◇結ヶ丘テレビの前
結ヶ丘テレビ局の前に、小型の送迎バスが停まった。
バスの扉がぷしゅりと開くと、親に手を引かれた子供たちが、降りてくる。
その中に1人、元気な雰囲気を放つ5歳の女の子がいた。
女の子の名前は、高海千歌。
うたメロ放送開始から来てる常連だ。
(BGM:普通怪獣ちかっちー?)
千歌「わ〜い! ついた〜!」
その隣には、付き添いとして来ていた2人の姉:女子高生の高海美渡と、女子大生の高海志満の姿も。
志満「今回から、新しいお姉さんが2人も増えたみたいね」
志満が手元のパンフレットを広げると、そこにはピアノの前に座る梨子お姉さんに寄り添うように、新しく加わったことりお姉さんと千砂都お姉さんの写真と紹介文が載っていた。
美渡「へぇ~。 千歌、仲良くできるか? もうしずくお姉さんじゃないみたいだよ。 梨子お姉さんはいるみたいだけど」
千歌「うん! ちか、あたらしいおねえさんたちとも、おともだちになる!」
一行は、色とりどりのリュックを背負った他の親子たちの列に混じり、局内に入り、エントランスロビーへ足を踏み入れた。
きな子「みんな、こんにちはっす~♪」
子供たち「こ~んにちは~!!」
きな子「わぁ~、みんな、元気いっぱいっすね~!」
千歌「あ、きなこおねえちゃん!」
きな子「ふふっ」
きな子は、千歌に手を振る。
きな子「みんな、今からパパとママに大切なお話があるから、ちょっとだけ静かに待っててほしいっす。 みんななら、かっこよく待てるっすよね? できるかな~?」
子供たち「は~い!」
きな子「ありがとうっす! 保護者の皆様、本日は当番組の収録にご参加いただき、誠にありがとうございます。 収録にあたり、いくつか注意事項があります。 まず携帯電話は必ずマナーモードに設定いただき、スタジオ内での通話はご遠慮ください。また、スタジオ内での飲食や無断での移動はご遠慮願います。 お子様の撮影は、スタッフが許可した時間のみ可能です。ですが、撮影された写真や動画等をインターネット上にアップロードすることは、固くお断りいたします。 また、収録中は私語を控えていただき、番組進行の妨げとならぬようご協力ください。 収録中はお子様の安全を第一に考え、スタッフが常に目を光らせていますが、もしもお子様に関して困ったことがございましたら、お近くのスタッフまでお気軽にお声がけください」
その間、千歌は目を輝かせてロビーを見渡した。
壁には、他番組のポスターの間に挟まれて、「うたって☆メロディランド♪」のポスターも貼られていた。
そこには優しそうな笑顔の梨子、そして新しく加わったことりと千砂都の姿があった。
千歌「ねぇねぇ、しまねえ、みとねえ。あのピンクのふくおねえさんと、みどりのふくのおねえさんが、あたらしいおねえさん?」
志満「そうよ、千歌ちゃん。ことりお姉さんと千砂都お姉さんですって。 楽しみね」
美渡「千歌、あんまりはしゃぎすぎて転ばないようにな?」
千歌「だいじょうぶだよ~!」
きな子「はい、注意事項は以上です。ご協力よろしくお願いします。 さあ! みんな、お待たせっす! これから『うたって☆メロディランド♪』にレッツゴーっすよ。梨子お姉さん、ことりお姉さん、千砂都お姉さんも、みんなに会えるのを楽しみに待ってるっす! それじゃ、みんなで大きな声で『出発!』って言ってから進むっすよ。いいっすか~? せ~の!」
子供たち「しゅっぱ~つ~!」
きな子「それじゃ、みんなきな子の後ろについてくるっす! 迷子にならないように、ガチョウさんみたいに一列に並んで歩くっすよ〜。ガ、ガ、ガ〜♪」
きな子が先頭に立ち、その後ろを千歌を筆頭とした小さな冒険者たちが、期待に胸を膨らませてついて行く。
◇6階 うたって☆メロディランド♪制作フロア
エレベーターが開く。
目の前には、エレベーターの前に置いてあるうたって☆メロディランド♪のロゴ看板。
子供たち「わぁぁ…っ!」
きな子「あとで帰りにここで記念撮影してOKっす。 さっ、みんなこっちこっち~。この先にある大きな扉の向こうに、お姉さんたちが待ってるっす。みんな、心の準備はいいっすか?」
通路を保護者に手を引かれながら、子供たちはわくわくした表情で進んでいく。
やがてスタジオの扉の前に到着。
きな子が重厚なレバーに手をかける。
きな子「それじゃ開けるっすよ~……。せ~の、メロディ〜〜……ランド~!」
~~~
◇スタジオ
同
廊下から賑やかな声が聞こえた。
ことり、千砂都「っ!?」
梨子「ふふっ、きな子ちゃんが来たわね。 さあ、2人とも、いい?」
ことり、千砂都「はい!」
梨子は、メロディランドたいそうをピアノで弾き始めた。
きな子の声「それじゃ開けるっすよ~……。せ~の、メロディ〜〜……ランド~!」
扉を開いたきな子を先頭に、子供たちと保護者が一歩、また一歩と足を踏み入れる。
恋、果南、花丸、曜、すみれ、可可、エマ、マルガレーテ、侑、せつ菜、かのん、絵里。
もちろんことりと千砂都も、笑顔と拍手で子どもたちを出迎える。
善子のテレビカメラは、タリーランプを点けて、既に撮影開始していた。
果南「みんな、こんにちは〜!」
果南が膝をついて子供たちの目線まで屈み、両手を大きく振った。
子供たち「こんにちは~~!!」
果南「おぉ~!今日の子たちも、みんな元気だね〜!」
千歌「かなんちゃ〜ん! やっほ〜!」
列の先頭付近にいた千歌が、弾かれたように駆け寄ってきた。
果南「あっ、千歌も来たね〜!」
果南は迷いなく千歌の小さな体を受け止めると、抱っこする勢いでひょいと持ち上げると、そのまま軽くくるりと回転する。
果南「志満ちゃん、美渡ちゃんも、ありがとう」
志満「いえいえ。千歌ちゃんも毎回楽しみにしてました」
美渡「今日も妹をよろしくお願いします」
果南「任せて。 千歌、今日もいっぱい楽んでいってね」
千歌「うんっ!」
千歌を、果南は優しく下ろす。
果南が子供たちの輪に溶け込み、一人一人の名前を呼んだり、頭を撫でたりしている間、恋は保護者たちの前に進み出て、深く、誠実に頭を下げた。
恋「ようこそ、うたって☆メロディランド♪へ。 保護者の皆様は、あちらの席へどうぞ」
曜たちが用意した観覧席へと案内する。
子供たちは目を輝かせて、スタジオを見渡す。
ことり「(今日、この子たちのために、私は歌うんだ…!)」
千砂都も、隣で子供たちと同じくらい無邪気な笑顔を浮かべ、リズムに合わせて手をパチパチと叩いている。
恋はことりと千砂都に頷き、果南、マルガレーテとともに副調整室へと移動していった。
その頷きは、『さあ、あなたたちの出番です』と、バトンを渡すようなものだった。
梨子はメロディランドたいそうを弾き終えると、鍵盤から手を離して、ことりと千砂都に寄り添うように立ち上がり、子供たちの元へ歩み寄る。
子供たち「っ!」
3人が足を止めると、ことりはふわりと膝をつき、目線を子供たちの高さまで下げた。
千砂都と梨子も、流れるような動作ですぐ横に膝をつく。
(BGM:お遊戯の時間ですわ!)
ことり「みんな〜、こんにちは〜。 歌のお姉さんのことりお姉さんで~す」
千砂都「うぃっす~! 体操のお姉さんの千砂都お姉さんで~す!」
子供たち「こ〜んにちは〜〜!!」
ことり、千砂都「っ!!」
その迫力に思わず目を見開き、一歩後ろへのけぞりそうになるほど圧倒された。
梨子「ふふっ、さすがみんな元気いっぱいね! 毎度おなじみ、ピアノのお姉さんの梨子お姉さんで〜す♪」
千歌「しってるよ!りこおねえさん!」
梨子「ふふっ、千歌ちゃん、今日も元気ね」
千砂都「…あっ…、お姉さんたち、みんなと会えるのを、すっごく楽しみにしてたよ!」
ことり「今日はお姉さんたちといっぱい!」
千砂都、梨子「遊ぼうね~!」
子供たち「は~~い!」
梨子「それじゃみんな~! こっちに集合~っ♪」
ことり「一緒に行こ~♪」
千砂都「おいでおいで~!」
子どもたちをお馴染みの青空と草原のテレビセットへ優しく誘導していった。
ことり「(始まった…! 私たちの『メロディランド』が!)」
(オープニング:NEO SKY, NEO MAP!【サビ】)
ことり、千砂都『♪ どこに向かうかまだわからないけど 面白そうな未来が待ってると 笑いあえる君がいれば』
ことり、千砂都『♪ 嬉しい 今日も ありがとう』
※スポンサー紹介
ことり、千砂都『♪ さあこれからはそれぞれの地図マップ 広げたら気軽に飛びだそう 夢見て憧れて また夢が見たいんだ 見たい、見たいんだ!』
※スポンサー紹介終了
(BGM:舞い降りた奇跡)
◇副調整室
照明を落とした薄暗い部屋の中で、マルガレーテが早速、音響卓のフェーダーに指をかけ、マイクのレベルを精緻に調整し始めている。
メインモニターには、スタジオ内の広場で子供たちに囲まれる三人の姿が鮮明に映し出されている。
彼方「……すぅ……すぅ……」
ソファーで、枕代わりのクッションを抱きしめて気持ちよさそうに寝息を立てている。
恋が近づき、彼方の肩をトントンと叩いた。
恋「彼方さん、撮影始めますよ」
彼方「ん〜……ふぇ? ……もう時間……?」
恋「はい、時間ですよ。 よろしいのですか?」
果南はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、彼方の足元で腕を組んだ。
果南「早く起きないと、ことりちゃんと千砂都ちゃんの記念すべき初収録を見逃しちゃうよ?」
ピクン、と彼方の肩がわずかに跳ねた。
彼方「……っ、それは……ダメだよぉ~……貴重な二人の初回なんだもん」
彼方はゆっくりと調整卓の定位置に腰を下ろした。
肩をぐるっと回しながら、期待に満ちた瞳でモニターを見つめる。
そのモニターには、子供たちの小さな手を取って、草原のセットの中央で眩しく微笑むことりと千砂都の姿が、画面いっぱいに映し出されていた。
彼方「お…! 二人ともいい顔してるね~」
果南がインカムのスイッチを入れた。
果南「よし、善子ちゃんもうちゃんと撮影してるね? 全員準備はいい? 本番はもう始まってるよ!」
* * *
◇撮影スタジオ
メロディランドたいそう本番
ことり、千砂都「……」
二人の視線がぶつかり、深く頷き合った。
千砂都「みんな、最初の体操いくよ~!」
ことり「メロディランドたいそう、スタート!」
スタジオ内に、明るい前奏のピアノ。
梨子のピアノ「~♪」
スタジオに集まった子供たちは、3年前からこの番組を見続けているベテランも多い。
イントロが流れた瞬間、彼らの小さな体は自然とリズムを刻み始めていた。
ことりと千砂都は、左手を腰にあて、右手を口元に添えて、誰かを呼びかけるようなポーズをとる。
絵里とかのんも、テレビカメラの横で、子供たちにお手本を見せるために一緒に踊る。
ことり、千砂都「♪ ︎︎歌おう 歌おう 笑顔でね」
今度は右手を腰に、左手を口元に添えて、同じ仕草。
ことり、千砂都「♪ ︎︎踊ろう 踊ろう 元気よく」
両手を胸の前に出して、肘を軽く曲げる。
手首を“ぴょこっぴょこっ”と動かして、子犬のようになる。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ワンちゃんや」
両手を耳の横にして、くいっと曲げて、猫の“にゃん”のポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ネコちゃんや」
頭の上に手をやって、うさ耳を作る。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ウサちゃんも~」
手を前に出して、笑顔で誘うように斜め下に広げる。
ことり、千砂都「♪ ︎︎みんなで一緒に楽しく遊ぼう」
両手を前に突き出し、時計回りに回す。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ぐるぐるぐるぐる」
ワンちゃんポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ワン!」
ネコちゃんポーズ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ニャン!」
二人そろってうさ耳作ってピョンピョン飛ぶ。
ことり、千砂都「♪ ︎︎ピョンピョン!」
リズムに乗りながら手を伸ばしたり縮めたり。
ことり、千砂都「♪ ︎︎みんなで歌おう」
ことり、千砂都「♪ ︎︎メロディランド♪」
「メロ」で手足をぱっと広げて、大の字ポーズ。
「ディ」で腕と脚をすばやく閉じて。
そして「ランド♪」でまた大の字をして、しっかり決めポーズ!
ことり、千砂都「…」ニコッ
静止した二人の顔には、もう一切の照れも、迷いもなかった。
絵里「っ! (ふふっ…最高だわ)」
かのん「(やった! やったよ、二人とも!)」
昨日まで、最後の決めポーズでどうしても恥ずかしがってた二人。
それが今はどうだろう。誰よりも高く、誰よりも明るく踊りきれた。
登場人物の過去のサブストーリー:誰のを読んでみたいですか?
-
曜と梨子出会い~梨子が歌のお姉さんなる話
-
うたって☆メロディランド♪立ち上げ話
-
きな子がADになるまでの話