返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録   作:自宅戦闘員

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ゾンビパニック・インモラリティその1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段ならば市民の憩いの場となっているショッピングモールも今は静まり返っている

 明かりは点いていない。既に電気系統はやられたのだろう。

 一応、家電売り場に蓄電器があるのは確認している。だがそれは最後の手段だ。

 しばらくはロウソクでどうにかする、というのが全員の合意だった。

 このショッピングモールに籠城してから、既に三日が立った。

 私、久世チカ子は現状のひどさに溜息を吐く。

 

 ゾンビパンデミック……映画にあるような、(エロ)ゾンビの大量発生。

 

 ゾンビは人だけを襲い(意味深)、町は阿鼻嬌歓に包まれ、都市機能は停止した。

 数少ない性存者(笑)はどうにか逃げ出す。私もまたゾンビの手を逃れ、ショッピングモールに辿り着いた。

 ここには性存……もう生存者でいいや。そういう人たちが、私以外にも複数人いた。

 モールの外はゾンビで溢れている。私は見ず知らずのメンバーと力を合わせ、どうにか生き延びなくてはならないのだ。

 でも、その人達は、仲間とも言い切れないのだ。

 

「へへ、チカ子ちゃん。無事か?」

「まゆ太郎さん……ちょ、さわらないでください」

「いいじゃん、仲良くしようぜ?」

 

 来栖まゆ太郎。

 見るからにチャラ男といった感じの彼は、とにかく馴れ馴れしい。

 すぐにカラダを触ってくるため、私は苦手だった。

 

「やめないか、来栖」

 

 それを止めたのは、古池康美ちゃんだ。

 康美ちゃんは真面目で公明正大といった女の子。ぶっきらぼうな喋り方だけど、グループの皆をまとめようと頑張ってくれてる。

 

「えー、なんでだよ。あ、もしかして嫉妬しちゃった? 言ってくれた」

「そ、そんなわけないだろう」

 

 ちょっと動揺する康美ちゃん。

 どうして慌てたんだろう? でも、まゆ太郎さんは私たちに対して、明らかにシタゴコロのある接し方をしてくる。だからゾンビ以外にも警戒しないといけない。

 

「康美さんの言う通りです。モールの外がゾンビである現状、余計な諍いを作らないでほしいものですね」

「はいはいっ、と。乃々彦は固くてヤダねー。カタいのは息子だけで十分だろ、なぁ」

 

 あからさまな下ネタをぶつけられて、私たちはどうすればいいのか分からなかった。

乃々彦くんは、真面目な優等生タイプ。だから、正直まゆ太郎さんとの相性は良くない。

 

「二人とも、なにかあったら言ってくださいね」

「あ、ああ、ありがとう」

「うん、いつもありがとね、乃々彦くん」

「い、いえ……」

 

 照れたように、にへらと笑う。

 その態度にちょっと気が緩み、私たちも同じように笑った。

 そこで最後のメンバーがやってきた。

 

「食糧確保したよ!」 

「わぁ、やったぁ、すごいよ葵ちゃん」

「あはは、チカちゃんも凄いね色んな意味で」

 

 おい急に現実に戻してくんなや。

 当然ながら、これもエロボドゲの話です。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「ボクだけ女の子のまんまー」

「そこはあれだ、ダイスの妙だしな」

「皆見事に逆を引いたもんね」

 

 七月に入り、けっこう熱くなってきた今日この頃。

 クーラーのきいた部室で俺達は乃々がもってきたボドゲをやっていた。

 

『ゾンビパニック インモラリティ』

 

 

 ゾンビパニックの名前の通り、町がゾンビに襲われてプレイヤーがショッピングモールで籠城しているという設定のTRPGだ。

 俺はチカ子、古池副部長は康美という女の子。

 部長はまゆ太郎、乃々は乃々彦という男の子の設定である。実は最初にダイスで偶数なら女の子、奇数なら男の子でプレイすると決めた。結果、葵以外は全員逆の性別になってしまった。

 

「もう久世くんは女の子を経験していますから、慣れたでしょう?」

「経験してねえわ!?」

「え、淫魔の迷宮の時、盗賊少女チカやりましたよね。他にもチラホラと」

「…………そうだったわ、忘れてたわ。ま、まあ、演じることに抵抗はなくなってきたかな」

 

 何でもないです。勘違いなんてしてないです。

 ただ以前のロールプレイをちょっとド忘れしてただけです。

 

「久世」

「うっす」

 

 ぽんと肩に置かれた古池副部長の手。

 言葉にしなくてもその優しさがじんわりと伝わってくるようだった。

 

「で、ボクのターンの話ね。食糧カード引いたから、食糧チップを倉庫にいれるよ」

 

『ゾンビパニック・インモラリティ』はカードで進めるTRPGだ。

 タイトル通りゾンビものだが、これの目的は“モールからの脱出”でも“ゾンビの撃破”でもない。

 ゾンビがいる街での生存と、ショッピングモール内での人間関係に焦点を当てている。

 ゾンモラは、ターン制のカード式TRPG。

 まず、専用のカードを三つの山札にする。自分のターンがくるごとに三つの山札のどれかから一枚カードを引く、といった形でゲームは進行していく。

 カードの内容は色々。『モール内で食糧を見つけた』とか『包丁があった』とか。

 それ以外にも行動カード……『話しかける』や『二人で過ごす』などもある。 

 

このゲームの特徴は、引いたカードを公開する必要がない点だ。

 

 たとえば、今回葵は食糧カードを引いた。

 するとそこに記載された数字の分だけ、『食糧保管庫』という名のチップ置き場に食料チップを置く。

 食糧チップは、それぞれのプレイヤーのターンの初めに1チップを減らす。

 まあモール内での食糧だね。人間食べなきゃ生きて行けないので、自分のターンが来た時に食糧保管庫内のチップが0だった場合そのプレイヤーはリタイア。

 

 ただし、前述した通りこのゲームでは引いたカードを公開する必要がない。

 つまり葵は、食糧保管庫にチップを入れず、自分の手札に食糧カードを隠しておいてもいい。そうすると、自分のターンが来た時に保管庫が0でも、個人の食糧で生きながらえることができる。

 

「ありがとなー、葵」

「とりあえずは生き残らないとね」

 

 素直な葵は普通に食糧を確保してくれる……と思わせて、実は手札の中に食糧を隠しているかもしれない。

 そしてもう一つ、山札には『行動カード』や『提案カード』がある。

 それとは別に、ゲームの最初に『派閥カード』が全員に渡される。

 全てのカードの裏は全部同じなので、内容は外からだと判別がつかない。

 

「そだ、乃々彦くん。このカード渡すね」

「はい……なるほど、了承しました。ではカードを返しますね」

 

 で、自分のターンには二回まで、プレイヤーとカードを交換できる。

 葵と乃々がカードを渡し合って、互いに頷いている。

 が、当然俺達には内容が分からない。

 でも、何らかの密約は交わされた。

 

 このゲームの勝利は、「規定ターン数を経過した段階で生き残り、最大派閥の一員でいること」。

 

 今、葵が乃々に渡したカードは派閥カード? それとも他の提案? 

 分からない。

 既に葵と乃々彦は手を組んでいるのだろうか。

 

「どうしました、チカ子さん?」

 

 その綺麗なポーカーフェイスからは彼女の内心を読み取れない。

 そうこのゲームはゾンビものだが、ゾンビを倒すのではない。

 裏切り前提の、ショッピングモール内の派閥形成ゲームだ。

 そんでもって、なんで男女を決める必要があるかというと。

 

「次は私のターンね。チカ子ちゃん、このカード受け取って」

 

 部長が俺にカードを渡してくる。

 

そのカードは、【派閥・セフレ】

 

 ……うん、まゆ太郎がセフレになれよってさ。

 はい、派閥といっても別に真面目なもんじゃありません。

 いや、真面目に【脱出に協力する仲間】もあるけど、【ハーレム】だの【性奴隷】もある。

 ショッピングモール内で平穏を維持するか、ぬちょぬちょああんな集団が形成されるか。そういうインモラリティなゲームなのだ。 

 

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