850年のある日。いつものように一人で食事を取り、夕食を早めに食べ終わると、そそくさと食堂を後にして森の奥へと向かう。
教官へは、食後の運動だと言い訳をして許可を貰っている。問題行動が無く、規律正しい訓練兵として過ごしてきた御蔭だ。
森深くへと歩みを進める。大きな音が響いても訓練兵や教官たちに聞こえないような、それぐらいの距離だ。
そして、問題無い距離まで進んだところで、カイは式神を顕現させる。最初は二匹の玉犬である。
そして、玉犬を顕現させた状態で、脱兎を顕現させる。
二種類の式神を同時顕現させることは、呪力消費も然ることながら、精密な呪力操作も要求される。
呪力を身体に纏わせる生活を送り続けたとは言え、呪力操作のレベルは明確に異なる。
カイは、自分を見つめる二匹の玉犬と一匹の脱兎を見た。
(安定している。訓練兵になる前には出来ていたから、後は伸ばすだけだったな)
カイは、式神を満足気に撫で回す。目を細めて、玉犬と脱兎は撫でられている。
(二種類の同時顕現は、もう問題無い。となれば、次だ)
カイは、両手を交差させる。
「鵺」
影から、一体の鳥が出てくる。ドクロのような仮面を着けた鳥だ。鵺は空を飛ばず、影から出てきた地点で待機している。
(呪力消費は、さして問題にならない。天与呪縛によってバカみたいに増えてるからな。けど、呪力操作がヤバい!)
カイの脳は、次第に熱を帯び始めた。
(同時顕現数を増やす度に、呪力操作に求められる精密度が異常な程高くなっている!)
カイは一分程度、鵺、玉犬、脱兎の同時顕現を継続していたが、限界を感じて全ての式神を解除した。
式神が影へ戻ると同時に、カイは地面に仰向きに倒れた。
(同時顕現できる数が増えれば、戦術の幅が広がる。満象合わせて同時に4体を10分間継続して顕現させることが、当面の目標其の一)
『御厨子』は、破壊の側面が強い。そのため、1年に数回であれば良いが、何度も使用して辺りを破壊し続けると、そこから要らぬ事態を招く可能性がある。
下手に問題を作らず、後回しにした『十種影法術』の水準を上げることに注力した方が良いと判断し、『この時間』では十種を中心に使用していた。
呼吸を整え、脳に酸素を生き渡らせる。
呪力を練り直し、立ち上がる。
(当面の目標其の二、結界術)
カイは、空を見上げる。段々と暗くなってくるのが分かる。まだ就寝時間ではなく、少し余裕がある。だが、一日に設けられる自由な時間、『呪術』に費やせる貴重な時間だ。一分一秒たりとも無駄には出来ない。
(『御厨子』と『十種影法術』の領域は共に、恐らく『閉じない領域』だ。明言はされていないが、『胎蔵遍野』とも共通して、中央にオブジェがある。それに、レジィ戦で伏黒の台詞を考えるに、可能性は否定できない)
カイは『御厨子』で果実を刈り取ると、そのまま食べ始める。支給された食料では、到底腹が満たされないからだ。
836年から845年の間に集めた食料は、845年の壁が破られた日から850年の間に消費している。補給する時間的余裕も、壁内の食料物資に余裕も無く、そのまま無くなった。
食料以外の物資に関しては、寝所や洞窟の中に隠している。
アニとの格闘で『縛り』を使えたのも、その数日前に食べ尽くしたことが要因であった。
(とは言え、『領域』とは畢竟、生得領域を具現化すること。俺の生得領域が原作キャラクターと異なれば、術式が同じでも領域だけ異なる場合も想定できる。……まあ、後で考えよう。結界術を習得すれば、呪術の鍛錬に専念できる空間を作成できる。そうすれば、効率的に成長できるだろ)
カイは、己の拳へと目を向ける。力を入れては脱力させることを繰り返し、それに合わせて呪力を流す量を変える。
(当面の目標其の三、『黒閃』と『反転術式』。全くもって到達できる気配がしない上、そこに辿り着けそうな場面も無さそうだな。トロスト区、巨大樹の森、王政編、ウォールマリア奪還作戦、マーレ編、この辺りが主要な戦闘となるだろう。だが、それらに介入する、しかも『黒閃』を経験し、『反転術式』を会得出来るほどに継戦する場合、確実に原作展開が壊れる)
原作へと介入し、その流れを大きく変えることにカイが反対する理由は大きく分けて二つ。
一つ目、原作における最終的な結末は、原作だからこそのものであるため。あの結末は、あの結末である必要がある。少なくとも、エレンの同期たちが、エルディアへの怨嗟で殺される事態は回避できる。それを無理矢理改変しようとした場合、未来エレンや始祖ユミルの妨害が考えられる。改変した後の世界をどうするか、と言ったことも考えていない。
そして二つ目、『縛り』に利用できなくなるため。『呪術』の開示だけでなく、『原作知識』の開示という形で『縛り』を設けられる。『原作知識』とは、即ち『未来』である。何か一つ『原作知識』を開示するだけで未来が変わる可能性がある。つまり、『縛り』の代償としては大きなもの。ただし、これは『原作知識』が『未来』として成立していることが前提だ。それを崩すのは避けたい。
カイは今後の動きをシミュレートし、それによって何が変わり、誰が影響を受け、未来がどのように紡がれるかを考える。あらゆる場合をシミュレートして、望ましい選択は何か考えるが、答えは出ない。
思考を巡らせながらも、結界と呪力操作の練習は欠かさない。とにかく強く、ひたすら前へ。そのためにも、鍛錬に専念できるように行動方針を確定させたいが、かえって頭を悩ませるタネが増えるだけだった。
(……もう暗くなってきたな。そろそろ規定の時刻だろう。帰らなければ)
式神と、僅かに展開した結界を解除し、その場を後にする。
そして、850年。訓練兵219名が、卒業にこぎつけた。
さて、第十話でトロスト区攻防戦です。
展開が遅い……。すみませんね、書き方のクセみたいなもので……
取り敢えず、トロスト区攻防戦で少し大暴れします。でないと『呪術は?』となるのでね。
それに、迫りくる巨人を『解』で細切れにしまくって、万象で押しつぶす描写をしたい!
第10話は4/23(木曜日)に、第11話は金曜日に投稿します。
アンケート第2回です。見た感じ、半分程度の方が、「私に委任する」という立場のようで……。この様子だと、3回目は不必要ぽいかな?取り敢えず、また好きな所に投票してください。後、恋愛要素って要ります?「作者に展開は委任する」立場の方は、①と②に投票してください。原作の展開的に、ヒロインはユミルやクリスタになるかも。
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①恋愛要素は必要
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