返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録 作:自宅戦闘員
「TRPGはキャラシートを作って、そのキャラを演じます。ですが、マイ・フェア・ホストは私たちがホストクラブのオーナー、もしくは姫……お客様になります。キャラクリするのは、ホストです」
乃々乃は掌の上で、十面ダイスを転がす。
「このゲームは、セッションで物語を作っていくのではありません。まず十面ダイスを使い、ステータスを決定してホストを作成。そこにスキルカードを足して、ホストの出来の良さで勝負を決めます。キャラクリのファンブルやクリティカルって盛り上がりますよね、そこにのみ焦点をあてたゲームなんです」
ボドゲ初心者の葵は今一つルールを理解しかねていた。
すると乃々乃が、優しく「では一度やってみましょう」
「では、女の子だけですし、お客様側のプレイをしましょうか。説明のために仮プレイを……やだ、水科さん違います。プレイって、そちらの意味ではありませんよ」
「ボクなにも言ってない……」
「仮、というのも決して他意はないですから」
「うん、そっか」
今日も乃々乃ちゃんは元気です。
でも葵がよく分からずきょとんとすると、ちょっとだけ残念そうでした。
「ではまずこのゲームの姫プレイで使うのは、【ホストカード】【特性カード】の二種です。まず、ホストカードを選びます。これに関しては情報を確認しながらで大丈夫です」
【名前】
【年齢】20+(ダイス)
【ステータス】
・ルックス:00 ・会話術:00 ・酒耐性:00
・気配り :00 ・ベッドテクニック:00
【性格】
・オラオラ系(ベッドテクニック+10、気配り-10)
【特性カード】
・
・
「では、私はオラオラ系のホストを選びますね」
……うん。
「ホストカードで違うのは性格のみです。まず名前を決めて、次に十面ダイスを使用してステータスを決めます。最低保証がないので注意ですね。ダイス二回で1の位と10の位を決定、00はクリティカル扱いで100です」(※マジで振ってやりました)
乃々乃は十面ダイスを二回振り、ホストのステータスを決定。名前も付けて、これで素体が完成のようだ。
【名前】ジュン
【年齢】27歳
【ステータス】
・ルックス:49 ・会話術:21 ・酒耐性:42
・気配り :16 ・ベッドテクニック:100
【性格】
・オラオラ系(ベッドテクニック+20、気配り-20)
【特性カード】
・
・
「なにこれ気配りマイナス突破のベッドテクニックMAXのホストってどういうことっ!?」
「いえ、これは本当に。作っている最中、本当にびっくりしましたよ……」
葵のツッコミに乃々乃は遠い目をしている。
マジで乃々乃のキャラがエロ特化になるとは想像していなかった。
「ともかく、これで素体は決定。次に、特性カードを山札にして、引きます。これをホストにセット。完成がこうなります」
【名前】ジュン
【年齢】27歳
【ステータス】
・ルックス:49 ・会話術:21 ・酒耐性:42
・気配り :16 ・ベッドテクニック:100
【性格】
・オラオラ系(ベッドテクニック+20、気配り-20)
【特性カード】
・口説き文句(会話術+30)
・
「これで『ルックスはそこそこでデリカシーゼロの上にあんまりお酒も強くないけど強引に口説いてきてセッ〇スだけはすごいホスト、ジュン』の完成です」
「さいってー、だよ。ジュン、本気で最低だよ」
当方にホストを愚弄する意図はありません。
「あれ、特性枠が二つあるけど、一個しか付けられないの?」
「いえ、二ついけますよ。ただし、お金を払わないと二枚目の特性カードは引けません。実際にゲームをする時は、まず所持金が5ポイント与えられ、ポイント消費で特性カードを引く。いい特性が出るまで引いてもいいですが、ゲームの勝敗は終了時の所持金ポイントが影響するので、引きすぎると負けます。そこは駆け引きですね」
「なるほど……」
「……といいつつ、これはオーナープレイ時のみです。お客様プレイの時はもっと気楽に、3枚引いてそのうち2枚をつける。引いた特性のかみ合わせが悪いなら1枚でもいい、といった感じでしょうか」
「あ、じゃあオーナーの時よりお客様の時の方が楽なんだ?」
「そこはある意味当然かもしれませんね。では、お二人も作ってみてください」
そう言って乃々乃はホストカードを示す。
「お客様プレイ時は、私たちがホストクラブに通う設定です。その時接客してくれるのが、これから作るホストになります」
そうして、葵とまゆもホストを作ることになった。
基本はマジで10面ダイスを振って作っています。
※ ※ ※
夜の繁華街はまるで光の洪水に飲み込まれたみたいだ。
昼間とは性質の違う喧騒に少女たちは息を飲む。
ホストクラブ『BO・DO・GE』。
煌びやかなネオン街にあるそのお店に、乃々乃と葵とまゆは足を踏み入れた。
待っているホストはジュンだけではない。
多種多様な男性が彼女達に甘く囁く……。
【名前】ショウヤ
【年齢】25歳
【ステータス】
・ルックス:06 ・会話術:98 ・酒耐性:08
・気配り :80 ・ベッドテクニック:48
【性格】
・甘えん坊(気配り+10)
【特性カード】
・大酒飲み(酒耐性+20)
・
「あっ、ははっはっ! なにっ!? ルックス一桁の甘えん坊って何者っ!? あははっ!」
葵のホスト、ショウヤ。
ダイスが猛威を振るった結果、わりとヤバいのが出来ていた。
それがツボには待ったのか、葵は大笑いしている。
「ええと、水科さんのホストは『容姿は壊滅的だけど会話でお客様を楽しませ、気配り上手。甘えん坊な性格でお客様に甘えてみたりも。お酒は飲めないけど大酒飲みなホスト、ショウヤ』ですね」
「容姿は壊滅的、が全てをダメにしてるっ。あっ、でも逆に言ったら外見が気にならないくらい話し上手、ってこと?」
「いいじゃない、元芸人のホストとか」
「それいただきます、部長! 元芸人のショウヤ!」
ホストクラブ『BO・DO・GE』に新たなホストが生まれた。
続いて、まゆもホストを作成する。
【名前】ユーマ
【年齢】27歳
【ステータス】
・ルックス:82 ・会話術:100 ・酒耐性:73
・気配り :30 ・ベッドテクニック:73
【性格】
・王子系(ルックス+20、気配り―20)
【特性カード】
・寂しがり屋(特定の女性客にのみ対応する評価点+40)
・
「まあ、こんなものよ」
「ぶちょう、すっごい。イケメンの上に会話テクニックもだ」
まゆのダイスは好調。ステータス的には3人の中でもトップになった。
「ねえ、乃々乃ちゃん。この特性:寂しがり屋ってどういうこと?」
「オーナープレイする際には使うんですが、今回はお客様プレイなのでフレーバーテキストですね」
「じゃあ、雰囲気を盛り上げるための文章ってだけ?」
「そうなります」
葵はまだまだボドゲに不慣れだ。
ルールが単純なら単純な方がいい。
「勝敗は?」
「三人で、ホストを作ります。完成したホストを比較して、それぞれのプレイヤーが投票します。投票は自分のキャラでも構いません。投票したキャラの作成者にポイントが入ります。これで1セット終了。これを複数回繰り返し、最終的に一番ポイントを稼いだプレイヤーが勝利です」
「つまり、一番いいホストを作った人が勝ちと。うん、分かりやすい」
「では、早速採点しましょうか」
乃々乃の合図で、三人が一斉に投票する。
その結果は、
・ユーマ(イケメン話術気配り寂しがり屋):1票
・ショウヤ(話し上手な甘えん坊ブサイク):2票
・ジュン(セックス最強のオラオラ系):0票
となった。
動揺したのはまゆだ。数値的に考えれば自分のキャラがトップだと思っていたからだろう。
「ちょ、ちょっと待って。おかしいわ、二人とも票は」
「ボクはショウヤに入れたよ」
「私もショウヤですね」
「嘘でしょ、どう考えても3票ゲットだと思ったのに。水科さんは自分のキャラだから分かるけど、能登さんはなんで?」
まゆの質問に、乃々乃は静かに答える。
「……元芸人のブサイクホストって設定がツボにはまりました」
「そこっ!? じゃあ私のミスじゃない!?」
芸人どうこう言い始めたのはまゆである。
このゲームは、お客様プレイをする時は気に入ったホストに投票するだけなので、いかに琴線に触れるキャラ設定を構築できるかがカギになっているのだ。
「にしても、ジュンは人気なかったですね」
「選べないよ。やだよ、そ、そん、そういう男の人」
葵からすれば、強引でセッ〇スだけは上手い男なんて評価できる部分がどこにもない。
「それは確かに。デリカシーないのに強引じゃあねえ。それなら外見はともかく話も気遣いもできる水科さんのショウヤの方がいい……」
そこで、まゆが目を見開いた。
「そう、そういうことなのね、このゲーム……」
その反応に、葵は意味が分からず小首を傾げる。
しかし乃々乃は、まゆが何を察したのか、ちゃんと把握している。
(部長は気付いたようですね、マイ・フェア・ホストお客様プレイの本質に……)
このゲームは、一番魅力を感じたホストに投票することで勝敗を決する。
基本は完成度が高い、ステータスが高いキャラが選ばれる。だがルールとしての明確な判断基準がない以上、投票には『その人が男性のどういうところを評価するか』が混まじるのだ。
ぶっちゃけ、ステータス値が似通った場合、「この男の人いいじゃん」っていう理由で選ばれるんで、好みの男性のタイプがわかるシステムになっています。