今日も今日とて授業である
ここ一週間で艦娘や深海棲艦の最低限の知識は学ぶことができた
意外と知らないことばかりでとても身になる時間だった
今日は何を学ぶのかと期待を膨らませながら教室に向かおうと図書室から移動していると、廊下で天龍と龍田先生に会った
「天龍先生、龍田先生 おはようございます」
「よぉちびすけ!体調は万全か?」
「おはよぉ元君 今日も図書室にいってたの?お勉強もいいけどちゃんと休むのも大事なんですよぉ」
龍田先生には僕があまり眠れていないことがばれているようだ
あの日から僕が充分に眠れたことは一度もない
最初に比べればだいぶ長く寝られるようになったのだが、それでも長くて3時間ほどだ
ここにいるとあまり休息も補給もできないため、少しずつ疲れ始めてしまっているのだろう
「ちゃんと休んでいますから、安心してください。体調もそこまで悪くありません」
「ならいいけどぉ今日の授業はちょっと激しめだから気を付けてねぇ」
どうやら今日の授業は座学ではないらしい
組み手でもするのだろうか
「今日は何をするんですか?」
「今日は俺様の大好きな実戦の日だ!後で説明すっからとりあえずついてこいよ」
そういわれたのでウキウキの天龍の後をついていく
・・・移動中・・・
「ここが今日の教室だ、存分に学べよ!」
そういってたどり着いたのは室内演習場である
ここは近接戦の好きな艦娘が演習を行ったり、トレーニングや持久走などができるトラックもある場所だ
天龍は改二になると刀のような艤装を使って深海棲艦をぶった切るようになる
同じように刀や拳などの近接武器を扱う艦娘も少なからずおり、ここで日々近接戦闘の腕を磨いているのである
「ここで戦闘訓練をしているんですね、僕も誰かと演習をするんですか?」
「違うよ元君、演習するのは私たちよぉ。提督になる人は深海棲艦に襲われても逃げられるように鍛えなきゃいけないのはこの間学んだわよね」
「はい、だから何か指導を受けるものかと」
「それはちびすけにはまだはえぇよ、今日やるのは体力測定と俺と龍田の演習を見て回避行動を学ぶんだよ」
「なるほど、そういうことですか」
「最近は俺らもちびすけの指導と遠征でいっぱいでな、あんま体動かせてねえんだよ。龍田とやりあうのも久しぶりだしな!」
「そうねぇ。だから天龍ちゃんすっかりテンション上がっちゃってるのよぉ」
「まずはちびすけの身体測定からやるから、準備してこいな」
「わかりました」
そうして始まった身体測定
身長体重の記録から、1500m走まで様々な計測が終わり
天龍と龍田先生の演習の時間がやってきた
結果だけ言おう、天龍の圧倒だった
正直に言うと総合的実力だけ見れば龍田先生のほうが高いと思っていた
当然戦闘能力も龍田先生のほうが高いと思うし、実際そうだろう
だが、近距離戦においては天龍のほうがずば抜けている
考えてみれば当然なのだ
敵が放った砲撃を刀でさばきながら接近、目にもとまらぬ速さで切り伏せる
そんなことができる者が、飛び道具なしかつ自身の得意とする間合い、余裕も余裕である
特にやばいのが反射神経だ
龍田先生は薙刀、天龍は刀なのでリーチは龍田先生のほうが長い
また、龍田先生は間合い管理が絶妙であり、接近できる隙が見えたとしてもそれが罠になっているなんてことが多々見受けられた
龍田先生は位置取りというか足さばきが異常にうまい
対面しているかと思ったら一瞬で天龍の死角に移動し薙刀を振るうが、後ろに目でもついているのか天龍は即回避行動をとり回避
そんなことを繰り返しているうちに
薙刀を振りかぶった一瞬の隙をつき接近、自身の間合いに入った瞬間動きがガラッと変わり一撃で撃破判定
これは厄介極まりないな
近接戦なら無類の強さを誇るだろう
持ち前の反射神経で飛んでくる砲弾は躱せるだろうし、近づかれたら神速の斬撃で切り伏せられる
これで出撃メンバーに選ばれないとは恐るべし横須賀鎮守府である
「どうだ!世界水準を軽く超えた俺の実力は、フフフ、怖いか?」
「正直恐ろしいですね、天龍先生を相手にするのは一生かかってもできないですね」
「そうだろう!そうだろう!」
「よかったわねぇ天龍ちゃん、どう?攻撃法はともかく、うまく攻撃を回避する方法は学べたかしら?」
「正直レベルが高すぎて何が起こったかもわかりませんでしたが、相手をよく見ることが大事なんじゃないかなと思いました」
「そーぉ?あなたに合わせたレベルで立ち回ったと思ったのだけど、少し張り切りすぎちゃったみたいねぇ。でも相手を見るのはとっても大事よ。そこに気づけたなら、及第点ねぇ」
「あー!楽しかった!龍田ぁもういっちょやろうぜ!」
「しょうがないわねぇ。今度は本気でやりましょぉ」
そういってまた演習を始めてしまった
一応授業は終わっているので解散でもいいのだが、この二人の立ち合いはかなり学べるものがあるのでもう少し見ることにする
そうして時間が経ち、昼休みの時刻になった
天龍と龍田先生はいまだに演習を続けている
たまーに龍田先生が一本取っていたが、やはり勝率は天龍が8割といったところだった
僕はある程度学びを得たので離脱し、ご飯も食べ終わったので島風を探している
探しているのだが、なかなか見つからない
今朝一緒に遊ぶ約束をしたばかりなので、忘れているということはないと思うのだが本気で探してみるか…?
そんなことを考えていると、後ろから爆速で走ってくる音と同時に
「元ーーーーーーーー!!!!!!!!!」
という元気な声とともに島風が激突してきた
ぐはぁっ!!!
その衝突の衝撃はすさまじく、吹っ飛んで正面の壁に激突してしまった
「ごっめーん!大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
心配そうに見つめてくる島風に自身の無事を報告する
するとすぐ近くにいたひとりの艦娘が寄ってきて
コ゛ツ゛ン゛ッ
島風の頭に制裁の一撃を加えた
「こらぁっ!何をしているのだ全く!あれだけ室内では全力で走るなっていったのにちっとも懲りてないなっ!」
「ごめんなさぁい長門さぁん」
「大丈夫か君?かなり吹っ飛ばされていたが…」
「ご心配いただきありがとうございます、この通り全然大丈夫ですよ」
そういって元気なのをアピールするために体を動かして見せる
彼女は長門というらしい、図書室の資料で確認したことがある
たしかビックセブンと言われた世界でも最高峰の技術で作られた戦艦であり、その火力は戦艦でもトップクラスだったはずだ
そんな彼女が放つ拳の威力はとてつもないだろう
実際島風の頭にたんこぶができている
「君は噂の船戸君だな?」
「えぇ、そうですが噂というのは?」
「子供ながらも提督を志し、あの天龍龍田姉妹に教えを受けているだとか、世界最速の島風との追いかけっこでいい勝負をするとか、毎日図書室に通っている読書家だとかいろいろだな」
「ここにきて一週間しか経ってないのにそんな噂になることあります?」
「提督からは親戚の子を預かっているという伝達が来ているが事情があってな、あの人の親戚ではないだろうというのが皆の考えなんだ。そこいうこともあって皆気になっているんだろう」
長門と話をしていると
「まだお話終わらないの?はやくしないとお昼休み終わっちゃうよー!」
島風が長門のマントを後ろからちょんちょんと引っ張っている
島風のことを完全に忘れていた
そもそも君が後ろから衝突してきたからこんなことになってるんだよ?
そういいたいところだが僕にとっても島風とのかけっこはいいトレーニングになるので助かっているのでいわないでおく
「待たせたな島風、彼との遊びを存分に楽しんでこい」
「やったー!元君!早く中庭いこ!」
「わかった!わかったから手を引っ張らないで!長門さんいろいろありがとうございました。またお話ししましょう」
「うむ、またな」
そうして僕は島風に引っ張られながらも中庭へ向かうのだった