「────────か、はっ」
泥の中を這いずり回っていた所を掬い上げられたような精神状態の彼女に、声がかけられる。
「成功したようだな」
バハルス帝国の主席宮廷魔法使い、フールーダ・パラダイン。
彼は第六位階までの魔法を使いこなす魔法詠唱者である。
であれば当然、第五位階魔法である
これまで
“アダマンタイト級冒険者の力は帝国の役に立つ”というラナーの陳言を経て、彼女たちの死体はバハルス帝国の宮廷に運び込まれ、こうして蘇りの最中にあるというわけだ。
「私は…………、死んでいたのか…………?」
「うむ。実に鋭利な切り口で首を撥ねられていたため、損傷が少なくやりやすかった」
王国の者が匙を投げた蘇生を“やりやすかった”と言ってのけるフールーダ。
人間の中でも屈指の指折り実力者であるだけのことはあるだろう。
朦朧としていた意識が段々とはっきりしてきたイビルアイは、ようやく周囲を見渡す。
パーティのメンバーは同じように殺害されていたようで、未だ保管されたままの死体であった。
灰になっていないということは、蘇生に失敗したわけではなく、これから蘇生をするということなのだろう。
単純に自分が一番始めに蘇生されただけなのだと解釈し、イビルアイは現状把握に努めることにした。
「此処は……? それに、お前は……」
「冒険者ゆえ言葉遣いは大目に見るが、自らの立場というものを顧みてもらいたいものだな」
「何……?」
「此処はバハルス帝国の宮廷にある広間だ。
「帝国だと? それに、元……?」
「知らぬのも無理はない。文字通り死んでいたのだからな」
それからフールーダは朗々と語りだした。
蒼の薔薇が何者かに殺害されて、王国の膿を出すことが不可能になったラナーが国外逃亡したこと。
それにより、王国は腐敗の一途を辿ったこと。
民の手綱も禄に握れない王族に、王国最強の戦士長を失った今こそが好機だと、帝国が王国に侵攻したこと。
そして、無事に併呑は成され、王国は今や帝国の植民地となったこと。
今は腐敗を浄化するために人手が欲しいため、彼女たちは順繰りに蘇生されていること、などなど。
「馬鹿な、王国が落ちた!? ……い、いや、こうして我々の遺体が帝国に運び込まれていることが何よりの証拠か……」
「理解したかね」
「納得までには少しかかりそうだ……」
あれだけ八本指の暗躍を裏から防止していたりなど、なるだけ善き国にするべく働いていた所を、急に“もうその国はないよ”と言われたのだ。
飲み込むのにも時間はかかるだろう。
しかし事実であるならば受け止めなければならない。
それがアダマンタイト級冒険者の務めであると信じて。
それに、フールーダの話を信じるならば、リ・エスティーゼ王国……、元リ・エスティーゼ王国の腐敗は未だ浄化されきっていないのだ。
自分たちの仕事もなくなってはいないのだろう。
イビルアイは、そう考えを改めたようだ。
「それで────」
「おっと、すまないがそう質問攻めにされるために蘇生したわけではないのだよ」
「…………、事情聴取か。道理だな」
ただの善意、もしくはラナーの為に蘇生された訳ではないと思っていたが、イビルアイはかつての敵国であった帝国に与することに若干の引っ掛かりがあった。
だが、これから行動の拠点となるのは帝国になるのだ。
無理に逆らったり、反発するのは控えたほうが得策だと、彼女はその反発心を抑え込むことにした。
「何が聞きたい」
「だから態度をだな……」
「元からだ、許せ」
「……まあ、良いだろう」
もっとも、既に染み付いてしまった性格までは一度の死では矯正されなかったようだが。
「ラナー元王女から事情は聞いている。アダマンタイト級であるお主達がなんの抵抗もなく殺害されたという。そして、その現場には争った後すら無かったと」
「な、なんだと……!?」
「やはり、覚えていないかね」
「そんな馬鹿な、そんな真似ができる輩が王国に居たわけ……」
蘇生直後は記憶の混濁が見られる。
特に、死亡寸前の事は忘却されることが多い。
蘇生の魔法を行使する者、そして蘇生された事がある者にとっては良く知られたことだった。
だとしても、イビルアイは告げられた言葉を簡単に信じられはしなかった。
自分たち全員が殺害されたということは、パーティメンバー全員でかかった、ということだろう。
それがなんの抵抗もなく、争うこともできず殺された、などと。
それこそ十三英雄のリーダーのような存在でもなければ不可能だろうと。
「(…………まさか……)」
と、そこまで考えて、イビルアイは己の直感が正しかった場合の状況を考えた。
もしリーダーのような存在が、自分たち人類側の敵に回るような事態になっていたら、と。
「(これは……、リグリットに話すべき案件なのかもしれないな……)」
リーダーのような存在を知る者の一人である知己、蒼の薔薇の先立でもある彼女に相談すべきではないか、と。
長時間思案するイビルアイに、フールーダから声がかかった。
「なにか思い出せたか」
「あ……、いや」
考えることは纏まったが、思い出せることは思い出せていない。
さてどうして返事したものかと答えに窮してしまった。
心当たりはあるようなないような、しかもそれは安易に話せるようなものではないような、あるような。
そんな事を言っても怪しまれるだけだろう。
しかも眼前の老人は明らかに人間の中では逸脱者であるオーラを纏っている。
前述のリグリットにも匹敵するかも知れない。
迂闊は事は言えないと、イビルアイは口を噤んだ。
「ふむ……、では、前日などの事ではどうかな。何か怪しい人物などと接触したとか」
「前日? そうだな……」
当日のことは確かに思い出せない。
何故自分が殺されたのか、そもそも何故殺されるようなことになったのか、わからないことだらけだ。
だがその前の日のことなら。
おそらく自分はいつもホームにしている宿に泊まっていたはずだった。
そこで誰かに出会ったような。
その者の名前は、確か────。
「クレマンティーヌ…………?」
◆
「ぶわぁーっくしょーい!!」
クズ二人は帝国のメシ屋で食事の真っ最中であった。
少年は美味しい料理に舌鼓を打っていたところ、クレマンティーヌのくしゃみの急襲に会った。
なにをしてくれるのだろうか、とんでもない暴挙である。
眼の前のご馳走が一瞬にしてダメになってしまった。
もしこれがリアルの自分に起きた悲劇だったなら、今手に持っているナイフとフォークで、下手人に襲いかかるのもやぶさかではない。
少年はそう思った。
「あ、ごめ」
そして犯人はこの気軽さである。
自分が何をしてくれたのか分かっているのだろうか。
ステーキがデンと乗っかっている、熱された鉄板の上では、クレマンティーヌの口から射出されたツバが音を立てて蒸発していた。
お返しに自分もお前の料理にくしゃみをしてやろうかと、少年はそう憤慨していた。
「え、別にあたしのツバとか平気で口にしてんじゃん。今更っしょ」
いわれてみればそうである。
クズ二人は夜に頻繁に同衾するため、口付けにより互いの体液を交換するなど日常茶飯事の光景であった。
というか、考えてみれば淫魔からしてみれば若い女性の体液(しかも美人)とくれば、ジュースも同然である。
例えてみるならば、これは上等なホットケーキにメイプルシロップをブチまけるがごとき思想。
何も問題ないのである。
むしろ料理がより美味くなったとも言える。
喜び勇んでステーキを切り分け口にしてみれば、どこか芳醇な甘みさえ感じられるような気がした。
「わかってたけど、かなりのド変態だよね、ご主人サマはさ」
くしゃみというからにはツバだけでなく鼻水もある程度は飛んでいるだろう料理を本当に美味しそうに頬張る少年を見て、クレマンティーヌは思ったままの意見を口にした。
しかし残念ながら、少年、というより淫魔にとってそれは褒め言葉以外の何物でもなかった。
変態上等、むしろ変態でなくてやっていられるか、という話。
よってくしゃみどころで料理の味が下がるものではないというのが少年の結論であった。
「うーわ」
残念ながら同意は得られず引かれてしまったが、それもまた一興。
美人のねーちゃんに引かれることでしか得られない栄養もまた、確かにある。
少年はそう思っている。
「こいつ無敵か……?」
仮にも主人に対して“こいつ”とは何事であろうか。
少年はそういう気安い所も含めてクレマンティーヌを気に入っているので問題はないのであるが。
それでもちょっとだけカチンと来た少年は、意地悪のつもりで首輪を返せこの野郎、と言ってみた。
「調子乗ってました、すいませんでした」
即座にメシ屋の卓に額を擦り付けて詫びが入った。
まあ冗談なので本気にしないでいいのだが。少年はそう思った。
実際クレマンティーヌ側もあまり本気にしていなかったのか、許されるとケロリと食事に戻っていた。
ここまでがいつもの流れ、テンプレというやつである。
気心のしれた者同士のおふざけと言えた。
基本的にクズ二人は、趣味を愉しんでいる時以外はこうしてイチャコラしていることが多い。
やがて食事を終えたクズ二人は、食後に酒を注文すると白昼堂々アルコールをかっくらい始めた。
「誰にも憚ること無く昼間っから飲む酒、美味え~」
誰にも憚ること無く、といえば、最近のクレマンティーヌの趣味の方はどうなんだろうか。
気になった少年はそう尋ねた。
「ん? あー、なんか帝国のおえらいさんに根回ししてくれたんだっけ。やっぱ死体とは処理せず残すほうが良いよね~。気楽になったわ。さーんきゅ♥」
それはなによりである。少年はうんうんと頷いた。
ナンパのついで、というか完全な衝突事故の果てに起こった偶然だったが、クレマンティーヌが喜んでいるようなら何よりである。
この少年、なんだかんだで献身的な所があった。
惚れた弱みとも言うのかも知れない。
現在進行系で何人もブチ殺しているシリアルキラーの、今んところ殺人が上手く進んでいますという報告を受けて喜べる少年も、相当な精神破綻者だったが、そこは気にしないことにしたようだ。
◆
「無事に蘇生が成功したようで何よりです、蒼の薔薇の皆様」
「おう、まぁ、また鍛え直しだがな」
「仕方ない」
「無念」
フールーダによる
現状彼女たちは帝国内では寄る辺を持たないので、かつての上司(というのはあくまで裏の姿だったが、ジルクニフには筒抜けだったようだ)の元に居たほうが何かと良いだろうという計らいである。
「又聞き情報でしかないから半信半疑なのだけど……、王国が陥落したのは本当なの? ラナー」
「えぇ、残念ながら。でも、もしかしたらそれでよかったのかもしれません」
「……ってぇと?」
「あの腐敗が進行していた国家を根底から覆すには、帝国が治めるくらいの劇薬が必要だったのかも知れないということです」
「それは……」
まるで自分たちのしてきたことが無意味だったのではないか、と顔で訴えるラキュースの考えを読んでいたかのように、ラナーはくすりと笑った。
「もっとも、元王国領内では未だに八本指の残党が幅を利かせています。蘇って頂けたなら、皆様にもまた働いてもらうことになりますけれど」
「そ……、そうよね、国を治める人が変わろうと、まだやる事はあるわよね」
「おうよ。民のためって奴だな」
「まだ見ぬショタのため」
「違う、美少女のため」
蒼の薔薇パーティメンバーの調子もいつも通りなことを把握し、ラナーは内心嘆息する。
気楽でいいな、と。
こちらは神話の世界の存在かもしれない脅威から逃げ出してここにいるのだ。
これからも使える手駒として蒼の薔薇を運用するため、もはや愛着も何もない元王国領内の治世をいくらか分担させるかもしれないが、それも上っ面だけの行為である。
要するに彼女は愛する
帝国の庇護を得られた今、蒼の薔薇にいちいち指示を出すだけ面倒でもあった。
もっとも、いつ何が何処で使えるか分からないので、蘇ったのなら手中に置いておくべきだと考え、手放しはしないようだが。
まずはその一歩として、尋ねてきた蒼の薔薇の面々から情報収集をしようとしたのだが、ふと一人の様子がおかしいことに気づいた。
「……どうしました、イビルアイさん? 黙りこくってしまって」
「え……、あ、あぁ」
イビルアイは普段から口数は少ない方だが、それにしたって何を考えているのか、随分と俯いている。
それを目敏く見つけたラナーは声をかけた。
心配からではなく、知的好奇心から。
もしかしたら、神話の存在だと思っているナニモノかの情報を得られるかも知れないと踏んで。
「いや……、私達を蘇生した主席宮廷魔法使い、フールーダとか言ったか。彼と問答した時に、少し思い当たることがあってな……」
「あの爺さんか。俺等は生き返らされたらサッサとどっかに行かれちまったが、なにか話したのか?」
「まあ、軽い事情聴取だ」
「事情聴取?」
「気になる」
「話すべき」
蒼の薔薇の面々が揃って輪になりわいわいと話し始める。
女三人寄れば囂しいと言うが、なるほど五人、この場にいるもう一人も加えれば六人も居れば、身分や階級がどうこうではなく騒がしくなるものであった。
ただ一人の男子であるクライムは非常に肩身が狭そうにしている。
そんなクライムは放って置かれ、話は弾んでいく。
「と言っても死後の記憶について聞かれただけだぞ。当然思い出せなかったわけだし……」
「あぁ、私も思い出せないわね。なんで死んでいたのかすら……」
「そもそも俺等を殺せるようなやつって、六腕以外に居たか? しかもあいつらでも一方的って訳にも行かねえだろ?」
「謎」
「奇妙」
「それでフールーダに聞かれたんだ、なら前日のことはどうかって」
「……なにか思い出せたの?」
「確か、クレマンティーヌとかいう女が、商人の子供を連れて宿に泊まりに来たはずだ」
「クレマンティーヌ……?」
「聞いたこと無い」
「誰オブ誰?」
「私もそう思ってな、その名前であらかた捜査して……、過去にズーラーノーンに所属していた事を突き止めた、ことまでは思い出したんだ」
「……!」
「謎の秘密結社」
「おいおい、でかい名前が出てきたな……」
ただ黙って話の行方を見守っていたラナーだったが、そこで待ったを入れることにした。
「その話、詳しく聞かせてくれませんか?」
自分とクライムを危機に陥れる者に、少しでも近づけるヒントになるのではないか、という直感を覚えてのことであった。
◆
結論から語る。
“クレマンティーヌ”という名前は、バハルス帝国に広く指名手配されることになった。
蒼の薔薇とラナーが協議した結果、クレマンティーヌなる者は蒼の薔薇壊滅に関わっている可能性が非常に大きい人物である。
その者は過去に犯罪組織に組みしていた人物でもある。
なおかつ、今も元王国領地ないし帝国領内に潜伏している可能性が高いものである。
であるならば、それを放置しておくことは出来ず、下手人をあぶり出すための策を取らなければならない。
そのために皇帝ジルクニフに陳情し、すぐに配下の騎士に命じてクレマンティーヌを指名手配してもらうよう差配してもらった、という次第である。
そういった命を受けて、必死にひた走る仕事熱心な騎士がいた。
「ヤバいですわヤバいですわヤバいですわヤバいですわ」
レイナースである。
彼女のもとには少年から“クレマンティーヌの趣味のために”一部警備をあえて杜撰にしてくれと密命が届けられている。
つまりはクレマンティーヌの名前を知っている人物であったのだ。
そしてそれが敬愛する男性の部下であるとも知っている。
このままでは人生の恩人に危機が迫ってしまう。
そう危惧したレイナースは健気にも、この事実を知らせんと一刻も早く少年のもとへと走っていたのであった。
この事を知ったらジルクニフは“その調子で仕事も頑張ってほしい”と泣くことうけあいであろう。
そんなどーでもいいことはいざ知らず、レイナースは少年が普段通っている酒場にようやくたどり着き、一も二もなく駆け込んだ。
「御主人様ァ!!」
『ブーーーーッ!!』
とんでもない爆弾発言とともに。
いきなり身なりの良い騎士がワーカーの集う酒場に主人を探して飛び込んできて、酒を飲んでいた客は総ビックリして酒を吹き出していた。
居るわけねえだろそんなヤツ、と思うもの半分、居たとしたらどんな趣味してんだよその客は、と思うもの半分。
そして自分のことだ……、と半ば恥ずかしい思いをしている少年が一人。
一緒に酒を呑んでいたクレマンティーヌも無事に吹き出しており、顔面がアルコールまみれである。
少年は慌ててクレマンティーヌを引き連れ、レイナースを見せから追い出した。
周りの客は“あぁ……あの倒錯したカップルの関係者か……”と白眼視していた。
さもあらん。
少年は悪くないと言い切れないのが悲しい所である。
なにせ普段からクレマンティーヌは主人呼びも首輪も隠さないし、少年はそれを一切否定しないのだ。
すっかりこの酒場では変態カップルが巣食っていると噂になっていたのだから。
それはともかく、慌ててレイナースを連れ出し人気のない場所に移動したクズ二人。
一体何があったのだ、と少年はそう尋ねた。
「お連れの、クレマンティーヌ殿が帝国で全面指名手配と相成りましたわ!」
「────…………、……はァ!? いやいやいやいや、なんで!? いきなりなんでそーなるの!?」
寝耳に水の情報を流し込まれたクレマンティーヌは顔を白黒させながら困惑するばかり。
すわクズ二人はレイナースがしくじったか、と思ったが、それにしてもである。
クレマンティーヌが殺っていることは、一日に数人の失踪者を出すような小規模なものであり、国家に仇なすような真似ではない。
いや、感覚が麻痺しているだけで、大量殺人鬼は十二分に国家に仇なす存在であり、指名手配されて当然の犯罪者なのだが、それはそれとして。
どこから情報が漏洩したのか不思議でしょうがないと言った様子のクズ二人である。
「それが……、なんでもクレマンティーヌ殿が過去に犯罪組織に所属していたとかなんとか……」
「え゙、何ソレ、どこからそんな情報が漏れたん? 法国? だとしても帝国にチクる意味はナニ?」
「情報源はアダマンタイト級冒険者の蒼の薔薇だと陛下は仰っていましたわ」
「何ぃー!? だってあいつら殺し…………、……生き返っただけか……!! クソがぁ……、絶対に生き返らないようにグッチャグチャのグラムいくらのミンチにするべきだったァ……!!」
クレマンティーヌが頭を抱えて髪を掻きむしるが、後悔先に立たずである。
少年も思わず頭を抱えていた。
指名手配は困る、とても困る。
お楽しみはおろか、天下の往来を歩き回ることも出来ない上、メシ屋に酒場も入ることが出来なくなってしまう。
レイナースによれば、今は名前だけの手配だが、じきに蒼の薔薇により人相書きも加えられるだろうということだった。
そうなってしまっては帝国に居場所がなくなってしまう。
裏路地を転々とし、誰かに見つかれば即お縄の、犯罪者生活まっしぐらだ。
少年はそんなの御免であったが、いざここに至ってクレマンティーヌを切り捨てることも出来なかった。
そのぐらいには愛着が湧いていた。
となると、もはや共に国外逃亡するしかない。
コトを起こすなら早くしなければ面倒になることは確実である。
さっさと逃げなければ、そう思っていたクズ二人にレイナースが縋り付いた。
「あぁッ、御主人様! どうか私めもお連れください!」
正直言うと少年は迷っていた。
その気持ちは嬉しいし、美人さんだし、アリかな~と思っていたが。
だが、ぶっちゃけ国に残って少しでも捜査を撹乱してくれる人がいなければ、どこまで悪名が広がるか分かったものではない。
となると、どの国に逃げ込んでも同じような有様になるのではないか。
そう危惧した少年は、レイナースの肩に手を置き、説得する羽目になった。
曰く、国外逃亡するために逃げ道を確保してほしいと。
曰く、逃げた後も捜査をなるだけ邪魔してほしいと。
曰く、それを頼めるのは貴女だけだと。
身命を捧げると誓った恩人にそう言われては、レイナースもいいえとは言い切れない。
涙を浮かべながら頷くしか無かった。
「うう、これで今生の別れとは嫌ですわ……、どうか御主人様だけでもお会いに来てくださいませ」
確かに指名手配されたのはクレマンティーヌだけなので、少年はお忍びで来ればいいだけの話である。
それくらいならサッと
そして、国外逃亡への道を作ってもらい、帝国からスタコラサッサと逃げ出すのであった。
「クソが……。どうしてこうなった……」
少年もクレマンティーヌと同じ気持ちでいっぱいであった。
クズ二人がクズである以上、どうしようもないことだったのかもしれないが。
殺しても蘇生すれば生き返られる設定って便利ですよね……。
ドラゴンボールかな。