政編 反転術式でケニーを治癒
  • ⑫マリア 区内で鎧、超大型と交戦
  • ⑬マリア 区外で獣と交戦するだけ
  • ⑭マリア 特攻時、領域展開
  • ⑮マリア エルヴィンやアルミンを反転治癒
  • ⑯グリシャの手記と共に、呪術公開
  • ⑰イェレナの思惑阻止
  • ⑱マーレ襲撃で大暴れ
  • ⑲黒閃と反転術式を、①から⑥の間で会得
  • ⑳領域展開を①から⑪の間に会得
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。