(BGM:桜並木の通学路)
侑「初めまして! 今日から南ことりさんのマネージャーを務めることになりました、高咲侑です!」
せつ菜「同じく今日から嵐千砂都さんのマネージャーを務めます、優木せつ菜です! よろしくお願いいたしますっ!」
ことり、千砂都「えっ? マネージャー?」
千砂都は、ことりにそっと小声で尋ねた。
千砂都「ことりちゃん、マネージャーって、何する人だっけ?」
ことり「私もあんまり詳しくは…。う~ん…芸能人さんのそばにいて、スケジュール管理とかしてくれる人ってイメージはあるけど…」
恋「ふふっ、簡単に言うとそうですが、一応説明しますね。 マネージャーは、スケジュール管理はもちろんのこと、他部署との連絡調整、撮影現場での身の回りのお世話など、出演者の精神的な支えをしてくれる存在です。 要するに、お二人が『お姉さん』としてのお仕事を100%専念できるように走り回ってくれるパートナーです」
千砂都「なるほど、パートナーですか」
ことり「(“マネージャーがつく”。 それが意味するのは、もう私たちは“ただのお姉さん”じゃないということだよね。 テレビに立つ責任が、少しずつ現実になっていく。 昨日までは「楽しく踊ること」だけを考えていたけど、今は「背負うもの」が少し芽を出した気がする。 なんだろう、この気持ち。 私は今、わくわくしてる!)」
ことりと千砂都はそっと視線を交わし、微笑んだ。
恋「四人とも年齢も近いですから、きっと気が合いますよ。 これから一緒に頑張ってください」
ことり、千砂都「はい!」
ことり「よろしくお願いします、侑さん、せつ菜さん」
千砂都「よろしくお願いします!」
ことりと千砂都が、それぞれ手を差し出すと、侑とせつ菜は嬉しそうにその手を取った。
侑「こちらこそよろしくね!」
せつ菜「全力でサポートしますっ!」
絵里「ふふっ。 それじゃ練習再開するわよ。 侑ちゃんとせつ菜ちゃんも、せっかくだから見ててくれる?」
侑「あ、はい!」
せつ菜「ぜひ見たいです!」
恋「では、せっかくなので、私も見学してよろしいですか?」
千砂都「えっ? 恋さんも?」
ことり「絵里ちゃん…、三人の前で今から踊るの…? まだ恥ずかしいよ…///」
絵里「あのねぇ…。 明日から大勢の子どもたちの前で踊る子が、たった三人に恥ずかしがってどうするのよ…」
ことり「それは…、そうだけど…///」
ことり「(そうなんです。 明日土曜日はいよいよ、子供たちと一緒に撮影する本番。 つまり、うたメロの『新しいお姉さんたち』が、初めて子どもたちに姿を見せる特別な収録日がもう明日なんです)」
千砂都「やってみよ、ことりちゃん。 これも子どもたちの前で踊る練習だよ!」
絵里「二人ともしっかり振り付けも覚えてるし、ちゃんと踊れてるわ。 あとは笑顔で踊れるようになるだけよ」
ことり「…! うんっ!」
ことりと千砂都は、横に並び立った。
侑「わぁぁ……!」キラキラ
せつ菜「…♪ …♪」ワクワク
恋「………」ニコッ
スピーカーから、あの元気いっぱいのイントロが流れる。
しずく『♪ 歌おう 歌おう 笑顔でね』
左手を腰に、右手を口元にそっと添え、呼びかけるように。
しずく『♪ 踊ろう 踊ろう 元気よく』
反対の手。
しずく『♪ ワンちゃんや ネコちゃんや ウサちゃんも』
それぞれの動物ポーズ。
しずく『♪ みんなで一緒に楽しく遊ぼう』
笑顔で手を広げる姿は、まるで画面の向こうにいる子どもたちと手をつなごうとしているかのようだった。
しずく『♪ ぐるぐるぐるぐる』
腕を回す。
しずく『♪ ワン! ニャン! ピョンピョン!』
軽やかなジャンプに、思わず見ている方の頬も緩む。
しずく『♪ みんなで歌おう メロディランド♪』
「メロディランド♪」の掛け声とともに、二人は両手両足を大の字に広げて、ピタリと止まる。
ことり、千砂都「…」ニコッ
せつ菜「おぉ~!すごく可愛いダンスですっ!」パチパチパチ
侑「うん、完全にときめいちゃった♡ ことりちゃん、千砂都ちゃん、すごいよ~!」パチパチパチ
恋「お二人とも意気がぴったりですし、何より表情がとても豊かになりました。これなら明日の本番も安心して任せられます」
絵里「ふふっ、やったわね」
ことり、千砂都「えへへ♡」
(BGM:ハイテンション!)
レッスン室の扉が、「バンッ!!」と勢いよく開いた。
ことり「きゃっ!」、千砂都「わっ!?」、恋・絵里・侑・せつ菜「っ!?」
入ってきたのは、可可だった。
可可「ことり! 千砂都! お待たせしマシタ!」
ことり、千砂都「可可さん?」
可可「ふふんっ♪ お二人の衣装が出来上がったデス~!!」
恋「可可さん! ノックなしに、いきなり『バンッ!』と入って来られたので、びっくりしましたよ!」
可可「あ…。 ごめんデス…レンレン…。 みんなも……」
さっきまでの勢いはどこへやら、叱られた子どものように、可可の肩がしゅんと落ちる。
その後ろから、すみれがため息混じりに入って来る。
すみれ「まったく…。 落ち着きなさいよ、可可」
千砂都「あはは…」
ことり「でも衣装、もうできちゃったんですか!?」
可可「はい! 完成したデス!」
可可は一瞬で立ち直り、再び胸を張る。
その瞬間、ことりと千砂都の脳裏に、採寸が終わったあと、曜、花丸、きな子と廊下ですれ違った火曜日のことがふっと蘇った。
千砂都「花丸さんたちの言ってたとおり、本当にもう全部作り終わったんだ…!?」
ことり「私なんてμ’sの9人分作るのに、2週間もかかったのに。 たった3日間で11着も作っちゃうなんて…!」
可可「というわけで! 早速お二人に試着してもらいたいデス! 来てください!」
可可はことりと千砂都の手をつかんで、ぐいっと引っ張る。
ことり「えっ!? あの、ちょっと……!」
千砂都「可可さん!? ちょっと待ってぇ!」
慌てる2人の声もむなしく、可可は笑顔全開で、そのまま2人を衣装室の方へ引っ張って走った。
レッスン室に残されたのは、絵里、恋、侑、せつ菜、そしてすみれ。
すみれ「はぁ…。ホントごめんなさい…!」
絵里「ま、まあ…、そろそろ終わって休憩させようと思っていたところですし、タイミングはよかったですよ」
恋「ふふっ、それだけ今回も自信作ができたということでしょう」
すみれ「昨日も遅くまで作業して、全部仕上げてしまったのよ」
恋「さすが可可さんです。 仕事の速さとクオリティはこの局一番ですから」
せつ菜「可可さん、相変わらず元気いっぱいな方ですね」
侑「うん、エネルギーがあふれてる」
すみれ「元気すぎるくらいよ…。 にしても…」
すみれが2人の方を向いた。
すみれ「久しぶりね、二人とも。 あなたたちが、ことりと千砂都のマネージャーになったのね?」
せつ菜「はい!」
侑「お久しぶりです、すみれさん」
すみれ「“しずく”は、元気かしら?」
侑「元気ですよ」
せつ菜「今日も歩夢さんとドラマ撮影に行ってるはずです」
すみれ「そう、よかったわ。しずくも頑張ってるのね」
恋、絵里「……」コクッ
すみれ「さてと、あの子の着せ替え人形ショーが始まるわ。頃合い見て止めるから」
恋「レコーディングまでまだ少し時間があります。 それまでは、可可さんに楽しませてあげてください」
絵里「この日のために頑張ったんでしょうし」
すみれ「まあ、そうね。 じゃ、行ってくるわ。 ……あっ」
すみれがレッスン室を出ようとしたとき、ふと思い出したように振り返る。
すみれ「あなたたちも来なさい」
侑「えっ、いいんですか?」
すみれ「『いいんですか?』って…。 あんたマネージャーなんだから、そばにいないとダメったらダメでしょ…」
侑「あ…! そうですよね!すみません!」
せつ菜「クスッ。 行きましょう、侑さん」
すみれ「じゃ、こっちよ」
侑、せつ菜「はい」
侑「では失礼します」
せつ菜「失礼いたします!」
侑とせつ菜は、恋と絵里に一礼して、レッスン室をあとにした。
絵里「このスタジオ、どんどん賑やかになってますね」
恋「ええ。 これから、すごく楽しみです」
絵里「私もです」