~面接当日~
◇ことり自室
目覚ましを止めて、起き上がる。
ことり「………」
ことり「(本当に私、行ってもいいのかな…?)」
(BGM:…寄り道してかない?)
◇洗面所
ジャーーーーッ
ことりは顔を洗う。
ことり「(あんなすぐに応募通過したメールが来るなんて思わなかった。 最初はいたずらメールって思ったけど、アドレスを調べたらちゃんとしたものだった)」
◇ことりの自室
清楚な私服に着替える。
ことり「(メールの本文も何度もスクロールして読み返した。だけど誤字もなければ、間違いもない)」
軽めにメイク。
ことり「(本当に…通ったの?)」
準備OK。
ことり「うふふっ……」
自分でも気づかないうちに、頬がほんのりと緩んでいた。
ことり「(正直怖い…。 期待したらダメってわかってる。 でも…、初めてなの。 スクールアイドルが終わったあと、これが“次の夢かもしれない”と思えたのは。 誰かに求められるという感覚。 例えあれが仮に機械的な選考であったとしても、私の名前で誰かが『来てください』って言ってくれた。そう言ってもらえることが、こんなにも心を軽くするなんて思わなかった)」
ことり「頑張りたい」
ことり「(何が正解かはまだ分からない。 合格するかどうかも全然分からない。 でも、“やってみよう”と思える自分が、今ここにいる!)」
リビングへ行く。
朝食のテーブルには、トースト、目玉焼き、サラダ、そしていちごジャムの小瓶が並んでいる。
ことり「おはよう、お父さん、お母さん」
鷹夫、飛鳥「おはよう」
飛鳥「今日が面接の日だったわね? 緊張してる?」
ことり「うん、少し…。 でも自分が今伝えられることをちゃんと伝えてくる!」
鷹夫「あぁ、ことりなら大丈夫だ! 高校でアイドルやってたときみたいに、自然体でいればいい」
飛鳥「えぇ、そうね。 ことりらしく頑張りなさい!」
ことり「うん、ありがとう。お父さん、お母さん」
朝食後、ことりは玄関で靴を履き、両親に見送られて家を出る。
ことり「行ってきます!」
飛鳥「行ってらっしゃい!」
鷹夫「頑張れよ!」
玄関のドアを閉めると、ことりはもう一度深呼吸をして、小さく空を見上げた。
青空にうっすらと雲が流れていた。
ことり「うん!」
秋葉原の駅まで続く道を歩きながら、心臓が早鐘のように鳴るのを感じる。
◇秋葉原駅
(SE:改札誘導音)
ことりは改札に入る。
◇秋葉原駅 3番線
山手線の到着を待つサラリーマン、主婦、学生がいるなか、母親に手を握られてる幼い男の子がいた。
ことり「……?」
ことりがふと目を向けると、その子がじっとこちらを見ていた。
つぶらな瞳。まだ言葉もおぼつかないような年齢の男の子。
ことりと目が合うと、その子は手をぱたぱたと振った。
ことり「…! ふふっ…」フリフリ
ことりは驚きつつも、少し照れくさそうに、優しく手を振り返した。
男の子「…!」ニコッ
すると男の子がふにゃっと笑った。
ことりはその男の子から、“がんばってね”って言われたような気がした。
ことり「うふふ…、ありがとう…!」ボソッ
(SE:ATOS)
アナウンス「間もなく3番線に東京・品川方面行きがまいります。危ないですから、黄色い線までお下がりください」
ことり「来た…」
山手線到着。
アナウンス「秋葉原、秋葉原、ご乗車ありがとうございます」
ことりは乗り込む。
(発車メロディ:スプリングボックス)
アナウンス「3番線、ドアが閉まります。ご注意ください」
* * *
~数十分後~
ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン
ことりは座席の端に座って、心の中で面接で言うセリフを練習する。
ことり「(私は高校時代にスクールアイドル活動をしていました……。μ’sというグループで……)」
ことり「……っ、ス、スクール……アイドル活動をしてましゅた……あ……っ」
小声で練習をしようとするが、緊張で噛んでしまう。
ことり「(ダメだよ、ことり。 落ち着いて。 ちゃんと…笑顔で…!)」
アナウンス「次は、渋谷、渋谷。お出口は左側です。東急東横線、東急田園都市線、京王井の頭線、地下鉄銀座線、地下鉄半蔵門線、地下鉄副都心線はお乗り換えです。 電車とホームの間が空いているところがありますので、足元にご注意ください」
ことり「(着いた…!)」
渋谷駅到着。
扉が開き、ことりは降りる。
アナウンス「渋谷、渋谷。 ご乗車ありがとうございます。 電車とホームの間は広く空いております。足元にご注意ください」
(発車メロディ:小川のせせらぎ V2)
アナウンス「1番線、ドアが閉まります。ご注意ください」
ことりはエスカレーターで1Fへ降りる。
そして改札を出て、渋谷駅を出る。
(BGM:街が奏でる音楽)
◇渋谷駅前交差点
ことり「ふぅ…」
ハチ公像や、東急の青ガエルがある。
山手線の警笛が聞こえる。
空には飛行機が飛んでる。
たくさんの人たちがスクランブル交差点を渡ってる。
車のクラクションも鳴り響く。
ことりもスクランブル交差点を渡る。
あちこちモデルの撮影が行われている。
※その中には果林の姿が…。
ことり「えっと…テレビ局はこっちかな…?」
やがて結ヶ丘テレビ局が見えた。
ことり「あった…!」
テレビ局へ。
◇結ヶ丘テレビ局
ことり、エントランスに入る。
受付に近づくと、笑顔の女性が声をかけてくれた。
受付:こはく「おはようございます。ご用件は?」
ことり「えっと…『うたって☆メロディランド♪』の面接を受けにきた、南ことりと申します。 面接会場はどこになりますか?」
こはく「はい、『うたって☆メロディランド♪』の面接ですね? それでしたら、あちらのエレベーターで8階まで行ってください。降りた先にスタッフがいますので、そのスタッフが面接控室までご案内いたします」
ことり「わかりました。ありがとうございます」
こはく「面接、頑張ってくださいね」
ことり「あ…! はい!」
ことりは一礼して、案内されたエレベーターへ。
エレベーターが到着して乗り込む。
ことり「大丈夫、大丈夫……」
チンッ
8階で扉が開くと、案内のスタッフがにこやかに立っていた。
曜「おはようございま~す! あちらが控室になります。お名前をお呼びするまで、こちらでお待ちください」
ことり「は、はいっ……ありがとうございます」
控室のドアを開けた瞬間、ことりは思わず足を止めてしまった。
部屋の中には既に数人の女性たちが座っていた。
服装も髪型もどこかモデルのようで、誰もが自信に満ちた表情を浮かべていた。
ことり「(みんな、すごい…!)」
ことりは空いている椅子を見つけて、そっと腰を下ろす。
バッグの中から書類を取り出しながらも、隣に座る子の完璧な姿勢や、対面にいる子のプロっぽい表情に、自然と視線が引き寄せられてしまう。
ことり「(私…やっぱり場違いかも…)」
手のひらがじんわりと汗ばんでくる。
ことり「(ううん、違う……。ことりは、ことり……! 確かにみんなすごそうだけど、ことりにだってできることはある! μ’sのとき、みんなと一緒にたくさんの笑顔を見てきたあのときの自分を信じたい…!)」
控室の時計が、静かに進む。
20分、30分……一人、また一人と名前が呼ばれ、部屋を出ていく。
そして、ついに自分が最後の一人になった。
ポーンッ!
?「お待たせしました。 南ことりさん、どうぞ」
インターホン越しに女性の声がした。
ことり「は、はいっ!」
ことりは立ち上がり、バッグの持ち手をぎゅっと握る。
呼吸を整え、ゆっくりと扉に近づく。
ことり「(ファイトだよ…! ことり…!)」
面接室の扉をコンコンコンとノックした。
?「どうぞ」
中から女性の声が聞こえた。
ことり「失礼します」
そういえば、今は東急の青ガエルはないんだってね?
熊本電鉄の青ガエルももうずいぶん前にないし。