返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録 作:自宅戦闘員
葵はマイ・フェア・ホストのカードを見る。
ホスト作成ゲーム。だがルールは簡単で、アダルト要素も薄く取っ付きやすい。
まずホストの性格を選び、名前を決める。次に十面ダイスを2回振り、ステータス値を決定。最後に特性カードの山札から3枚引き、2枚をホストにセットする。
オーナープレイの時は純粋な数値勝負のゲームだが、お客様プレイは違う
重要なのはステータス値と特性の組み合わせから、「グッとくるキャラクター像」を構築すること。
「ちなみに、お客様プレイの時も最後の集計ポイントにマイナス補正をつける代わりにスキルカードを追加で引けますよ」
なるほど。獲得したポイントで、特性カードを買う感じか。
葵は先程勝利して、2ポイントを手に入れた。一回購入するくらいの余裕はある。
「これってずっと自分のホストに投票を続けたら、ポイントをいっぱい貯めれることにならない?」
「それは各々の良識に任せる、ですね。勝っても賞品があるわけでもありません」
「勝って得るものもないのだから、全力で今を楽しもうの精神だ、だね」
「あ、今の少し久世くんみたいでしたね」
指摘されるとちょっと恥ずかしい。
にへらと笑ってごまかしつつ、まずホストカードを選ぶ。名前は……ユウタにしておこうか。
性格は、陽気。一番無難そうに見えたからだ。
「いくよっ、ダイスロール!」
今度はステータス値を決める。33 (1D100).88 (1D100).36 (1D100).68 (1D100).98 (1D100).3(1D10)
【ステータス】
・ルックス:33 ・会話術:98 ・酒耐性:36
・気配り :68 ・ベッドテクニック:98
一応高いダイス値は、出るには出たが。
「……さっきもだけど、ボクのホストなんかルックスが微妙だね」
「ええと、『顔はイマイチだけど話術で女性をベッドに誘い込み、大きさとテクニックで堕とす系ホスト』でしょうか」
「悪意があるよ乃々乃ちゃん!?」
これ、ベッドテクニックは高いと逆に良くないんじゃないだろうか。
そう思ったが実際は違うらしく、乃々乃が解説をしてくれた。
「オーナープレイをする際は、私たちがホストクラブのオーナーとなり、作ったホストの数値でバトルします。その際には、【姫カード】……お客様のカードを使います。
・ターンの初めに山札から姫カードを引き場に出す。
・姫カードには『純朴な女子学生』『有能な女社長』などがあり、それぞれホストに求める性格や能力値が設定されている。
・ホストの能力値でバトル。
・場の姫カードの要望に一番近いホストのオーナーが、姫カードを入手。
つまりゲームとしては作成したホストによる、姫の奪い合いです」
ホストのお客の奪い合いってなんか怖いな……と思ったけど空気の読める葵ちゃんは何も言いません。
「ただしこのゲームには最適解のホストは存在しません。たとえば『有能な女社長』なら『甘えん坊好き、ベッドテクニック80』。ルックス一番の客もいれば、ベッドの上手さだけを重視する客もいます。中には、会話術が60以上のホストが苦手な客も。数値の高さがマイナスになるタイプもいるんです」
「そこに、お金を払って特性カードを引いて調整していくことが戦略なんだね」
「そうなります。ちなみにゲーム中では姫カード=所持金です。特性カードを引くときは、姫カードで支払います」
「お客はお金。なかなか攻めた設定ねー」
まゆはけらけら笑っていたけれど、微妙に笑えないポイントのような気がする。
話しつつ葵はカードを三枚引く。
「あ、先程使わなかったカードは再利用してもいいですよ」
「後半ほど作成自由度が上がる感じだね」
ショウヤには1枚しか使わなかったから余ったのは二枚、今引いた分を合わせて特性カードは5枚。
なんとか口の上手いセッ〇ス野郎から印象を変える方法は……。
「【女好き】カード……ダメだ、絶対ダメだ」
女好きの特性を付けたらもう完全にえっちなことしか考えてないホストになる。
他のカードは【スポーツが趣味】【細マッチョ】【恋愛営業】【ワインの知識】。
いや、これなら。
悩み抜いた結果、葵は二枚の特性を選ぶ。
「いくよっ、ボクのホストはユウタだ!」
【名前】ユウタ
【年齢】23歳
【ステータス】
・ルックス:33 ・会話術:98 ・酒耐性:36
・気配り :68 ・ベッドテクニック:98
【性格】
・陽気(会話術+10)
【特性カード】
・スポーツが趣味(会話術+10、特定の客の希望値に15近付ける)
・細マッチョ(ルックス+10、特定の客の場合+もしくは-20)
「外見は普通だけどお喋りが上手で、そこそこ気配りもできる細マッチョなホスト! 大学では運動系のサークルに参加していて、派手に飾ったりするイケメンじゃないけど運動得意なのが売り! スポーツが趣味で、その、あの、え、えっちなこともスポーツ感覚で下心がないタイプで、陽気で明るいトークでお客様を楽しませるよ!」
葵は必死になって考えた設定を提示する。
とにかく陽気な性格とスポーツ趣味のシナジーを押して、「明るく爽やかなスポーツマン」を押し出す作戦だ。
「なるほど、性行為のハードルを“スポーツ感覚”で越えてきましたか。やりますね」
「へへーん、ボクだってロールプレイは結構やってきたからね!」
感心したように乃々乃が目を見開いた。
これは中々よかったのでは。ぐっと胸を張って葵は勝ち誇った。
「水科さんもボドゲにハマってくれて嬉しいわ。最悪、私と古池くんの二人だったもの……」
ボドゲ部の先輩が卒業して、廃部の危機に瀕していたのだ。
まゆは真面目に嫌な仮定を想像したらしく表情を暗くする。
「そう言えば、ぶちょー。部員ってボクたち以外に希望者いないんですか? 自由にゲームで遊べる部とか、入りたい人いる気がするんですけど」
「あー、実は……いないこともないのよ? ただ、お断りした人はちらほら、ね」
「えっ、もったいない」
「違うの。あれよ、ボドゲ部に入りたいというか、能登さんとお近づきになりたい明確なシタゴコロ勢よ」
「あぁ……」
外見だけを見れば、能登乃々乃は間違いなく純和風の正統派美少女だ。
たとえ下ネタ全開で逆バニー聖騎士とかベッドのみで激強ホストとか作っていても、ちゃんと麗しいのである。
遊びながら彼女と接点を持てるのなら、男子はこぞって入部してくるだろう。
「実は、来栖部長は前々からそういう人の入部を断ってくれているそうで。感謝しています」
「能登さんのこんな一面を見せられたら、暴走する男子もいるかもしれないでしょ? 自衛、大事。貴女たちも、うちの部も」
逆に言うとまゆの中では、友近と古池副部長の暴走はないと判断しているということ。
幼馴染が意外と信頼されていてちょっと嬉しい。
「さて、私も新しいホストをスカウトしてきたわよ。紹介します、リュウイチです」
話しながらもちゃんとキャラメイクは終えていたようで、まゆは不敵に笑ってみせた。
【名前】リュウイチ
【年齢】29歳
【ステータス】
・ルックス:93 ・会話術:7 ・酒耐性:6
・気配り :14 ・ベッドテクニック:4
【性格】
・子犬系(ルックス+10、気配り―10)
【特性カード】
・童顔(ルックス+15、特定の客だと+30もしくは-15)
・美形(ルックス+20、特定の客だと+40)
葵と乃々乃は完成したホストをじっと見つめる。
なんというか、かなりダメなホストだった。
「こ、これは……」
「びっくりよ。まさかステータス五項目のうち三つも一桁とか、本当にびっくりよ。その上性格に子犬系選んだのに年齢が最年長とか、ダイスの嫌がらせを疑ったわ。だからもう割り切ったの……うちの、リュウイチは、顔だけです」
まゆはとんでもないことを言い切った。
「リュウイチはお酒飲めないし、お客様にもお酒をまともに注げません。話で盛り上げるなんて出来ないし、大抵は『ふへええ』だけで済ませてます。そもそもお客様の様子に目が届いていません。もうこんなもん経験もないです絶対。子犬系で、お客様に甘えちゃうタイプだけどホストクラブ最年長です。でも、顔はいいです。童顔で整った顔でお客様を魅了してるっていうかそれ一本です、崖っぷちでホストやってます。でも頑張ってるんです!」
なんで敬語?
そこは疑問だったが、葵は理解する。まゆ部長、同情票取りに来た……。
もうステータスで評価が低くなるのは明白だから、ルックス一辺倒のダメホストに仕立ててきおった。
さすがにボドゲ愛好家、ここら辺の機転は葵より上だ。
「さすが部長です。では私のホスト、コタロウを」
「ねえ、乃々乃ちゃん。性格がチャラ系って最初からヤバいの作ろうとしてない?」
葵のツッコミは軽く流し、乃々乃は自身のホストを見せつける。
【名前】コタロウ
【年齢】21歳
【ステータス】
・ルックス:26 ・会話術:31 ・酒耐性:22
・気配り :34 ・ベッドテクニック:19
【性格】
・チャラ系(会話術+10、気配り-10)
【特性カード】
・テンション上昇(特定の客にのみ会話+40)
・
それを見てまゆが思いっ切り笑った。
「ぶふっ、の、能登さん。たぶんなんだけどコタロウ、ふっつーの、大学生じゃない?」
「間違いないです。今回はダイスが振るいませんでしたね……。たいして格好良くもなく、お酒に強いわけでもない。デリカシーがない上に話術に優れてもいないのに、一部の身内にのみ通じる鉄板ネタを持っているせいで『俺っておもしれー』と勘違いしている入店一か月くらいの新人ホストでしょうか。もう特性カードは温存しました」
「あはは、キャラ的には面白いけど、これはボクの勝ちでしょ」
組み合わせも微妙なキャラになってしまった。
こうしてのホストが出そろい、投票。
・ユウタ(容姿普通のスポーツ系陽キャ):1票
・リュウイチ(顔だけホスト):2票
・コタロウ(勘違いパリピ):0票
勝者はまゆの顔だけで生きてきたがけっぷちホスト、リュウイチ。
それぞれのプレイヤーの合計ポイントは葵が3点、まゆが3点、乃々乃が0点という結果になってしまった。
「あら、私は水科さんのユウタに入れたわよ? 二人は」
「ボク、リュウイチにしました。なんというか、ちょっと気になる……」
「私もリュウイチですね。ここまでダメだと、逆にありな気が」
「微妙にダメな男に引っかかりそうな匂いあるから、二人とも気をつけてね?」
葵も乃々乃も、リュウイチのダメさに見事にやられていた。
※ ※ ※
始まった三回目のホスト作成。
葵は随分慣れてホストを無難にまとめられるようになってきた。元々ボドゲ愛好家なまゆも高レベル。
次の勝負を制するのは誰だ、というところで攻めて来たのは乃々乃だった。
一回目も二回目も、特性カードを温存した。三回目は7枚のカードから好きに選べる。
その状況で渾身のホストではなく、プレイヤーを揺さぶりに来たのだ。
「申し訳ありませんが、今回は私が3点をいただきます」
【名前】トモキ
【年齢】21歳
【ステータス】
・ルックス:42 ・会話術:54 ・酒耐性:68
・気配り :76 ・ベッドテクニック:33
【性格】
・頼もしい(酒耐性+10ベッドテクニック+10)
【特性カード】
・料理上手(気配り+10、会話術+10)
・スポーツが得意(ベッドテクニック+10、酒耐性+10)
「トモキ君は元々サッカー部でしたが辞めて、ホストになりました。料理が得意で皆の前で振る舞うのを好みます」
「……」
「……」
二人とも反応に困っている。
葵は、おずおずと乃々乃に問いかけた。
「あの、乃々乃ちゃん」
「なんでしょう。彼はホストのトモキくん。実在の人物とは何ら関わりがありません」
「もうその時点でバラしてるようなものだと思うなぁ……」
「さあ、投票に映りましょうか」
葵はじっくりと、あくまでも冷静かつ客観的な視点で考える。
まず今回自分がつくったホスト。これはない。
うまくまとめたとはいえ、ベッドテクニックのダイスが高すぎたのが災いした。
特性【色恋営業】も相まって、ホストとしては有能だがアダルティックなキャラクターである。
まゆも同じく、高ステータス値のガチホストと言ったキャラクリだ。
あくまで比較の問題である。強引なセックス強者や、ガチに話術に優れたベテランホストと比べれば、料理上手のスポーツマンの方がいいに決まっている。
となれば投票先はおのずと限られる。
結果、
・トモキ:3票
乃々乃は宣言通り、3ポイントを獲得してみせたのだ。
完全に掌の上で転がされた。葵は悔しさというより気恥ずかしさに顔を背ける。まゆの方は分かっていて乗ったようで、にやにやと笑っていた。
「やっぱり料理上手な男の子の方がいいわよね?」
「ええ、部長の言う通りです」
「なっ、なんか含みない? 今回はボクと部長のダイスが振るわなかったから的なアレだよ?」
少し居心地悪そうに反論する葵。
これで全員が同点で並んだ。しかし四回戦に行こうという流れにはならない。
微妙に空いた時間にするりと忍び込むように、まゆが呟いた。
「……トモキのルックス、もうちょっと高くてもよくない? 100ではないにしろ、70から80は合ってもいいと思うわ」
葵はぎくりとした。
なんでぎくりとしたかは本人も分からない。
しかし、戸惑う彼女を余所に、乃々乃も乗っかってしまった。
「85くらいで構わないのでは? それより話術の低さの方が気になりますね、人見知りな私のサポートをしてくれますから」
「それは話術より気配りの分野じゃない? スポーツが得意は、運動部辞めてるし、どうなのかしら」
「今も体を動かしているので間違いでもないかと」
「そうねぇ。他にいい特性カードは……」
山札を崩して、まゆは特性カードを確認し始めた。
四回戦ではなく、トモキのステータスを近付けるための修正が始まった。何に近付けるかは葵には分からない。分からないが、一言物申さなければいけない。
「……そ、そもそも。性格:頼もしいがちょっとズレるというか。中身は、気遣い屋だけど、実は構われたがりなところがあったりも」
まゆと乃々乃が目をきらりと輝かせる。
しまった、と思った時にはもう遅い。
「では水科さんも、調整に付き合ってもらっていいですか?」
「これ、特性カード選んでもらえない?」
「もうこれ最初のホストカード選びから始めるべきじゃないかなぁ」
こうして三人は、勝負はドローいうことにして、新しいホストの情報を詰めることに終始した。
その結果は、隠した方が彼女達のためだろう。
※ ※ ※
昨日は料理部でがっつり活動させてもらった。
美春先輩の煮物、マジで美味い。もう状況が状況なら即座にプロポーズしてたね俺は。
「あ、久世くん。今日はどうしますか?」
「ボドゲ部に行くつもり」
「じゃあ一緒に」
放課後、同じクラスの乃々といっしょに部室へと向かう。
教室を出る時、背中に突き刺さる男子の視線には気付かないふりをした。
廊下を歩きながら乃々と雑談。こういう時は、俺ですらドキリとしてしまう綺麗な笑顔を見せるから困る。
「昨日は女子だけでボドゲをしたんです」
「そういや、古池副部長もこっちきてたもんな。ボドゲ部で合宿ある時は俺が飯係になるって話をしたわ」
「ボドゲ部合宿、いいですね。その時は私も料理の腕を振るいます」
「それは有難い。乃々、上手いもんなぁ。特に菓子は絶対勝てん」
「ふふ、ありがとうございます」
和やかに話しながら、部室に辿り着く。
扉を開けると、既に来栖部長と葵がいた。
「あら、久世くんに乃々乃も」
……あれ?
部長って、前は「能登さん」って呼んでなかったか?
「どしたの、CHI・KAちゃん。変な顔して」
「いや、微妙な違和感が。って、発音が」
「そうだ、またクッキーを焼いてきたんです。まゆ部長も葵さんもどうぞ」
……んん?
乃々も、前は苗字呼びだったような。
なんというか、三人の妙な距離感が少し不思議に思える。
「なぁ、葵。なんかあった?」
「えっ!? ……ええと、悪ノリが、過ぎた?」
意味が分からない。
戸惑う俺に、優しく来栖部長が話しかける。
「あまり気にしなくていいわよ、CHI・KA様」
「チカさまッ!?」
余計に戸惑わせに来ただけだった。
なにがどうしてこうなった。よく分からないけど、ともかく三人は前よりも仲良くなったらしかった。
そして乃々乃はじーっと俺を見ている。
「特性【細マッチョ】って本当なんですか? CHI・KAきゅん♡」
「本気でどうした乃々ぉ!?」
彼女は清楚を完全にかなぐり捨てに来てるとしか思えません。ともちか