これからも末長くよろしくお願いします。
放課後のチャイムが鳴り、皆がガヤガヤしている中、千春は誰よりも早く教室を出ていってしまった。
これまでは一緒に帰ろうとか、常に俺の側にいた妹が、俺どころか箒にも何も言わずに、そそくさと出ていったのだ。
「一夏、千春はどうしたのだ?」
「さ、さぁ。俺もビックリしてるんだ。何時も一緒に帰ろうって言ってくるのに」
「..........つけてみないか?」
「..........つけてみるか?」
どうしても、何時もとは違う千春のことが気になり、千春をつけてみようという答えに陥った二人は、直ぐ様千春の後を追いかける。
思いの外、直ぐに千春は見つかり、陰に隠れながら千春を尾行する。
千春は何故か非常に周囲を警戒しながら進んでいた。
まるで、本当に何かを隠すように。
そして、我慢の限界が近付いて焦っているように。
「なんであんなに周りを気にしてるんだ?」
「分からん。だが、かなり焦ってもいるようだ」
二人は小声で会話をし、千春に気付かれないように気配を殺す。
実はこの二人、小さい頃から千春に何かないか心配で尾行(という理由のストーカー)をしており、それにより気配を殺すことを極限まで磨いたからである。
だがそれでも、千冬には簡単にバレてしまうが、おそらく千冬と束以外なら気付くことすら出来ないだろう。
恐るべし人外である。
「あ、階段を上がるぞ」
「うむ、では行こう」
千春が階段を上がる姿を見て、慎重に尾行していく二人。
だが、二人は途中で気付く。
この階段は、屋上に続く階段。
いったい千春は、屋上で何をするつもりなのか、と。
そして、千春が屋上に出ていったところで、二人は屋上の扉を軽く開けて千春の様子を見る。
千春は扉から少し離れたところで座っていた。
何をしているのだろうと、二人が思った時、千春の背中から、一対の翼が生えた。
その翼は神々しく輝く光翼であり、優しい天使のようにも、荒々しいドラゴンのようにも見える。
「ち、千春は、天使だったのか?」
「いや、あれはもう女神だろ」
と、二人が驚くよりも見惚れていると、千春が振り替える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一日に必ずやることが、私にはある。
それは、言葉通りに羽を伸ばすことだ。
アルビオンの光翼は、普通は長い間出さなくても何も問題は無いようなのだが、私だけ、一日に一回は必ず出さないといけない。
出さないと、その..........トイレを我慢しているような感覚に陥るからだ。
そして、屋上で翼を出してすっきりしていると、アルビオンが声をかけてくる。
『千春、扉のところに二人いるぞ?』
「誰!?」
扉のほうを向いて言うと、慌てた様子で階段を下りていったことが分かる。
「.........どうしよう?」
『まぁ、聞いていた二人はお前が信頼している連中だから、心配はいらないだろう』
「誰かは教えてくれないの?」
『言ってしまっては面白くない。だが、直ぐに分かると思うぞ?』
「なら、べつにいいや」
そして翼をしまい、屋上から降りて教室に戻っていると、入り口のところにお兄ちゃんとお姉ちゃん、そして山田先生がいて、何かを話している。
すると、私に気が付いたお姉ちゃんが寄ってくると、鍵を渡してきた。
「それは、千春の部屋の鍵だ。今のところ、相部屋の奴はいないから、一人きりなのだが、寂しくないか?」
「うん。大丈夫」
「そうか。だが何かあったり、寂しくなったときは私を呼んでくれ。直ぐにすっ飛んでいくからな。何せ私は一年の寮長だからな」
と、お姉ちゃんが肩を掴んで言ってくる。
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
「うむ」
お姉ちゃんは満足げに頷いて、お兄ちゃんのところに行った。
お兄ちゃんにも声をかけようとしたけど、まだ話をしていたので、先に部屋に行ってみることにする。
鍵の番号の部屋に行き、鍵を開けて中に入ると、高級ホテルのような部屋だった。
ベッドに座ってみると、凄くふかふかで、横になってみると体が沈んだ。
なんか、疲れが抜けていくような感覚で、そのせいか、眠気が襲ってくる。
「あー、アルビオン」
『なんだ?』
「今日一日だけで、いろいろあったねー」
『そうだな』
ウトウトしながらアルビオンに語りかけてみると、眠いのが分かるのか、最低限の言葉しか返してこない。
「明日からは、もっと.....素直に、なれる.....かなぁ?」
『お前なら大丈夫さ』
「あー.........そっかぁ」
そこで、私の意識は途切れる。
これからは、忙しい日々になりそうだと思いながら。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
対決当日、私はお兄ちゃんと同じ場所にいる。
飛びすぎ?
いいでしょ別に。
大して何も無かったんだからさ。
すると、入り口のほうから山田先生が走ってくる。
「お、織斑くん!織斑くん!織斑くん!」
「せ、先生落ち着いて下さい」
「は、はい――それで!ようやく着きました!織斑くんの専用IS!」
すると、静かに歩み寄って来たお姉ちゃんが、お兄ちゃんに補足を言う。
言っている内容は分かったけど、私には関係が無いことだった。
お兄ちゃんはISを纏って、感覚のチェックをしている。
「どうだ?どこか具合が悪いところはないか?」
「大丈夫だ。出来る。体に馴染む」
「そうか」
あ、お姉ちゃん安心してる。
そういうところを、普通に出していればいいのにな。
「千春、箒。行ってくる」
「ああ、行ってこい」
「セシリアさんの慢心打ち砕いてきてね!」
「ああ!任せとけ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結果だけを言うと、お兄ちゃんは負けてしまった。
負けたと言うよりは、自爆したって言うのが正しい。
「自らの武器の特性を知らないで使うからああなるのだ。次からはしっかりと確認しておけよ?」
「はい、分かりました」
お姉ちゃんに注意されて、へこんでいるお兄ちゃんに近付いて、励ます。
「初めて使ったんだし、ああなったのは当たり前だよ。次から気を付ければいいから」
「ああ、やっぱりお前は癒しだなぁ」
と、お兄ちゃんは元気になれたみたいで、少し安心して、アリーナに続く入り口に立つ。
後ろには、皆がいて、こちらを見ている。
「千春、ちゃんとIS用に調整しているか?」
「うん、アルビオンに頼んで、何とか間に合った」
「?織斑先生、そう言えば、千春さんは一体どうやって戦うんですか?」
疑問に感じていたのか、山田先生がお姉ちゃんに聞く。
「ん?ああ、山田くんにはまだ言っていなかったか。これは織斑家しか知らないことなんだが、この際バレても良いだろう。現に、あのバカに知られているからな」
バカというのは、束さんのことだろうな。
「まぁ、見ているといい。美しいものが見れる」
お姉ちゃんの言葉が終わってから、前を見て、光翼を出す。
いつもより早く出せたので、少しすっきりする。
「え、え!?せ、背中から翼が!?」
「ああ、千春は生まれながらに天使だったのだ」
「い、一夏。やはり」
「ああ。やっぱり女神だろ?」
後ろでいろんな会話がされているが、何とか気にしないで、カタパルトの先端、アリーナのところに向かう。
「いこう、アルビオン」
『ああ。温厚育ちの小娘に礼儀を教えてやろう』
アリーナに歩いて出ると、上にはセシリアさんがいた。
「天使?」
アリーナにいる誰かが言った言葉が、アリーナ全体に響く。
そして、セシリアさんに向かって飛び、セシリアさんと対面する形になる。
「な、なんですの?その背中の翼は」
「ん?これ?これは気にしなくてもいいよ」
「それより貴女、ISはどうしましたの?まさか、その翼がISだとは言いませんわよね?」
「うん、違うよ。私はISは使わない。だけど」
心の中で、スイッチを入れ換える。
「これを使わせてもらうわ」
何時もの性格から、お説教モードとはまた違う、もう一つの性格へと。
「アルビオン、
『Vanishing Dragon Brance Breaker !!!!!』
体のあちこちに宝玉が現れ、それを中心に鎧が装着される。
最後に兜を装着し、顔を覆って完成する。
「な!?その姿は!?」
「
ボソッと、鎧の名前を口にする。
セシリアには聞こえていないかもしれないけど、別に構わない。
それに、今の私の姿を見て、アリーナの皆は、誰も彼もが驚いている。
まぁ、白騎士と同じ時に現れた存在が目の前にいるのだから、仕方がないことだと思うけど。
今は、セシリアよりも、一夏と戦うほうが重要だ。
「まぁ、いいですわ。後でたっぷり聞かせてもらいますから」
「そうね。それがいいと思うわ。それじゃ、始めましょう」
開始のブザーが鳴り、それと同時にセシリアがレーザーを放ってくる。
それを私は少しも動かず、腕を振るって軌道を変える。
鎧には少し焦げ目が出来てしまったが、直ぐに修正される。
「ち、力ずくでレーザーの軌道を変えるだなんて、デタラメですわ!」
「それがドラゴンというものよ」
「ッ!?」
一瞬でセシリアの懐に潜り込み、拳を無防備の胴体に押し付ける。
セシリアはそのままアリーナの壁に激突し、それでもなんとか姿勢を整える。
............殴られたり、壁に激突したりしたときにいちいち揺れるの、よしてほしいわ。
「やりますわね」
「ええ。だけど、いちいち揺れるの、ムカつく」
「揺れる?何を言ってますの?」
「その胸の脂肪」
「な!?何を言いますのあなたは!?」
だって、ホントにムカつくもの。
「まぁ、それは後でいいわ。それに、そろそろ気が付かないの?」
「?何を言って.......ッ!?」
「気が付いたのね」
そう、セシリアのISのエネルギーが半分になっているのだ。
「ど、どうしてですの!?先程のダメージでも、ここまでエネルギーが消耗されるはずが.....ッ!?あなた!何かしましたわね!」
「お嬢様思考で良く理解したわね。別に、ただエネルギーを半分貰っただけ」
「エネルギーを、貰う?」
「あら、分からないのかしら?まぁいいわ。直ぐに終わるもの」
そろそろ時間も惜しい。
「時間が惜しいわ。終わりましょ」
「?何を言って」
セシリアに手をかざす。
『Dvide!』
そう音声が流れ、セシリアの機体から、エネルギーが流れ出で、私の中に入っていく。
「ッ!?またエネルギーが!?」
「まだまだ足りないわ」
『Dvide Dvide Dvide Dvide Dvide !!!!』
どんどんセシリアの機体のエネルギーが半減されていき、とうとう二桁くらいのエネルギーしか残っていない状態になる。
「なんなんですのその力は!?それでは、まるで」
「おおかね、貴女の思っていることで間違いは無いけど、それはまた今度ね」
そう言いながら、驚いて身動きをしていないセシリアを蹴り飛ばし、エネルギーをゼロにする。
するとブザーが鳴り、私の戦いは、勝利で終わった。
コンテナに戻る前に、性格を元に戻し、兜を収納しながら、セシリアさんのところに向かう。
「ごめんなさい。やりすぎちゃった」
「いえ、いいですわ。私も、自分がどれだけ愚かだったのか、あなた方のお陰で理解できましたから」
「.........セシリアさんって優しいんだね」
手をさしのべ、微笑みながらそう言うと、セシリアさんは顔を赤くして狼狽えた。
「や、やさしくなんかありませんわ!」
「そうなの?私にとっては十分優しいよ?」
「と、兎に角!今までは失礼しましたわ!すみませんでした」
「あ、いやいや!私のほうこそ、ごめんなさい」
「なんで貴女が謝りますの!これでは私の謝罪が帳消しですわ!」
「あ、ご、ごめんなさい」
「また謝ってますわ!」
「あ」
「まぁ、いいですわ。このあと、一夏さんとも戦うのでしょう?」
途端に話を切り替えてくるセシリアさん。
たぶん、あのまま行けば、また謝ると思ってやっているのだろう。
「うん、次はお兄ちゃんとだね」
「どちらが勝てとはいいはしませんけど、全力で戦ってほしいですわ。じゃないと、私、自信無くしますわ」
「うん、わかったよ」
それを聞いて満足したのか、笑顔でコンテナに戻っていくセシリアさん。
それを見届けてから、私も飛んでコンテナに戻る。
次はいよいよ、お兄ちゃんとの戦いだ。
どないでした?