【悲報】ワイの異世界チート、過疎掲示板の鯖管だった 作:ハメットハペッポ
1:名無しの転移者
転移して3ヶ月経つんだけどさ
チートの使い道がマジで見つからん
聞いてくれ
2:名無しの転移者
はい
3:名無しの転移者
はいじゃないが
4:名無しの転移者
いや「はい」って言われたんだから話せや
5:名無しの転移者
ワイのチート「どんな布でもシワが取れる」なんやけど
6:名無しの転移者
は?
7:名無しの転移者
草
8:名無しの転移者
クリーニング屋やん
9:名無しの転移者
いや聞いてくれって
これ戦闘で1ミリも使えんのよ
魔物にシワ取れますよって言ってどうすんだよ
10:名無しの転移者
魔物の肌ツヤが良くなる
11:名無しの転移者
美容系チートで草
12:名無しの転移者
いやでも待て
布限定なんだろ? 生き物の肌には効かんやろ
13:名無しの転移者
>>12
マジレスありがとうそこなんよ
布にしか効かん
服のシワが取れる
それだけ
14:名無しの転移者
しょうもな
15:名無しの転移者
しょうもないで片付けるな
こちとら命懸けで異世界に来てんだぞ
16:名無しの転移者
命懸けつーか勝手に連れてこられたんだけどな
全員
17:名無しの転移者
それはそう
18:名無しの転移者
>>1
3ヶ月何して生きてたん?
19:名無しの転移者
>>18
それがさ
落ちた先がたまたま港町で
洗濯屋の婆ちゃんに拾われてさ
チート見せたら即採用された
20:名無しの転移者
勝ち組じゃねえか
21:名無しの転移者
は?
22:名無しの転移者
お前それ勝ち組だぞ
23:名無しの転移者
住所と仕事がある転移者がどれだけいると思ってんだ
24:名無しの転移者
ワイなんか転移初日に森のど真ん中で
3日間水探して彷徨ったぞ
25:名無しの転移者
ワイは転移先が山の斜面だったから
そのまま200mくらい滑り落ちたが
26:名無しの転移者
ワイは転移した瞬間目の前に熊みたいなのがいた
走った
27:名無しの転移者
転移ガチャの闇が深い
28:名無しの転移者
>>1は港町引いてる時点でSSRだからな?
29:名無しの転移者
>>1
お前さ
温かい飯食えて屋根のある場所で寝れてチートで稼げてるんだろ?
30:名無しの転移者
>>29
まあ……うん
31:名無しの転移者
死ねよ
32:名無しの転移者
言葉が強い
33:名無しの転移者
いや気持ちは分かる
34:名無しの転移者
分かるわ
35:名無しの転移者
ワイ今日の飯まだ食えてないからな
36:名無しの転移者
>>35
おま何大陸?
37:名無しの転移者
>>36
知らん
砂漠がずっと続いてる
38:名無しの転移者
アル・サハリアか……
水はあるんか
39:名無しの転移者
>>38
オアシスの街にはなんとか辿り着いた
でも文字読めないから仕事が見つからん
あとなんか変な宗教がある
40:名無しの転移者
変な宗教って言うなよ
お前がよそ者なだけだ
41:名無しの転移者
そりゃそうだけどよ
飯食うのに祈り30分ってなんだよ
42:名無しの転移者
飯食うのに祈り30分は草
43:名無しの転移者
腹減ってる時の30分は長い
44:名無しの転移者
しかもその祈りの所作間違えたら白い目で見られるらしいな
45:名無しの転移者
>>44
もう見られた
めちゃくちゃ見られた
詳しくは言えないんだけど俺が手を合わせた方向が最悪だったらしくて
隣のおっさん蜥蜴人にめっちゃ怒られた
46:名無しの転移者
蜥蜴人の説教は長いぞ
覚悟しとけ
47:名無しの転移者
マジで長い あいつら真面目すぎる
48:名無しの転移者
蜥蜴人エアプがいるな
真面目なんじゃなくてあいつらにとっちゃガチで許されんことなんだよ
お前がよその神殿でツバ吐いたようなもん
49:名無しの転移者
>>48
ヒエッ
50:名無しの転移者
だから文化は学べって何度も言ってんだろ
文字読めなくても周りの人間がどう動いてるか見れば分かることあるだろうが
51:名無しの転移者
正論だけどさ
転移初期にそんな余裕あるわけないだろ
生きるのに精一杯なんだよ
52:名無しの転移者
それはそう
53:名無しの転移者
ていうかチート自慢スレなのに
いつの間にか転移先サバイバルスレになってるんだが
54:名無しの転移者
本題に戻そう
チート自慢な
ワイは「触った石の重さが分かる」
55:名無しの転移者
…………
56:名無しの転移者
石?
57:名無しの転移者
石の重さ
58:名無しの転移者
見りゃだいたい分かるだろ
59:名無しの転移者
>>58
それな
持てばもっと分かる
60:名無しの転移者
精密な測定ができるならワンチャン鉱山とかで使えん?
61:名無しの転移者
>>60
あーそれは盲点だった
グラム単位で分かるなら鑑定系の仕事いけるかも
62:名無しの転移者
お前ら偉いな
ゴミチートから活路見出そうとするの
63:名無しの転移者
見出さないと死ぬからな
64:名無しの転移者
>>63
笑えないんだよなそれ
65:名無しの転移者
じゃあワイも言うわ
「半径3m以内の虫を察知できる」
66:名無しの転移者
虫wwwwww
67:名無しの転移者
ゴキブリハンターやん
68:名無しの転移者
いやこっちの虫シャレにならんぞ
ザルディアの森の虫は犬くらいのサイズあるからな
69:名無しの転移者
3mじゃ察知した頃にはもう目の前やんけ
70:名無しの転移者
察知して絶望するチート
71:名無しの転移者
範囲が3mじゃなくて30mだったらマジで有能だったのに
72:名無しの転移者
桁がひとつ足りない系のゴミチート多すぎないか
73:名無しの転移者
分かる
「10秒だけ足が速くなる」とかな
10分くれ
74:名無しの転移者
10秒で何をしろと
75:名無しの転移者
10秒全力で走った先に崖があったら死ぬぞ
76:名無しの転移者
それもうチートじゃなくてトラップだろ
77:名無しの転移者
>>76
草
78:名無しの転移者
せめて魔法使えればなあ
チートがゴミでも魔法でどうにかできるじゃん
79:名無しの転移者
使えないんだなそれが
80:名無しの転移者
>>79
なんで?
81:名無しの転移者
特別な臓器がないと魔法は撃てない
こっちの世界の生き物はマナを取り込んで魔力に変換する器官を持ってるんだけど
俺ら転移者はそれがない。例外なく
82:名無しの転移者
マナ?
83:名無しの転移者
そこからかよ
この世界のそこら中にある力みたいなもんだよ
空気中にも地面にも満ちてる。生き物はそれを体に取り込んで使う
84:名無しの転移者
それを変換するのが変換器官で
変換した結果が魔力ってこと?
85:名無しの転移者
そう
で、その器官を持ってる奴は魔法使い
持ってない奴は代わりにマナを体の中で回して身体強化ができる
どっちかしかできない
86:名無しの転移者
>>85
転移者は器官がないから魔法は無理ってことか
87:名無しの転移者
その通り
88:名無しの転移者
じゃあ身体強化はできるんだな?
89:名無しの転移者
できる。けど教えてくれる人がいないと始め方すら分からんぞ
90:名無しの転移者
ワイは現地の冒険者に土下座して教えてもらった
91:名無しの転移者
土下座は万国共通
92:名無しの転移者
>>90
で、どんくらいでできるようになった?
93:名無しの転移者
>>92
3ヶ月みっちりやって「ちょっと体が頑丈になったかな?」程度
マナを体の中で回す感覚が全然掴めん
こっちの奴らは子供の頃から当たり前にやってるらしいから感覚が違いすぎる
94:名無しの転移者
3ヶ月で「かな?」て
95:名無しの転移者
これ無理ゾ
96:名無しの転移者
ワイは独学で半年やった
死にかけた回数は数えてない
97:名無しの転移者
>>96
成果は?
98:名無しの転移者
>>97
殴られても前よりちょっとだけ痛くない気がする
99:名無しの転移者
気がするて
100:名無しの転移者
いや馬鹿にすんなよ
その「ちょっと」がなかったら死んでたことが3回はある
101:名無しの転移者
お前ら偉いよ普通に
102:名無しの転移者
つまり俺らの手札は「ゴミチート+身体強化(死ぬ気でやってちょっと)」か
103:名無しの転移者
そんなんで魔物とやり合えって言うんだから笑えるよな
104:名無しの転移者
笑えんが?
105:名無しの転移者
なあ思ったんだけどさ
チートの当たり外れって誰が決めてんの
106:名無しの転移者
それ聞くか?
107:名無しの転移者
>>105
全員一回は考えることだけど答え出た奴はいない
108:名無しの転移者
ワイらを転移させてる存在が意図的にやってんのか
完全ランダムなのか
どっちにしろ人の人生なんだと思ってんだって話だけどな
109:名無しの転移者
本来は魔王討伐のために送られてきてるはずなんだけどな俺ら
110:名無しの転移者
魔王ってもう200年前に倒されたんだろ?
じゃあなんで俺らまだ来てんの
111:名無しの転移者
>>110
定期的に出るなこの話題
112:名無しの転移者
まあ答えは出ないんだけどな
113:名無しの転移者
倒されたのに転移が止まらないの
システムのバグ説あるよな
114:名無しの転移者
バグで人生狂わされてるの最悪すぎるだろ
115:名無しの転移者
話戻すけどさ
>>1のシワ取りチート
冷静に考えたら生活系チートとしては上位だろ
116:名無しの転移者
確かに
衣服のメンテナンスって需要なくならないし
117:名無しの転移者
貴族の服とかやったら単価高そう
118:名無しの転移者
>>1はもう人生の正解引いてるのに
ゴミだゴミだって言ってんの贅沢なんだよ
119:名無しの転移者
ごめん……
ていうかみんなのチート聞いてたら俺全然マシだったわ……
120:名無しの転移者
気づくのおせーよ
121:名無しの転移者
遅くてもいい
気づけただけマシだ
122:名無しの転移者
>>119
ワイまだ飯食えてないんやけど
123:名無しの転移者
>>122
お前はまず飯食え
124:名無しの転移者
文字が読めたら仕事の幅も広がるんだけどなぁ
125:名無しの転移者
それな
看板すら読めないのほんまつらい
126:名無しの転移者
仕事の募集が壁に貼ってあるらしいけど
何書いてあるか分からんから毎回現地の人に聞いてる
127:名無しの転移者
聞ける相手がいるだけマシでは
128:名無しの転移者
>>127
それはそう
129:名無しの転移者
この掲示板の日本語が読める唯一の文字ってのが
なんか皮肉だよな
130:名無しの転移者
ここでしか文字が読めない
ここでしか通じる相手がいない奴もいる
しょうもない掲示板だけどさ
131:名無しの転移者
しょうもなくないが?
132:名無しの転移者
急にどうした
133:名無しの転移者
いやなんでもない
忘れてくれ
134:名無しの転移者
…………
135:名無しの転移者
おいおいしんみりすんなよ
チート自慢スレだぞここ
136:名無しの転移者
そうだった
じゃあ最後に最強のゴミチート決めようぜ
137:名無しの転移者
ワイ「くしゃみが3回連続で出る」
138:名無しの転移者
それチートか?
139:名無しの転移者
病気だろ
140:名無しの転移者
優勝
走っていた。
全力で、走っていた。
「なんで——なんでこうなるんだよ毎回毎回毎回ッ!」
叫びながら森の中を駆けている。背後から木をへし折る音が追いかけてくる。振り返る余裕はない。振り返ったら死ぬ。これは経験則だ。
「アリア!! お前なんで走ってんだよ!!」
「あなたも走ってるじゃない!」
「俺は囮だったんだよ!! 俺が引きつけてる間にお前が魔法を撃つ手筈だっただろうが!」
隣を並走する長耳の女——エルフのアリアは、息一つ乱さず俺と同じ速度で走りながら、心底不思議そうな顔をした。
「え? あなたが走り出したから逃げるのかと思って」
「囮で走り出したんだよ!! なんでお前まで逃げてんだ!」
「だって怖かったし」
「怖いのは俺だよ!!」
背後で木がもう一本折れた。近い。明らかに近い。
「いいから撃て! 今からでも撃て! あの程度の魔物なら指先で済むだろ!」
「嫌よ」
「なんで!?」
「昨日ネイルしたばっかりなの」
「…………は?」
「聞こえなかった? ネイル。昨日やったの」
走りながらアリアが右手をひらひらと見せた。淡い桜色に、小さな花の模様が入っている。
「可愛いでしょ? 銀貨二枚でやってくれたの」
「知るか!!」
アリアの体はマナで構成されている。
魔法を撃てば、その分だけ体が削れる。あの魔物を仕留める程度の魔法なら、消えるのは指先くらいのものだ。指先。たったそれだけ。
なのにこの女は——
「ネイルしてない方の指を消せよ!?」
「無理よ、両手にしてるもの」
「じゃあ銀貨四枚じゃねえかあああああ!!!」
依頼報酬の半額。報酬の半額をネイルに突っ込んだ女が、そのネイルを理由に仕事を拒否している。
「俺のチートは金すら稼げねえんだぞクソがあああああ!」
「急に何よ」
「お前と組んで依頼受けても赤字! チートは一銭にもならない! その上相方は囮を見捨てて逃げる! なんのために異世界に来たんだ俺は!」
「知らないわよ、勝手に来たくせに」
「勝手に連れてこられたんだよ!!」
猪が吠えた。近い。
前方に段差が見えた。結構な落差がある。猪の体はデカい。あの高さから飛び降りたら自重で潰れるはずだ。たぶん。
「……あそこ飛ぶぞ」
「えっ、嫌なんだけど」
「嫌って言うなお前は! 選択肢がねえの! 後ろを見ろ!!」
「ぎゃああああ来てる来てる来てるッ!!」
振り返ったアリアが絶叫した。さっきまでの余裕はどこに行った。
「おいてかないでよぉ!!」
「うるせえ掴まれ!」
アリアの腰に腕を回して、段差の縁で踏み切った。
落ちる。思ったより深い。
着地。膝に衝撃が走るが、折れてはいない。
見上げると、段差の上で猪が暴れていた。あの体で飛び降りたら足が折れる。分かっているのか、縁を踏み荒らすだけで降りてこない。
咆哮。灌木が何本か薙ぎ倒される。
だが、追っては来なかった。
「…………」
「…………」
アリアを下ろし、二人してその場に座り込む。
俺は息が上がっている。アリアは——三秒前まで泣きそうだったのに、もう涼しい顔で髪を整えている。切り替えが早い。
「……銀貨八枚」
「逃したわね」
「お前のせいだろ」
「私のせい? 囮のくせに逃げたのはあなたじゃない」
「囮は成立してたんだよ!! お前が魔法を撃たなかっただけだろ!!」
「ネイルが——」
「ネイルの話はもういい!!」
視界の端でチカチカと明滅する光が見えた──気がした。チート自慢スレに新しい書き込み。「くしゃみが3回連続で出る」。それに対するレス、「それチートか?」「病気だろ」——
……お前らの方がまだマシだよ。
げんなりする気持ちを飲み込んで、スレを閉じた。
「……飯、どうする」
「ないわよ。あなたが稼いでないんだから」
「お前もだろ」
「私は大魔法使いよ? 働くとでも?」
「お前がいちばん働けよ」
「……ねえ」
「なに」
「ネイル、可愛くなかった?」
アリアがまた右手をひらひらさせた。淡い桜色。小さな花。確かに可愛い。可愛いが。
「三日分の飯だろそれ」
「だって可愛かったんだもの」
「可愛くねえよ!! お前のせいで飯がねえんだよ!!」
「可愛くない……?」
アリアの目がうるっと潤んだ。
「泣くな。泣いても無駄だ。断じて無駄だ」
沈黙。
風が吹いて、木の葉が何枚か落ちてきた。
懐の寒さを思い出すような風だった。
「……パーティ、解散するか」
「すれば?」
いつものやり取り。いつもの結論。解散しない。解散できない。一人になったら、二人とも詰む。
体を起こした。膝が痛い。腹が減っている。チートは一銭にもならない。相方はネイルに食費を突っ込む。掲示板ではゴミチートの品評会が盛り上がっている。管理人の俺が、たぶんいちばんゴミだ。
——でも、やるしかない。この世界で生きるためには、それでも足掻くしかないのだ。
「別の依頼探すぞ」
「安いのにしてよ。疲れるの嫌だから」
「安いのしか受けられねえんだよ俺たちは」
吐き捨てるように愚痴ってから、立ち上がる。
膝が痛い。腹が減った。チートは金にならない。相方は働かない。ネイルは可愛い。
異世界生活は今日も赤字だった。