何故なんでしょうね。
「何? 僅かだが住民の失踪がある?」
バハルス帝国皇帝、ジルクニフは執務室で報告を受けていた。
「本当に僅かですがな。どう思われます陛下」
傍に仕えるは
ジルクニフの事は幼少から面倒を見ており、政策にも口を挟むことを許されている傑物である。
「ふむ……、単なる出奔ではないのか。自分で言うのも何だが、我が国の気風を好まん民もいる」
事実、帝国は改革により目覚ましく治安改善・富国強兵を実現したが、だからこそ、住みにくいと感じる者も入る。
悪漢の類だ。
住民として戸籍登録されていたとしても、悪事をやりにくいとなったら、他国へ逃げ出すなど、今までも良くある話ではあった。
おそらく今回もその手の話だろう、とジルクニフは思っていたが。
「いえ、それが。消えている者の中には兵もおりまして」
「何……?」
しかし、兵が消えるとなると話が違ってくる。
失踪するならば当然のように足がつく職業ではあるし、そうしたら連れ戻されるのがオチだ。
だというのに、消えたまま。
すわ周辺国の暗殺者かとも思ったが、王国はただいま帝国に攻められ中でそんな暇はないだろうし、法国がそんな事をしてくる理由も分からない。
そもそも仮に暗殺者だとするならば、もっと位が上のものを狙うはずであり、一兵卒を痕跡を残さず消す暗殺者など聞いたことがない。
「他の失踪者は」
「まちまち……としか言えませぬな。強いて言えば、若い女性が居ないくらいでしょうか」
「…………? では、地域は。纏まっていないのか」
「それも、まちまちですな」
「………………?」
この手の変質者は、大抵が倒錯した性癖を持ち、若い女性を狙うものである。
非力だという点を加味しても、狙われやすいポジションにいるのは確か。
だというのに、狙われていない。
情報が開示されればされるほど、犯人と思しき人物の狙いがわからなくなる。
やはり自然な出奔なのでは? と思うと、兵が消える理由がわからなくなる。
出奔ではなく、犯人がいるのならば、だ。
兵を狙い、若い女性は狙わず、他の被害はまちまちで、あちこち移動しながら犯行し、死体を残さない手腕を持ち、未だ手がかりは一切なし。
「……? ……?? ………………??」
若くして類まれなる頭脳を持つジルクニフからしても、意味のわからない案件であった。
仮犯人の特徴を、平たくまとめると、こうだ。
“ものすごく凄腕の暗殺及び隠蔽能力を持ちながら、大々的に国に被害を出すわけでもなく、何故か女性は狙わない、しかも毎日別の場所”
理解不能。
考えれば考えるほど、順路のわからない迷路に迷い込む感覚に誘われている気がしてくる。
そう思ったので、一旦思考を止めることにした。
「じいはどう思う」
「初めに言いましたが……、失踪と言っても、帝国の総人口からすれば極々僅か。事件性があるとは言え、そこまで大々的に騎士を動かす理由はないでしょうな」
「むう」
「激化してくるようなら、国としても動かねばならぬでしょうが」
「そうだな……」
確かに、あくまで報告として上がってきただけで、未だ火急の要件というわけではない。
犯人がいるとして、調子に乗ってもっと派手にやり始めるようなら、その時に手を打てば良い。
ジルクニフは、そう結論づけた。
「────よし、その件は一旦保留とする。次の案件だ」
「了解しました」
その日はそれでお流れとなったのだが……。
次の日。
「今日も数人失踪です」
「……」
次の日。
「今日も数人失踪です」
「…………」
次の日。
「今日も数人失踪です」
「……………………!」
次の日。
「今日も数人失踪です」
「…………………………………………!!」
毎日毎日同じ報告を受け、ジルクニフは頭頂がチリチリと苛立つ感覚に襲われてきた。
これ以上はナニか深刻な症状が進行しそうだ。
「何が起こっている…………!!」
「捜索隊を出しますかな?」
「いや、しかし……! 未だそのような規模ではないし……! ええい、冒険者に依頼を出すか……!」
「では、そのように」
「クソッ、何か証拠の一つでも見つけてくればよいが……!」
今のジルクニフの心情を例えるなら、そう。
眼の前を蚊がずっと飛んでいるけれど、特に刺してこず、ただ飛んでいるだけ。
そんな感じ。
いっそ刺すなら刺せ、と言いたくなる気持ちを必死に抑え込んでいた。
◆
「ふぁ~~……。はよー……。ってまだ寝てっし」
帝国にある、高くも安すぎずもない、普通の宿。
ジルクニフのナニかに、確実に着実にダメージを蓄積している犯人二名は、呑気にもたった今起床したところだったようだ。
訂正、少年は未だすやりすやりと眠っている。
このクズ二人、なにかしら例外がある時以外は基本的に同衾している。
その上、方や普段着がビキニアーマーとローブのみという思い切った格好のため、寝る時は裸族だ。
そんなものを淫魔の前に放り出せば、それはもう、そういうことである。
それを毎日毎日するようで、基本的にクズ二人の朝は遅い。
その代わり夜も遅い。
「はーいはい、起きた起きた」
シーツを剥ぎ取られ強引に叩き起こされる少年。全裸で。
リアルでは法外な時間に出勤を強制されていた彼は、“こちらの世界”に来てから惰眠をむさぼる事が多くなった。
睡眠は状態異常という判定になるらしく、状態異常無効装備をつければ眠気は飛ぶのだが、敢えてそうしていない。
長時間眠るのがよほど気持ちいいのだろう。
今日も、全裸のクレマンティーヌに全裸で叩き起こされても、口元をムニャ付かせながら抗議するばかりで中々目を覚さない。
その辺のリアル事情は聞かされているため、せいぜいゆっくり眠らせてやろうという気持ちも無くはないが、起こさなかったら起こさなかったで、どうして起こしてくれなかったのとむくれるため、こうして毎日叩き起こされているのだ。
随分と子供っぽい反応だが、これは疑似餌とはいえ、幼い少年の姿をしていることに精神が引っ張られている影響だろう。
人間に姿に見えても、異形種としての精神汚染はしっかり働いていると言えた。
現に今も少年は、あどけない顔つきで、眉間に皺を寄せてまだ眠いと訴えている。
「たくもー」
やれやれと肩を竦めたクレマンティーヌの手が
淫魔の悲しいサガか、
今日も少年は最終手段を使われ、バネのように跳ね起きた。
「はいおはよ♥」
叩き起こされ目を丸くしている所に、触れるだけの口付けを交わされる。
そこまでされると、もう淫魔として寝ている方が無様である。
少年はあくびを一つ漏らすと、伸びをしていた。
クズ二人、無事起床である。
その後は、現地で買い漁った【
途中で宿屋の店主に“ゆうべはおたのしみでしたね”と言われ、クレマンティーヌが中指をおっ立てて応えていた。
「さーてと、じゃあ今日も一仕事しますかぁ~」
する必要もない軽い準備運動をしながら、クズ二人がグータッチをした後、別行動を始める。
ここで言う仕事とは、日銭稼ぎのことである。
方や死体から、方や見目麗しい女性から、かっ剥ぐのである。
後者は貢がせるとも言う。
居る人が居れば、何が仕事だ、とツッコんでくれたことであろう。
単純に、ただの趣味の延長線上でしか無かった。
しかも片方は人命が失われるので、溜まったものではない。
クズのクズらしい倫理観が、ここにはあった。
◆
「あっは♪ ねぇどんな気持ちィ? 今どんな気持ちィ~?」
「あぁ、はぁ、はぁ、や、やめ……」
「やめな~い♪」
「っぎゃあああああッ!!」
今日の獲物は、街を巡回していた帝国の兵士である。
急所、及び大量出血する箇所を避け、嬲るように、弄ぶように、凶器をゆっくりと突き立てている。
「あ~、可哀想だね~、国を守る兵隊さんがな~んにも出来ずに甚振られて~、おしごとできまちぇんねぇ~♪」
「がっ……ぐっ……」
ただでさえ、趣味の一環であった死体遺棄を、これからは抑制しなくてはならないのだ。
その鬱憤を思う存分晴らすかのように、じっくり、じっくりと拷問を続ける。
「あら~? 反論もできなくなっちゃったかな~?」
「はがっ、は、はっ」
とはいえ、悲鳴を聞くことが好きなクレマンティーヌにとって、鳴かなくなったオモチャはオモチャ足り得ない。
急激に興味が冷めてきたので、ラクにしてやることに決めたようだ。
「じゃ、これくらいは言えるかな~? 死にたくなぁい~?」
「ひっ、ひっ……、し、死にたく……」
「ダ・メ♪」
「あ゜っ」
脳天にスティレットを思い切り突き立て、そのまま撹拌するように動かし続ける。
拷問されていた男は、何度か痙攣を繰り返した後に、安らかではない息を引き取った。
「あ゙~、気持ちい~♪」
天を仰いで恍惚としている。
まるで絶頂しているかのようだった。
事実、精神的には絶頂を迎えているのだろう。
思う存分趣味を堪能できている証拠と言えた。
「……ふう。賢者タイム。さて殺ったもんは殺ったし……捨ててくっか。あよいしょ」
殺るだけ殺って冷静になったのか、クレマンティーヌは死体を担ぎ上げた。
血痕を魔法で完全に拭き取り、証拠隠滅も忘れない。
そのまま脚力を使い強引に思い切り跳び出し、誰の目にも映らない速さで帝国を駆ける。
その際、あまりの速さで死体がさらに損壊したが、気にしない。
適当な森を見つけると、さらにその奥まで侵入し、死体を投げ捨てた。
「はいポイ」
音を立てて手を払い、いくらか名残惜しそうに死体を少しだけ見つめると、さっさと同じ速度でその場を後にする。
この際、死体の傍に足跡も残っていない超絶技巧である。
「おしまいっと」
そうして、元いた犯行現場に戻ってきた。
この間、たったの5秒である。
そこまでの速さでこんな犯行を実行されては、流石の帝国もどうしようもないだろう。
六腕の迂闊な行動により、クレマンティーヌの厄介さがより研ぎ澄まされてしまったようだ。
それで迷惑を被るのは帝国の民だというのだから溜まったものではない。
王国の闇は、遠回しに帝国にまで被害を与えるというのか。
良く考えれば、六腕が余計なことをしなくても、どうせクレマンティーヌは帝国でも趣味を楽しむだろうから、あまり関係はなかった。
「っさて、戻るとしますかね~っと」
口笛を吹きながら、少年との合流地点へと足取り軽く歩いていった。
犯行現場には、文字通り“何一つ”残ってはいなかった。
◆
「たっだいま~♥ 楽しんできたよん♥ およ、何見てんの?」
クレマンティーヌが少年と合流すると、少年はある一点をじっと見つめていた。
オープンテラスのある食堂のような、酒場のような、一体化したような、そんな店の軒先である。
オールバックで太刀を佩いた男が、ゆったりと盃を傾けていた。
少年はやけに熱い視線を送っている。
そういえば、とクレマンティーヌは思い出した。
王国でも刀を持っていた男にご執心だったな、と。
まさかとは思いつつ、ひそりと耳打ちをする。
「……宗旨変え?」
少年は思い切りクレマンティーヌにデコピンをかました。
「あべしっ!?」
ソニックブームが発生する、容赦なしの一撃である。
よもや頻繁に肌を重ねる女性にホモ扱いされるとは夢にも思っていなかったため、かなりの怒りが籠っていた。
思い切り首をのけぞらせたクレマンティーヌは“いって~”と額をさすっている。
一般人どころか、英雄クラスでも首が数百メートルは吹っ飛んでいたであろう攻防だったが、レベル100同士の戯れとはこういうものである。
「ちょっとした冗談じゃんよ~……。で、ナニ。また刀が欲しいの?」
そうではない、と少年は首を振る。
どうやら見ていたのは男ではなく、その男が侍られている女性の方であったようだ。
女性は三人おり、みずぼらしい物を着せられている。
あれはそういう趣味だろうか、だとすればなかなか良い趣味をしている。少年はそう思った。
「んにゃ、ありゃ奴隷だべ」
奴隷。
そういえば入国する際、奴隷は合法だと聞いた覚えがあった。
そして、それはなかなかロマンあるものだとも。
少年は淫魔になってからエロゲ脳と化していたので、奴隷=えっちな奴隷としか想像が回っていなかった。
ああいうのほしい! とクレマンティーヌに駄々をこねてみる。
「も~、もうあたしちゃんがいるでしょ」
だって向こうのオールバックくんは持ってるもん! さらに駄々をこねてみる。
「よそはよそ、うちはうち!」
ひどいやママ! グレてやる! 少年はコントに乗り気であった。
で、コントはさておき、本当に所持するかどうかはともかく、奴隷に興味があるのは事実である。
少年は結構本気で詳細について尋ねてみた。
「ん、帝国には奴隷市場があるって言うよね。食うに困って身売りしたやつとか、捉えてきたエルフとか売ってるらしーよ」
エルフ! 奴隷! なんとも夢がある話である。
奴隷市場に行きたいです。
いや、あれはエルフではないか。パッと見エルフっぽいけど。
ふんすふんすと鼻息を荒くしていると、クレマンティーヌに冷めた目で見られているのに気付いた。
そこまでおかしいだろうか。
「や、まぁ。だって帝国で言う奴隷って、召使いみたいなもんだし。ちゃんと扱わないと規則で罰せられるシロモノよ? 何がいいのかわからんね」
それでも追いたいロマンがあるのだ。
意地があんだろ、男の子には。
人の夢は終わらねェ。ドン。
過去の名著の名言を引用してまで主張する少年に、クレマンティーヌも流石に折れたのか(何を言ってるのかは理解できていなかったが)、やれやれとため息を付いていた。
「そんなに気になるなら、アイツに奴隷市場の場所でも聞いてくれば?」
そうする、と少年はつったかたーと走っていった。
相変わらず、そうと決めたら短絡的な考えの持ち主である。
「あ、ちょっ……! 冗談だってのに、あーあ、面倒にならなきゃいいけど……」
考えたら即座に行動を起こす少年の背を、クレマンティーヌは慌てて追った。
「──んん?」
「(ほう、なかなか美形ですね。私ほどではありませんが)」
女性も居るというのにまず見るのが顔の辺り、なかなかに良い性格をしているようだ。
「私になにか、ご用ですか?」
「この子が、あんたの連れてる奴隷に興味があんだって」
「ほー」
奴隷を奴隷と知って興味を持ち話しかけてくるとは、自らの趣向と同じ物を持っている気配がする。
そう判断したオールバックの男は、視線だけでなく身体もクズ二人に向けると、本格的に話をすることにしたようだ。
これは彼にしては、かなり珍しい行為であった。
類は友を呼ぶ、ということだろうか。
実際クズ二人も、彼のクズ度には負けず劣らずなので、そうなのかもしれない。
「彼女たちはね、エルフなんですよ。パッと見ではわからないでしょう?」
「ん? あ、ホントだ。でも耳が半ばくらいから切り落とされてんね。傷物? 安く買ったの?」
「まさか。安物なんて買うはずがありません。奴隷のエルフは奴隷の証としてその長い耳を切り落とすんですよ。ご存じない?」
「ほぇー、いい趣味してんなぁ奴隷市場」
クレマンティーヌは琴線に触れるものがあったのか、顎に手を当てしきりに頷いている。
「しかし私の奴隷に目をつけるとはお目が高い。譲ることは出来ませんがね、鑑賞くらいはどうぞ」
「や、別に知りたいのはそこじゃなくて」
「と言うと?」
「奴隷市場の場所を知りたいんだってさ。奴隷にロマンを感じるって」
「ロマン……ですか」
その発想はなかったな、そういう表情でオールバックの男が思案する。
今まで道具のようにしか扱っていなかったが、そういう見方もあるのか、と。
新しい発見をしたような顔をしていた。
暴力を振るったり、恫喝して無理やり従わせていたが、ロマンがあると言われると、なんだか付加価値があるような気もしてくる。
「で、奴隷市場の場所ですか。それならば────」
なんと、オールバックの男は親切にも簡素な地図まで書いて渡してくれた。
これも彼にしては、とてもとても珍しい行為である。
やはり、類友なのであろう。
クズ二人のクズ度を一目で見抜いたのかも知れない。
最も、クズなことを公言しているクズ二人と違い、彼はクズと言われれば激昂しそうではあるが。
それはともかく。
とても親切にしてくれたオールバックの男に、少年は天真爛漫にお礼を言い、足取り軽く去っていった。
クレマンティーヌも“どうもね”とだけ軽く言い残し、その場を去る。
「よい買い物を」
オールバックの男はそれだけ言うと、再び酒を嗜み始めた。
◆
帝国奴隷市場。
全てを諦め、光を失った双眸がずらりと並ぶ、かなりキている場所である。
そのあまりに陰鬱とした雰囲気に、少年は想像と違う、と内心がっくり来ていた。
もっと、こう、えっちな雰囲気で満たされており、奴隷を使ったえっちな見世物が横行しており、処女だよ処女だよ! と、えっちなアピールポイントを喧伝しているものだとばかり思っていたのだ。
「淫魔脳すぎて笑える」
そう言ったクレマンティーヌだが、真顔であった。
彼女自身、奴隷をなんとも思っていないのだろう。
ある意味では法国の出身らしい精神性と言える。
「で、どーすんの? 買うの?」
少年はもっと奴隷があはーんうふーんとえっちなアピールをしてくる市場を想像していたので、購入意欲は失せていた。
とりあえずウィンドウショッピングだけに留めておく、と少年はそう思った。
「ふーん……、別にいいけど」
本当に興味がないのだろう、クズ二人はぶらぶらと力なく奴隷市場を闊歩する。
当然のように男の奴隷もいることに、少年は辟易していた。
もっと、こう……あるだろう! そう主張したい気持ちでいっぱいであった。
そんなクズ二人に奴隷商から声がかかる。
「そこのお姉さん、新しい男娼をお探しかい? 商談に乗るよ!」
「いや? どっちかっつーとあたしが奴隷側だし」
「えぇ……」
この首輪が目に入らぬか、と自慢げに見せつけると、奴隷商はすごすご下がっていった。
何かに威圧されたのだろう。
何かは分からないが。
そのままクズ二人はひたすら奴隷を眺めてはやめる、眺めてはやめるを繰り返していたが。
「ねー、面白い?」
あんまり……。少年はそうげんなりして返した。
何せ、今まで夢想していたロマンが打ち砕かれたのだ。
その悲しさたるや、分かる人にしか分からないだろう。
なにかの電波を受信したのか、どっかのバードマンが“わかる! わかるよその気持ち!”と同意してくる幻聴すら、少年には聞こえてきていた。
ちなみに、当然のようにクレマンティーヌからの同意は得られなかった。
「もう帰る?」
うん……。失意のまま少年は頷いた。
クレマンティーヌは憐れんだのか、少年の背に手をやり、さすってあげている。
その哀愁漂う姿は、まるでシングルかつヤンママが、一人息子を遊園地に連れてきたが、どちらも楽しめないまま帰宅した、というような構図にも見えていた。
そうしてクズ二人は、何も得られないまま、奴隷市場を出た。
その日のクズ二人の“お楽しみ”は、いつもより激しいものになったのであった。
エロゲのような光景なんて、エロゲ世界にしか存在しないんだよ、クズ。