返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録   作:自宅戦闘員

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ゾンビパニック・インモラリティその4

 

 

 驚愕のまま進む派閥公開。

 副部長が場にカードを置いた。

 

「当然ながら、俺は【街からの脱出メンバー】だ。序盤に渡したおかげで、交渉は控えじっくりと派閥ポイントを稼がせてもらった」

 

 康美さんはコツコツとショッピングモール内で使える区域を増やしていった。

 だから派閥ポイントがかなり多い。

 

「部長、あの時。俺が冷凍庫を奪った時にかけてくれた“よくやった”っていう言葉は……」

「本心よ。よくぞ、私たちの掌の上で踊ってくれた、っていうねぇ……! げひひっ!」

「あっ、ああああっ」

 

 副部長を攻撃対象にしたということは、セフレ派閥に疑問を持っていないということ。 

 自ら負けの道を進む俺は、さぞ滑稽に見えただろう。

 次に、葵も派閥カードを示す。妙に格好いい決めポーズなのがなんかアレだ。

 

「ボクも、【街からの脱出メンバー】、だよ。その感じ、せっかく誘ったのに、チカちゃんは選ばなかったんだね」

 

 だってあの時は、部長が【セフレ】だと思い込んでいたんだ。

 それに乃々を誘った手前、裏切るのも気が引けたし。

 

「あーあ、ボクの提案に乗ってればよかったのに」

 

ちょっと不満そうな葵。

 続けて、乃々の番だ。彼女が開示する前に、部長がにたりと笑った。

 

「ふふ、せっかくだもの。私も同じ手、使わせてもらったわ」

 

 ぞくりとした。

 確かに、乃々と部長もカードを交換している。

 

『じゃ、改めて手札から。これと交換で、食糧をちょうだい』

『意外といいカードをくれましたね。お返しをどうぞ』

『ありがと。助かるわ』

 

 俺はあの時、二人は同じセフレ仲間だと思っていた。

 でも、そうでなかったのなら。

 乃々の手元にも、【街からの脱出メンバー】の派閥カードが手に渡っていることになる。

 

「では、私も開示しますね」

「あ、ああ……」

 

 俺は情けない声を漏らしてしまう。

 顔の序のしなやかな指がカードをそっと場に置く。

 そこに置かれた文字に俺は、目を見開いた。

 いや、俺だけじゃなく、来栖部長もまた驚愕していた。

 

「なっ……!?」

 

 こぼれた吐息は誰のものか。

 テーブルの上で開示されたのは。

 

「【派閥・セフレ】です」

 

 俺が渡した、セフレのカードだった。

 

「え、え? 嘘でしょう? 乃々乃なら、古池くんの手くらい読んでいると思ったのに」

「ええ、勿論。早い段階で副部長が仕掛けたのも、まゆ部長が確実に久世くんを落とそうとしていたのも、読んでいました」

 

 当然だ。

 何せこのゲームは乃々の持ち込み。

 ルールは把握しているし、プレイヤーがやりそうな手なんて初めから想定済みのはず。

 なのに、カノジョは勝ち馬に乗らず、負ける選択を敢えてとった。

 何故、と疑問を抱く俺に、乃々は柔らかく微笑む。

 

「もう、なんて顔をしているんですか、チカ子。貴女が誘って、体を重ねたんですよ。たとえ負けたとしても、裏切るわけがないじゃないですか」

 

 乃々……なんてイイオンナ!

 あ、いや、乃々彦がイイ男なのか?

 もうどっちでもいいわ。ともかく、乃々は俺を裏切らないという理由だけで、確実に拾えた勝ちを捨てたのだ。

 

「の、乃々ぉ……」

「仕方ない子ですね。ほら、よしよし」

 

 言葉だけじゃなくてマジに俺の頭を撫でてくれる。

 ごめん、乃々。俺、今まで君をぶっ飛びエロお嬢様だと思ってた。

 こんなに優しいのに、俺の目は曇っていた。

 

(この子ゲームの勝敗を捨てて久世くんの好感度取りに行った!?)

 

 なんか部長がめっちゃ驚愕してたけど、それも仕方ない。

 きっと熟練のボドゲプレイヤーだけに、乃々の行動を予想できなかったんだろう。

 

「ありがとう、乃々……俺一人じゃなかった」

「大丈夫ですよ。なんならハグもしましょうか?」

「それはダメ……乃々はかわいいから、そういう無防備なのを常習化するのは良くない……」

「その状態でも久世くんなんですね……」

 

 だって、普段からそのノリだとどっかでやらすかもしれないし、そこら辺は注意しないといけない。

 同級生の女の子に頭を撫でられ続ける俺を、幼馴染の葵たんがしらーっとした目で眺めている。

 

「チカちゃんゲームだからね? なんで本気の感動を目に浮かべてるの?」

「うるっさい! 部長に裏切られた俺を乃々だけが見捨てないでいてくれたんだぞ!」

 

 ぶっちゃけ好感度うなぎのぼりだわ。

 

「今度違うゲームにも付き合ってくださいね?」

「全然かまわないぞ」

「嬉しいです、約束守ってくださいね」

 

 よく分からんけど、乃々がそう言うならきっとそうだ。

 

「あ、俺はセフレ。もうポイント計算するまでもなく、街からの脱出メンバー……副部長、葵、部長の勝利。明確な一位を決めるなら、今回は副部長っす」

「まあ、運も味方したな。うまい具合に、使える行動カードを引けた」

「でも俺より後からボドゲ初めてるのにこれですから、そこはマジでスゲーと思いますよ」

 

 ゲームが終わればノーサイド。

 実際、副部長の作戦はズルいのではなく、単純に上手かった。

 自分が素人という情報を巧みに利用したのだから見事と褒めるべきだろう。

 

「でも次は俺も負けませんからね」

「おう、受けて立つぞ」

 

 副部長もニカッと男臭い笑みで応える。

 彼もボドゲにけっこうハマってきてるみたいだ。

 

「引きずらないタイプなんですね」

「それもあるけど、チカちゃん年上に弱いからね」

 

 聞こえてますよ、乃々ちゃん、葵ちゃん。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「なんで、ですか。まゆ太郎さん……なんでっ!?」

 

 私は激昂して、まゆ太郎さんを怒鳴りつける。

 けれど彼は飄々としたままだ。

 

「あれー? なに、チカ子ちゃん、自分のカラダで俺をたらしこめてるとでも思ったの。ははっ、単なるセフレだぜ。性処理以外の意味なんてあるかよ」

「そん、な……」

 

 まゆ太郎さんに好みを捧げた。

 何度も何度もベッドの上で体を重ねた。

 それもすべてはショッピングモール内での生活を上で、明確な後ろ盾が欲しかったから。

 なのに、まゆ太郎さんは裏で脱出派と繋がって行動をしていた。

 そうして、都合のいい性処理女を見捨てて、この町を脱出しようとしている。

 

「ま、いい身体だったのは認めるぜ? だけど、食糧の関係もあるからな。連れてってはやれないんだよね。じゃあねー」

 

 振り返りはせず、何の未練も見せず、まゆ太郎は去っていく。

 生きるために、性行為までしたのに。

 簡単に捨てられて、私はゾンビに囲まれたショッピングモールで朽ち果てていく。

 こんな、最後?

 なら、私は、なんのために……。

 

「あ、は。あはっ、あはははははっ! いい身体だって……私、ほんとうに、カラダ以外に、何の価値も」

 

 認めてもらえなかった。

 まあ、そんなものか。

 誰彼構わず股を開いて、脱出派ともつながりを持っていた。コウモリ女の末路など、ゾンビに犯されて死ぬくらいの……。

 

「チカ子」

 

 なのに、声が聞こえる。

 私が驚いて振り返ると、乃々彦さんがそこにはいた。

 

「どう、して」

「こっちも、置いて行かれたんだよ。困ったな、モールはもう、二人だけだ」

 

 苦笑する彼に、涙がこぼれる。

 途中、私を自分の女のように扱う、ちょっと調子のいいところのある男性だと思っていた。

 でも今の乃々彦さんは、肩を竦めながら優しい表情をしている。

 

「私、まゆ太郎さんとも、シテたの。あなたとの、行為も。単に、ここでの生活を、楽にしたいだけで」

「知ってたよ」

 

 言いながら私を抱きすくめる。

 強くはない。むしろ、そっと優しく。慈しむような風情がある。 

 

「私はコウモリで、カラダをつかって、多数派になろうと。それなのに捨てられて」

「いいから」

 

 乃々彦さんの手が優しく髪を梳く。

 キモチいい。

 こんなにキモチいいと感じたのは、いつぶりだろう。

 カラダを重ねていた時は、熱さを感じながらもどこかが冷えていたような気がする。

 

「いっしょにいるから」

「だめ、です。私、最低の女で、このままゾンビに」

 

 あなたに、いっしょにいてもらう資格なんて、ないんです。

 

「だから、あなただけでも、逃げて。今から脱出派に」

「誘われたけど、断っちゃった。最後まで、いっしょにいるよ」

「あ、あああああ……!」

 

 なんで? 

 なんで、こんな汚らわしい女のために。

 この涙だってきっと、あなたのためじゃない。

 嬉しいと思って流れてしまう、あさましい心の証明なのに。

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

 なのに乃々彦さんは優しく頭を撫でてくれる。

 ゾンビに囲まれたショッピングモールで。

 今は、彼のぬくもりだけが、私のすべてだった───

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 ───みたいなね?

 

 TRPGとして考えたら、わりといいセッションだったと思う。

 

「いやー、ゾンモラ面白かったな。エロ要素も少なかったし」

 

 負けた俺だが十分楽しんだので実質勝ちだ。

 五人でやれたってのもいい。皆でワイワイというのも、盛り上がった要因である。

 

「乃々乃ちゃん、これって拡張パックもあるんっだけ?」

「はい。今回は基本のみでしたが、手札にエロウィルスカードやゾンビからのメリーゴーランドイベントの有無。また、最初に参加者で“強姦魔”を決めて、その人の派閥になったら強制敗北というシステムもあります。もちろん強姦魔が誰かは分からない使用です」

「お、おぅ……」

 

 葵がめっちゃ尻込みしてる。

 あと副部長もかなり顔が赤い。

 

「ダメよー、古池くん。後輩をえっちな目で見ちゃ」

「わ、分かってる!?」

 

 部長に指摘されてかなり動揺。

 好意を向けてる相手だから仕方ないと言えば仕方ない。

 

「ですが皆さん、楽しんでくれたようでなによりです」

「能登のすすめなので警戒していたが、俺もこれは気に入った。複数人での戦略性があるヤツがどうも好みみたいだな」

「なら副部長向けのも探しておきますね」

「ああ。……できれば、過激すぎないのを頼む」

 

 そこの念押しは忘れない副部長だった。

 

「ところで乃々乃、今回の貴女、完全に盤外戦術に出たわね?」

「なんのことでしょう、まゆ部長?」

 

 部長の言葉に乃々は嫋やかな笑みで返す。

 俺もちょっと意味が分からない。盤外戦術もなにも、俺達負けてるしね。

 さらりと部長の追及をすり抜けた彼女は、俺の目をまっすぐに見た。

 

「そうだ、久世くん。約束ちゃんと守ってくださいね」

「ああ、ゲームに付き合うのなんて今更だし、どんとこいだ」

「そう言ってくれて安心しました。次はこれ、【くノ一調教カード~滴る愛液、昂る肢体~】をヤリましょう」

 

 超ド直球のエロボドゲがきた!?

 

「では、俺は先に帰る。またな」

「副部長退避が早ぇし速ぇ!」

 

 判断も動きもめっちゃスピーディ。速攻でいなくなったよ副部長。

 目の前には、楽しみにしてますとでも言うような、無邪気な乃々の笑み。

 なんでそんなエロくノ一なパッケージなゲームを持ってるのに無邪気でいられるんですかね。

 

「……うっす」

 

 でも約束を破るという選択肢はない。

 俺は頷き、次のゲームも決定しました。

 

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