◇ことり・千砂都の楽屋
千砂都「絵里さん、かっこよかったな〜」キラキラ
ことり「クスッ…。 私はびっくりしたよ。絵里ちゃんが振付師になってたなんて、全然知らなかったから」
千砂都「えっ? 連絡とかしてなかったの?」
ことり「ううん、連絡はしてたよ。 絵里ちゃんが黙ってただけ」
また、ちょっとほっぺを膨らませることり。
ことり「多分ほかのみんなも知らないんじゃないかな? あとで教えよう。『内緒にしてて』って言われなかったし」
千砂都「あはは…。 私は推しに会えて、しかも、推しから直接ダンスを教えてもらえて嬉しかったよ!」
ことり「あはは…」
千砂都「あと、『μ’sって、やっぱりすごかったんだなぁ』って、改めて思ったよ」
ことり「…! ふふっ…、ありがとう。 でもね、私たちも最初は、右も左もわからないまま、スクールアイドルを始めたんだよ」
千砂都「え…? そうなの!?」
ことり「学校が廃校の危機になっちゃって、入学希望者をどうしたら増やせるかって考えてたとき、穂乃果ちゃんが『スクールアイドルを始めよう』って言ってくれたの」
千砂都「じゃ、発起人は穂乃果ちゃん?」
ことり「うん」
(BGM:絵里のやりたいこと)
ことり「歌もダンスも全部が初めてで、失敗もいっぱいして、悩んだりすることもあったけど、みんなで力を合わせたから頑張れたの」
千砂都「……」
ことり「スクールアイドルを始めなかったら、学校を廃校から救うことはできなかっただろうし、衣装を作る経験なんてできなかった。 それになにより、穂乃果ちゃん、海未ちゃん以外に、あんな素晴らしい仲間と出会えることもなかった。 いつも、みんながそばにいてくれたから、私は頑張れたの。 服飾の道に進もうと思えた。 だけど…」
千砂都「…? だけど?」
ことり「学校を卒業して、これからは私一人で頑張らなきゃいけない。 自分一人でデザインして、誰かに評価されて、時には売上にも向き合わなきゃいけない。 そんな世界に私は飛び込めるのかなって考えたら、急に怖くなっちゃって…。 誰も『かわいい』って言ってくれないんじゃないかって…」
千砂都「ことりちゃん…」
ことり「ごめんね、暗い話になっちゃって…。 ダメだよね、昔からの癖なの。急に怖くなって怖気づいちゃう…。 今でも思う…。 本当に私が、歌のお姉さんをちゃんとやれるのかなって…。 子供たちに気に入られなかったらどうしようって」
千砂都「………」
千砂都「…」ニコッ
千砂都「大丈夫だよ!」
ことり「えっ?」
千砂都はことりの手を握る。
千砂都「今日からは、私がいるよ!」
ことり「千砂都ちゃん…?」
千砂都「私たち、まだ出会ったばかりだけど、もう仲間でしょ? 一緒にお姉さんをやる仲間!」
ことり「…っ!」
千砂都「ねっ?」
ことり「………。 うん…! そうだね! 私たち2人で、お姉さんやるんだよね?」
千砂都「うん!」
ことり「ありがとう。 なんか心が軽くなったよ」ニコッ
千砂都「よかった! やっぱりことりちゃんは笑顔が一番似合うよ!」
ことり「えっ…? もう…千砂都ちゃんったら」
千砂都「いやいや、ことりちゃんの笑顔は、すごく優しくて可愛いもん! ちゃんと子供たちに届くよ! μ’sのことりちゃん見てた私が言うんだから間違いないよ! な~んて、ファン目線からの、アドバンス?」
ことり「千砂都ちゃん…! ふふっ、ありがとう! 千砂都ちゃんも、可愛いし、優しいから、きっと元気をくれるお姉さんになれるよ!」
千砂都「えっ? そ、そうかな…?」
千砂都は頬をかいて、照れ隠しのように笑った。
ことり「うん!」
千砂都「それじゃ、私も頑張ろう!」
ことり、千砂都「ふふふっ!」
二人はそのまま、くすくすと笑い合った。
それは、まだ始まったばかりの小さな絆だった。
◇ことり・千砂都の楽屋前
絵里「……ふふっ…」
絵里「(よかったわね、ことり。 これから楽しみにしてるわ。 あなたが千砂都と一緒にお姉さんとして活躍する姿を)」
絵里は楽屋を離れ、きな子とすれ違う。
絵里「お疲れ様」
きな子「お疲れ様っす♪」
◇ことり・千砂都の楽屋
コンコンコンッ
ことり、千砂都「はい?」
きな子が入った。
きな子「ことりちゃん、千砂都ちゃん。 これ、今週の台本っす」
きな子が差し出した二冊の冊子。
表紙には《うたって☆メロディランド♪》のタイトルロゴ。
そしてタイトルの下には…
歌のお姉さん:南ことり
体操のお姉さん:嵐千砂都
ピアノのお姉さん:桜内梨子
ことり、千砂都「ありがとうございます!」
ことりと千砂都は受け取り、表紙を見つめた。
“お姉さん”という肩書きを見つめるたびに、胸の奥がふわりとあたたかくなって、不思議と鼓動が早くなる。
ことり「ふふっ。 いよいよ本当に始まるんだね」
千砂都「うんっ! やる気出てきた!」
きな子「ふふっ。 このあとカメラリハーサルも始まるっすよ。 準備が出来次第また呼びに来るっすから、それまで台本読んで待っててほしいっす」
ことり、千砂都「はい」
きな子は楽屋を出た。
ことりと千砂都は椅子に座り、早速台本を開く。
1ページには、オープニングトークの台詞が書いてあった。
ことり「……。 『みんな~…こんにちは~…歌のお姉さんのことりお姉さんだよ~…』」
ことりが、小さな声で読み上げる。
千砂都「『みんな~…元気~…? 体操のお姉さんの千砂都お姉さんだよ~…』」
すぐ隣で、千砂都も練習を重ねる。
2人とも、読み終えた瞬間に目を合わせ、思わず笑った。
ことり「ことりお姉さん。 えへへっ♡」
千砂都「千砂都お姉さんか〜。 ふふんっ♪」
ことり「なんか自分で『ことりお姉さん』って言うの、ちょっと照れちゃうね…」
千砂都「あはは、確かに。 う~ん…『ちぃお姉さん』に改名しようかな~?」
ことり「クスッ…、それも可愛いかもね♪」
ことりは改めて、『ことりお姉さん』の文字と、千砂都を見る。
ことり「……。 ふふっ♪」
ことり「(一人じゃないんだ…♪)」
数十分後。
楽屋のドアが開いて、きな子が顔をのぞかせた。
きな子「ことりちゃん! 千砂都ちゃん! カメリハ始めるっすよ!」
ことり「はい!」
千砂都「今いきます!」
ことりと千砂都は、台本を胸に抱えながら、廊下へ出る。
いよいよ、初めてのカメラの前。
ことりと千砂都は、きな子と一緒に、撮影スタジオに再び足を踏み入れた。