うたって☆メロディランド♪   作:あいライス

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第4話「わくわく☆初収録」④

ことりは静かにしゃがみ込み、男の子に優しく目線を合わせた。

 

 

男の子「…?」

 

ことり「こんにちは♪」

 

 

男の子は口を開きかけて、また視線を下に落とす。

 

 

ことり「フフッ……、どうしたの?」

 

 

千砂都もことりの隣に膝をつく。

 

 

千砂都「もしかして、何を描こうか悩んでるのかな?」

 

男の子「………かきたくない……」

 

 

(BGM:真剣な眼差し)

 

 

ことり、千砂都「えっ……?」

 

 

男の子は、手を膝にぎゅっと置いたまま、黙り込んでしまった。

 

 

 

保護者席の最前列で、少し不安そうにその様子を見守っていた男の子の母親が立ち上がる。

 

 

母親「たくみ?」

 

志満、美渡「…?」

 

 

心配そうに、セットへ行こうとするが、絵里が手を挙げて制止した。

 

 

絵里「待ってください」

 

母親「…?」

 

絵里「お母様。あのお姉さんたちに、任せてくれませんか?」

 

 

母親は戸惑いながらも、その言葉にゆっくり頷いた。

 

近くにいたかのんも、小さく頷き、安心を伝えるように目を細める。

 

 

絵里「(ことりなら、きっとできる!)」

 

かのん「(ちぃちゃんなら、きっと寄り添ってあげられる!)」

 

 

 

ことり、千砂都「……」

 

ことり「よかったら、お姉さんたちが聞くよ?」

 

千砂都「うん、なにか理由があるんだよね?」

 

たくみ「………」

 

 

二人は、もうそれ以上は何も言わず、彼のそばで見守るように微笑んでいた。

 

梨子もピアノを弾き続ける。

 

スタッフ陣も、その様子をじっと見守っていた。

 

きな子はスタジオに隣接してる副調整室へ行った。

 

 

◇副調整室

 

扉が静かに開くと、果南、恋、彼方、マルガレーテもモニターを見つめていた。

 

モニターに映る画面には、静かに座るたくみと、寄り添う2人のお姉さん。

 

 

きな子「どうします? このまま続けていいっすか?」

 

 

恋、果南、彼方は顔を見合わせ、無言で頷く。

 

 

恋「続けてください。 2人を信じましょう」

 

きな子「っ!  はいっす!」

 

 

きな子は、スタジオへと戻っていった。

 

果南はすぐさま善子へ指示を送る。

 

 

果南「善子ちゃん。あの子と、ことりちゃん、千砂都ちゃん。3人のアングルをキープ」

 

 

善子の耳のイヤホンに、その声が届き、善子も静かに頷く。

 

 

◇撮影スタジオ

 

たくみ「たくみね……」

 

 

ことりと千砂都は、そっと顔を見合わせる。

 

 

ことり「たくみくんって言うんだね?」

 

 

たくみはほんの少しだけ頷き、俯いたまま続けた。

 

 

たくみ「ようちえんのおえかきのとき、みんなが、たくみのえをバカにしてきたの…」

 

ことり、千砂都「えっ……?」

 

 

 

幼稚園でのことだった。

 

お絵かきの時間。たくみの描いた絵を見た子どもたちが…。

 

 

園児A『たくみのえ、へんなの〜』

 

園児B『なにこれ〜?』

 

園児C『なんでそのいろにしたの? ふつうあおでしょ~?』

 

 

みんなは空を晴れた青空、あるいは夕焼けのオレンジや、夜の暗い青色で描いてるのに対して、たくみが描いていたのは、『空がピンク色で、太陽が黄色い絵』だった。

 

 

 

たくみ「みんな…、たくみがおそらをピンク、おひさまのいろをきいろにしたら、へんだっていったの……」

 

ことり「そうだったんだ……。 辛かったね、たくみくん…。 気持ちを教えてくれてありがとう。  お空がピンク色。 ことりお姉さんは素敵だと思うな~」

 

たくみ「…?」

 

千砂都「(あっ…、なるほど。確かに、空気が澄んだ夕暮れの時、 空がピンク色に染まることがあるね。 この子、ちゃんと自分の目で、その瞬間を見てたんだ…!)」

 

千砂都「ふふっ、お空がピンク。全然変じゃないよ。むしろ、たくみくんは、お空をちゃんと見ていて、しっかりそれを描こうとしてたんだよね?」

 

たくみ「えっ…?」

 

千砂都「たくみくんが描いた空って、夕方の空じゃなかった? ピンクというか、ちょっと紫っぽい色をした」

 

たくみ「うん、きれいだったから…」

 

千砂都「やっぱり!」

 

 

(BGM:希の胸の内)

 

 

千砂都「太陽ってさ、絵本では赤く描かれることが多いし、宇宙から見ても、確かに本物の太陽は、真っ赤な丸だけど、地球から見たら、白っぽく光って見えるよね?」

 

ことり「あっ、そうかも! 私も、たくみくんのお話を聞くまで、お日様を描くときは赤って無意識に決めつけてたかも!」

 

千砂都「だよね! たくみくんは、みんなが見落としちゃうようなキラキラした本当の色を知ってるんだよ!」

 

 

セットの傍らでピアノを弾き続けていた梨子も、その会話を聞きながら頷いた。

 

 

梨子「(確かに言われてみれば…そんな空あったわ)」

 

たくみ「たくみのえ、へんじゃない?」

 

ことり「変じゃないよ! 最高に素敵な空だよ!」

 

千砂都「お友達にからかわれたから、絵を描くのが怖くなっちゃったの?」

 

 

たくみは頷いた。

 

 

千砂都「ふふっ、たくみくん。 ここでは誰もバカにして笑わったりしないよ。 梨子お姉さんも、ことりお姉さんも、もちろん千砂都お姉さんも!」

 

ことり「たくみくん。絵はね、上手かどうかよりも大事なことがあるんだよ」

 

たくみ「なに?」

 

ことり「それはね、描きたいって気持ち」

 

たくみ「かきたいきもち……?」

 

ことり「うん。何を描こうかな、この色を使ってみようかなって、描いてみたいって思えた時が、すべての始まりなんだよ♪ たくみくんの心の中にある素敵な世界。お姉さん、見てみたいな~」

 

千砂都「みんなと違ってもいいの。 というかむしろ変な色なんてこの世界にはないんだよ。 好きな物を好きな色で塗ってもいい! 空がピンクでも、ウサギが飛んでても、全部オッケー♪」

 

 

千砂都がぱっと両手で大きな「丸」を作ってみせると、たくみの瞳がわずかに揺れた。

 

たくみの視線が、机の上に置かれたクレヨンの箱へと向かった。

 

そっと手を伸ばし、少しだけ迷ったけれど、ピンク色のクレヨンを手に取り、画用紙の上にゆっくり塗り始めた。

 

 

ことり、千砂都「っ!」

 

 

ことりと千砂都は、ゆっくり立ち上がり、そっと離れて、少し離れた場所から、真剣な表情でクレヨンを走らせるたくみを見守る。

 

 

他の子供たちが、一人、また一人と、たくみの周りに集まり始めた。

 

千歌も、飼い犬描いた女の子も、ドクターイエロー描いた男の子も、みんな、たくみの紙を覗き見る。

 

 

女の子「なにかいてるの?」

 

千歌「そら、ピンクいろなんだ! きれいだね!」

 

男の子「しょれ、やま? すぎょい!」※それ、山? すごい!

 

 

たくみは、少しだけ驚いたような顔をしながらも笑った。

 

曜、花丸、きな子、エマ、すみれ、可可、侑、せつ菜も、その様子を見て、顔がぱぁっと明るくなる。

 

善子のテレビカメラが、その様子を静かに追いかける。

 

 

善子「(ヨハネのカメラは…今、まさに、奇跡を捉えてるわ……!)」

 

 

◇副調整室

 

モニターには、善子が映すその瞬間がしっかりと映っていた。

 

 

マルガレーテ「いい雰囲気ね」

 

恋「やはり、お2人を採用してよかったです」

 

果南「だね!」

 

彼方「あの男の子、とっても楽しそうだよ」

 

 

 

保護者席の最前列で、たくみの母親は、絵里の隣でそっと目元をぬぐっていた。

 

 

母親「たくみが…あんなふうに、また描けるなんて…!」

 

 

絵里とかのんは、なにも言わず微笑む。

 

 

 

たくみ「できた~!」

 

 

たくみが描いた絵を高く掲げた。

 

ことりと千砂都と梨子は、そっと顔を上げた。

 

たくみが掲げた画用紙には、鮮やかな、そして優しいピンク色の空。

 

その中を、満面の笑みを浮かべたたくみくんと、3人のお姉さんが手を繋いで自由に飛び回っている。

 

空の隅々には、犬や猫、うさぎたちも一緒に飛び跳ねていて、その合間を縫うように、カラフルな電車が線路のない空を自在に泳いでいた。

 

 

千砂都「すご~い! たくみくんが空飛んでる~!」

 

ことり「うん、たくみくんだけの世界だね♪」

 

たくみ「たくみが、おねえさん3にんと、おそらをとんでるの!」

 

 

よく見ると、その空を飛ぶお姉さんたちは自分たちによく似ている。

 

 

千砂都「えっ? これ、私たち!? すっごく可愛い!」

 

ことり「本当だ! たくみくん、私たちのこと描いてくれたの!? 梨子お姉さん、見て! 私たちがお空飛んでるよ!」

 

梨子「ふふっ、すごく上手!とっても楽しそうに飛んでるわね!」

 

たくみ「えへへっ」

 

千歌「すごい! ちかもおねえさんをかく~!」

 

子供H「あたしも~!」

 

子供I「おれも~」

 

子供J「ぼくちゃんも~!」

 

 

子どもたちは次々に画用紙を取り、クレヨンを手にし始めた。

 

やがて、スタジオ中に紙とクレヨンの走る音が広がる。

 

 

(BGM:小さな奇跡)

 

 

ことり、千砂都「えっ? えっ?」

 

 

梨子もピアノを弾きながら、子どもたちの様子を見守った。

 

やがて、子どもたちは思い思いのお姉さんの絵を描き終え、一斉に画用紙を掲げた。

 

 

子供K「できた~!」

 

女の子「みてみて!」

 

千歌「かけたよっ!」

 

男の子「おねーちゃー」

 

 

そこには、カラフルで元気いっぱいなことりお姉さんと千砂都お姉さんと梨子お姉さんが並んでいた。

 

にっこり笑ってたり、ぴょんぴょん飛び跳ねている子もいれば、大きなハートで包まれていたりと、いろんな3人の絵だった。

 

ことりと千砂都は、その絵ひとつひとつを大事そうに受け取りる。

 

 

ことり「ん~~~♡」

 

千砂都「みんな、ありがとう~!」

 

梨子「すっごく嬉しいわ!」

 

 

◇副調整室

 

恋「最高のスタートを切ることができましたね」

 

マルガレーテ「このまま、歌のコーナーをやりましょう」

 

彼方「今の3人なら、最高の歌を届けられるよ。見てるこっちまで幸せになっちゃうもん」

 

 

果南はインカムを入れる。

 

 

果南「みんな、休憩のあと、歌のコーナーに移るよ。準備よろしく!」

 

 

◇スタジオ

 

きな子はカンペを取り出し、黒マジックでひとこと。

 

 

『次、歌のコーナーをやるっす♪』

 

 

そのカンペを善子に見せる。

 

善子はそれを見て、ゆっくりと頷いた。

 

ことりと千砂都は、両腕にたくさんのお姉さんたちの似顔絵を抱えていた。

 

 

きな子「はい、みんな〜! そろそろ一回休憩するっすよ。 お姉さんたちは、ちょっとお着替えしてくるっすから、パパとママのところで待っててっす〜!」

 

子供たち「は〜い!」

 

きな子「テープチェンジっす。 休憩入るっす~」

 

 

善子は静かに息を吐く。

 

 

善子「一旦、ここまでね」

 

 

カメラを停止して、タリーランプが消えた。

 

きな子はことりと千砂都に、そっと振り向く。

 

 

きな子「ことりちゃんと千砂都ちゃんも、梨子先輩と休憩どうぞっす!」

 

ことり、千砂都「はい」

 

梨子「2人とも、こっち」

 

 

スタジオと隣接する副調整室へ入った。

登場人物の過去のサブストーリー:誰のを読んでみたいですか?

  • 曜と梨子出会い~梨子が歌のお姉さんなる話
  • うたって☆メロディランド♪立ち上げ話
  • きな子がADになるまでの話
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