青春を求めて実力主義の教室へ   作:リリリリら

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十六話

高度育成高等学校に入学して初めての大きな関門、一学期中間テストの当日がやってきた。

 

「よっしゃあ! 今日のテスト、もらったぜ!」

 

「櫛田ちゃんマジで女神! 過去問様様だぜ!」

 

朝の1年Dクラスの教室は、かつての絶望的な空気が嘘のように、活気と自信に満ち溢れていた。

 

無理もない。櫛田桔梗が三年生の先輩から手に入れてきた『去年の過去問』。それが今回のテスト問題と全く同じであるという確信を得た生徒たちは、ただその答えを丸暗記するという作業だけで、試験前日を乗り切ったのだ。

 

俺――呉 刃叉羅も、自分の席で静かにシャーペンを回しながら、周囲の浮かれた空気を眺めていた。

 

(まあ、確かにこの学校のシステムを逆手に取った見事な抜け道だ)

 

テスト本番。

配られた問題用紙に目を通すと、確かに櫛田が配った過去問と一言一句、数字の一つに至るまで同じ問題が並んでいた。

 

俺は暗殺者として鍛え上げた記憶力で、すでに過去問の解答はすべて頭に入っている。だが、ここで満点を取ってしまえば不自然に目立つ可能性がある。

俺は周囲の生徒のペンが走る音を聞きながら、頭の中で瞬時に計算を行い、『75点から80点の間』に収まるように、意図的にいくつかの問題を間違えて解答用紙を埋めていった。

 

一日目、二日目とテストは順調に進み、Dクラスの生徒たちは休み時間のたびに「あの問題、過去問通りだったな!」「余裕っしょ!」と歓喜の声を上げていた。

 

そして、テスト最終日。

残すは最後の一科目、『英語』のテストのみとなった、その直前の休み時間のことだ。

 

「おい……マジかよ。嘘だろ……」

 

教室の後方から、悲鳴のような声が聞こえてきた。

声の主は、赤髪の不良・須藤健だった。彼は顔面を蒼白にさせ、櫛田から配られた英語の過去問プリントを、震える手で握りしめていた。

 

「どうしたんだよ須藤。英語がどうかしたか?」

 

斜め前の席の池寛治が、不思議そうに声をかける。

 

「やべぇ……昨日の夜、数学と社会の暗記で力尽きて、寝落ちしちまったんだよ! 英語だけ、過去問の答えを覚えきれてねぇ……ッ!」

 

須藤は頭を抱え、プリントを睨みつけながらギリギリと歯ぎしりをした。

 

「はぁ!? お前、バカかよ! あと十分でテスト始まっちゃうぞ!」

 

「分かってるよ! だから今必死に詰め込んでんだろうが! くそっ、be動詞ってなんだっけ!?」

 

パニックに陥り、意味不明なことを叫びながらプリントに齧り付く須藤。

俺はその様子を遠巻きに眺めながら、内心で深く、深く呆れ果てていた。

 

(……あれだけ完璧なお膳立てをされておいて、寝落ちして覚えられなかった?)

 

暗殺の世界で言えば、標的の行動ルートも、警備の穴も、逃走経路もすべて教えられているのに、前日に酒を飲んで寝過ごし、標的に逃げられるようなものだ。

 

プロ失格以前の問題。生物としての生存本能が欠落しているとしか思えない。

 

(今回たまたま過去問という抜け道があったから助かっているようなものの……毎回そんな手段が使えるわけがない。あいつは、遅かれ早かれ期末テストあたりで退学になるだろうな)

 

冷酷な事実だが、それが実力至上主義のこの学校のルールだ。自分で自分の首を絞める無能は、淘汰される運命にある。

 

「貸しなさい、須藤くん」

 

ふと、凛とした声が響いた。

見ると、孤高の美少女・堀北鈴音が、ため息をつきながら須藤の席へと歩み寄っていた。

 

「ほ、堀北……」

 

「今からすべてを丸暗記するのは不可能よ。いいから、私が赤ペンで印をつける箇所だけを、この数分間で頭に叩き込みなさい。配点の高い長文読解の答えと、出題確率の高い文法問題のパターンよ」

 

堀北は須藤の手からプリントをひったくると、素早い動きで要点だけを抽出していく。

 

「お、おう……サンキュー」

 

Aクラスに上がるため、絶対に退学者を出したくない堀北の執念だ。

ギリギリまで足掻く彼らを眺めながら、俺は静かにチャイムが鳴るのを待った。

 

そして、すべてのテストが終了した。

 

それから数日後、六月に入りホームルームでテストの結果が発表される。

教壇に立った担任の茶柱佐枝は、いつものように冷徹な表情で、手にした一枚の紙を黒板に貼り出した。

 

それは、今回の中間テストの『結果一覧表』だった。

 

「お前たちのテスト結果を開示する。確認しろ」

 

生徒たちは一斉に黒板に群がった。

そこには、過去問の効果で劇的に跳ね上がった、生徒たちの高得点がズラリと並んでいた。

 

池や山内も、全科目で60点以上の点数を叩き出しており、「よっしゃあああ! 赤点回避!」と歓喜の声を上げている。

 

俺の点数も、予定通り全科目75点前後。平均点からするともう少し点を取っても良かったかもしれないが、まあいいだろう。

 

そして、問題の須藤の点数は――。

 

『須藤健:英語 39点』

 

「……よっしゃああああああっ!!」

 

自分の点数を見た須藤が、両拳を天に突き上げて雄叫びを上げた。

 

「あぶねえええ! マジでギリギリだったけど、32点超えたぜ!! 堀北、お前が教えてくれたところが出たおかげだ! サンキューな!」

 

須藤は満面の笑みで、堀北の方を向いて親指を立てた。

 

クラス全体が「よかったな須藤!」「これで退学者ゼロだ!」と安堵と喜びの空気に包まれる。

 

だが。

 

「……何を喜んでいるんだ、須藤」

 

氷のように冷たい、茶柱先生の声が、教室の熱気を一瞬で凍らせた。

 

「え?」

 

須藤が間抜けな声を出す。

 

「お前は『赤点』だ。今回のテストの規則に則り、お前には退学処分が下される」

 

「は、はぁ!?」

 

須藤が血相を変えて教壇に詰め寄った。

 

「ふざけんなよ先生! 俺の英語は39点だぞ!? 赤点は32点以下だって、小テストの時に先生が自分で言ったじゃねえか!」

 

「そうだそうだ! 基準はクリアしてるはずだ!」

 

池たちも加勢する。

しかし、茶柱は微塵も揺るがず、冷酷な笑みを浮かべた。

 

「私がいつ『中間テストの赤点も32点だ』と言った?」

 

「え……?」

 

「あの32点という数字は、あくまであの時の『小テスト』におけるラインに過ぎない。教えてやろう。この学校における定期試験の赤点の基準は、『クラス平均点の半分以下』だ」

 

「――――なっ」

 

教室中の空気が、ピタリと止まった。

 

「今回、お前たちは何らかの手段を用いて、劇的に点数を上げた。その結果、この英語のテストにおけるDクラスの平均点は、79.6点となった」

 

茶柱は赤いチョークを手に取り、黒板に書かれた須藤の『39』という数字に、無慈悲な赤い斜線を引いた。

 

「79.6の半分は、39.8。四捨五入して、今回の英語の赤点ラインは『40点』となる。……39点のお前は、たった1点足りずに、見事赤点というわけだ」

 

「た、たった1点……? 俺が、退学……?」

 

「そうだ。ルールの厳格さが、この高度育成高等学校の実力至上主義だ。須藤、ホームルームが終わったら職員室に来い。退学の手続きを始める」

 

茶柱は淡々と告げ、それ以上何も言うことなく教室を退出していった。

 

残された教室は、お通夜のような……いや、それ以上の深い絶望の淵に沈み込んでいた。

 

「嘘だろ……須藤が、退学……?」

 

「せっかくみんなで頑張ったのに……」

 

女子生徒の何人かが、ショックで口元を覆う。

須藤本人は、信じられない現実を前に、膝から崩れ落ち、ただ虚空を見つめていた。

 

(……平均点の半分。やはり、過去問で全体が底上げされたことが、逆に赤点ラインを引き上げる罠になったか)

 

俺は腕を組み、静かに状況を分析していた。

これが学校側の仕掛けた悪意だ。事前に赤点の条件を明言せず、過去問に頼りきった生徒たちの足元をすくう強烈なしっぺ返し。

自業自得といえばそれまでだが。

 

「……諦めるのはまだ早いよ」

 

重い沈黙を破り、立ち上がったのは、やはり平田洋介だった。

 

「先生は職員室に来いと言った。手続きが完了するまでは、まだ須藤くんはDクラスの生徒だ。……何か、何か救える方法があるはずだ! みんな、どんな些細なことでもいい、意見を出してくれないか!」

 

平田の必死の呼びかけ。

しかし、こればかりは生徒の力でどうにかなる問題ではない。ルールは絶対なのだ。

 

誰も打開策を見出せず、ただ俯くことしかできない。

その時だった。

ガタッ。

俺の後ろの席の、綾小路清隆が静かに立ち上がった。

 

「……どこに行くんだ、綾小路?」

 

俺が声をかけると、綾小路は相変わらずの無表情で振り返った。

 

「少し、トイレに行ってくる」

 

「そうか」

 

こんな時にトイレとは、空気の読めない奴だ。

だが、彼が教室の前方のドアから出て行った数十秒後。

今度は堀北鈴音が、弾かれたように立ち上がり、綾小路の後を追うように小走りで教室を出て行った。

 

(……ほう?)

 

俺の暗殺者としての勘が、微かな違和感を捉えた。

あの二人が、この絶望的な状況で、ただトイレに行くだけのはずがない。何か、裏で動くつもりか。

 

それから十数分後。

教室が依然として葬式のような空気のまま、須藤が重い足取りで職員室に向かおうとした、まさにその時。

 

ガラッ。

教室のドアが開き、堀北と綾小路が戻ってきた。

堀北は真っ直ぐに教壇の前に進み出ると、教室中を見渡し、凛とした声で告げた。

 

「みんな、聞いて。……須藤くんの赤点は、取り消されたわ」

 

「――――えっ!?」

 

全員の目が点になった。

 

「と、取り消されたって……マジかよ堀北!?」

 

「退学にならないの!?」

 

「ええ。彼には、明日からもこのDクラスで足手まといとして過ごしてもらうことになるわ」

 

堀北がそう断言すると、教室は今日一番の爆発的な歓声に包まれた。

須藤は崩れ落ちて号泣し、池や山内が彼に抱きつく。櫛田も嬉し泣きをしながら、平田とハイタッチを交わしていた。

 

「堀北さん! すっごい! どうやって取り消したの!?」

 

「先生にお願いしてくれたの!?」

 

クラスメイトたちが堀北に詰め寄るが、彼女はフイッと視線を逸らし、

 

「……少し、先生と交渉しただけよ。大したことじゃないわ」

 

と、誤魔化すように言って自分の席に戻ってしまった。後ろを歩いていた綾小路も、我関せずといった態度で席に着く。

 

(……なるほどな)

 

俺は、歓喜の輪から少し離れた場所で、静かにあの二人の背中を見つめていた。

 

退学を取り消す交渉。

この学校で、交渉の材料になるものといえば『ポイント』しかない。

退学を取り消す権利を買ったのか? いや、それはおかしい。今のあの二人が持っている程度のポイントで、一人の人間の未来が買えるとは思えない。退学を取り消すとなると金額のケタが違うはずだ。

 

(1点足りなくて、赤点。……そういうことか)

 

俺の脳内で、パズルのピースがカチリと嵌まった。

 

(点数を、1点分だけ『買った』んだな)

 

退学を免除する権利ではなく、テストの点数そのものを売買する。

「ポイントで買えないものはない」という学校のルールを逆手に取った、見事な発想だ。

 

おそらく、綾小路がその抜け道に気づき、堀北を使って茶柱先生に交渉を持ちかけたのだろう。1点分の点数なら、彼らの持ち合わせのポイントでも十分に支払える額だったということだろう。

 

(なかなかいい発想だな、あいつら……特に、綾小路)

 

俺は静かに感心していた。

冷徹な状況判断能力と、ルールの隙間を突く発想力。やはりあいつは、ただの影の薄い高校生ではない。

 

まあ、俺の『平穏』を脅かさない限りは、優秀なクラスメイトがいるのは歓迎すべきことだが。

 

「……呉くん!」

 

不意に、明るい声で呼ばれて思考から引き戻された。

見ると、平田が満面の笑みでこちらへ歩いてくるところだった。

 

「本当によかったね! 須藤くんが助かって!」

 

「ああ。まさに奇跡だな」

 

「うん! ……それでね、呉くん」

 

平田は少し照れ臭そうに頭を掻いた。

 

「今日まで、放課後の勉強会でずっと僕たちに協力してくれたじゃない? だから、その打ち上げというか……一緒に勉強を頑張ってきたメンバーで、ささやかなパーティーをしたいなって話になってるんだ」

 

平田の後ろには、みーちゃん、軽井沢恵、佐藤麻耶、松下千秋、井の頭心といった、勉強会に参加していた女子メンバーがズラリと並び、期待に満ちた目でこちらを見ていた。

 

「打ち上げか。……でも、お前ら今月ポイント振り込まれてないから、金欠なんじゃないのか?」

 

「うっ……そうなんだよね。だから、ケヤキモールのカフェとかには行けなくて……」

 

平田が苦笑いする。軽井沢たちも「そうなんだよねー、マジで今月カツカツでさ」としょんぼりしている。

 

「……仕方ないな」

 

俺は小さく息を吐き、立ち上がった。

 

「なら、俺の部屋でやるか? 食材の買い置きも結構あるし、俺が料理を振る舞ってやるよ。場所代もタダだしな」

 

俺がそう提案した瞬間。

 

「「「「ええええええっ!?」」」」

 

女子たちの目が、信じられないほど見開かれた。

 

「ま、マジで!? 呉くんの手料理食べられるの!?」

 

「うそっ! 呉くん料理できるって言ってたけど、本当だったんだ!」

 

「ぜひ! ぜひお願いします、呉くん……!」

 

軽井沢、佐藤、松下、みーちゃんが、猛烈な勢いで食いついてきた。

平田も目を輝かせている。

 

「本当にいいの、呉くん!? 買い出しとか、僕たちも手伝うよ!」

 

「気にするな。ガッツリしたパーティー料理を作ってやるから、腹空かせて来いよ」

 

こうして、中間テスト終了の放課後は、急遽『刃叉羅特製・勉強会打ち上げパーティー』へと移行することになった。

 

俺の割り当てられている男子寮の個室。

一人暮らしには十分すぎる広さの部屋に、平田と五人の女子たちが上がり込んでいた。

 

「おじゃましまーす! うわ、男の子の部屋って感じ!」

 

「すごく綺麗に片付いてるね。呉くん、マメなんだ」

 

軽井沢や松下が、興味津々で部屋を見回している。俺は一族の郷での癖で、常に部屋は最低限のものしか置かず、戦闘の邪魔になるような物は排除してあるからだ。

 

「適当に座っててくれ。すぐ作るから」

 

俺はエプロンを締め、キッチンに立った。

冷蔵庫の中身を確認する。安い時に買い溜めしておいた大量の鶏肉、ジャガイモ、トマト、チーズ、ローストビーフ用の牛もも肉……。

十分だ。高校生の胃袋を満たす、見た目も華やかなパーティーメニューを作ってやる。

 

「ねえねえ呉くん、何作るのー?」

 

カウンター越しに、佐藤が覗き込んでくる。

 

「今日はパーティーだからな。山盛りの自家製唐揚げに、揚げたてのフライドポテト。ポテトには明太マヨとチーズの二種類のディップソースをつける。それから、トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼに、ローストビーフのカルパッチョ風。あとはガーリックトーストと、生地から作った特大のピザだ」

 

「うわぁ……! 名前だけでヤバい! 完全にホテルのビュッフェじゃん!」

 

「呉くん、包丁さばきすごい……! 早すぎて見えない!」

 

みーちゃんや井の頭が、俺がトマトを薄切りにするスピードを見て目を丸くしている。

暗殺の修練で培った、ミリ単位の精度で肉を切り裂く刃物さばき。それを調理に応用しているだけだが、一般人から見ればプロの料理人に見えるらしい。

 

「それにしても、呉くんってすっごい体してるのに、エプロン姿似合うよねー。ギャップ萌えってやつ?」

 

「軽井沢さん、それわかる。なんか……お父さんみたいで安心感あるよね」

 

松下の言葉に、女子たちが「わかるー!」とキャッキャと盛り上がっている。平田もニコニコしながらジュースを配ってくれていた。

 

数十分後。

 

「よし、できたぞ。冷めないうちに食ってくれ」

 

テーブルの上に、彩り豊かで湯気を立てるご馳走が次々と並べられた。

 

「いただきまーす!!」

 

全員が手を合わせ、料理に手を伸ばす。

 

「んんんっ! 唐揚げ、外サックサクで中ジューシー! 超美味しいーーーっ!」

 

「ピザのチーズ伸びるー! これ生地から作ったとか信じらんない!」

 

「ローストビーフもすっごく柔らかい……お店の味みたいだよぉ……」

 

軽井沢たち女子陣が、目を輝かせて歓声を上げた。

平田も「本当に美味しいよ、呉くん。僕、今まで食べたパーティー料理の中で一番好きかもしれない」と絶賛してくれている。

 

「ははっ、たくさん食えよ。ポテトならまだいくらでも揚げられるからな」

 

俺は自分の分のガーリックトーストをかじりながら、嬉しそうに料理を平らげていく彼らの姿を眺めた。

 

「ねえ呉くん、今度お菓子作りとかも教えてくれない?」

 

「あ、私も知りたい! 呉くんならケーキとかも絶対焼けるよね!」

 

「俺は和食やこういうのがメインだけどな。まあ、簡単なパンケーキやクッキーくらいなら教えられるぞ」

 

「やったー! じゃあ次は女子会ならぬ、呉くんの料理教室ね!」

 

賑やかな笑い声が、部屋中に響き渡る。

 

(……いいな、これ)

 

俺は炭酸飲料が入ったグラスを傾けながら、内心で深く、穏やかな感情に浸っていた。

 

もちろん、俺にとって一番の時間は、図書室でひよりと過ごす、あの静かで甘いひとときだ。彼女の隣にいる時が、一番心が落ち着くし、何よりも優先したい時間であることに変わりはない。

 

だが。

こうして、クラスメイトたちとテーブルを囲み、手作りの料理を振る舞い、他愛のない話で笑い合う。

殺し合いも、裏切りも、血の匂いも存在しない、ただの高校生としての無邪気な宴。

 

(これはこれで、悪くない。……いや、最高だな)

 

これこそが、俺が憧れていた『高校生の青春』そのものだ。

俺の作った飯を美味いと笑ってくれる仲間がいる。明日もまた、普通の日常が待っていると信じられる。

 

一族の最高傑作として育てられた暗殺者の少年は、この小さな箱庭で手に入れた温かい居場所に、心の底からの幸福を感じていた。

 

「あ、呉くんの唐揚げ、私が狙ってたのにー!」

 

「早い者勝ちだよ、軽井沢さん!」

 

賑やかな青春のパーティーの風景は、夜遅くまで、俺の部屋に温かい光を灯し続けていたのだった。

 

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