今日は、子供たちと撮影するか所以外の収録本番(歌のPV等)の日。
明日土曜日がいよいよ子供たちと遊ぶ初めての日。
第3話「しずくお姉さん?」①
4月8日金曜日
◇結ヶ丘テレビ局
朝の陽ざしが、テレビ局に柔らかく差し込んでいた。
車「【クラクション】」
◇結ヶ丘テレビ局 6階
~うたって☆メロディランド♪制作フロア 廊下~
エレベーターが開いて、ことりが降りた。
(BGM:スクールアイドルに恋してる)
ことり「(今日で私と千砂都ちゃんが、この場所で働き始めて四日目。 慣れないことばかりだけど、少しずつスタッフの皆さんとも打ち解けてきました)」
ことりが廊下を歩いていると、向こうからエマがやってきた。
ことり「エマさん、おはようございます」
エマ「あっ、ことりちゃん、おはよ~♪ 今日はいよいよ、歌のコーナーの本番撮影だね! やることがたくさんあっていろいろ大変だけど、一緒に頑張ろうね♪」
ことり「はい、精一杯頑張ります」
エマはそのまま給湯室の方向に曲がっていった。
ことりがさらに進むと、今度は曜、梨子と会った。
曜「あ! おはヨーソロー!ことりちゃん!」
梨子「おはよう、ことりちゃん。今日も早いわね」
ことり「おはようございます♪ 曜さん、梨子さん」
ことりは、曜が手に抱えている大きなバナナの房に目が留まる。
ことり「んっ? あ、曜さん、そのバナナ、『アイアイ』の小道具ですか?」
曜「そうだよ! しかもこれ、食品サンプルなんだ!」
ことり「食品サンプル?」
曜「すごいでしょ? 私の従姉妹がこの前買ってきてくれたんだけど、せっかくならここで使おうかなって」
ことり「食品サンプルって、すごくリアルで、見てると面白いですよね!」
曜「そうなんだよ! 私、実は食品サンプル集めるのが趣味なんだ!」
ことり「そうなんですか?」
曜「うん! 職人さんのこだわりが詰まってて、見てるだけでワクワクするっていうか」
梨子「もうすごいのよ。家に食品サンプルが、レストランみたいにガラスケースいっぱいに飾ってるんだから」
ことり「そんなにたくさん!?」
曜「あ、見る?」
曜はスマホを出して、自慢のコレクションが並んだ棚の写真を見せる。
ことり「わぁ!すごい!」
曜「でしょ!? 特にこのビフテキなんか――」
ことり「(曜さんと梨子さんは静岡出身で5歳からのお友達。東京に来てからは、二人でルームシェアしているらしく、お仕事中の息もぴったりで本当に仲良しさんです♪)」
曜「あとねあとね! このチョコレートパフェの生クリームの絞り方なんて、もう芸術品でーー!」
梨子「曜ちゃん、ストップ!」
ことり、曜「…?」
梨子「ことりちゃん、ごめんね。 曜ちゃん、この話になると止まらなくなっちゃうの。今は本番の準備があるから、続きはまた今度ね」
曜「あ……ごめんごめん、ついつい熱くなっちゃった」
ことり「ふふっ、大丈夫ですよ」
曜「じゃ、私は花丸ちゃんのところに~」
梨子「それじゃ、ことりちゃん。あとで本番お願いね」
ことり「はい」
ことりは、楽屋へ向かう。
◇ことり・千砂都の楽屋
ことりが入ると、千砂都とかのんが話していた。
ことり「千砂都ちゃん、かのんちゃん、おはよ~」
かのん「ことりちゃん! おはよう!」
千砂都「うぃっす~!」
ことり「何してたの?」
千砂都「かのんちゃんが書き上げた、エンディングテーマの歌詞を見せてもらってたんだよ」
かのん「梨子さんとマルガレーテさんに見せる前に、まずは実際に歌う二人の意見が聞きたくて」
ことり「わぁ~、できたんだ? 見せて見せて!」
千砂都「はい、これだよ」
千砂都から手渡された紙を、ことりは受け取り、読む。
ことり「っ! いい…。すごくいいよ!」
かのん「本当!? 本当にそう思う!? 変なところとかない?」
ことり「うんっ! 言葉のひとつひとつが優しくて、すごく素敵な歌詞だよ!」
(BGM:詞って、なあに?)
ことり「(かのんちゃんともすっかり仲良くなれました。 昨日の休憩中には、千砂都ちゃんの昔の話とかも聞けて、すごく楽しかったです)」
千砂都「ほら、ことりちゃんも太鼓判だよ! 自信持って、かのんちゃん!」
かのん「うん。 二人がそう言ってくれるなら、そう、かな…?」
千砂都「よし!善は急げ! 早速、梨子さんとマルガレーテさんに見せに行こう!」
千砂都は、楽譜を持って行こうとする。
かのん「えぇ!? ちぃちゃん!ちょっと待って! 心の準備が!」
ことり「あはは、行こう行こう! 私も梨子さんたちの反応、楽しみ!」
かのん「ことりちゃんまで!? 待ってよ二人とも! まだ修正が必要かも!」
◇廊下
三人は連れ立って、梨子とマルガレーテがいるはずの部屋へと向かう。
しかし、目的地が近づくにつれて、かのんの足取りはどんどん重くなっていく。
ことり「さっき、梨子さんは廊下で見かけたんだけど」
千砂都「マルガレーテさんはどこに? んっ? かのんちゃん?」
かのん「やっぱり不安だよ…。マルガレーテさんと梨子さん、何て言うか…。 もし『イメージと違う』って言われちゃったら――」
梨子「私がなんだって?」
曲がり角の先に梨子が立っていた。
ことり、千砂都、かのん「わっ!?」
梨子「あ…、ごめんなさい。 脅かすつもりなかったんだけど」
ことり「あ、いいえ」
千砂都はかのんの脇腹を軽く小突いて、こっそり囁く。
千砂都「かのんちゃん、今がチャンスだよ、ほらっ」
かのん「えぇ? う~ん…。 えっと…、梨子さん。あの……『うたメロ』のエンディングテーマの歌詞、一通りできたので、見てくれませんか?」
かのん、梨子に歌詞を渡す。
梨子「ありがとう、かのんちゃん。 もう書き上げたのね。……どれどれ?」
ことり、千砂都、かのん「………」ドキドキ、ドキドキ
梨子「いい……」
ことり、千砂都、かのん「…?」
梨子「すごくいいわ! 飾らない言葉なのに、心にスッと入ってくる…。 私が書いたあのメロディが、まるでこの言葉を待っていたかのように感じるわよ! 子供たちだけじゃなくて、それを見守る保護者の方たちの心にも響きそうな、とても温かい歌詞だわ! この歌詞なら、最高に優しいエンディングテーマになること間違いなしよ!」
かのん「ホ、ホントですか!? よかった〜…!梨子さんにそう言ってもらえて!」
千砂都「ほら、私の言った通りでしょ! かのんちゃんの言葉は、ちゃんと伝わるんだよ!」
ことり「うんうん! 梨子さんのピアノと、かのんちゃんのこの歌詞が合わさったら、最高の歌になるよ!」
梨子「えぇ。 私も今、頭の中で新しいアレンジが浮かんできたわ。 マルガレーテちゃんにもすぐに見せましょう。 まあ、あの子なら、もっとシビアな意見を言うかもしれないけれど…、この完成度なら文句は言わせないわよ!」
かのん「はい! よろしくお願いします! えへへ……なんだか、もっといい曲を書きたいって力が湧いてきたよ!」
ことり「ふふっ。かのんちゃん、さっきまでの不安そうな顔が嘘みたいだよ」
千砂都「だね」
梨子「その意気よ、かのんちゃん」
ことり「(番組を支えるスタッフの皆さんの想いが、ひとつひとつ形になっていく…。それを歌で届けるのが、私と千砂都ちゃんの役割なんだよね。 ふふっ)」
(オープニング:NEO SKY, NEO MAP!【サビ】)
ことり、千砂都『♪ どこに向かうかまだわからないけど 面白そうな未来が待ってると 笑いあえる君がいれば』
ことり、千砂都『♪ 嬉しい 今日も ありがとう』
※スポンサー紹介
ことり、千砂都『♪ さあこれからはそれぞれの地図マップ 広げたら気軽に飛びだそう 夢見て憧れて また夢が見たいんだ 見たい、見たいんだ!』
※スポンサー紹介終了
~11時過ぎ~
◇うたって☆メロディランド♪ レッスン室
ことりと千砂都は、練習着を着て『メロディランドたいそう』の練習をしていた。
しずく『♪ みんなで歌おう メロディランド♪』
ことりと千砂都は、大の字で決めポーズ。
ことり、千砂都「…///」
絵里「笑顔を忘れないで。子どもたちが最初に見る笑顔は、あなたたち自身の“楽しい”から始まるのよ」
ことり、千砂都「は、はい…///」
ことり「(そうだ。私はもうスクールアイドルとして、ステージに立つんじゃない。 μ’sで学んだすべてを、今度はことりお姉さんとして子供たちに届けるために、ここにいるんだから。もう恥ずかしがってちゃダメだよね?)」
その時、スタジオのドアから小さなノック音が聞こえた。
絵里「はい?」
ドアが開いて現れたのは、恋だった。
恋「失礼します」
ことり、千砂都「っ!?///」
ことりと千砂都は、すぐにポーズを解いて立ち直る。
恋「ふふっ、体操の練習、頑張っていますね」
絵里「はい。二人とも完璧に踊れてますよ」
恋「それは頼もしいです」
ことり、千砂都「えへへ…」
ことりと千砂都は目を見合わせ、少し照れたように笑みをこぼした。
恋「実は、ことりさんと千砂都さんに紹介したい方がいるのですが、今少しお時間いただけますか?」
絵里「はい、いいですよ」
ことり「私たちに紹介したい人…?」
千砂都「誰だろう…?」
恋「どうぞ、入ってください」
恋が部屋の外へ向かって声をかけると、2人の若い女性が中に入ってきた。
?、???「失礼します!」
一人は緊張した面持ちで、もう一人は胸を張って笑顔で、ことりと千砂都の前に立った。