野球
それは知っての通り日本の第二の国技ともいえるほどの
国民的スポーツだ。
プロ野球の歴史は古く、始まりは1934年と言われている。当時は大学野球の方が人気がありプロはそのおまけという扱いであったが、一人の大スターによってそれが覆されて以降は現在のように国の一大ムーブメントとして君臨し続けることとなった。
そして、歴史の古さというのはそのままファンの数に直結しており、日本ではプロ野球ファンというのはかなりの人口を誇っている。
かく言う私もプロ野球を嗜むうちの一人だ。
しかし、令和ともなった現代は野球の他にも様々な趣味・娯楽が存在し、高校生の野球ファンというのは決して多数派ではなく、したがって共に語る相手というのも少ないものだ。
関西ではかなり熱烈な野球人気が根付いているらしいが、ここ関東ではあちらほどの人口も熱意もなく周りに誰一人として野球を嗜んでいる人間というのがおらず残念である。
しかし、一人で試合を観るというのもまた一興である。私ほどのファンになるとオープン戦でも一人で観に行くのだ。オープン戦はドラ1*1の新人や2軍で台頭してきた選手と、既に一軍で活躍している選手との貴重な対決が見れるというのは、シーズン中とは違い新鮮でワクワクさせてくれる。
聞いてもらえば分かる通り、私は今オープン戦に来ている。開幕戦まであと残り僅かということもあり先程言ったような新人、若手の出番は少ないがそれでも一軍選手の高いレベルのプレーを見て彼らは確実に成長するだろう。
さて、試合も落ち着いてきたことだし少し何か買って……
ん?あれは…?!
私の高校でのスクールカーストのトップオブトップ、誰もが憧れる絶対的ギャルの
あのキャピキャピした感じ、少し苦手なんだよ。最早輝いてるだろ、物理的に。
あと、私が陰キャな上にエグいレベルのファンだとバレたら、終わる!
ここは、バレないようにそ〜っと、そ〜っと…。
「ナニしょうもねぇエラーしてんだァ‼︎佐藤‼︎」
「ヒィ」
「ん?あぁ、すんません大きい声出しちゃ……て…」
「ア、ドモ、コンニチワ」
お、終わった…
あたしは昔からけっこう野球を見るのが好きだった。
はっきりとキッカケを覚えているわけではないけど、多分テレビで見たとかそんなんだと思う。両親も野球が好きだったから、ちっちゃい頃はよく家族で球場まで観に行ってた。
そんなだから、小学生になって初めてできた友達に「野球観に行こうよ!」って早速誘った。
けれども、返ってきたのは
女子で野球好きというのはかなり限られてくるし、小学生ともなれば尚更だ。女子には女子っぽくないと言われ、さらに男子には男っぽいのが好きだから
結果として、幸いにもいじめとかはなかったけど孤立しちゃった。
中学校も地元のとこに進んだから尾鰭のついた噂が出回り、そこでも孤立。
高校でまたそうなるのは嫌だったから、お父さんの転勤に合わせて関東の方の学校に進学した。
今度は人気者になるためにオシャレに気を使い、流行りに敏感に反応して、そして野球好きということを誰にも明かさなかった。
世の中には一人で楽しめる人がいるらしいけども、あたしはやっぱり誰かとワイワイして観ていたい。
それでも、周りに誰もいない以上仕方がないからこうやって一人で観てたんだけど…。
「い、いやぁ〜、、て、天気がよくて清々しいですね!ナンチャッテ」
確か…同じクラスの
成績が良くて、物静かで、まさしく"文学少女"って感じの優等生。でも今はそんなの全く感じられない。なぜなら、一夜は私服の上にユニフォームを羽織り、左手に応援タオル、右手にメガホン、と"完全武装"しているからだ。
「単刀直入に聞くけどさ、見てた?さっきの」
「な、なんのことだかさっぱりです。佐藤のエラーとか見てませんし聞いてません」
見られてたか…
「はぁ、じゃあ好きにすれば。このことを広めるなり、弱みとして握っとくなりしときなよ」
「えっ。別にそんなことしませんよ。第一弱みですらないですし」
「野球をそんなに好んでいるなんて素敵じゃないですか」
素敵…か。
家族以外にこの趣味を肯定されたの初めてかもしれない。なんというか、世界が広がるような、そんな感覚すらあるように思える。
「逆に、私が野球観てたってこと、誰にも話さないでいてもらえますか⁉︎なんなら、今の私の格好も忘れてください!」
「えぇ〜。ど〜しよっかな〜?」
「頼みますよぉ」
「ん〜…!そうだ、じゃああたしと一緒に観戦してくれない?そしたら考えたがるよ!」
こうして、本来交わるはずのなかった
ノリと勢いの産物なので何卒宜しくお願いします