うたって☆メロディランド♪   作:あいライス

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第5話「鬼の理詰めスポンサー」④

ことり、穂乃果、海未「ごちそうさまでした!」

 

 

トレイを返却口へ。

 

 

穂乃果「さてと! 次はどこに行こうか?」

 

ことり「えへへ、久しぶりに3人でお洋服を見に行きたい! 2人に似合う、とびっきり可愛いお洋服を選んであげたいんだ!」

 

海未「ことり、できるだけ、スカートの丈は膝下のものにしてくださいね。あまり短いのは…」

 

ことり「う~ん、考えとく♪」

 

穂乃果「あ、それ、絶対に考えないやつだね」

 

海未「まったく……」

 

穂乃果「(よかった。ことりちゃん、また自信を持ってくれて。やっぱりことりちゃんは、笑顔でお洋服の話をしていてほしいもんね)」

 

海未「(歌のお姉さんという、子供たちと触れ合う新しい場所が、ことりをまた一回り強くしてくれたのですね。安心しました)」

 

ことり「んっ……?」

 

 

少し離れた場所で、4歳くらいの女の子が泣いて立ち尽くしてた。

 

 

穂乃果「あの子、どうしたんだろう?」

 

海未「迷子でしょうか?」

 

ことり「ごめん、2人とも、ちょっと行ってくる!」

 

穂乃果「ことりちゃん!?」、海未「ことり!?」

 

 

ことりは女の子のもとへ。

 

その後ろ姿を見送る穂乃果と海未は、顔を見合わせて、ふっと自然に笑みを零した。

 

 

穂乃果「ことりちゃん、本当にすぐ行っちゃったね」

 

海未「えぇ。歌のお姉さんになってから、より一層、子供たちの慈しみが深くなった気がします」

 

穂乃果「元々優しかったのに、さらにパワーアップしてるよ。もう、本物の天使だよ!」

 

海未「そうですね」

 

 

2人もことりの後を追って駆け出した。

 

一方、彼女たちのやり取りを、数歩後ろから追っていた冬毬は、その足を止めていた。

 

 

冬毬「(天使…? なるほど…。  歌のお姉さんは、地上に舞い降りた天使ですか。……非常に興味深い比喩ですね。 ならば、その天使の翼が、どれほどの強度を持っているのか、試させてもらいましょう)」

 

ことり「どうしたの?」

 

 

ことりは女の子の目線に合わせるように、その場に膝をついた。

 

 

女の子「ヒック……、ママがいないの…!」

 

ことり「そっか…。ママとはぐれちゃったんだね? 怖かったね、もう大丈夫だよ」

 

 

優しく女の子の肩に手を添える。

 

 

穂乃果「ことりちゃん、やっぱりその子、迷子だった?」

 

ことり「そうみたい」

 

海未「いつどこではぐれてしまったか、分かりますか?」

 

 

女の子は首を横に振った。

 

 

穂乃果「わかれば苦労しないよね?」

 

女の子「うん……」

 

海未「それはそうですが…」

 

穂乃果「えっと…、お名前言えるかな?」

 

女の子「……ゆうか……」

 

海未「ゆうかちゃんですか。 ここにいたならば、お母様もそう遠くには、行かれてないはずです。 この子が動き回っていなければ、周囲を探せば、すぐに見つかるでしょう」

 

女の子「ここにいた……」

 

ことり「うん! じゃ、ことりお姉さんが、ママを見つけてあげる!」

 

 

自然と出た一人称が『ことりお姉さん』。

 

 

女の子「ホント……?」

 

ことり「うん。絶対ママに会わせるから安心して。お姉さんを信じて待っててね」

 

穂乃果、海未「クスッ…」

 

 

背後から冬毬が近づいてきた。

 

 

冬毬「お取り込み中のところ、失礼します」

 

ことり、穂乃果、海未、女の子「…?」

 

 

(BGM:許すまじ…!)

 

 

海未「何か御用でしょうか?」

 

穂乃果「あ、もしかして、この子のお母さんですか?」

 

女の子「ママじゃない……」

 

冬毬「いいえ、違います。通りすがりの者です。 少々、そちらのお姉さんの言動に気になった点がありましたので、お声をかけさせていただきました」

 

ことり「私ですか?」

 

冬毬「はい。あなた、その子に『自分が母親を見つけてあげる』と申し出ていましたね?」

 

ことり「は、はい。迷子だと知って、放っておけなくなって。私たちで探してあげようかと」

 

冬毬「迷子なら、あなたが付き添って、歩き回る必要はないのでは?」

 

ことり「えっ…?」

 

冬毬「あまりにそれは非効率かと思いまして」

 

穂乃果「(そうかな?)」

 

冬毬「それよりは、迷子センターへ連れて行き、館内放送で呼びかけてもらったほうが、結果として早く母親を特定できますよ」

 

ことり「それは…そうかもしれませんが…。でも、知らない人にいきなり連れて行かれたら、この子もびっくりしちゃうかもですし…。 少しでも安心させてあげられたらって…」

 

冬毬「安心ですか?  その根拠のない優しさは、時に目的地への到達を遅らせる非効率を生みます。  あなたがこの子を連れ歩けば、母親とすれ違うリスク、あるいは迷子センターで待機している母親との接触機会を逃す可能性が増大しますけど、いかがですか?」

 

ことり「えっと…………」

 

海未「待ってください!」

 

冬毬「何か? 私はこちらの方と話しているのですが」

 

海未「すみません。ですが、一言だけ言わせてください。先ほどから聞いていると、あなたは効率ばかりを口にしていますが、この女の子の今の気持ちを、ちゃんと考えていますか?」

 

冬毬「考えていますよ。 考えているからこそ、一刻も早く母親と再会させるために、手っ取り早い迷子センターに連れてくほうが、最も合理的だと申し上げているのです」

 

海未「あなたは、この子の不安よりも、効率を優先なさるのですか?」

 

冬毬「当然です。感情に流されて最適解を見失うことこそ、当事者にとって最大の不利益ですから」

 

海未「合理性とは、関係者全員が納得して、初めて成り立つものですよ。当事者であるこの子が、あなたの提案に納得してない時点で、あなたの論理は破綻しています」

 

冬毬「それは……。……って、あなたには関係のない話では? これは私と、そちらの彼女の話です!」

 

海未「いいえ。私と穂乃果も、この子を最初に見つけ、守ると決めた一人です。れっきとした関係者ですよ!」

 

 

2人の視線がぶつかり合い、その間に火花が散る。

 

ことりは2人をオロオロと見守り、女の子が今にも泣き出しそうに顔を伏せる。

 

 

穂乃果「お〜い!」

 

ことり、海未、冬毬、女の子「……?」

 

 

いつの間にか、この場を離れていた穂乃果が、一人の女性の腕を引いて、こちらに向かってくる。

 

 

穂乃果「ことりちゃ~ん! 海未ちゃ~ん! 見つけたよ~!」

 

母親「ゆうか!」

 

女の子「…! ママ〜!」

 

母親「よかった~」

 

穂乃果「やっぱりすぐ近くにいたよ!」

 

ことり「穂乃果ちゃんすごい! どうやって見つけたの?」

 

穂乃果「えっとね、ことりちゃんたちが話してる間に、ちょっと周りを見てきたの。 そしたら、キョロキョロしてた人がいたから、『もしかして、ピンクのワンピースを着た女の子を探してますか?』って声をかけたら、ビンゴだったんだ!」

 

母親「本当にありがとうございました」

 

穂乃果「いえいえ、無事に見つかってよかったです!」

 

女の子「お姉ちゃんたち、ありがとう! バイバ~イ!」

 

ことり「どういたしまして。ママの手、しっかり握るんだよ~」

 

海未「お母様に会えてよかったですね」

 

 

ことりと海未が手を振り、親子が人混みの中へと消えていく。

 

 

冬毬「………無事に見つかって、何よりですね」

 

海未「そうですね。……さてと、では先ほどの話の続きですが――」

 

冬毬「では、私はこれで失礼します」

 

海未「えっ!? ちょっと待ってください! まだ話は終わっていませんよ!」

 

 

海未の静止も聞かず、冬毬は背を向けた。

 

早足でその場を立ち去る冬毬だったが、通路の角を曲がる際、一瞬「コケッ」と足をもたつかせた。

 

 

穂乃果「何だったんだろうね? あの人」

 

海未「本当ですよ。急に現れて、ことりの対応が非効率など…失礼にも程があります。 ことりの優しさをあんなふうに否定するなんて」

 

ことり「(ミント色の髪、黒縁のメガネ、淡々とした喋り方……。あれ? この特徴、どこかで聞いたことがあるような……)」

 

 

昨日の楽屋で、半泣きになりながら愚痴ってた千砂都の姿が浮かび上がる。

 

 

ことり「(もしかして…、千砂都ちゃんがバスで会った人って、今の人…?)」

 

穂乃果「ことりちゃん? どうしたの、ぼーっとして」

 

ことり「あ、ううん、なんでもないよ! ……さっ、2人とも。お洋服、見に行こうか!」

 

海未「そうですね。 ことり、もう一度言いますが、スカート丈は――」

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