青春を求めて実力主義の教室へ   作:リリリリら

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五十三話

十二月二十二日、放課後。

特別棟の屋上。凍てつくような冬の強風が吹き荒れる中、俺――呉 刃叉羅は、コンクリートのメンテナンススペースの上で胡座をかき、眼下で繰り広げられる「狂気のお茶会」を特等席から見下ろしていた。

 

Cクラスの独裁者・龍園翔とその配下たち。そして、彼らに追い詰められ、恐怖に震えるDクラスの軽井沢恵。

 

俺が「Xは必ず来る」と予言し、龍園の拷問を止めてから、数分が経過した頃だった。

 

『――ギィィィッ』

 

重い鉄の扉が、軋むような音を立てて開かれた。

吹きすさぶ風の音が一瞬止んだかのように、屋上の空気がピンと張り詰める。

全員の視線が、扉の向こう側に現れた一つの影へと突き刺さった。

 

 

「……っ」

 

そこに立っていたのは。

両手をポケットに突っ込み、一切の感情を読み取らせない無表情のまま、静かに屋上へと足を踏み入れた少年――一年Dクラスの、綾小路清隆だった。

 

その姿を認めた瞬間。

床にへたり込んでいた軽井沢恵の瞳から、ボロボロと大粒の涙が溢れ出した。

 

「……清隆っ……!」

 

彼女の口から漏れたのは、安堵と、自分を見捨てなかった彼への強烈な依存が入り混じった、魂の底からの叫びだった。

 

だが、彼女はすぐにハッとして、自分の置かれている状況と、彼を待ち受けるCクラスの暴力の脅威を思い出した。

 

「だ、だめっ! 逃げて、清隆! こいつら……!」

 

自分が助かることよりも、彼を逃がそうとする悲痛な叫び。

 

だが、綾小路はそんな彼女の制止など全く意に介さず、ただ静かな足取りで、龍園たちの包囲網の中へと歩みを進めた。

 

(……ほう)

 

俺は、一段高い場所から、綾小路の微細な視線の動きを観察していた。

綾小路の視線は、まず軽井沢の全身を確認し、彼女が濡れておらず、外傷もない『無傷な状態』であることを確認した。

 

(……軽井沢は無傷か。龍園のやり方なら、俺が来る前に何かしらの拷問をして『X』の正体を聞き出しているかと思ったんだがな)

 

綾小路は内心でそう思考し、小さく首を傾げた。

龍園が水攻めなどの物理的手段に出なかったことへの疑問。その答えが、自分の頭上にいる『特等席の観客』のせいだとは、この時の彼はまだ気づいていない。

 

綾小路は、龍園たちを一瞥すらせず、まっすぐに軽井沢の元へと歩み寄った。

そして、自分が着ていたブレザーを脱ぎ、寒さと恐怖で震える彼女の肩に優しく掛けた。

 

「先に、寮に戻っていろ」

 

綾小路は、極めて平坦な、しかし有無を言わさぬ声でそう指示した。

 

「で、でも……っ! あんた一人じゃ……!」

 

軽井沢が、綾小路のブレザーをギュッと握りしめながら抵抗しようとする。

これから多勢に無勢の暴力沙汰が起きることは明白だ。彼を一人残して逃げることなど、今の彼女の精神状態では到底できることではなかった。

 

「心配するな」

 

綾小路が、軽井沢の目を真っ直ぐに見据えて、短く告げる。

その言葉には、何の根拠もないはずなのに、彼女の心を絶対的な力で落ち着かせる『何か』があった。

 

「……っ」

 

軽井沢は、心配そうに何度も振り返りながらも、フラフラと立ち上がり、屋上の出入り口へと向かった。

 

龍園は、去っていく軽井沢を追うよう配下に指示することもなく、ただニタニタと笑いながら、新たな獲物である綾小路だけを見据えていた。

 

『バタンッ』と、重い扉が閉まり、軽井沢が完全に屋上から退避したことを確認すると。

 

綾小路は、ようやく視線を上げ、屋上全体をゆっくりと見回した。

 

そして、その視線が。

屋上のさらに上、三メートルほどの高さにあるメンテナンススペースで、俺が胡座をかいて見下ろしている姿を捉えた。

 

「――――」

 

綾小路の無機質な瞳が、ほんの一瞬だけ、明確な『驚き』の色を帯びた。

彼にとって、俺がこの場所にいることは完全に計算外だったのだろう。

 

「……なぜ、呉がここにいる?」

 

綾小路が、眉をひそめて問いかけてくる。

俺は、頬杖をつきながら、ひらひらと右手を振ってみせた。

 

「よお。ただのショーの見学だ。……俺は完全に中立の傍観者だからな、空気だと思って気にしないでくれ」

 

俺がそう宣言すると、綾小路は状況を瞬時に理解したのか、「……そうか」とだけ短く返し、視線を目の前の龍園たちへと戻した。

 

「クククッ……ハハハハハッ!!」

 

龍園翔が、腹の底から歓喜の笑い声を上げた。

 

「てめえが『X』か。てっきり、ただの鈴音の金魚の糞かと思っていたぜ」

 

龍園が、獲物を甚振るような凶悪な笑みを浮かべて煽る。

その後ろで、石崎や伊吹も、信じられないものを見るような目で綾小路を睨みつけていた。

 

「だがな、綾小路。お前ももう終わりだ」

 

龍園が、上部で傍観を決め込んでいる俺を親指で指し示した。

 

「お前の唯一の頼みの綱かもしれないあの『バケモノ』は、俺と密約を交わしている。お前に加勢することは絶対にねえ。……お前は、ここで俺たち四人に完全に潰されるんだよ」

 

絶対絶命の包囲網。

暴力の化身であるアルベルト、武闘派の石崎と伊吹、そして独裁者の龍園。

普通の高校生であれば、この状況に置かれただけで恐怖に足がすくみ、土下座をして命乞いをするだろう。

 

だが。

綾小路清隆は、相変わらず感情を一切感じさせない声と、人形のような無表情のまま、首をコテリと傾げた。

 

「……俺は今、ピンチなのか?」

 

「あぁ?」

 

龍園が、予想外の反応に顔をしかめる。強がりにしては、あまりにも自然で、平坦すぎるトーンだった。

 

「お前たち四人程度では、俺の脅威にはならない」

 

綾小路が、ただの事実を述べるように、淡々と告げた。

 

「――――なめやがって!!」

 

その言葉が引き金となった。

激昂した石崎が、真っ先に綾小路に向かって飛び出した。

 

大振りの、しかし喧嘩慣れした重い右フック。普通の生徒なら、これ一発で脳震盪を起こして沈むだろう。

 

だが、綾小路は全く動じなかった。

彼が軽く右足を踏み込んだ瞬間。

 

『ドガッ!!』

 

石崎の拳が届くよりも早く、綾小路の放った完璧なカウンターの左ストレートが、石崎の顔面を正確に撃ち抜いていた。

 

「ぐはっ……!?」

 

白目を剥いて崩れ落ちようとする石崎の腹部に、さらに無慈悲な右の蹴りが深々と突き刺さる。

 

たったの二撃。瞬きをする間に、石崎は崩れ落ち、完全に意識を刈り取られて沈んだ。

 

「なっ……! 石崎!?」

 

伊吹が驚愕に目を見開く。

 

彼女はすぐさま蹴り技を主体とした素早いコンビネーションで綾小路に攻めかかった。

 

(……蹴りの軌道は悪くないな)

 

俺は上から評価したが、相手が悪すぎた。

 

綾小路は、伊吹の放つ鋭いハイキックを、最小限の動きで紙一重で躱し、そのまま彼女の軸足を正確に刈り取った。

 

「きゃっ……!?」

 

体勢を崩した伊吹の首筋に、手刀が容赦なく振り下ろされる。

 

「うっ……」

 

伊吹もまた、一声呻いただけで、糸の切れた操り人形のように冷たいコンクリートの床へと崩れ落ちた。

 

「……ククク。なるほどな」

 

仲間が二人がかりで瞬殺されたというのに、龍園の顔には焦りどころか、さらに深い愉悦の笑みが広がっていた。

 

「頭脳だけじゃなく、『暴力』も一級品とはな。……傑作だぜ、てめえは」

 

龍園が指を鳴らす。

 

「やれ、アルベルト」

 

「YES、BOSS」

 

Cクラス最大の巨漢、アルベルトが、重戦車のように綾小路へと突進した。

その凄まじい体格から繰り出される豪腕のパンチは、ガードの上からでも骨を砕くほどの威力を持っている。

 

『ブォンッ!』と風を切る音が響く。

 

だが、綾小路はその巨腕の軌道を完全に読み切り、上体を滑らせるようにして回避。アルベルトの懐に潜り込むと、その鳩尾に向かって、コンパクトだが全体重の乗ったショートパンチを叩き込んだ。

 

「グッ……!」

 

さすがのアルベルトも、内臓を揺らす一撃に動きが止まる。

その隙を逃さず、綾小路の無機質な連撃がアルベルトの急所を的確に破壊していく。

 

数発の打ち合いの末、巨岩のようなアルベルトの身体が、ついにドスーンッ!と地響きを立てて倒れ伏した。

 

これで、残るは龍園翔、ただ一人。

 

「……最高だ」

 

龍園は、狂気じみた笑みを浮かべ、首の骨をボキボキと鳴らしながら、自ら綾小路の前へと歩み出た。

 

「来いよ、綾小路ぃ!」

 

「……」

 

両者の間合いが交差する。

 

戦闘開始。

龍園の攻撃は、荒削りだが、本能に従った野性味と、喧嘩で培った変則的なタイミングを持っていた。

 

殴り合い、蹴り合い。

一見すると、龍園が綾小路に喰らいついているように見える。

 

(お? 龍園の奴、前より少し動きが良くなってるな)

 

俺は、上からポップコーンを食べる(ふりをする)手を止めて感心した。

 

以前、俺がコテンパンにしてやった時よりも、明らかに動体視力と打撃のキレが増している。おそらく、俺という『絶対的な恐怖』を味わったことで、彼の中の何かが覚醒し、本能的に強さを求めて鍛え直したのだろう。

 

(だが……綾小路に勝つには、まだ厳しいな)

 

俺の暗殺者としての目は、二人の『埋められない実力差』を冷静に分析していた。

 

綾小路の動きには、無駄が一切ない。計算され尽くした『最適解』の武術。息一つ乱さず、龍園の攻撃をいなし、的確にダメージを蓄積させていく。

 

『ドスッ!』

 

綾小路の拳が、龍園の顔面を激しく殴り飛ばす。

 

「かはっ……!」

 

龍園は血を吐きながら後退するが、倒れない。

 

『バキッ!』

 

今度は腹部への重い蹴り。龍園の身体が「くの字」に折れ曲がる。

 

だが。

何度殴られ、どれほど深刻なダメージを負っても。

龍園翔の目から、その狂気に満ちた『光』が消えることはなかった。

彼は血塗れの顔でニタニタと笑いながら、何度でも綾小路に向かって立ち上がっていくのだ。

 

「……理解できないな」

 

ついに、綾小路が拳を止め、無機質な声で問いかけた。

 

「人間は、自分が絶対に勝てない相手、圧倒的な力の差を見せつけられた時、本能的に『恐怖』を感じ、心が折れるはずだ。……お前は、恐怖を感じないのか?」

 

龍園の精神構造は、綾小路の論理的演算の範疇を超えていた。

 

その問いに対し。

龍園は、口の端から血を流しながら、腹の底からクククッと笑い声を上げた。

 

「……以前までの俺なら、そう答えてたかもな」

 

龍園は、不敵な笑みを浮かべたまま、上空のメンテナンススペースに座っている俺の方をチラリと見上げた。

 

「だがな。少し前に、そこの特等席でふんぞり返ってる『バケモノ』に完膚なきまでに叩きのめされて……俺も、生まれて初めて『恐怖』って感情を知ったんだよ。自分の命が、文字通り紙切れみたいに弄ばれる、絶対的な絶望をな」

 

俺は「おっと」と肩をすくめた。

まさかこんなところで俺の名前が引き合いに出されるとは。

 

龍園は、再び視線を綾小路へと戻し、血塗れの歯を見せて凶悪に笑った。

 

「だがよ、綾小路。てめえは確かに強い。強ぇが……あいつみたいな『人外の力』を使えるわけじゃねえ。同じ人間の枠に収まってるんだよ!」

 

龍園は、ふらつく足で立ち上がり、綾小路に向かって指を突きつけた。

 

「今日は、てめえが勝つかもな! 圧倒的な暴力で俺を沈めるだろう! だが、明日はどうだ!? 明後日は!? 俺は心が折れねえ! お前に勝つまで、寝首を掻いてでも、何度でも何度でもお前に挑み続けてやる!!」

 

それは、龍園翔という男の最大の武器である『底なしの執念』の宣言だった。

 

(……おいおい)

 

俺は、上からその熱い演説を聞いて、思わず苦笑してしまった。

 

(お前、それ……俺に喧嘩売ってボコボコにされた時と、全く同じこと言ってんじゃん)

 

『俺は心が折れねえ』『明日はどうだ』。

 

あの時、俺はひよりに手を出そうとした龍園に「外し」を使い、明確な「死」を体感させることで、黙らせたわけだが。

綾小路はどう対応するつもりか。

 

「……なるほど。お前の強さの根源は理解した」

 

綾小路は、表情を一切変えることなく、淡々と呟いた。

 

そして、彼が取った行動は。

龍園の放った、渾身の右ストレート。

綾小路は、それを躱すことなく、自らの顔面で受け止めた。

『ゴッ!』という鈍い音が響き、綾小路の口から一筋の血が流れる。

 

「……っ!?」

 

ダメージを与えたはずの龍園の方が、驚愕に目を見開いた。

 

綾小路の無機質な瞳には、痛みの色も、怒りの色も、当然ながら『恐怖』の色も、一切存在していなかった。

 

彼は、血を流したまま、全くの無表情で龍園の胸ぐらを掴み、足を刈ってマウントポジションを奪った。

 

そして。

『ドガッ!』『メキッ!』『ゴスッ!』

何の感情も込められていない、機械のような正確さで。

龍園の顔面に、容赦のない鉄槌を振り下ろし続けた。

 

「ぐっ……! がはっ……!」

 

殴る。殴る。殴る。

綾小路は、龍園が反撃の意思を見せようとする度に、それを上回る冷酷な暴力で、淡々と、作業のように彼を破壊していく。

 

『……お前は勘違いしている。俺は、お前に恐怖を教えるために殴っているんじゃない。ただ、お前という障害を排除する作業をしているだけだ』

 

無言の拳が、そう語りかけているようだった。

 

龍園の『心が折れない』という執念すらも、綾小路の『一切の感情を持たない無限の暴力』の前には、無意味なものへと変わっていく。

 

やがて。

龍園の目に宿っていた狂気の光が、ついに揺らぎ、そしてフッと消え去った。

彼の心が、完全に『折れた』瞬間だった。

 

「……クソ……が……」

 

龍園は、白目を剥き、ついに完全に意識を手放した。

 

冷たい風が吹き荒れる屋上。

そこに立っているのは、返り血を浴び、無傷とは言えないまでも、呼吸一つ乱していない綾小路清隆ただ一人となった。

Cクラスの面々が全員気絶し、完全決着がついたことを確認し。

 

「――パチパチパチパチ」

 

俺は、メンテナンススペースからゆっくりと立ち上がり、乾いた拍手を送った。

 

「やるな、綾小路。大した格闘センスだ。あんな一方的な蹂躙、映画の暗殺者でもなかなかお目にかかれないぜ」

 

俺がヒラリと飛び降りて歩み寄ると、綾小路は制服の汚れを払いながら、こちらを無表情で見つめ返した。

 

「……お前が、敵に回らなくて安心したよ」

 

綾小路が、微かに疲労を滲ませた声で呟く。

 

「おいおい、俺はただの事なかれ主義の高校生だっていつも言ってるだろ?」

 

俺は笑って肩を叩き、出入り口の扉の方へと視線を向けた。

 

「それにしても。軽井沢は強いな」

 

「……」

 

「龍園にあの極寒の中で水攻めされそうになっても……何を言われても、あいつは最後までお前の名前を口にしなかったぜ。……相当、お前を慕っているみたいだな」

 

俺の言葉に、綾小路は少しだけ目を伏せた。

 

「そうか」

 

彼が短く答えたその声の奥に。

単なる『手駒』として扱っていた軽井沢恵への評価を、明確に改め、より重要な『パートナー』として認識し直した気配があった。

 

「早く、軽井沢のところに行ってやりな。今頃、寮の部屋で震えながらお前の帰りを待ってるはずだぜ。……ちゃんと、優しく抱きしめて安心させてやれよ?」

 

俺がニヤニヤしながらアドバイスすると、綾小路は「……お前のその冷やかしは、時々本当に鬱陶しいな」とだけ言い残し、背を向けて屋上を後にした。

 

綾小路が去り、屋上に残された俺は。

冷たいコンクリートの上で気絶しているCクラスの面々を見下ろしながら、ポケットに手を入れて彼らが目覚めるのを待った。

 

数十分後。

 

「……う、あ……」

 

最初に呻き声を上げたのは、独裁者・龍園翔だった。

彼は、全身の激痛に顔を歪めながら、ゆっくりと上体を起こした。

周囲には、同じように倒れている配下たち。そして、目の前には、見下ろすように立っている俺の姿。

 

「……綾小路は……」

 

「とっくに帰ったよ。軽井沢のところにな」

 

俺が答えると、龍園は自分が完全に敗北した事実を噛み締め、ギリッと歯を食いしばった。

 

「俺の言った通り、Xは来ただろう?」

 

俺がわざとらしく笑いかけると、龍園は忌々しそうに「……チッ」と舌打ちをした。

 

「まあ、そう落ち込むなよ」

俺は、龍園に向かって、少しだけ本気の感心を込めて言った。

 

「結果的にはボロ負けだったが……お前、前より確実に強くなってんじゃないか。あの綾小路相手に、一発でもクリーンヒットを入れた執念は、素直に褒めてやるよ」

 

俺の言葉に、龍園は驚いたように目を丸くしたが、すぐにいつものように鼻で笑った。

 

「……化け物に慰められるほど、俺も落ちぶれちゃいねえよ」

 

その時。

俺のポケットの中で、端末が小さく振動した。

画面を見ると、愛しのひよりからのメッセージだった。

 

『刃叉羅くん、部活が終わりました。今、ロビーにいます』

 

(おっと、いけねえ)

 

俺の顔から、暗殺者としての冷徹な気配が完全に消え去り、デレデレの彼氏の顔へと一瞬で切り替わる。

 

「さてと。俺の愛しの天使からお呼び出しがかかった。俺は可愛い彼女を迎えに行かなきゃならないんで、これにて退散させてもらうぜ」

 

俺は、ボロボロの龍園たちに軽く手をヒラヒラと振った。

 

「じゃあな、ドラゴンボーイ。良いお年を」

 

「……てめえ、マジでその呼び方やめろ……」

 

龍園の恨みがましい声を背中で聞き流しながら。

俺は、血と暴力の匂いが染み付いた屋上を後にし、世界で一番温かくて甘い、彼女の待つ場所へと足早に向かうのだった。

 

 

 

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