時間は流れるのが速いですよねぇ。
コンテナに戻ると、どこにもお兄ちゃんが居なかった。
たぶん、私との戦いのために、セシリアさんのほうのコンテナに行ったのだろうと思う。
「千春!」
「あ、箒」
向こうのほうから箒が走ってきて、私の前で止まる。
後ろのほうからはお姉ちゃんたちも歩いてきていた。
「千春!お前が私たちを助けてくれたんだな!」
「え?あ、そうなるね」
「ありがとう!本当にありがとう!」
箒は抱き付きながらそう何度も繰り返して言ってきた。
あのときは余程怖かったのだろう。
ミサイルが自分達の国に向かって何百という数で押し寄せてきて、軍もたくさん押し寄せてきた。
小さかった箒には、かなりの恐怖だったろう。
「いや、いいよ別に。箒たちが危険だったから出ただけだし」
「それでもだ!」
あー、これはまだかかりそうだなと思いつつ、お姉ちゃんのほうを向く。
「千春、一夏に手加減はするなよ?」
「うん。流石にお兄ちゃんの剣だと、私も無事じゃすまないからね」
「ほう、そうなのか。束のやつ、対抗策は作っていたのか」
「私の鎧は、100%エネルギーで出来てるから。だから硬いし、いくらでも修復できる」
「そして、エネルギーで出来てるからこそ、零落白夜も通用すると」
「うん」
と、二人で難しい話をしていると、山田先生が連絡してくれる。
どうやらお兄ちゃんの準備が出来たようだ。
すると、箒が離れてくれた。
「千春、勝って来てくれ」
「あはは、お兄ちゃんも応援してあげたら?」
「いらん!」
堂々と言っちゃったよ。
まぁ、さっきのセシリアさんとの戦いで感覚も掴めたし、次は完璧に動ける。
そう思いながら、カスパルトのところに立って、鎧を纏う。
足がISサイズじゃないけど、踵を合わせてみる。
「お姉ちゃん!これ動かして!」
「ん?まぁいいが。気を付けてくれ」
と言って、カスパルトを動かしてくれる。
少しバランスを崩しそうになって、ぐらついてしまったが、なんとか踏ん張って飛び立つ。
飛び立った正面にはお兄ちゃん。
白い機体に身体を包んだお兄ちゃんと、顔まで隠す龍の鎧に身を包んだ私。
「やっぱり千春だったんだな。あの時の」
「あ、やっぱり分かった?」
「そりゃあ、翼に見覚えがあったからさ。それに、優しさっていうか、なんか雰囲気が似てたんだよな」
「あらら」
そう会話していると、ブザーが鳴り、試合が開始される。
話すのが長かったかな?
「じゃあ、ブザーが鳴って試合が始まったし、そろそろやろうよ」
「そうだな。だけどあまり千春とは戦いたくないんだけどなぁ」
「え?なになに?負けるのが怖いの?」
「ばっ!?違ぇよ!」
私が少しからかうと、必死になって否定してくるお兄ちゃん。
「じゃあ始めようか」
スイッチを入れ換えて、戦闘モードになる。
「楽しい兄妹喧嘩を」
その言葉と同時に、私は一夏の懐に潜り込み、胴体を殴ろうとすると、ギリギリで剣に防がれる。
流石に、この力を知っている一夏は、直接触れてこようとしない。
でも、殴られた衝撃が無くなるわけではないため、少し吹き飛ばされる一夏。
「危ねぇ、もう少しで触れるところだったぜ」
「流石にこの力を知っていると、対策が練られるものね」
「当たり前だ、直接触れなきゃ、その半減の力は使えないからな」
そう、この力の弱点は直接相手に触れないと発動されないのだ。
だから、相手と自分の間に何か違う物で防がれると、この力は発動しない。
私が、速さに特化しているのは、間に物を挟まれたり、かわされたりしないようにするためだ。
「でも、速さを変えると、どうなるのかしら」
「!?」
スピードを一段階上げて、一夏の後ろに回り込む。
因みに、私の速さの段階は六段階存在する。
さっきまでのが一段階で、今が二段階だ。
二段階になると弾の速さと同じになる。
「遅いわよ」
腹を殴り、そのまま直進して上に上がり、そこから全力で降下する。
地面に激突し、煙が立ち込める中から、私だけ出ると、アリーナは静まり返る。
警戒しながら煙を見ていると、一瞬青い光が見えた。
零落白夜が発動したことを感じた私は、全力で距離を取ると、煙から一夏が出てきて、私の所に突っ込んでくる。
「うおおおおおおおお!!!!!」
「猪かあんたは!」
掌にエネルギーを固めて、一夏に放つ。
一夏はそれを剣で切り裂いて、それでもまだ突っ込んでくる。
「甘い!」
『Dvide!』
一夏からエネルギーを半分奪い、自滅するのを速める。
だが、この時私は、どこかで油断していたと思う。
ここに来るまでエネルギーが切れるはず、なにせここはアリーナの端っこ、だからたどり着く前に切れる、と。
だから、一夏が目の前まで来たとき、反応が遅れた。
「貰ったぁ!」
「!?」
振り上げられた剣は、私の鎧を切り裂いて、解除させる。
それと同時にブザーが鳴り、試合が終わる。
一夏のギリギリ勝利で。
翼を使って地面に降りると、前に一夏も降りて、ISを解除した。
それで、私は戦闘モードを解除して、もとの性格に戻る。
「いやぁ、油断はしないものだね」
「その少しの油断のお陰で勝てたぜ」
と、お兄ちゃんが言い終わると、急に顔を背けた。
顔を赤くしながら。
「ん?どしたの?」
「いや、あの.......」
「なになに?あっちに何かあった?」
「いや、そうじゃなくて、ま、前」
「前?」
それで前を見てみたが、あるのはお兄ちゃんと、アリーナの壁だけ。
「お兄ちゃんしかいないけど?」
「そうじゃなくて!自分の身体を見てみろって」
「ん?」
自分の身体を見下ろしてみると、ISスーツの胸の部分、そこが横一文字に切り裂かれ、素肌が見えている。
つまり、胸がさらけ出ているというわけだ。
「あ、これ借り物なのに!」
「いやそこじゃないだろ!?」
「一夏」
すると、お兄ちゃんの後ろには、お姉ちゃんが立っていた。
お兄ちゃんは声をかけられた時点で冷や汗が出まくっていて、どこか具合が悪そうだ。
「あ、お姉ちゃん!」
「ああ、千春、お前は更衣室に戻って着替えてくるといい。いつまでもそのままだと風邪を引いてしまう」
「あ、うん、わかった」
「じゃあ一夏、少し話そうではないか」
「い、いや。これは事故であって.......」
お姉ちゃんに更衣室に向かうように言われ、アリーナから出るときに、後ろでそんな話が聞こえたけど、たぶん私に勝った感想を聞くんだろうな。
『いや、違うんだが』
「ん?なにアルビオン」
『いや、気にしないでくれ』
「?変なアルビオン」
と、私はアリーナを後にした。
この後、更衣室でシャワーを浴びていた千春以外の生徒は皆、一人の男の断末魔を聞いたという。
どないでした?