青春を求めて実力主義の教室へ   作:リリリリら

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五十一話

十二月二十一日。

二学期の終業式を目前に控えたこの時期、高度育成高等学校の敷地内は、本格的な冬の到来を告げる冷たい風に包まれていた。

空には分厚い灰色の雲が垂れ込め、吐く息は純白の煙となって空気に溶けていく。

 

だが、そんな厳しい寒さなど、今の俺――呉 刃叉羅にとっては、一ミリの苦痛でもなかった。

 

「……ふふっ。今日は一段と寒いですね、刃叉羅くん」

 

俺の隣を歩く、愛しの天使――椎名ひよりが、白いマフラーに顔を半分埋めながら、嬉しそうに俺を見上げてくる。

 

冬用のコートに身を包み、少しだけ鼻の頭を赤くしている彼女の姿は、俺の眼球に焼き付けて永久保存したいくらいの破壊力を持っていた。

 

「そうだな。でも、こうして手を繋いでれば全然寒くないだろ?」

 

俺は、自分のコートのポケットの中で、彼女の小さな手をギュッと握り直した。

 

「……はいっ。とっても温かいです」

 

ひよりが、少しだけはにかんで、俺の腕にギュッと身を寄せてくる。

 

(……最高だ。冬って最高だな)

 

俺は心の中でガッツポーズを決めながら、彼女と共に休日のケヤキモールへと向かって歩いていた。

 

今日は、ペーパーシャッフルという面倒な試験を乗り越えたご褒美としての、二人きりの甘いデートの日だ。本屋を巡り、カフェで温かいお茶を飲みながら読書を楽しむ。それ以上の極上の時間は、この世界のどこを探しても存在しない。

 

だが。

そんな俺たちの完全無欠な平和を、邪魔する『ノイズ』の気配があった。

 

「……ん?」

 

ケヤキモールへ向かう道すがら。

少し開けた広場のような場所で、異様な空気を放つ集団が、ピタリと足を止めて対峙しているのが見えた。

 

「刃叉羅くん、あそこ……」

 

ひよりも不思議そうに目を瞬かせている。

そこに集まっていたのは、三つの異なる勢力だった。

 

一つ目は、一年Dクラスのメンバーたち。

堀北鈴音、平田洋介を中心に、幸村、三宅、長谷部、佐倉といった『綾小路グループ』の面々。そして、彼らの後ろで存在感を消している無気力な影の支配者・綾小路清隆。さらに、なぜかその輪から少し外れたところで、手鏡を見ながら優雅に髪をいじっている変人・高円寺六助。

 

二つ目は、一年Cクラスの独裁者・龍園翔と、その配下である石崎、アルベルトなどの取り巻きたち。

 

そして三つ目は、一年Aクラスの女王・坂柳有栖と、彼女を護衛するように控える神室真澄、鬼頭、橋本といった実力者たち。

 

「……何してんだ、こいつら」

 

俺は、少し離れた場所からその異常な空間を観察し、数秒で現状の『盤面』を理解した。

 

(なるほど。龍園の奴、いよいよ本格的にDクラスの『X』を炙り出しにかかってるんだな)

 

龍園は、Dクラスの主要メンバーをここで待ち伏せ(あるいは呼び出し)て、プレッシャーをかけ、『X』の正体を特定しようとしていたのだろう。

 

そこへ、偶然か意図的か、Aクラスの坂柳たちが通りかかり、面白半分でちょっかいを出し始めた、といったところか。

 

水面下で進んでいた各クラスの権力闘争が、ついに表舞台で激突しようとしているのだ。

 

「ああ、なんか面倒なことになってるみたいだな。……まあ、俺たちには関係ないから素通りしてもいいんだが」

 

俺がそう言って横を通り抜けようとした、その時だった。

 

「……ふっ。私はもう、いいかな?」

 

Dクラスの集団の中から、高円寺六助が、全く空気を読まない優雅な足取りで、輪から抜け出そうとした。

 

「私の美しい時間を、これ以上無駄にするわけにはいかないのでね。……では、失礼するよ。ドラゴンボーイ」

 

「――――」

 

高円寺の口から飛び出した、龍園を指す『ドラゴンボーイ』という謎すぎるネーミング。

 

その瞬間、張り詰めていた広場の空気が、ピシッとひび割れるような音がした。

 

「……ふふっ。ドラゴンボーイ、ですか。彼にぴったりの、可愛らしい呼び名ですね」

 

すかさず、Aクラスの坂柳有栖が、杖を両手で持ちながら、龍園を小馬鹿にするようにクスクスと笑い始めた。

 

すると高円寺は、歩みを止めずに流し目で坂柳を一瞥し、平然と言い放った。

 

「そこの『リトルガール』の言う通りだよ。君のその粗野な振る舞いは、まさに思春期の少年そのものだからね」

 

「…………は?」

 

その瞬間。

坂柳有栖の、常に余裕に満ちていた笑みが、ピタリと凍りついた。

 

「リトルガール……? 貴方、英語をご存知ないのですか? リトルガールとは、直訳すれば『幼女』という意味ですよ」

 

坂柳の額に、明確な『ピキッ』という怒りの青筋が浮かんだのが見えた。

 

小柄で発育の遅い身体的特徴をコンプレックスに思っている(かどうかは定かではないが、プライドの極めて高い)彼女にとって、高円寺のその一言は、完全な地雷だったらしい。

 

背後に控える鬼頭や橋本の纏う空気が、一気に殺気立った。

 

だが、高円寺はそんなAクラスの殺気などどこ吹く風。

彼は、自分の前髪をかき上げながら、彫像のように美しい顔で、無茶苦茶な持論を展開した。

 

「ふっ。それを決めるのは、この私だ」

 

高円寺は、坂柳を上から見下ろし、堂々と言い放った。

 

「私が君をレディと呼ぶのは、君がその名に相応しい『年齢』と『体』になってからだ。それまでは、君は私の前ではリトルガールでしかないのだよ。ハッハッハッ!」

 

「――――――――」

 

広場を支配する、圧倒的な静寂。

 

龍園の暴力的なプレッシャーも、坂柳の知的な威圧感も。高円寺六助という規格外のナルシストが放つ、究極の『自己中理論』の前に、完全に粉砕されてしまったのだ。

 

「……っ」

「……くくっ」

「……ぶっ、ははははっ!!」

 

俺は、たまらず吹き出してしまった。

 

ダメだ。面白すぎる。

暗殺者としてどんな修羅場でもポーカーフェイスを貫いてきた俺だが、この高円寺の鋼のメンタルと、完全にブチギレてワナワナと震えている坂柳のコントのようなやり取りは、俺のツボのど真ん中を的確に撃ち抜いてきた。

 

「あはははっ! ひぃっ、腹いてぇ……っ! さすがは高円寺だ、お前は本当に天才だよ!!」

 

俺の腹の底からの大爆笑が、静まり返っていた広場に響き渡った。

 

その瞬間、Dクラス、Cクラス、Aクラスの全員の視線が、一斉にこちらへと向けられた。

 

「あ、刃叉羅くん……」

 

隣でひよりが、少しだけ困ったようにオロオロしている。

 

俺の大笑いを聞いた高円寺は、足を止め、優雅にこちらを振り返った。

そして、フッと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふふっ。君のような存在に褒められるとは、光栄だねえ。……では、今度こそアデュー」

 

高円寺は、俺にだけ通じる奇妙なリスペクトを残し、今度こそケヤキモールの方へと去っていってしまった。

 

残されたのは、怒りのやり場を失った坂柳と。

その様子を見て、ニタニタと邪悪な笑みを浮かべる龍園翔だった。

 

「……呉くん? 一体、何が面白いのですか?」

 

坂柳が、杖を持つ手を震わせながら、般若のような冷たい笑みを浮かべてこちらを睨みつけてきた。

その声には、明確な怒りが込められている。

 

「ごめんごめん」

 

俺は、笑い涙を指で拭いながら、空いている方の手を軽く上げて謝罪のポーズをとった。

 

「あまりにも面白いショーだったもんで、ついな。……見学してるだけだから、続けてどうぞ」

 

俺が飄々とした態度で言うと、坂柳はチッと小さく舌打ちをして、再び視線を龍園へと戻した。

 

「……ククク。言われっぱなしじゃねえか、リトルガール」

 

龍園は、坂柳に向かって一歩踏み出し、先ほど高円寺が使ったその呼び名を、意図的に、そして最高に人を小馬鹿にしたトーンで投げつけた。

 

「てめえのその貧相な身体じゃ、あの変人に相手にされないのも無理はねえな。せいぜい、家でミルクでも飲んで寝てな」

 

「――――」

 

坂柳の瞳から、完全に光が消えた。

彼女は、杖をつきながら、ゆっくりと龍園の方へと向き直った。

 

「……ふふっ。そうですか、ドラゴンボーイさん」

 

坂柳もまた、龍園の怒りのスイッチであるその呼び名を、最高の皮肉を込めて打ち返した。

 

「せいぜい、その図体に見合った知能を身につけることですね。可哀想なトカゲさん」

 

「…………あ?」

 

龍園の顔から、薄ら笑いが完全に消え去った。

彼の周囲の空気が、一気にドス黒い暴力のオーラへと変換される。

 

「……次、その名で俺のことを呼んでみろ」

 

龍園は、坂柳を見下ろし、本気の殺気を込めて低い声で唸った。

 

「マジで殺すぜ?」

 

一触即発。

龍園の背後にいるアルベルトが拳を握り、坂柳の背後にいる鬼頭と橋本が臨戦態勢に入る。

 

(……やれやれ)

 

俺は、小さくため息をつき、ひよりと繋いでいた手を一度だけ離した。

 

「ひより、少しだけ待っててくれ」

 

「……はい」

 

俺は、一歩だけ。

対峙する龍園と坂柳の間に向かって、足を踏み出した。

 

「――おいおい、ドラゴンボーイ」

 

「あ?」

 

龍園が、鋭い視線をこちらに向ける。

俺は、ポケットに手を入れたまま、極めて面倒くさそうな声で、しかし明確な『警告』を込めて言い放った。

 

「そこのお嬢さんに危害を加えるのは、なしだぜ」

 

「……なんだと?」

 

龍園が、不機嫌そうに眉をひそめる。

 

「てめえ、Aクラスの肩を持つ気か? 事なかれ主義はどうした」

 

「肩を持ってるわけじゃない。こっちにも、色々と『事情』があるんでね」 

 

俺がそう言った瞬間。

 

俺の体内から、極限まで圧縮された『暗殺者としての純粋な殺気』が、ピンポイントで龍園、そして彼を取り巻くCクラスの生徒たちに向かって放たれた。

 

「――――ッ!!」

 

龍園の顔が、一瞬だけ微かに強張った。

彼の本能が、目の前にいる男が、自分たちの命を瞬時に刈り取ることのできる『本物のバケモノ』であることを察知したのだ。

 

「……そこのお嬢さんに指一本でも触れたら、お前がお嬢さんを殺す前に、俺がお前の心臓を抜き取ってやる」 

 

「……チッ」

 

数秒の沈黙の後。

龍園は、大きく舌打ちをし、坂柳から視線を外した。

今の盤面で、俺という規格外の暴力を敵に回すのは、彼にとっても得策ではないと判断したのだろう。

 

「……まあいい。今日のところはこれで引いてやる」

 

龍園は、ポケットに手を突っ込み、最後にDクラスの堀北鈴音を鋭く睨みつけた。

 

「鈴音。……今回で、かなりお前の裏にいる『X』が絞れたぜ。せいぜい、震えて眠ることだな」

 

龍園は、その不気味な捨て台詞を残し、石崎たちを連れて、広場から立ち去っていった。

 

俺は、龍園の背中を見送りながら、すぐに全身の殺気を霧散させた。

 

「ふぅ。終わった終わった」

 

俺は、いつもの爽やかな男子高校生の笑顔に戻り、ひよりの元へと歩み寄ろうとした。

 

だが。

 

「――呉くん」

 

背後から、静かな、しかし確かな知的好奇心を孕んだ声がかけられた。

 

坂柳有栖が、杖をつきながらこちらを見つめていた。

 

「先程、貴方がおっしゃっていた『事情』とは、何ですか?」

 

坂柳が、俺の目を真っ直ぐに射抜いて尋ねてくる。

 

「なぜ、貴方が私を庇うような真似をしたのですか? 貴方と私との間に、そのような接点はないはずですが」

 

俺の異常な強さと、自分を守った行動。

Aクラスの天才である彼女の頭脳は、その二つのピースから、俺のバックボーンに隠された何らかの『真実』を導き出そうと回転しているのだろう。

俺は、彼女のその問いに対して、フッと優しく、敬意を込めた笑みを浮かべた。

 

「……高校を卒業したら、あんたの『父親』に聞いてみな。答えてくれるかは知らんがな」

 

「父に……?」

 

坂柳が、突然出てきた父親というワードに、微かに目を見開く。

 

「ああ。……あの人は、俺にとっての最高の大恩人だからな。あの人のおかげで、俺は世界で一番大切な彼女に出会えたんだ」

 

俺は、隣にいるひよりを優しく見つめながら、言葉を続けた。

 

「だから、その大恩人の大事な娘さんに、危害を加えさせるわけにはいかないのさ」

 

俺が本心からの感謝を告げると、坂柳はわずかに目元を和らげ、しかしその奥にはさらに深い興味の光を宿した。

 

「……なるほど。そういうことでしたか」

 

「じゃあな、お嬢さん。夜道の一人歩きには気をつけるんだぞ」

 

俺は、彼女に軽く手を振り、それからDクラスの面々に向かっても「じゃあな、お前らも風邪ひくなよ」と挨拶をした。

 

「行こうか、ひより」

 

「はいっ」

 

俺は、愛しい天使の手を再びギュッと握り、ケヤキモールへと向けて歩き出した。

 

俺とひよりが去った後の、広場。

凍りつくような冷風が吹き抜ける中、残されたDクラスの面々は、先ほどの呉刃叉羅が放った異常なプレッシャーの余韻から、まだ完全に抜け出せずにいた。

 

「……綾小路くん」

 

堀北鈴音が、微かに声を震わせながら、背後にいる綾小路清隆に話しかけた。

 

「今の呉くんのプレッシャー……感じたかしら? まるで、見えない巨大な刃物を突きつけられているような……」

 

「ああ。ライオンの檻に放り込まれた気分だったな」

 

綾小路は、相変わらずの無表情で淡々と答えた。

 

「彼は……ただの身体能力が高い生徒じゃない。さっきの話が本当なら、この学校の理事長と直接的な繋がりがあるということよ。……龍園くんの狙う『X』の存在も含めて、私たちの周囲には、爆弾が多すぎるわ」

 

堀北が、深刻な顔で眉間を揉む。

 

綾小路は、そんな堀北の言葉を聞き流しながら、内心で冷ややかに盤面を見つめていた。

 

(龍園の包囲網は、確実に俺に近づいている。……そして、呉刃叉羅という一切の常識が通用しないジョーカー……)

 

 

一方。

Aクラスの面々を従えた坂柳有栖は、呉刃叉羅と椎名ひよりが消えていったケヤキモールの方角を、いつまでも見つめていた。

 

(……父が、恩人……)

 

坂柳の優秀な頭脳が、猛烈な速度で情報を処理していく。

呉刃叉羅。彼のあの常軌を逸した身体能力と殺気は、ホワイトルームの産物ではない。しかし、裏社会や国家権力に関わる何らかの『特別な血筋』であることは間違いない。

 

そして、彼が通常の入学プロセスではなく、父である理事長の『特例』によってこの学校に招き入れられた存在であること。

 

(なるほど。私が理事長の娘だからこそ、彼はわざわざ龍園くんの前に出て私を守った……。ですが)

 

坂柳の脳裏に、先ほどまで刃叉羅が何よりも大切そうに手を握っていた、あの銀髪の少女――椎名ひよりの姿が思い返される。

 

(私がいくら『恩人の娘』といえど、もしあの椎名さんに少しでも手を出せば、彼が私にどのような報復に出るか分かりませんね。……ええ、椎名さんにだけは、絶対に手を出さないようにしておきましょう)

 

自らの身の安全と彼を敵に回すリスクを完璧に計算に入れた上で。

 

(ふふっ……ふふふふっ)

 

坂柳は、寒空の下で、堪えきれないように口元を扇子で隠して笑った。

 

(綾小路清隆と、呉刃叉羅。……この学校は、本当に面白い箱庭ですね)

 

彼女の知的好奇心は、これまでにないほどに満たされ、そして激しく燃え上がっていた。

 

 

そして、ケヤキモールに到着した俺たちは、先ほどの騒動など完全に記憶の彼方へと追いやり、最高のデートを再開した。

 

まずは、お目当ての大型書店へ。

 

「あ、刃叉羅くん! これ、この前お話ししていたシリーズの最新刊です!」

 

ひよりが、ミステリー小説のコーナーで目を輝かせながら本を手に取る。

 

「お、本当だ。じゃあ、俺の分と二冊買おうぜ。読み終わったら感想言い合えるしな」

 

「はいっ! ……あっ、こっちの画集も綺麗ですね」

 

本に囲まれた空間で、ひよりの表情はコロコロと変わり、そのどれもが愛おしくてたまらない。

 

俺たちは、お互いに気になった本を数冊ずつ購入し、モール内の静かなカフェへと移動した。

 

温かいコーヒーと、ひよりのお気に入りのロイヤルミルクティー。

そして、甘いシフォンケーキをテーブルの真ん中に置く。

外の寒さとは無縁の、暖房の効いた心地よい空間。

俺たちは、向かい合って座り、買ってきたばかりの本のページを開いた。

 

「…………」

 

「…………」

 

お互いの存在をすぐ近くに感じながら、同じ空間で、それぞれの物語の世界へと没入していく。

 

時折、ひよりが「ふふっ」と本を読みながら小さな笑い声を漏らしたり、俺がコーヒーを飲むタイミングで視線が合ったりすると、自然と優しい微笑みが交わされる。

 

「……刃叉羅くん」

 

ふと、ひよりが本から顔を上げ、俺を呼んだ。

 

「ん? どうした?」

 

「いえ……こうして暖かい場所で、刃叉羅くんと一緒に美味しい紅茶を飲んで、大好きな本を読めるのが……なんだかすごく幸せだなって、改めて思いまして」

 

ひよりが、少しだけはにかむように頬を染めながら、ふわりと微笑む。

 

激しい戦闘や殺し合いも、クラス間のドロドロとした探り合いも、このテーブルには一切存在しない。あるのはただ、好きな女の子と美味しいものを飲みながら過ごす、ありふれた、けれど俺にとっては何よりも尊い日常だけだ。

 

「……そうだな。俺も、今が一番幸せだよ。このまま時間が止まればいいのになんて、本気で思っちまうくらいにはな」

 

俺が照れ隠しもせずに素直な気持ちを口にすると、ひよりは「ふふっ、私も同じ気持ちです」と、とろけるような笑顔を見せてくれた。

 

暗殺者の少年は、冷たい冬の街角で、ただ一人の天使と共に。

インクの香りと甘いミルクティーの湯気に包まれながら、この上なく穏やかで、幸福な愛の時間を紡ぎ続けるのだった。

 

 

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