果南「よ~い、スタート!」
再び赤く点灯するカメラのタリーランプ。
ことり「…!」ニコッ
(BGM:アクション!)
ことり「みんな〜!こんにちは〜! 歌のお姉さんのことりお姉さんだよ~!」
ことりの声は、さっきまでの緊張が嘘のように、伸びやかな明るさが出た。
一同「…!?」
千砂都「……ふふっ…」
千砂都も負けじと元気いっぱいに笑顔を弾けさせて、カメラに手を振る。
千砂都「みんな〜!元気〜? 体操のお姉さんの千砂都お姉さんだよ~!」
2人の元気な声は、本当に子供たちの前に立っているような親しみがあった。
マルガレーテ、ほんのわずかに口角を上げる。
マルガレーテ「そうよ。それでいいのよ」
すみれ、可可「ホッ……」
果南「うん」
果南が手を腰にあてて満足そうに頷く。
恋「ふふっ…」
恋も静かに微笑んだ。
カメラはそのまま回り続け、台本にある“自己紹介パート”の続きを再現していく。
梨子「みんな、びっくりしたね? 今日から『うたって☆メロディランド♪』に、新しいお友達が二人も来てくれたんだよ!」
ことり「わぁ~素敵な場所! ねぇ、千砂都お姉さん、今日から私たち、みんなとお友達になれるんだよね?」
千砂都「そうだよ、ことりお姉さん。 じゃまずは、みんなと仲良くなるために、自己紹介をしないとね!」
梨子「ことりお姉さん、千砂都お姉さん、ようこそ、うたって☆メロディランド♪へ。 私はピアノのお姉さんの梨子お姉さんです。好きな食べ物はサンドイッチです♪」
きな子「2人とも可愛いっす」
彼方「さっきの緊張が嘘みたいだね~」
花丸「梨子先輩の完璧なフォローがあれば、これからきっと最高のチームになるずら」
曜「あはは、梨子ちゃんもすっかりお姉さん板についてるもんね」
千砂都「ねえねえ、ことりお姉さんの好きな食べ物はなに?」
ことり「ことりお姉さんはね、チーズケーキが大好きなんだ!」
千砂都「へぇ〜そうなんだ!」
梨子「美味しいわよね、チーズケーキ。私も大好きよ」
ことり「千砂都お姉さんは?」
千砂都「う~ん、千砂都お姉さんはね~、たこ焼きかな!」
ことり「たこ焼きなんだ~?」
千砂都「うん! 特に綺麗な、ま~るいま~るいたこ焼きが大好きなんだ!」
善子、エマ「……」ニコッ
和気あいあいと進む掛け合いに、スタッフたちも思わず頬が緩む。
緊張は、もうすっかり消えたらしい。
ことり「これから毎週、たくさんのお歌を歌うよ!」
千砂都「テレビの前のお友達も、一緒に歌ってね~♪」
果南「はい、OK~!」
タリーランプがふっと消えると同時に、ことりと千砂都は、ふぅっと息をついた。
恋「ことりさん、千砂都さん。素晴らしかったです! 初めてのリハーサルとは思えないほど、息が合っていましたよ。梨子さんも、見事なリードをありがとうございました」
ことり、千砂都、梨子「ありがとうございます」
果南、台本確認。
果南「えっと…この自己紹介の流れから、そのまま一曲目の『はじめまして』を歌う構成だよね?」
彼方「そうだよ~。 千砂都ちゃんの『一緒に歌ってね~♪』のあとに、梨子ちゃんが弾き始める予定だよ」
梨子「あの~…、今の実際にやってみて思ったんですけど、少し提案してもいいですか?」
果南「なに?」
ことり、千砂都「…?」
梨子「はじめましての間奏のときに、好きな食べ物を言ったほうがいいんじゃないですか?」
果南「えっ? 間奏で言う時間あるかな?」
梨子「そこは私が演奏でうまく調整しますよ。少し尺を伸ばしたり、テンポを揺らしたりして」
果南「う~ん…、テンポはそっちが確かにいいかな。 彼方はどう思う?」
彼方「そうだね~。じゃ〜……ことりちゃん、千砂都ちゃん。ちょっと台本変えていいかな~?」
ことり、千砂都「え…?は、はい」
彼方「ありがとう。 彼方ちゃん的には間奏じゃなくて、『拍手でこんにちは』のあとに言ったほうがいいと思うよ」
果南「余計に言う時間なくない?」
彼方「だからそこを梨子ちゃんに調整してほしいかな~」
梨子「なるほど、そこもありですね。 そうしましょうか!」
果南「いける?」
梨子「はい。そのあたりならアレンジできそうです」
果南「ははっ、いつものながら頼もしいね」
ことり、千砂都「……」
3人の話し合いを聞いて、ことりと千砂都はちょっとびっくり。
恋「すみません。たまにこんなふうに突発的に流れを変えることがあります。現場の空気感を最優先にするスタッフばかりなので、慣れるまで大変かと思いますが……」
千砂都「あ、いいえ。全然」
ことり「むしろ、一つ一つの言い回しやタイミングが大事なんだって伝わります」
果南「あはは…、ごめんね。 本当はリハーサル前に決めなきゃいけないってわかってるんだけど、やっぱり実際見てからじゃないと、ちょっと決められない部分があるんだよね」
千砂都「そういえば、最初に台本見たとき、好きな食べ物が書いてたのびっくりしましたよ」
彼方「2人が応募フォームに書いてくれた好きな食べ物を使わせてもらったよ~。 自己紹介はそれを使うって決めてたから」
ことり「あ…、だから好きな食べ物の欄があったんですね」
彼方「そういうこと~」
その時、『はじめまして』のピアノの音が聞こえる。
ピアノ「~♪」
ことり、千砂都「…?」
ピアノ「~♪」
梨子「♪ はじめまして ことりちゃん。 拍手でこんにちは」
果南「ここでことりちゃんが、『こんにちは』って返して、自己紹介がいいかな?」
ことり、千砂都「…!」
ことりと千砂都は台本を手に取り、ちゃんとメモをする。
梨子「なのでここの『すくすくるんるん』の前をちょっと調整しますね。 そうなると…」
『はじめまして』をもう一度弾く。
ピアノ「~♪」
梨子「♪ はじめまして ことりちゃん。 拍手でこんにちは」
ピアノ「~♪」
ことり「あ…。 こんにちは~」
ピアノ「~♪ ~♪ ~♪」
一同「……」
梨子「♪ すくすくるんるん友達じゃん。 友達じゃんじゃんできちゃった。 って感じかしら?」
彼方「できそうかな?」
ことり「えっと…タイミング難しそうですけど、やってみます」
梨子「ふふっ、大丈夫よ。 私がちゃんと長さを合わせるから、ことりちゃんと千砂都ちゃんは、気にしないで自分の言葉で話していいわよ。 そのための今日、タイミング合わせる練習なんだから」
ことり「あ…はい!」
千砂都「わかりました」
果南「とりあえず、いってみようか」
* * *
ことり、千砂都「♪ 友達じゃんじゃんできちゃった。 じゃんじゃん!」
ピアノ「~♪」←はじめましての終奏
果南「うん、揃ってきたね! これでいいかな?」
彼方「バッチリ」
恋「はい」
果南「OK。 じゃ本番もこの調子で三人ともお願いね!」
ことり、千砂都、梨子「はい!」
果南は腕時計に目を落とす。
果南「そろそろいい時間だし、昼休憩にしちゃおうか! みんな、昼休憩~!」
恋「午後から歌のリハーサルですから、よろしくお願いします」
スタッフたち「は~い!」
スタッフたちがぞろぞろと準備や片付けを始める。
ことり、千砂都「ふぅ…」
梨子「お疲れ様」
ことり、千砂都「お疲れ様です」
梨子「また午後、一緒に頑張りましょう」
ことり、千砂都「はい」
絵里とかのんが、ことりと千砂都のもとへ歩いてきた。
絵里「ことり、よかったわよ」
かのん「ちぃちゃんも、すごくよかったよ!」
千砂都「ありがとう」
ことり「はぁ…すごく緊張した~…!」
千砂都「でも、ことりちゃんの歌声、μ’sのときと変わらない優しい感じがして、可愛かったよ!」
ことり「ありがとう。千砂都ちゃんも可愛い歌声だったよ!」
千砂都「ホント? ありがとう!」
ことり、千砂都「ふふふっ!」
絵里「(ホントこの二人、いいコンビになれそうね)」ニコッ
実際に、おかあさんといっしょで、お兄さんお姉さんが最初に歌う曲ではあるらしいw