返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録   作:自宅戦闘員

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閑話・ハンバーガーの話

 

 

 放課後、いつものように部室で過ごす。

 今日は集まりが良く、来栖部長も古池副部長も来ていた。

 

「なんか、みんな仲良くなったよなぁ」

 

 俺の呟きに葵が微妙な笑顔を滲ませる。

 でも実際、ウチの女子たちの距離は以前よりぐっと近づいた。

 

「あ、はは。そう、だね?」

「何故この話題になると微妙な顔をする」

「そ、そんなことないよ、チカちゃん」

 

 完全なごまかしの笑みなので、俺は深く追求をしない。

 本当に困っている時は無理にでも突貫するが、日常のちょっとしたことなら「知られたくない」でいいと思う。

 

「……よしっ、できた。フレッシュトマトバーガー」

 

 なお話しながらも俺の手は止まっていない。

 現在、料理中。部室にはコンロがないので、ホットプレートが大活躍だ。

 本日のメニューは人気ハンバーガーチェーン『スノウバーガー』の看板メニュー。パティにトマト、たっぷりの野菜を使ったフレッシュトマトバーガーだ。

 まあ実際のとこ申し訳程度にしかレタスは入っていないのだが、広告と実物に差があるのも重要な再現ポイント。化学調味料もたっぷり使い、お店で食べるのと何ら変わらぬジャンク臭さを醸し出す逸品である。

 ちゃんと部員全員の分を用意して振る舞う。

 一口かじり、部長は大きく頷いた。

 

「家庭用の調味料の配合で、よくここまでお店のスパイスの味が出せたわね。見事よ、久世君」

「うっす。ありがとうございます」

 

 大人びた笑みでお褒めの言葉をかけてくれた。

 ただ味はそこそこ、すごく美味しくはない。だって店売りのジャンクフードの再現だから。

 それでも自作バーガーに払われた労力をちゃんと汲み取ってくれるのは、なんだかんだ優しい部長の心遣いである。

 

「確かに美味い。工程がしっかりしていたのは見ていた。だが、それだけ手間をかけてジャンクフードを作る意味が」

 

 古池部長は味を認めつつも、安価で買えるジャンクフードをわざわざ再現すること自体に首を傾げていた。

 

「なにを言ってるのよ、古池くん。意味なきに興じてこそのロマンじゃない?」

「そ、そういうものか?」

「ええ。特に男の子は、ね」

 

 部長に指摘されて、ちょっと動揺している。

 根がマジメな古池副部長はこういうのがピンと来ないのかもしれない。

 

「こういうのは無駄が楽しいんじゃないすか、古池副部長。友達と馬鹿やる時って、馬鹿やること自体を楽しむもんでしょ?」

「ああ、それなら分かる。人に迷惑をかけないことが前提だが」

「そこはもちろんす」

 

 もともとが体育会系なので、先輩の言うことには素直に従います。

 ハンバーガーの提供も先輩方が優先。次は葵と乃々の葵には普通サイズだが、小食な乃々には四分の一サイズのパンを焼き、パティもミニサイズのハンバーガーである。

 

「手が込んでいますね」

「四分の一カットのハンバーガーとかなんかイヤなんだよね、俺が。やっぱり形は大事だって」

「ありがとうございます」

 

 はむり、と小さくハンバーガーをかじる。

 信じがたいけど、乃々はいいとこの娘さんだからね。夕食の前にお腹いっぱいはよろしくない。

 葵? 葵なら女子高生に有るまじき勢いでかぶりついてるよ。

 あんまり一気に食べて喉を詰まらせたら困る。冷蔵庫に冷やしておいたコーラとスポーツドリンクのペットボトルも準備しておいた。冷蔵庫は部長の私物です。

 あとは、ハンカチを持ってないだろうから、食べた後に口を拭く為のウェットティッシュも用意してある。

 

「うーんっ、おいしい。チカちゃん腕上げたね」

「そりゃどうも。ほら、コーラでよかったか?」

「ありがとっ」

「ああもう、口の周りについてる」

 

 ティッシュでお口をふきふき。葵は為すがままどころか拭きやすいように唇を突き出す始末。おい、それでいいのか年頃の娘。恥じらいを持て恥じらいを。

 そんなことを考えながら仕方なく拭いてあげているというのに、部長は笑いをかみ殺しており、乃々乃の興味深そうな目を俺に向けている。

 

「……あれですね、久世君って基本的に葵さんにだだ甘ですよね」

「俺には乃々が何を言っているのかよく分からない」

 

 別段葵だけを特別扱いしているつもりはない。

 ただ、葵はハンバーガーやラーメン、牛丼などの肉と炭水化物の組み合わせが好き、というだけだ。

 

「乃々さんや、その“この子仕方ないなぁ”みたいな目やめてもらえませんか」

「この子仕方ないなぁ。葵さんのこと好き過ぎますよね実際」

「直接言いやがったよこいつ。いや、好きとかそういうのじゃなくてね」

「まあまあ照れなくてもいいじゃないですか」

「ちくしょう、ここぞとばかりにっ」

 

 いつも大体こんな感じノリなんで今さら気にしない。

 俺達が馬鹿やってるのを見て、部長がちょっかいをかけてくる。

 

「でも久世君がこの高校を受けたのは、葵と一緒に居たかったからなんでしょう?」

「意訳が過ぎる」

 

 前に受験勉強の手伝いをしたとは言ったが、それだけです。

 部長は頭がいい。成績優秀という意味でも、頭が回るという意味でも。

 基本的に彼女は一を聞いて十を知るタイプである。

 ただし一を聞いて十を知り、敢えて八くらいは面白可笑しく改変するステキ変換機能の持ち主でもある。

 

「チカちゃん……」

「いや、違うからな? 勘違いすんなよ?」

「あー、はいはい。分かってるって。だいたい、チカちゃんの好みは年上だもんね」

 

 え、お前なに言ってんの?

 

「葵、その辺り詳しく」

 

 ほら部長が興味持っちゃった。

 あと古池副部長まで前のめりになっとる。

 

「はーい。チカちゃんって実は、寂しがり屋で構われたがりなんだよね。しっかりしてるように見えるけど、本当は弟属性の年上好きだから、誰かのお世話より甘える方が好きなんだ。お姉ちゃんっぽい人に弱いの」

「お前本気で何言ってんの?」

 

 ここら辺、別にクラスの男子にも話しているから怒りはしないけど、仲いい女子の前で好みのタイプ談義とか勘弁していただきたい。

 

「久世君ってばそうだったの? もう、素直にそう言ってくれればいいのに」

「すごいっすね、今の話でその反応って」

 

 自分が魅力的だって自覚してないと言えない返しですよ。

 

「あら、じゃあ私はお姉ちゃんっぽい女性に入ってない?」

「入ってるに決まってんじゃないですかチクショウ。綺麗で頭の回転が早くて、構うのも構われるのもどっちもできるタイプですよ来栖部長は」

 

 即座に早口で言い切った俺を見る乃々は、「久世くんはもう少し考えてから発言した方がいいと思います」と、しごくまっとうなご意見をくださった。

 

「まじで、部長はすごいキレイな人だと思ってますよ? ただですね、葵の発言には多大なる誇張が」

「まぁ照れちゃって。そんなに私が好きだったのね。ねぇ、ダーリン?」

「勘弁してくださいハニー」

 

 また咄嗟にハニーとかやっちゃったので、乃々から二度目の「もう少し考えて発言しましょう」というツッコミが入った。

 うん、俺もそう思う。

 ただ、救いは来栖部長がそこで勘違いしたり、ドン引きしたりする女性でない点だろう。

 ぱたぱたと手を振って照れている……ように見せかけて口の端は釣り上がっている。

 今回ばかりはその方が有り難い。マジに受け取られて「ごめん、貴方みたいなタイプはちょっと……」みたいな返しされたら多分立ち直れない。

 

「久世、少し話があるんだが」

「古池副部長。今のハニーはノリであって、俺は決して個人的な感情を来栖部長に向けているのではないのであって」

 

 ノリでやっちゃったら、古池部長に強めに睨まれた。

 強面マッチョに凄まれるのは本当に怖い。

 それを手で制してくれた部長には感謝しかない。

 

「まあまあ。ねえ久世くん、さっきのは葵の誇張だとして。少しくらいは本当も混じってる?」

「年上に弱いのは自覚あります。そこは男女問わずですけど。古池副部長にも敬意を抱いてますよ」

 

 これはマジに。

 先達には敬意を、は基本である。

 

「ああ、基本体育会系だものね。引っ張ってくれるというか、頼れる先輩みたいな人が好きなのかしら。だって、古池くん」

「ん……そ、そうか」

 

 副部長をなだめてくれる。

 本当にありがとうございます。

 

 

「そんな感じっす。……あと、部長が綺麗ってところも、まあ」

「あら嬉しい。お姉ちゃんに甘えてくれてもいいのよ?」

「ほんともう許してください……」

 

 そういう対応ができる辺り、部長が好みというのもそこまで外れてはいない。

 それを的確に射貫くのは恐るべし幼馴染というものである。

 

「ちなみに私も、貴方のことはかわいく思ってるわよ?」

「マジっすか?」

「ええ。気遣い屋さんで優しい、いい子だわ」

 

 時々部長はずるいと思う。

 後輩への評価というのは分かっているが不覚にもドキっとしてしまった

 

「部長、一生ついていきます」

「あなた、もうそれ口癖になってるから気をつけてね?」

「大丈夫す、ペットみたいなもんなんで。健全な感情」

「後輩をペットにするなんて、不健全な状況よ。シッシッ」

 

 とりあえず恋愛感情ではないよをアピールすれば、部長がノッて追い払う仕種をしてくれる。

 あんまり重くならないうちに終わらせてくれる部長の優しさだ。

 そんな俺達を余所に乃々は真剣に考え込んでいる。

 

「気遣い屋は、分かります。優しいも、まあ、でも、いい子で、かわいい? かわいい……?」

「乃々、そこで悩むの止めて?」

「では、かわいくはないな、と」

「断定してくれと言ったんじゃねえ」

 

 どうやら乃々にとって俺の容姿は微妙な様子。

 ちょっと悲しい。

 

「チカちゃんチカちゃん、ハンバーガーおかわり」

「晩御飯食べられなくなるからダメ」

「食べれるよ?」」

「それはそれで食べ過ぎだからダメ」

「えー」

 

 葵ちゃんは葵ちゃんでした。

 結局その日は、ハンバーガー作りに終始してボードゲームはしなかった。

 でもがっつり料理が出来たので、俺には良い一日だった。

 

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