【完結】クレマンティーヌを愛でるだけ   作:鵲一号

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『多分もう続かないと思います。』…………ってよぉぉ~~~~~~~。

『言っておく』ってのはわかる…………。スゲーよくわかる。
やる気もねえのに無責任に続きますと言うと期待してくれてる読者さんにメイワクがかかるからな……。

だが『それで続く』のはどういうことだああ~~~~っ!?
一度続かねえって言ったならもう『続き』を書かねえでいいっつーのよーーーーーーっ!!
ナメやがってこの前書きィ、超イラつくぜェ~~~~ッ!!

感想とか評価とか増えたからちょっと筆が乗ってってんじゃあねーか!
それならもっと続けてみやがれってんだ! チクショーーーーッ

※すいません、続きました。ギアッチョにタコ殴りにされました。
※いつエタってもご勘弁下さい。


クレマンティーヌと善行するだけ

「────と、以上が、今の王国の現状で御座います」

「ふん……」

 

バハルス帝国、帝都アーウィンタール、謁見の間。

そこにはクライムを伴とし、無事に(王国の惨状を見るにそう言って良いのか不明だが)国外逃亡に成功した、ラナー王女の姿があった。

それに相対するは、鷹揚に玉座に腰掛けた、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

バハルス帝国、現皇帝である。

 

「急にそなたが我が国の門を叩いた時は、驚愕したが……、要するに、亡命か」

「とんでもございません。私はあくまで、我が国を憂いての、使者で御座いますわ」

「と言うと?」

「もはや王族も貴族も、宛に出来るものはありません。我が国の愛する民を救えるのは、帝国のお力しかありません。それを伝えるための、使者で御座います」

「(よくもまあ、この状況で口が回るものだ……)」

 

確かにジルクニフは、腐敗した貴族を一斉に粛清したことから、“鮮血帝”の異名を持つ、苛烈なる政治を行う皇帝だ。

仮に帝国が王国を攻め込み、併呑し、領土としたなら、今の王国を腐らせている諸々は、彼の手により、かつての帝国貴族と同じ憂き目に合う事だろう。

それはまさしく、ラナーの言う通り、民を救うための最善手とも言えた。

言えた、が。

 

「(この女がそれだけで、使者などという殊勝な真似をするはずがない)」

 

ジルクニフは、一端ながらもラナーの()()を見抜いている。

ただの頭が良く、政治の手腕が良く、国を思うだけの美姫ではない、と。

なにせ、彼個人的な“嫌いな女ランキング”堂々の一位を飾る女性だ。

今は公私を混同せず、あくまで皇帝として、為政として対応しているが、個人的に会いに来たのならば、即座にケツを蹴飛ばして帝国から追ン出している所であろう。

そこも見抜かれて、名目上使者として現れているのならば、やはりこの女は嫌いだと再認識するのであった。

 

「(が、まぁ、この場で幼稚な口喧嘩をしても、無益なだけか)」

 

気になる箇所は幾つもある。

だが、それを指摘したとしても、個人的な溜飲が下がるだけ。

皇帝として、王女として、それは無駄以外の何物でもないだろう。

むしろ、何処からかその事実が漏れたなら、自らの汚名にも繋がる恐れすらあった。

ラナーの狙いがそれだとするなら、乗るだけ馬鹿を見るのはジルクニフだ。

要するにラナーいじめを楽しむ機会は今ではない、と判断した。

機会があったら鬼の首を取ったように、気になる箇所を詰めてやろうと思っている辺り、この皇帝、イイ性格をしている。

もともと帝国は機会さえあれば、王国を攻め落とそうと思っていた所である。

渡りに船とはこの事だ。

情報が全て本当であるならば、帝国はまさに絶好の機会を得たと言える。

が、情報源がほかでもないラナーという所が、どうしてもジルクニフには引っ掛かっていた。

 

「王国戦士長ガゼフ・ストロノーフが死亡したという話、事実だろうな」

「間違いありません。死体が持ち帰られ、国葬までされましたもの」

「ふむ……。死因は?」

「さあ、そこまでは……。討ち死にではあるのでしょうけれど……」

「(隠しているのか、本当に知らないのか、さて……)」

 

引っ掛かってはいた、ものの。

両国の戦争における最大の壁であった、戦士長が戦死長したという情報は、かなり有益である。

あれには帝国自慢の四騎士も手を焼かされいたものだ、と考えると、なるほど、攻め込むには軍を立て直す暇も与えず、機敏に動くほうが良いだろう。

ジルクニフはそう思案した。

さらに、と考えを深める。

何せ攻め落とせば、王国の民は帝国の民となるのだ。

為政するに当たり、腐れば腐るだけ、その後が面倒になるのは間違いではない。

今も加速度的に腐敗が進む王国の事を想えば、なるほど、ラナーの言う“愛する民を救う”というのも、あながち間違いではないと言える。

しかし事を起こす前に、はっきりとさせておきたい一つ懸念があった。

ジルクニフはそれを真正面から、物怖じせずに尋ねる。

 

「それで?」

「恐れながら、それで、とは?」

「国を売るような真似をして、そなたは何を得するのだ、と。聞いているのだ」

「売国などと、滅相もございません。私はただ、帝国の元、安全に統治された地で、民のため、善政を再び敷ければ、それだけでよいのです」

「(反吐が出そうだ……)」

 

言っていることだけ聞けば綺麗に見えるが、要約すれば我が身可愛さの保身ではないか。

ジルクニフはそう結論づけ、こいつは単に逃げてきただけだ、と、ラナーの事をげんなりした目で見つめた。

しかも、ちゃっかり帝国の政治に口出しする気満々である。

一抜けした自分ならば、ある程度の地位も確約されるとでも思っているのだろうか。

そんな事、許されるはずがあるまいと。

 

「悪いがそれは叶わない話だ。仮に我が国が王国を攻め落としたとて、その統治は我々がするもの。当然、そなたの割り込む隙間は無い」

「そうですか……、それは、とても残念です……。民の為を思っての行動だったのですが……」

「とはいえ、危急を知らせに来た、他国の王族を無碍にするのも醜聞が悪い。今後は離宮にでも籠ってもらうことになるだろうな」

「皇帝陛下の御心のままに」

 

ジルクニフは、ふん、と鼻息を一つ漏らすと、騎士を呼びつけ、ラナーを空いている離宮へと案内させた。

これから王国へ侵攻する準備を始めるのであろう、主だった臣下も収集し、会議を始めるようだった。

それを尻目に、ラナーは半ば連行されてゆく。

先導をする騎士に、大人しくついていくラナー()()()()()は、不安そうな面持ちで歩みを進めていた。

 

────一先ずは、クライムと安穏に暮らす計画第一歩、成功ね。

 

もちろん、ラナーの不安な顔は演技である。

当然ラナーには、帝国で政治などに関わる気はなかった。

ただクライム(ペット)と危機を脱せただけで、今は十分である。

しかも帝国の庇護まで得られるとは、御の字中の御の字だった。

ジルクニフは知らないうちに、一枚上手を取られていてしまっていたようだ。

 

 

所変わって、件の腐敗がどんどん進むリ・エスティーゼ王国の王都。

ついに大通りにもうらぶれた者がふらふらと出歩くようになる有様になっており、いかにもな世紀末の様相を呈していた。

酒を瓶ごと煽って現実逃避するものやら。

娼婦でもないのに煽情的な格好で男を誘い、日銭を稼ごうとする女性やら。

怒声をあげて胸ぐらをつかみ合い、そのまま殴り合いの喧嘩に発展する者達やら。

堂々と麻薬を売りつける者に、それを購入してしまう者やら。

見目麗しい女性と見るや、布で口を抑え、路地裏に拉致する者やら。

そして、それらを咎めるべき警備兵が存在しないという現実やら。

もう、誰が何処から見ても“だめだな”と思わされる光景が、大通りのそこら中に広がっていた。

事実、国民も皆が皆“だめだ”と思っているのか、迷惑ごとに加担していない者も、誰もが生気のない目で日常を送らされている。

()()を除いて。

 

「みんな楽しそうじゃんねー! 良きかな良きかな!」

 

世紀末な光景を、楽しそうに眺めるクズ二人が、ここにあり。

方や喧嘩を見てはもっとやれもっとやれと囃し立てるし、方や男を誘う女性を見て脳内でいいねボタンをタップしていたりするし。

常人の発想とは到底想えない。

どちらも常人ではなかった。

ならば仕方ないのだろう。

おそらく。

 

「なな。なぁ、あ、あんたら、ひひっ。は、八本指に入らないか、へ、へへっ」

「あ?」

 

そんなクズ二人が、このイカれた王都をスキップしながら楽しげに闊歩していると、明らかに様子のおかしい男に絡まれた。

男の目は落ちくぼみ、頬はこけ、視線はあちこちを向き、足元はおぼつかず、吃音がひどく、何が楽しいのかへらへらと笑っている始末である。

リアルで栄養失調が悪化したストリートチルドレンの貧困層がこんな症状になるらしいな、と少年は記憶の中を探って思い出していた。

環境破壊が進みに進んだ、あのリアルで見られるような、狂った体調の輩である。

どう考えてもマトモな手合ではあるまいと、当たりをつけていた少年であった。

 

「うわ、薬中じゃん。話しかけてくんなよ、キモ」

 

薬中、薬物中毒者の略称だろう。

確かにそう言われて男の顔を良く見てみれば、小学生の頃“ダメ、絶対”と啓蒙されたポスターに、似たような顔立ちの写真が掲載されていたかもしれない。少年はそう回顧していた。

なにぶん社会人になってからのほうが長いので、既に朧気な記憶なのだが。

あの壊れきった世界でも、小学校という僅かに残った良心の場には、善良な教師も存在し、運良くそんな教師に教わった少年は、一度“だめだよ”と言われたことは、深く覚えている方であった。

幼子への教育とは、まこと大事なものである。

そんなものの一切がもはや行われないであろう王国で、場違いな感想を抱いていた。

それにしても見ただけでよく分かったな、とクレマンティーヌに少年は関心する。

 

「いやぁ、八本指の撒いてる麻薬ってさぁ。禁断症状はあんまなんだけど、依存性がやべーのよ。だからずっと使ってるやつはラリパッパで、こうして常に、にへらにへらしてる訳よね」

 

なるほど、納得の話である。

少年も【YGGDRASILL】をやり始めの頃は、常に楽しくて、口角が上がりっぱなしの、とてもじゃないが人に見せられない顔でプレイしていたものであった。

今思い返してみると、リアルの娯楽も、王国の麻薬も、大して違いはなかったのだろう。

きっとこの男も、過去の少年のように、あんな感じで、常時楽しくて仕方ないのだ。

そう考えると、眼の前の薬中男にも、すこし親近感が湧いてくるから不思議なものである。

薬中に親近感を抱く時点で相当な異常者であることには、とりあえず目を瞑ることにした。

しかし、何故にクズ二人は、ギャングのスカウトを受けたのであろうか。

 

「ひひひっ。見りゃ、見りゃわかるぜ。今の王都を浮かれて歩くやつなんざ、か、かなりキマっている()()だ。あ、ああ、あんたらにゃ、カ、カタギは似合わねえ、へへっ」

「正義バカを片付けたのに、今度は悪玉に目ぇつけられんのかよ。ここは何? 地獄か何か?」

 

全くである、少年はそう憤った。

せっかく暮らしやすい街になり、いつでもパーリィできる素敵な拠点が出来たと思ったら、今度は関わり合いになりたくないギャングの方からお声がかかるとは。

とはいえ何故? と少年は思案した。

ギャングに勧誘されるなど、今まで大した痕跡を遺してきていない自分たちからすれば、青天の霹靂である。

確かにレベル100二名のアウトローコンビなど、事実を知れば喉から手が出るほど欲しい人材だろうが、そこは隠蔽済み。

気になった少年は何故声をかけたのかと、様子のおかしい男に尋ねた。

 

「そそ、そりゃ、そりゃ、あんたらみてえな、かなり高度な()()を連れて行きゃ、お、おお、俺の株も上がるし、もっと、いい思いができ、できるってもんだ、へへへ、へへっ」

「…………あ~、そゆこと……」

 

すわギャング内では名の知れたスカウターなのかと思っていたが、単純に売名目的の行為であったようだ。

察するにこの男はヒラ構成員なのであろう。

動機はもっと麻薬が欲しいとか、そんな所だろうか。

付き合っちゃいられない、行こう行こう、とクズ二人はスカウトを無視して歩き出した。

 

「おおおお、おい、待ってくれ、待ってくれよ、オイオイオイ」

 

男がクレマンティーヌの肩に手をかけようと、腕を伸ばした。

 

「っせーな」

「へっ」

 

そして首がポンと飛ぶ。

クレマンティーヌは、ただ鬱陶しくて腕を払おうとしただけだが、腕を貫通して、首までイってしまったようだ。

あまりにうざったくて、力加減を誤ったのだろう。

ちなみに、腕も無事に飛んでいる。

 

「あヤベ、殺っちった。ごめん。めんどくさいことになる前に逃げよ逃げよ」

 

ヒラだろうとギャングの構成員である。

殺った所をギャングに見られていたら、難癖つけられるのは間違いない。

もしかしたら、そこまで見越して上司が声をかけてくる手筈だった可能性もある。

いわゆるマッチポンプと言うやつだ。

クズ二人は、切断面からだくだくと血溜まりをつくる死体を置いて、スタコラサッサとその場を逃げ出した。

 

「……………………」

 

そして、少年の懸念通り、そんな二人を見やる双眸が物陰にあった。

 

 

「でさぁ。マジなんでこうなんの?」

 

次の日。

クズ二人は路地裏で六人の男女に囲まれていた。

 

「それをあんたが言うかい。うちの麻薬取引部門の部門長が見てたんだぜ、うちの構成員を殺す所を」

「…………やっぱ迂闊だったわ。マジでごめん、ご主人サマ」

 

許す。

何故なら少年も、同じ事をされたら同じ事をしていただろうから。

そしてきっと、力加減を誤っていただろうから。

クレマンティーヌを責める権利は無かったのだった。

 

「それで、何? 報復? みみっちい。“八本指”の“六腕”サマともあろーものが」

「ほう、ご存知だったか。流石だな」

 

そうして一歩前に歩み出たるは、入れ墨まみれのスキンヘッドの男。

“闘鬼” ゼロ。

六腕最高幹部の一人である。

そのいかにも厳しい風貌は、明らかに只者ではないと、見るものを震え上がらせる威圧感があった。

クズ二人は特に何も思っていなかったが。

ところで、はて六腕とは、と。少年はそう首を傾げた。

 

「要するに八本指の武力担当ね。こいつらがいるから、今まで王国で八本指が好き勝手出来てたようなもんよ」

 

なるほど、蒼の薔薇という抑止力がいてなお、麻薬だの娼館だのが横行していたのは彼らのせいだったのか、と少年はそう納得した。

となると、それだけの腕前を持っているのだろう。

レベリングする前のクレマンティーヌだったら、六人に囲まれたら危うかったのかも知れない。

それに、よくよく見ると、六人の中に一人異形種も混じっている。

アンデッドだ。

なんとなく親近感を覚え、少年は会釈した。

 

「……? …………?」

 

向こうからも困惑気味の会釈が返ってきた。

律儀な骨である、“不死王” デイバーノック。

その異名が逆鱗に触れるものが特にいなかったのは、不幸中の幸いだった。

 

「本題に入ろう。報復などという下らない話をするために、六腕を集めたわけではない」

「はあ」

「どうだ、あのザコが言っていた通り、本当に八本指に入らないか」

「はあ」

「八本指の監視網を甘く見てもらっては困る。知っているぞ、毎日数件起こる不審死の原因が、誰であるかを」

「はあ。…………はあ?」

「もはやこの国に強者は我々以外に居ない。だと言うのに、まるで()()()()()()()()()()()()()()を作れる()()()など、しっかり探せば意外とあっさり見つかるものだ」

「………………、痕跡を遺さなくてもそういう方向で見つかることもあんのかよ。ちょっと勉強になったわ……」

 

クズ二人は痕跡を遺さないことに関しては病的に上手い。

上手いが、ローラー作戦を用いて消去法で当たりをつけられると、なるほど確かに、王国で虐殺を楽しめる奴なんてそうそう居ないだろうと思われる。

というかむしろ、今の王都に限って言えば、クレマンティーヌ以外には居ない。

殺人事件が起こったとしても、一方的ではなくどちらも負傷しているか、咄嗟に殺されたように傷跡が一つしかないようなものか、くらいしかない。

いくつも穴が空いているような虐殺死体など、クレマンティーヌしか作れない、というか作らないだろう。

過去に冒険者からプレートを奪ってハンティングトロフィーを作っていたように、弄んだ死体をその場に残す、クレマンティーヌの悪癖が災いした瞬間であった。

 

「あの、ほんと……、ほんとにごめん、ご主人サマ。ごめんなさい」

 

かなり悪気があるのか、縮こまって謝罪してくるクレマンティーヌを、まあまあと少年は嗜める。

何故なら少年も少年で、避妊は特にしていないからだ。

こんな国で一般人に夜這いしてるのは誰? お前や! と言われたら、少年も謝罪一択しかない。

叱る権利などあるはずもなかった。

というか、良く考えたら自分もかなり油断しているな、と。少年はそう自戒していた。

 

「はぁ……♥ マジうちのご主人サマ神なんだけど♥」

「話を続けていいか?」

「あ、どぞ」

 

良くこの状況で惚気られるなと、少し引いていたゼロにより、流れを戻される。

 

「それでどうだ、入るのか、入らないのか」

「ちな、断るって言ったら?」

「なんのために六腕を集合させたか、わからないのか?」

「ゔぁー……」

 

クレマンティーヌがものすごくげんなりした顔で、ちらりと少年を見やる。

少年もものすごくげんなりした顔をしていた。

当然、クズ二人はギャングの仲間入りをするつもりはない。

二人とも何かに縛られるのが大嫌いなのだ。今更組織に属する気は毛頭なかった。

ついでにゼロの頭にも毛はなかった。

どうでもよかった。

それも、特に国家転覆の意思や、国の覇権を握りたいという考えもない。

八本指に入るなど言語道断でしかなかった。

かと言って、ここで逃げてしまうと、ずっと粘着され続けることであろう。

それもそれで、うざったくて仕方がなかった。

クズ二人が、空を仰いで重苦しいため息を付いていると、それが答えだと認識したか、六腕がそれぞれの得物を構え、臨戦態勢に入る。

 

「ならば、己の立場というものを弁えてもらうとしよう……!」

 

ゼロの入れ墨が発光を始める。

それを見て曲芸かな? と少年は呑気な考えをしていた。

ゼロは全てを発光させていない辺り、どうやら殺すつもりではなく、痛めつけてから、再度答えを聞こうという腹づもりのようであった。

またもクレマンティーヌは、ちらりと少年を見やる。

少年は少し考える。

先ほども考えたように、適当にやり過ごしても結局はまたこいつらに粘着される日々が始まるだろう。

それは、蒼の薔薇に粘着されるのと全く同じことではないか。

だったら、こいつらも蒼の薔薇と同じ対応で良いのではないか?

少年の考えは実に簡単で、短絡的なものであった。

だが、それに否やを返すものは特に居ない。

なので、首切りサインを示した。

パーリィタイムである。

 

「おけおけ」

「な」

 

にを言っている、と続けたかったのであろう。

ガチ装備に早着替えしたクレマンティーヌにより、ゼロの首は、本人が認識する間もなく、すっぱり飛んだ。

次に、詠唱を始めようとしていたデイバーノックの全身が、一瞬にして粉々に砕かれる。

360度全方位から、力任せに武器で殴打され、挫滅させられたようだ。

ペシュリアンはフルプレートの上から穴を無数に開けられ、サキュロントは全身を切り刻まれ、ぶつ切りと化した。

レイピアを握っていたマルムヴィストは、クレマンティーヌの対抗心が燃やされたのか、やけに念入りに突き殺されたようだ。

ここまでコンマ一秒かかっていない。蒼の薔薇の時より早かった。クレマンティーヌ、新記録達成である。

 

「はい終わり」

「────…………え?」

 

瞬時に少年の隣に戻り、死亡した全員が力なく倒れ伏す。

あとは紅一点であるエドストレームのみ。

自分以外の五人が、知覚することもなく全滅した現実を、受け入れきれていないようだった。

なぜ一人残したのだろう? 少年はそう訝しんだ。

まさかクレマンティーヌが殺り損なったわけではあるまいと、様子を伺っていると。

 

「ほら、あたしのせいで絡まれたっしょ? だからあれ、お詫びに献上よ。ご主人サマにあげる、こいつ」

 

なんと、それは嬉しい。少年はそう思った。

良く見ればなかなかにエキゾチックな佇まいで、()()()美人ではないか。

敵を手籠めにするというのも、いい感じのシチュエーションである。

少年はそういうの、大好物であった。

うきうきでエドストレームの手を引くと、路地裏のさらに奥へと進んでいく。

 

「え、え……え!? ええ!?」

 

抵抗しようと思っても、一切出来ずに引きずられていくエドストレーム。

無理もない。擬態姿とはいえ、レベルが隔絶しすぎている。

 

「楽しんでね~♪」

 

お楽しみの邪魔をするような野暮天はすまい、と。

ひらひら手を振り、少年を見送るクレマンティーヌ。

そして陽気にその場に座り込むと、いつの間にか着替えていた普段着のスティレットを、口笛を吹きながら磨き始めた。

やがて、六腕のうち五腕の死体が転がる現場に、エドストレームの嬌声が響き渡った。

 

「やってるやってる」

 

反省の意図からか、従順にもお楽しみが終わるまでその場で待つようだ。

あらかた武器の手入れを終えると、クレマンティーヌはごろんと横になり、目を閉じて昼寝を始めた。

その場には五つの死体と、どんどん激しくなる嬌声と、そんな環境で呑気に昼寝するクズ一名だけが残されていた。

 

 

「はぶしょい!!」

「ジル、風邪かな?」

「いや──、なんか今、ものすごく将来の統治がラクになった気がした」

「?」




よかったね、ハゲ。
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