うたって☆メロディランド♪   作:あいライス

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第5話「鬼の理詰めスポンサー」③

~その夜~

 

東京都渋谷区ではなく、茨城県牛久市。

 

小さな駄菓子屋『鬼塚商店』の奥にある一室。

 

冬毬は、今期の『うたって☆メロディランド♪』に関する資料を、ノートパソコンで見ていた。

 

画面に表示されているのは、ことりと千砂都の履歴書データ。特に千砂都を拡大してた。

 

 

冬毬「………」

 

 

(BGM:業-カルマ-)

 

 

~回想~

 

4月9日土曜日 午前8時

 

千砂都が乗る停留所の、次のバス停で、冬毬は目的の人物が来るのを待っていた。

 

やがて、予定通りの時刻に現れたのは、お爺さん。

 

彼はバス停の時刻表を確認すると、冬毬の横に立ち、いつものバスを待つ。

 

 

冬毬「突然失礼いたします。お時間少々、よろしいでしょうか?」

 

お爺さん「んっ? ワシに何か用かな?お嬢さん」

 

冬毬「私、こういう者です」

 

 

名刺を渡した。

 

 

お爺さん「鬼塚商店? 何だい?それは」

 

冬毬「茨城県牛久市に店を構える、よくある駄菓子屋です。  折り入って、あなたにお願いしたいことがあり、ここまで参りました」

 

お爺さん「ワシにお願い?」

 

冬毬「来週の土曜も、この時間におられますか?」

 

お爺さん「あぁ、ワシは毎週この時間のバスに乗るのがルーティンなんじゃ。 知ってるかい? すぐそこにあるスポーツジム。もうかれこれ10年前から通ってるよ。それがどうかしたかね?」

 

冬毬「でしたら好都合です。 その日、つまり来週の16日だけ、こちらの写真の女性の隣に立っていただきたいのです」

 

 

千砂都の写真を渡した。

 

 

お爺さん「んっ? 彼女に、何かあるのかね?」

 

冬毬「はい。一種の職業適性テストのようなものです。彼女はおそらく、あなたを見て席を譲ろうとするでしょう。その瞬間、私はその空いた席を横から奪います」

 

お爺さん「えっ!? それは、そのお嬢さんに失礼ではないか?」

 

冬毬「おっしゃる通りですが、試験なんです。 彼女の精神的耐久力を極限まで試すために、あなたに対しても少々無礼な態度を取るかもしれませんし、あなたの肉体的な特徴や、一つ先で降りるという個人情報も、彼女を論破するための道具として使わせていただきます。  もちろん、ただで協力を仰ごうとは考えておりません。 あなたの精神的負担、および拘束時間に対する謝礼として、試験終了後に、現金5万円を、ご指定の口座へお振り込みいたします」

 

お爺さん「5万…!? ただ立っているだけでかい?」

 

冬毬「いいえ。単に立っているだけではありません。私の無礼に耐え、彼女が動揺して困惑しても、ただの乗客として平然と見守っていただくという、高度な演技料を含んでおります。 いかがでしょうか? もしご協力いただけるのでしたら、この書面に記載をお願いします」

 

 

冬毬はバインダーに挟んだ契約書とボールペンを差し出した。

 

お爺さんはしばらく契約書と千砂都の写真を見比べ、腕を組んで唸っていたが、やがて観念したように息を吐いた。

 

 

お爺さん「う~ん……分かった。協力しよう。 だが、そのお嬢ちゃんがあまりに可哀想になったら、ワシの判断でフォローしてしまうかもしれんぞ?」

 

冬毬「その必要はありませんよ。理不尽な状況に直面した際、彼女が、子供たちに夢を与えるお姉さんとして、どう乗り越えるのか。私はそれだけが知りたいので」

 

お爺さん「子供に夢を与えるお姉さん?」

 

 

記入を終えて、バインダーを冬毬に返した。

 

 

冬毬「それでは契約成立ということで、16日の朝。またこのバス停でお会いしましょう。  良い週末を」

 

 

~回想終了~

 

 

冬毬「結果として千砂都さんは、正義感こそ人一倍強かったですが、あまりにも感情に流されやすい傾向にありました。 あの程度で、顔を真っ赤にして逃げ出すようでは、収録中のトラブルや、子供たちの予測不可能な行動という、現場のハプニングに対する対応力が、大いに心配されます。 ……さて明日は、南ことりさんに接触するとしましょうか」

 

 

その時、背後の襖が勢いよく開き、一人の女の子が入ってきた

 

 

かすみ「とまりん! とまりん! あ~そ~ぼ~っ!」

 

 

5歳の従妹:中須かすみ。

 

 

冬毬「おっと…」

 

 

かすみは無邪気に冬毬の背中に抱きつき、足をバタバタと動かす。

 

 

冬毬「かすみ。現在、私はお仕事をしています。用件は後ほどお願いします」

 

かすみ「え〜? とまりんのケチ! おしごとばっかりしてると、かわいくないおんなのこになっちゃうんだからね! かすみんみたいにかわいくなれないよ?」

 

冬毬「なんとでもどうぞ。可愛らしさが業務の遂行に影響するとは思いませんので。 姉者はどうしました?」

 

かすみ「なつみんもおしごとで、おでんわちゅうだった!   かすみん、つまんない!」

 

冬毬「わかりました。 どうしてもというのなら、あと10分待ってください。時計の長い針が8のところを指したら、今日の私のタスクは終了します。 そしたら、あなたの相手をするリソースを割くことは可能です」

 

かすみ「10ぷん? やくそくだよ! うそだったら、かすみんがかいた『とまりんのへんがおのえ』、おみせのげんかんにはっちゃうから! みんなにみせびらかしちゃうんだから!」

 

冬毬「……善処します。約束は守りますので、ご退室を」

 

かすみ「は~い! じゃ、8になったら、またとつげきするからね~!」

 

 

かすみは去ってった。

 

冬毬は再び画面の履歴書へと視線を戻した。

 

そこに映し出される、ことりの顔写真。

 

 

冬毬「南ことりさん……。見定めさせていただきます」

 

 

 

* * *

 

 

 

(BGM:軽やかな昼下がり)

 

 

~翌日~

 

4月17日日曜日

 

◇ショッピングモール 待ち合わせ場所。

 

 

ことり「海未ちゃん! 穂乃果ちゃん!」

 

海未「ことり」

 

穂乃果「ことりちゃん、こっちこっち! おっはよ~!」

 

ことり「お待たせ。ごめんね、少し遅れちゃって…」

 

海未「大丈夫ですよ。映画の上映時間まで、まだ余裕ありますから」

 

穂乃果「そうだよ! いや~ことりちゃん、今日も可愛いね~!」

 

 

穂乃果がことりの腕に抱きつく。

 

 

ことり「クスッ……。 その言い方、穂むらのおじさんみたいだね」

 

穂乃果「えっ!? やばい! ピチピチの女子大生なのに!」

 

海未「それより、映画館行きましょうか」

 

穂乃果「それより…?」

 

 

◇シネマコンプレックス

 

ことり「いい匂い…♪ やっぱり映画館に来たら、ポップコーンは外せないね」

 

海未「ふふっ、ことりは本当に甘いものに目がありませんね。では、私は塩味にします」

 

穂乃果「えっ? この匂い嗅いだら、キャラメルでしょ?」

 

海未「塩のほうがあっさりしてていいです」

 

ことり「あっ! 見て見て、ハーフ&ハーフなら二つの味を選べるみたいだよ。3人で分けるなら、これが一番いいんじゃない?」

 

穂乃果「おぉ~、ことりちゃん、ナイスアイディア!」

 

海未「ではそれにしましょうか」

 

係員「9時30分上映、 『劇場版名探偵コナン 純黒の悪夢』、只今より開場します」

 

 

* * *

 

 

◇フードコート

 

映画を見終えた3人は昼ご飯。

 

 

 

穂乃果「はぁ〜…、最後は本当に泣けたよ〜。 キュラソー、せっかく少年探偵団の子たちと仲良くなれたのに…! 最後はみんなを守るために、自分を犠牲にして、クレーン車で……!」

 

 

穂乃果は、ラーメン。

 

 

ことり「だからこそ、あんなに強くて優しい行動ができたんだと思うよ。記憶を失ったからこそ、本当の自分自身の心を取り戻せたのかもしれないね。 コナンくんも、最後まで諦めなくて本当にかっこよかったなぁ」

 

 

海未「そうですね。命をかけてでも守るべき本当の絆とは何か、非常に深く考えさせられる素晴らしい作品でした」

 

 

 

ことりはオムライス、海未は天ぷらうどん。

 

 

 

海未「ところで、ことり。ちょうど2週間が経過しましたが、お仕事のほうはどうですか? 少しは環境に慣れましたか?」

 

ことり「うん!すごく楽しいよ!  昨日の収録も、子供たちがたくさん来てくれて、みんなキラキラした目で私たちの歌を聴いてくれたの」

 

穂乃果「そっか~。 千砂都ちゃんとかのんちゃんも、今日一緒に来られればよかったのにね。また会いたかったよ」

 

ことり「2人も誘ったんだけど、今日はお家の用事があって、無理だったみたい…」

 

海未「それなら仕方ありませんね。 なら今度また、『あかり』に集まりませんか?」

 

穂乃果「いいね! この間、希ちゃんにいっぱいサービスしてもらったし。 千砂都ちゃんとかのんちゃんも、あの店の雰囲気、すごく気に入ってたよね?」

 

ことり「そうだね、今度はまた2人も呼んで、みんなで集まろう」

 

 

彼女たちから数メートルほど離れた、太いコンクリートの柱の陰にある2人掛けの席に、冬毬が腰掛けていた。

 

 

冬毬「……あれが、南ことりさんですか…」

 

 

そんな視線に気づくはずもないことり。

 

 

ことり「2人は大学どうなの?」

 

穂乃果「そうだ、聞いて聞いて! この間、サークルの見学に行ったんだけどね――」




純黒の悪夢もホント、良作ですね!

それがもう10年前の映画なんですね!
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