μ’sのその後を描く物語!
もう一度、歌を届けたい!
今度は、子供たちを笑顔にしたい!
歌のお姉さん3人と個性豊かなスタッフ陣が、子供たちに笑顔と夢を届ける。
今年で4年目を迎える子供向け教育番組
『うたって☆メロディランド♪』へようこそ!
第1話「ことりの新しい夢」①
◇うたって☆メロディランド♪のスタジオ
明るくポップな色合いの雰囲気があるテレビセット。
壁には青空、天井からは虹やふわふわの雲が吊るされ、床は緑の草原を模した柔らかなカーペット。
虹には、番組名『うたって☆メロディランド♪』のロゴが描かれてる。
スタジオ内に明るい前奏の鐘の音が『カンカンカンカン キンコンカンコン キンコンカンコン カーン』と鳴った。
歌のお姉さん:南ことりと、体操のお姉さん:嵐千砂都が、子供たちと一緒にこの番組のオープニング曲「メロディランドたいそう」を踊っていた。
後ろでは、ピアノのお姉さん:桜内梨子が伴奏している。
ことりと千砂都は、左手を腰にあて、右手を口元に添えて、誰かを呼びかけるようなポーズをとる。
ことり、千砂都「♪ ︎︎歌おう 歌おう 笑顔でね」
今度は右手を腰に、左手を口元に添えて、同じ仕草。
ことり、千砂都「♪ ︎︎踊ろう 踊ろう 元気よく」
両手を胸の前に出して、肘を軽く曲げる。
手首を“ぴょこっぴょこっ”と動かして、子犬のようになる。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ワンちゃんや」
両手を耳の横にして、くいっと曲げて、猫の“にゃん”のポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ネコちゃんや」
頭の上に手をやって、うさ耳を作る。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ウサちゃんも~」
手を前に出して、笑顔で誘うように斜め下に広げる。
ことり、千砂都「♪ ︎︎みんなで一緒に楽しく遊ぼう」
両手を前に突き出し、時計回りに回す。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ぐるぐるぐるぐる」
ワンちゃんポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ワン!」
ネコちゃんポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ニャン!」
二人そろってうさ耳作ってピョンピョン飛ぶ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ピョンピョン!」
リズムに乗りながら手を伸ばしたり縮めたり。
ことり、千砂都「♪ ︎︎みんなで歌おう」
ことり、千砂都「♪ ︎︎メロディランド♪」
「メロ」で手足をぱっと広げて、大の字ポーズ。
「ディ」で腕と脚をすばやく閉じて。
そして「ランド♪」でまた大の字をして決めポーズ!
ことりと千砂都は、大の字でしっかりポーズをキメてる!
* * *
(BGM:桜色の風)
-1か月前-
◇音ノ木坂学院
正門には満開の桜が咲き誇り、ひらひらと花びらが舞っている。
校門の前に、『卒業式』と書かれた看板が立ってる。
ことりは校舎から出た。
(BGM:すぐ先にある未来)
手に握られているのは、革の筒に赤いリボンが巻かれた卒業証書。
制服の胸元には、卒業を示す白い花のコサージュがついてる。
ふと立ち止まり、ゆっくりと校舎を見上げた。
ことり「(本当に卒業したんだね、私…)」
穂乃果「ことりちゃ~ん!」
真っ赤に目を腫らした穂乃果が、制服の袖で涙をぐいぐい拭きながら、まっすぐこちらへ駆けてきた。
ことり「穂乃果ちゃん? わっ!」
穂乃果はことりに抱きつく。
穂乃果「うぅぅ…ことりちゃ~ん…!」
ことり「もう~泣きすぎだよ~」
穂乃果「だって…! ことりちゃん…! ほんとに卒業しちゃったんだもん…! もう毎日ことりちゃんに会えないんだと思うと~…」
海未が来る。
海未「まったく穂乃果は…。今生の別れじゃないんですよ」
穂乃果「そういう海未ちゃんも泣きそうだよ?」
海未「これは…目にゴミが入っただけです…」
穂乃果「ホントに?」
海未「ホントです」
真姫、凛、花陽が来た。
凛「ことりちゃん!穂乃果ちゃん!海未ちゃん!」
花陽「卒業おめでとう」
ことり「ふふっ、ありがとう」
海未「ありがとうございます」
穂乃果「ありがとう~~…!」
凛「穂乃果ちゃん、すごい顔にゃ…」
花陽「やっぱり寂しいね。 毎日顔を合わせてたのに、会えなくなるのは」
ことり「うん…」
海未「そうですね。ですが今までほど会えませんが、別に遠くに行くわけじゃないので、会おうと思えばいつでも会えますよ」
真姫「それもそうね。 だけど放課後はいつも穂乃果たちがいるのが当たり前だったから、慣れるまで少し時間かかりそう」
凛「またラーメン食べるの誘っていい?」
ことり「もちろん!また一緒に行こう!」
凛「あっ!希ちゃんがバイトしてるあのお店も、またみんなで行こうよ!」
穂乃果「うん!絶対行こう!」
真姫「行く前にちゃんと希にアポは取りなさいよ」
凛「わかってるにゃ」
ことり「(昨日までと変わらない私たちの時間。だけど、それも今日で終わっちゃう…)」
穂乃果「あっ、ねぇ、最後に行きたいところがあるんだけど!」
ことり「あそこだよね!」、海未「あそこですね!」
穂乃果「うん!」
真姫、凛、花陽「……」ニコッ
◇音ノ木坂学院 屋上
穂乃果「やっぱりここだね!」
海未「えぇ。ここが私たちのホームといっても過言じゃありません」
ことり「学校の廃校を阻止するためにスクールアイドルを始めて、毎日ここで練習した」
海未「考えてみれば、練習場所がなくて、ここで始めたんですよね」
真姫「そして学校を存続させることもできた」
凛「μ’sみんなでラブライブ!優勝して」
花陽「μ’sが終わって新しいグループになった今でも、毎日ここに集まって練習して」
ことり「……」
雪穂と亜里沙が来た。
雪穂「お姉ちゃん、絵里さんたちが来たよ!」
絵里「穂乃果、ことり、海未、卒業おめでとう」
希「おめでとさん」
にこ「あんたたち、来てあげたわよ!」
穂乃果「絵里ちゃん!希ちゃん!にこちゃん!」
絵里「穂乃果~、あなた、答辞も送辞のときみたいに歌い出すとは思わなかったわよ」
穂乃果「あはは…。やっぱり歌が、今の自分の気持ちを素直に伝えられていいんだよ~」
にこ「あんたらしいわ」
希「でもなんか懐かしかったな~。自分たちが卒業したときのこと思い出したよ」
凛「あっ!久しぶりにμ's全員揃ったにゃ!」
花陽「ほんとだ!」
(BGM:この先の私たち)
花陽「最後に集まったのは、にこちゃんのライブにみんなで行ったときだから、1か月前?」
真姫「もうそんなに経ったのね」
海未「早いものですね」
にこ「久しぶりに屋上に来たけど、やっぱり懐かしいわ!」
希「ここで本当にいろんなことがあったやん」
絵里「えぇ、みんなで練習したり、ふざけたり、笑い合ったり、私たちの全部がこの場所にはあるわね」
ことり「(うん。 みんなで一緒に走って、一緒に歌って、一緒に夢を叶えた。 楽しくて、眩しくて、時には辛いことや涙することもあったけど、それはすべて私たちの宝物だった時間)」
亜里沙「そうだ! せっかくμ'sが揃ったんだから、ライブ見せてよ!」
絵里「えっ?いやいや亜里沙、今からってさすがに急には無理よ」
真姫「そもそも音源持ってきてないし」
雪穂「それが…その…、さっき部室から持ってきちゃった」テヘッ
雪穂はプレーヤーを出した。
海未「用意がいいですね」
凛「じゃせっかくだしやろうよ!」
真姫「しょうがないわね」
穂乃果「亜里沙ちゃん、なにかリクエストある?」
亜里沙「START:DASH!!」
穂乃果「いいね! わかった!」
ことり「私たちの始まりの曲だね…」
希「ウチ、久しぶりに踊るけどできるかな」
絵里「案外、体は覚えてるものよ」
にこ「トップアイドルの力、見せてあげるわ!」
花陽「はわわ…!にこちゃんと踊れるなんて…!」
μ's並んで、雪穂がプレーヤーを再生。
雪穂、亜里沙「………!」パァァ
雪穂と亜里沙だけのライブをするμ’s。
μ’sは踊ってる。
ことり「(これが“スクールアイドルとしての最後の時間”。 スクールアイドルは本当に楽しかった!)」
最後は記念写真を撮ろうってことに。
希がカメラをセットする。
希「ほな、いくよ~」
穂乃果たち「は~い!」
希、セルフタイマーを付ける。
凛「希ちゃん!早く早く!」
希「はいはい!」
希も整列。
ことり「(スクールアイドルとしての毎日は、これでおしまい……。 私はこれから…、何を目指せばいいのかな……?)」
希「みんな、そろそろシャッターが降りるよ~! はい、チーズ!」
μ's、雪穂、亜里沙「……」ニコッ
カシャッ
~数日後~
◇南家 ことりの自室
卒業式、みんなで撮った写真が棚の上に飾ってある。
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ カチッ
ことりは目を覚まして、目覚ましを止める。
(BGM:青い海とみかん畑の日々)
ことり「ふわぁ……。 ふぅ…」
ベッドから起き上がる。
机の上には『服飾デザイン専門学校・入学案内』のパンフレットが置いてある。
ことりは自室を出て、階段を降りて一階の洗面所へ行く。
◇洗面所
ジャーーーーッ
ことりはしっかり顔を洗う。
◇リビング
ことり「お父さん、お母さん、おはよう」
父:鷹夫、母:飛鳥「おはよう」
朝食メニュー:トースト、イチゴジャム、目玉焼き、ウインナー
ことり「いただきます」
トーストにジャムを塗る。
飛鳥「ことり、進路のこと、ちゃんと決めたの?」
ことり「うん…。ちゃんと考えてるよ」
ことり「(ちゃんと考えてる…? かな……?)」
鷹夫「でもよかったじゃないか。夢だった仕事を学べるところが見つかって」
ことり「うん…」
朝食後、自室へ戻ることり。
◇ことり自室
机の上の『服飾デザイン専門学校・入学案内』のパンフレットに目をやる。
ことり「締切…、来週までだよね…」
パンフレットには、カリキュラム、授業内容、実習の紹介、そして「ファッション業界のプロになるために」の文字。
ことり「私のデザインで、本当に誰かが喜んでくれるのかな…」
自室のミシンを見る。
ことり「(μ’sのときは衣装作りが私の大切な役割だった。 でもそれは、みんながいてくれたから頑張れた。 穂乃果ちゃんや凛ちゃんのまっすぐな笑顔。 花陽ちゃんや希ちゃんの温かくて優しい反応。 真姫ちゃんや絵里ちゃんの厳しいけど優しい言葉。 海未ちゃんやにこちゃんの口うるさいけど心のこもった的確なアドバイス。 その全部に支えられて、私はやってこれたんだと思う。 でもこれからは違う。 自分ひとりでデザインして、誰かに評価されて、ときには売上とか数字とか、そういうのにも向き合わなきゃいけない…。 そんな世界に、私は本当に飛び込めるのかな…)」
部屋に飾ってる初ライブで着たSTART:DASHの衣装を見る。
ことり「これからは…私一人で……」
ピコンッ
ことり「…?」
LINEを開くと穂乃果と海未からだった。
穂乃果:『ことりちゃん、今どこ?』
海未:『そろそろ着きますか?』
ことり「…っ!? そうだった! 今日は穂乃果ちゃんと海未ちゃんと約束してたんだった!」
慌てて指を動かし、返事を打つ。
ことり:『ごめん、2人とも! 先に行ってて!』
穂乃果:『わかった!』
海未:『慌てず気を付けて来てください』
急いで着替えて、リビングへ行く。
ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃんと出かけてくるね」
鷹夫「そうか」
飛鳥「晩ご飯は?」
ことり「それまでに帰ってくる」
飛鳥「わかったわ」
ことり「行ってきます」
飛鳥「行ってらっしゃい」
鷹夫「気を付けてな」
* * *
◇秋葉原駅
(SE:改札誘導音)
人混みの中を抜け、ことりは改札を通り抜けた。
休日の秋葉原は相変わらず賑やかで、電子音やアナウンス、観光客の声が入り混じっている。
ことり「えっと…5番ホーム…。総武線はこっちだよね…?」
案内板を確認しながら、ことりは5番ホームへ向かう。
(発車メロディ:春new ver)
ことり「あ…」
ことりは階段を駆け上がる。
ことり「待って…! まだ行かないで…!」
5番ホームに辿り着き、目の前に止まっていた総武線に乗り込む。
ことり「ふぅ…間に合った…」
アナウンス「5番線、ドアが閉まります。ご注意ください」
キンコーン キンコーン キンコーン
運よくドア横の空いた席に腰を下ろすことができた。
総武線、発車。
ことり「(穂乃果ちゃんと海未ちゃんに会うのは卒業式以来。 たった数日なのに久しぶりに感じる。 今までこんな何日も会わない日なんてなかったからかな)」
アナウンス「次は御茶ノ水、御茶ノ水。お出口は左側です。中央線、地下鉄丸の内線と地下鉄千代田線はお乗り換えです」
ことり「(穂乃果ちゃんと海未ちゃんは大学に進学する。 穂乃果ちゃんは受験のとき大変そうだったけど、結局海未ちゃんに勉強を教えてもらって、最後まで諦めずに頑張って合格したんだから、ホントに穂乃果ちゃんは偉いよ。 海未ちゃんは一人暮らしを始めるんだっけ。きっともう部屋の中もきちんと整ってるんだろうな~。だって海未ちゃんだもん」
総武線、御茶ノ水に到着して、ドアが開く。
アナウンス「御茶ノ水、御茶ノ水 ご乗車ありがとうございます」
ことり「(みんな、それぞれの道をちゃんと進んでる…。 私は…どうなんだろ……?)」
(発車メロディ:JR-SH9-1)
アナウンス「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください」
そのとき、ことりのスマホが震える。
ことり「…?」
穂乃果からのLINEだった。
穂乃果:『そろそろ水道橋?』
ことりは思わず笑みを浮かべ、急いで返信を打つ。
ことり:『うん、次がそうだよ』
アナウンス「この電車は中央・総武線。各駅停車、三鷹行きです。次は、水道橋、水道橋。お出口は左側です。 都営地下鉄三田線はお乗り換えです」
ことりは立ち上がり、ドアの近くへ移動する。
ことり「二人とも待たせちゃったな~…」
総武線、水道橋に到着して、ドアが開く。
アナウンス「水道橋、水道橋、ご乗車ありがとうございます」
ことり、降りる。
(発車メロディ:闘魂こめて)
アナウンス「1番線ドアが閉まります。ご注意ください」
ことりは階段を降りて、改札へ向かう。
改札に穂乃果と海未がいた。
海未「あ、ことり!」
穂乃果「ことりちゃん、こっちこっち!」フリフリ
(BGM:読書のお時間)
ことり「2人とも久しぶり! ごめんね、ちょっと遅れちゃって」
海未「大丈夫ですよ」
穂乃果「こっちもなんか急かしちゃったみたいでごめんね」
ことり「ううん。 あれ?穂乃果ちゃん、ちょっと髪型変えた?」
穂乃果「あ、わかる? ちょっとパーマしてみたんだ!」
ことり「へぇ~似合ってるよ!」
穂乃果「えへへ、ありがとう!」
海未「では行きましょうか」
ことり「うん!」
* * *
◇おしゃれな喫茶店
店員「お待たせしました。 チーズケーキのお客様」
ことり「はい、ありがとうございます」
店員「いちごサンデーのお客様」
穂乃果「はいはい!」
店員「抹茶ティラミスでございます」
海未「どうも」
店員「ごゆっくり」
店員は去る。
ことり、穂乃果、海未「いただきます」
一口食べる。
ことり「2人はもうすぐ大学だよね? 準備のほうは大丈夫そ?」
穂乃果「入学式のスーツも買ったしバッチリだよ! サークルどこにしようか迷っちゃうよ!」
海未「サークルもいいですが、あなた、大学へ何しに行くかわかってますか? 遊ぶところではありませんよ」
穂乃果「わ、わかってるよ…」
海未「課題やレポート、助けてほしいと泣いてきても知りませんからね」
穂乃果「大丈夫だよ! 多分……」
海未「多分?」
ことり「ふふっ、穂乃果ちゃんらしい。 海未ちゃんは?」
海未「私のほうも問題ありません。入学書類の確認も済ませましたし、引っ越しも無事に終わりましたから」
ことり「言ってくれれば、引っ越し手伝ったのに」
穂乃果「そうだよ」
海未「いえ、これはきちんと一人でしたほうがいいと思いまして。ちゃんと重い物とかは引っ越し業者に任せましたから」
ことり「真面目だな~」
海未「まっ、いつでも遊びに来てください」
ことり「うん!絶対行くよ!」
穂乃果「そうしよう! 毎日遊びに行っちゃおうかな!」
海未「穂乃果。私の家が大学に近いからと言って、入り浸らないでくださいね」
穂乃果「う…。 あ、ことりちゃんは? 服飾の専門学校に行くんでしょ?」
海未「話そらしましたね…? (まあいいです。私も聞きたいですから)」
ことり「あ、うん…。 一応、来週締切だから、申し込もう…とは思ってる……」
穂乃果「そっか!」
海未「……」
ことり「でも……」
穂乃果、海未「…?」
ことり「なんか…、自信がなくなってきて……」
海未「自信…ですか…?」
穂乃果「どういうこと?」
ことり「うん。 μ’sのときは衣装づくりがすごく楽しくて、みんなが『かわいい!』って言ってくれたのがホントに嬉しかったの。 それが自分の存在価値だって思えた…」
穂乃果、海未「……」
ことり「だけど…、これからは一人でやらなきゃいけないって思ったら…、急に怖くなっちゃって…。 誰も『かわいい』って言ってくれなかったらどうしようって…」
チーズケーキをまた一口食べることり。
穂乃果、海未「……」
ことり「だからね…、服飾以外の仕事にしたほうがいいのかな~?って、思ったり…思わなかったり……」
海未「ことり…」
穂乃果「ことりちゃん…」
ことり「………。 あ…ごめんね、弱気なこと言って。 ダメだよね。昔から変わらないな…、急に怖くなって怖気づいちゃうの。 なにか、服飾以外のほかの道もあるんじゃないかなって考えちゃって…」
海未「なるほど…、そんなこと考えてたのですね」
ことり「………本当に怖いの…。 誰も認めてくれなかったらどうしようって……」
穂乃果、海未「……」
穂乃果「ことりちゃん……、大丈夫だよっ!」
ことり「えっ?」
(BGM:友情)
穂乃果が、ゆっくりと手を差し出して、ことりの手を握った。
穂乃果「だってことりちゃんは、ことりちゃんだよ? 可愛くて、おしゃれで、すごく優しくて、お菓子作るのも上手で、声も可愛いし! ことりちゃんならいろんなことができるよ! 衣装作りだけが存在価値じゃない!」
ことり「穂乃果ちゃん…/// そ、そんなに褒められると恥ずかしいよぉ〜…///」
海未「ふふっ、私もそう思います。 あなたならきっとやりたいことを見つけられると思いますよ。 夢だった服飾の道に進むとしても、ほかの道を選ぶにしても、ことりは人を喜ばせるのが得意ですから、なんだってできますよ。自信を持ってください」
海未もことりの手を握る。
ことり「海未ちゃん……/// うん…。ありがとう。 二人がいてくれるだけで、ことり、ほんとに救われるなぁ」
穂乃果、海未「…」ニコッ
* * *
~夕方~
穂乃果「それじゃことりちゃん、またね!」
ことり「うん! また!」
海未「ことり。また不安なことがあればいつでも相談してください」
ことり「ありがとう」
2人と分かれて、ことりは駅に向かって歩く。
ことり「(穂乃果ちゃん、海未ちゃんと話したら元気が出て来た。 うん。今はまだ分からなくても、きっと何かが待ってるって、信じてみるのもいいかもね)」
歩いてると、そこに小さな公園があった。
ことり「…?」
遊具もすこし古びている。けれど、そこには何とも言えない温もりが漂っていた。
ことり「なんだか懐かしい雰囲気の公園」
ことりはふとその公園の中へ入った。
公園の中では、砂遊び、縄跳び、ボール遊びなどで子どもたちが自由気ままに遊んでいた。
ことりは微笑ましくなり、ベンチに腰を下ろす。
目の前では、三人の幼稚園生くらいの子供たち3人が輪になって、ダンスをしていた。
女の子:さくら「♪犬さんワンワンワン、ネコちゃんニャンニャンニャン、鳥さんチュンチュのチュン」
女の子:ひかり、ひろみ「♪チュンチュのチュン」
さくら「あはは、ひろみちゃんのチュン顔、面白い!」
ひろみ「園長先生の真似~!」
ひかり「あっ!確かに似てる~!」
さくら「ホントだ~!」
ひろみ「♪チュンチュのチュン」
その様子を見て、ことりはクスリと笑う。
ことり「ふふっ……。 すごいなぁ。子供たちって、こんなに自由で、素直で」
楽しそうに回りながら、地面に転んでしまってズボンの裾を擦っても、土のついた膝も、誰ひとり気にしていない。
ただそこにいたのは、「たのしい」「うれしい」という気持ちを全身で表現している子供たちだった。
ことり「なんかいいなぁ…。 あんなふうに私もまた、誰かを笑顔にしたいな~」
ことり「(μ’sとして活動していたあの時間は、誰かの笑顔を間近で見られる、かけがえのない日々だった。 歌うことで、踊ることで、衣装で、いろんなかたちで笑顔を届けられた。 それができたから、私は自信を持てた)」
かつての仲間の言葉を思い出すことり。
ことり「にこちゃんの言う通りだよ。『アイドルは、笑顔を“見せる”仕事じゃない。笑顔に“させる”仕事』。 今はもうその言葉の意味がすごくわかるよ」
ことり「(今の私は…、誰の笑顔をつくれるんだろう?)」
ザッ ザッ
誰かがことりに近づいた。
ことり「んっ?」
ひろみ「……」ジーッ
ひろみだった。
ことり「あ…えっと…。 こんにちは」
ことりが戸惑いながらも笑顔を返すと、その子はパァァッと嬉しそうに笑った。
(BGM:答えはとても簡単)
ひろみ「お姉さんの声、プリンセスみたいな声!」
ことり「えっ?」
ひろみ「ほんとだよ! 私、さっき聞いてたの! お姉さん、笑ってたでしょ? 可愛い声してた!」
ことり「えっ? そんな…。普通に笑ってただけなのに…」
ひろみ「ううん、すっごくキラキラしてた! おねえさんの声、とても優しくて元気が出る!」
ことり「…!」
ことり「(スクールアイドルしてたとき、何人ものファンからそう言われたことがある。 『ことりちゃんの歌を聞くと元気になれる』、『ことりちゃんの歌声が一番好き』。 そう言われたのもすごく嬉しかった。 でも、卒業してからは、そんな声も遠ざかっていたんだね…)」
ことり「そっか。ありがとね!」
ひろみ「うん!バイバイ!」
ことり「バイバイ」
ひろみは走っていき、また友達のところに戻った。
ひろみ「ねぇねぇ! プリンセスの声のお姉さんがいたよ!」
さくら「プリンセスみたいな声?」
ひかり「えっ?どこどこ?」
ひろみ「あそこ!」
ことり「…! ふふっ」フリフリ
ことりは微笑み手を振ってあげる。
子どもたちは振りかえす。
ことり「……」
ベンチから立ち上がり、公園から出る。
ことり「まだ、なにかできることがあるのかな…? でも、そのなにかってなに? どこで…?」
ちょっと葛藤シーンが多く、本家よりもちょっとだけ優柔不断になっちゃったことりちゃんで、ごめんね。
でも、きっと次に大きな出会いがあるのかな?