スタジオは流れるような連携で次の「お絵描きコーナー」への準備へ迅速に移行する。
曜「花丸ちゃん、こっちから並べるね」
花丸「了解ずら!」
曜と花丸が、パステルカラーの可愛らしい子供用机と椅子をテキパキと配置していく。
侑とせつ菜も手伝いで、人数分の画用紙とクレヨンを各席に配置していく。
侑「せつ菜ちゃん、画用紙とクレヨン足りてる?」
せつ菜「はい、侑さん! 大丈夫です!」
きな子も、机と椅子の向きを、子供たちが座りやすいように整えて回った。
きな子「みんなの傑作が生まれる瞬間、楽しみっす」
その設営までの数分間。
子供たちはセットの隅にある待機エリアで、保護者の元を離れて少しだけ不安そうにしてる子や、次の遊びへの期待でソワソワしている子など、反応は様々な子どもたちが待っていた。
通常なら「静かに待っててね」と声をかけるだけの時間のはず。
だが、今のこの場所にいるのは、子供たちにとってアイドルであるお姉さん3人だ。
ことり「みんな、準備ができるまで、少しだけ歌って待ってようか?」
千歌「うん! うたいたい!」
千砂都「よ~し、じゃ梨子お姉さん、お願いしてもいいかな~?」
お姉さんの仕事の時だけは、例え先輩でも、お互いを友達のようにため口で話すのも立派なお仕事の一つ。
梨子「ええ、任せて。とっておきのやつを弾くわね」
梨子はアイアイを弾き始めた。
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ おさるさんだよ~」
みんなでおさるさんのポーズをしながら歌い出す。
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ 南の島の〜!」
千砂都「さあ、みんなも~!」
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ アイアイ!」
千砂都、子供たち「♪ アイアイ!」
ことり「♪ しっぽの長い~」
設営をしている曜たちは、その歌声をBGMに、自然と口角を上げながら作業を続けた。
ことりは、自分のスカートの裾をぎゅっと掴んでくる小さな手に気づき、その子の頭を優しく撫でた。
ことり「(あ~、幸せ~♪)」
梨子のピアノ、千砂都の笑顔、そしてスタッフたちの真心。
そのすべてが溶け合って、今、このスタジオには愛が溢れてる。
きな子「はいっ、お絵描きの準備ができたっすよ〜! みんな、好きな席に座るっす!」
「アイアイ」のラストフレーズを完璧なタイミングで弾き終えた梨子が、ことりと千砂都にウインクを送った。
ことり「さあ、みんな。今度はクレヨンで素敵な絵を描こう!」
千砂都「レッツゴー!」
ことりと千砂都が手を差し伸べると、子供たちは弾むような足取りで席に座っていく。
ことり「は~い♪ みんな、これを使ってお絵かきしようね~」
ことりが両手でふわりと持ち上げたのは、真っ白な画用紙とカラフルなクレヨンの箱。
千砂都「自由に好きな絵を描いていいよ! お姉さんたちにいろんな絵を見せてね~!」
子供たち「は~~い!!」
子供たちはそれぞれ自分の前のクレヨンに手を伸ばす。
梨子「ふふっ」
(BGM:どんな色がすき ピアノVer.)
ピアノ「~♪」
子供A「これにする!」
子供B「ピンクがいい」
梨子のピアノをBGMに、子供たちは思い思いにクレヨンを走らせる。
ことり、千砂都「ふふっ」
ことり「(なんだか、さっきまで緊張してたけど、いざ子供たちと触れてみれば、嘘みたいにどこかへ消え去っていた)」
2人は、子供たちの席へと歩みを進め、絵を描いている子供たちの様子を一人一人丁寧に見て回る。
ことり「…!」
ことりは、茶色いクレヨンで塗ってる4歳くらいの女の子のそばで静かに膝をついた。
ことり「こんにちは。 なにを描いてるのかな?」
女の子「んっとね~、おうちのワンちゃん!」
ことり「お家のワンちゃん? へぇ~!そうなんだ~! お名前はなにかな?」
女の子「ショコラ!」
ことり「ショコラちゃん?」
女の子「うん!これ、ショコラにプレゼントする!」
茶色のクレヨンで丁寧に塗られた丸い体、ピンクで描かれた首輪。
ことり「いいね! ショコラちゃん、これを見たら大喜びするよ!」
女の子「うん!」
ことり「(子どもって、なんでこんなに可愛いの…!)」
千砂都も、3歳くらいの男の子に近づいて膝をついた。
真剣な顔で青いクレヨンを握って描いてる。
千砂都「僕はなに描いてるの?」
男の子「しんかんしぇん!」
千砂都「新幹線?」
男の子「うん!」
黄色のクレヨンで塗られた新幹線。その上から青いクレヨンの太い線をグリグリと塗り重ねていた。
千砂都「(あっ、もしかしてドクターイエローかな?)」
千砂都「そっか~! 新幹線は速くてカッコいいもんね!」
男の子「ぼく、おおきくなったら、しんかんしぇんになりゅ!」
瞳をキラキラとさせながら放たれた、衝撃の将来の夢。
千砂都「新幹線になる!?」
千砂都は思わず、素のトーンで聞き返してしまった。
まさかの、新幹線そのものになる宣言が飛び出すとは!
千砂都「(って、いやいやいや、運転士さんのことを言ってるんだよね?きっと…。あぁ〜びっくりした…!)」
千砂都「いいね~! 千砂都お姉さんも応援するよ!」
男の子「うん!」
千砂都「(ホント可愛いなぁ〜…!)」
その時、真っ先に絵を描き終えた千歌が立ち上がった。
千歌「はい! ことりおねえさん! ちさとおねえさん! できました~!」
ことり、千砂都「んっ?」
千歌「じゃ~ん!」
千歌が見せたのは、オレンジ色の丸の上に、緑色の細い丸が乗った絵だった。
ことり「これはなにかな?」
千歌「みかん!」
ことり「わぁ~! 上手だね~!」
千砂都「おぉ〜!? 完璧な丸だね〜!」
千歌「えへへ〜!」
ことり「(あ、そっか…。千砂都ちゃん、丸には目がなかったんだっけ…?)」
保護者席では、そんな妹の姿に姉たちが苦笑いを浮かべていた。
美渡「千歌、相変わらずみかんか」コソッ
志満「千歌ちゃんのみかんへの愛は本物だから」コソッ
その後も、子供たちは思い思いの絵を仕上げて、次々と駆け寄ってくる。
ことりも千砂都は、その度に優しく絵を受け取り、善子のテレビカメラにしっかりと絵を見せる。
子供C「ショートケーキ!」
ことり「美味しそうなショートケーキだね~! イチゴがとっても甘そう。お姉さんもケーキ大好きだよ!」
子供D「パトカー!」
千砂都「パトカーのタイヤの丸、すごく力強そうだね!今にも走り出しそうでかっこいいよ!」
子供E「キリンさん!」
ことり「キリンさんも首が長くて、とっても可愛いよね!」
子供F「アンパンマン!」
千砂都「アンパンマン!! 完璧な…丸!!」
千砂都「(って、いけないいけない、さっきから『丸』のことしか褒めてないよね? さすがに偏りすぎだよ、私…!)
千砂都「本当に上手だね、元気100倍のパワーが湧いてくる絵だよ!」
子供G「ママ!」
ことり「ママ描いたの?素敵だね!ママ大好きって気持ちがすごく伝わるよ!」
千砂都「ホントだ! 梨子お姉さん、見て! この子の描いたママ、とっても優しそうだよ」
千砂都がピアノのほうへ絵を見せた。
梨子「ふふっ、本当ね。見ているだけで、心がポカポカしてくるわ。みんな、本当に素敵なアーティストさんね」
ことり「ふふっ…、…んっ?」
そんな中、ことりは一人だけ、まだ絵を描いていない男の子の姿に気づいた。
恐らく5歳くらいだろうか。前髪が少し長く、伏せ目がちで表情はよく見えない。
周囲の子たちが「次は何を描こうか」とはしゃいでいる中、彼はただじっと、手つかずの白紙を見つめていた。
色とりどりのクレヨンたちは、箱の中で一度も触れられないまま、整然と並んでいる。
千砂都「…?」
千砂都もすぐに気づき、そっとことりに目配せをした。
ことり「(あの子……)」
千砂都「(どうしたのかな? どこか具合でも悪いのかな?)」
ことりと千砂都は、そっとその子のもとへ歩み寄った。
梨子「……? (うん…)」
登場人物の過去のサブストーリー:誰のを読んでみたいですか?
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曜と梨子出会い~梨子が歌のお姉さんなる話
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うたって☆メロディランド♪立ち上げ話
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きな子がADになるまでの話