返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録   作:自宅戦闘員

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くノ一調教カードその1

 

 

 朝、乃々乃は珍しく父と食卓を共にしていた。

 普段はもっと早く出るのでこういう機会はめったにない。

 

「乃々乃、高校はどうだ?」

 

 父は真面目で、世間一般の常識に沿った考え方をする人だ。

 高校生が外泊など好ましくない、学生の内は勉強を優先するべき。遊ぶなとは言わないが、節度ある行動を心がけるように。

 多少厳しくはあるが、乃々乃自身周りに迷惑をかけるはしゃぎ方は好まないので、父娘の間に軋轢は特にない。

 

「友人もできて、毎日楽しく過ごしています」

「部活動……ボードゲーム研究部だったか。あまり、将来の役に立つものとは思えないが。まあ、変な趣味よりはいいか」

 

 ごめんなさい、お父さん。わりと変な趣味です。

 

「そ、そもそも運動部には向いていませんし、成績を落とさない程度に楽しもうと思っています」

「そうか。高校で初めての期末試験、頑張るように」

「はい、もちろんです」

 

 多少の緊張はあれど、どうにかやり過ごすことができた。

 

 

 能登乃々乃は、内実と周囲の評価が微妙に噛み合っていない少女である。

 まず、「お金持ちのお嬢様」というのは事実。しかし能登家は、有名どころの夏雅城や冬護院などの、古くから続く名家ではない。

 彼女は総合エレクトロニクス企業NOTEC《ノテック》の代表取締役社長の娘なので、明確にお金持ちのお嬢様だ。ただし、もともとノテックは乃々乃の祖父が戦後にやっていた能登電機製作所を前身としている。

 この製作所が年数を重ね技術力を磨き、高度経済成長期に躍進。バブルがはじけた後もIT技術を取り入れて巨大化し、国際社会に販路を広げるために改名したのがノテックである。

 つまり祖父(成金)息子(二代目)の娘が乃々乃なので、決して由緒正しい生まれというわけではなかった。

 

 この辺りの事情が、彼女の父親の教育方針に繋がった。

 断っておくが、娘の意向をすべて無視する親でもない。

 ただ、成金として軽んじられることの多かった親を見てきたから、娘には苦労をさせないよう、立ち振る舞いで侮られないように厳しく躾けた。

 結果、上手くはいったのだろう。

 能登乃々乃の周囲の評価は「成績優秀でマジメな優等生、接しやすくも綺麗な立ち振る舞いをする良家の子女」、「約束を守る、遅刻をしない、困っている人には手を差し伸べる。当たり前のことを当たり前にできる娘」。家の資産を鼻にかけた下品なお嬢さまにならなかったのだから、父親の教育は的外れではなかった。

 乃々乃自身も父親を嫌ってはいない。自分のために苦心しているのを知っているし、感謝も尊敬もしている。

 

 それはそれとして、いつ如何なる時も“いい子”でいるのは疲れるものだ。

 特に大企業の娘として、時には父の傍に控えて取引のある企業の方々と接する機会のある乃々乃ならば尚更に。

 そんな彼女は偶然知ったボードゲームに衝撃を受けた。

 

 初めは親戚同士の集まりでやった、“人の一生をスゴロク形式で進める人生を体験するボードゲームだ”。子供達で集まってダイスの目に一喜一憂をする楽しさもさることながら、乃々乃は盤面で繰り広げられる別の人生に釘付けになった

 初めてやった人生系ボードゲームで、彼女はお笑い芸人だった。

 父親なら「下品でみっとも無い」とでも言いそうな役職に就く自分が面白くて……この辺りから彼女の趣味の方向性が変な感じになります。

 

 ボドゲに興味を持った彼女は、特にTRPGと呼ばれるロールプレイ要素の強いモノに注目する。

 異世界の勇者様、アイドル、魂を持った人形。ボドゲなら、自分以外の誰かになれる。

 で、どんどん調べて行けば、ヤバいジャンルにもぶち当たるわけで。

 

 …… 伝統的ないちゃラブえっち。

 え? AV女優、こんなのもあるんですか?

 ほ、ほうほう、アイドルといいつつ枕営業オンリー……。

 おねショタを演じて搾乳プレイ!?

 

 乃々乃の思春期の好奇心が爆発。

 もともと躾が行き届いているせいで、そういうものを周囲に見せたことがなかった。

 孤独で蟲毒な性的興味が、“ボドゲだから現実じゃないよ!”という免罪符を得てスパーキン。

 そして彼女は真理に至る。

 

 

『お父様に、なにかを強制されたわけではありません。私は生まれた時から……単に、むっつりでした』

 

 

 厳しい躾とか抑圧されたストレスとか要因ではあるけど、まあ元を正せば乃々乃ちゃんがエロ妄想激しいタイプだよねって話です。

 かと言って、実際の行為に及ぶような気持ちはない。

 そもそも、別にエロいことをしたいのではない。

エロい自分を演じて、自分以外の何者かになれる時間が欲しいだけ。なので、実際の行為に及び本質的な変化が起こるのは本末転倒もいいところである。

 

 実際の行為に興味はないけど下ネタ話自体には興味のある状態。

 で、高校に入学して。

 

・「晒してもよい場」=ボドゲ部

・「趣味を理解してくれる仲間」=部員

・「エロに対してリアクションはくれるが暴走しない、気遣い屋の優しい男の子」=久世くん

 

 を得たことで、能登乃々乃は欲望を開放した。

 彼女にとってボドゲ部も部員も久世友近も、掛け替えのない存在なのだ……!

 

 あと純粋に。

 甘い声を出してエロ・ロール・プレイをすると、久世くんが照れたりちょっと興奮したり、心配して気遣ってくれるのなんか嬉し楽しい!

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 昼休み。

 俺が乃々と昼飯を食べていると、クラスの友人が声をかけてきた。

 

「久世って将来料理人志望?」

「違うけど、なんで?」

「家庭科部に出入りしてるし、弁当手作りも結構多いじゃん」

 

 今日は俺の手作り弁という話をしていたので、

 乃々とは部活もいっしょで教室でも大体一緒にいるので、普段からけっこう仲がいい。

 そのためクラスメイトの男子に、やっかみ混じりのからかいを受けたりすることもしばしば。

 加えて、乃々に惹かれて集まってくる男子もちらほら。この男子もそう言う一人だ。

 

「久世くんの場合、料理は趣味の域を出ませんよね」

 

 俺が口を開くより早く乃々が答える。

 その状況に男子たちがちょっとざわめく。

 

「だなぁ。サッカーにしろ料理にしろ、過程に楽しみを覚えるタイプだから、あんま職業にするの向いてない。身近な人に美味しいって言ってもらえるのが一番嬉しいんよね」

「あ、卵焼き美味しそうです」

「はい、あーん」

「本当に躊躇いがないですね……」

 

 乃々はちょっと頬を赤くしたが、可愛らしく口を開ける。

 箸が直接唇につかないように注意はしています。

 

「ん、美味しい。塩がお好きなんですね」

「や、どっちも派。今日はたまたま塩なだけ」

 

 他のおかずとの兼ね合いによる。塩鮭メインなら甘い卵にするかな。

 食はフレキシブルに楽しまないとね……なんて考えていると、周囲の友人たちが目をぱちくりしていた。

 

「あのさ……友近。もすかすて、能登さんと、付き合っとる?」

「訛ってる訛ってる。付き合ってねーよ、舐めてんのか輝ける童貞だよ」

「久世くんとはいいお友達ですよ」

 

 ふうわりと優しい乃々の微笑みに見惚れる男子たちは、一転俺の襟首を掴む。

 

「友近ぁ、てめえ、能登さんの前で童貞とか言ってんじゃねえぞ」

「お耳が穢れるだろうがぁ!」

「えぇ!?」

 

 セフレの逆バニー聖騎士淫紋連続絶頂乃々乃なのに。

 でもクラスでは内緒にしているから、そっちに倣うべきか。

 

「乃々……ごめん、俺、下品だった……」

「い、いえ、そんな事気にしないでください。私の方こそ申し訳なく……。久世くんは悪くないのに謝らせてしまって」

 

 なんかお互いにぺこぺこする羽目になってしまう。

 むしろ乃々の秘密を守っているので、彼女の方こそ恐縮し切っていた。

 放課後、俺達は二人で部室へ向かう。

 

「今日は、葵さんは」

「フットサルだな」

「そうですか……ところで、お昼の卵焼き本当に美味しかったですよ」

「お、そうか?」

 

 そう言ってくれると嬉しい。

 なんて思っていると、乃々が笑顔で決め台詞。

 

「久世くんは、潮吹き派なんですね」

「……とりあえず、教室で言わなかったことは評価するぞ、偉かったな」

「えへへ」

 

 乃々は乃々だった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

「なので、【くノ一調教カード~滴る愛液、昂る肢体~】をしましょう」

 

 なにが「なので」なのかは分かりませんが、部室に来るや否や乃々は鞄からカードゲームを取り出した。

 最近は五人が多かったけど、今日は俺達と来栖部長の三人。もはや遠慮などいらんとばかりに、乃々はエロイラスト満載なカードをテーブルに広げる。

 

「気合入ってるわね、乃々乃」

「慣れたとはいえ、やはり副部長がいる場であまりはしたない真似もできませんから。でも今日はエロボドゲに抵抗のない人しかいません。この機会にちょっと露骨なのをしておきたいですよね」

「待って? もしや俺もエロに抵抗のない側に数えられてる?」

 

 心外ですが?

 でも来栖部長がにやにやと笑っている。

 

「嫌い?」

「嫌いな思春期男子がいるはずないでしょうに。でも恥ずかしいという感情はございます」

 

 俺が素直に内心を吐露すると部長は余計に笑って、バンバンと机を叩いていた。

 

「大丈夫です、久世くん。安心してください。冷静に考えれば同級生の男子の前でこんなことをしている私が一番恥ずかしい人間です」

「あっ、その自覚はあったのね」

 

 なのに、すごくキリっとした表情である。

 元が整っているからとても綺麗なのが若干アレだった。

 俺たち三人は机を囲み、カードに触れる。やっば、普通にエロいイラストばっかりだ。

 大丈夫じゃないし安心もできねーわ。

 

「すげーな、これ」

「くノ一調教カードは、商業ではなく同人作品ですから。この手のゲームは商業ラインに乗せない方が過激になりやすいです」

「へぇ。そういや、メンヘラの地雷原も同人サークルが製作だったっけ。意外と多いんだな、そういうの」

 

 俺の素朴な疑問に、来栖部長が答えてくれた。

 

「ボードゲームにもコミケみたいな集会があるのよ。オリジナル作品を頒布したり、実際にその場で遊んでみたり。けっこう楽しいわよ」

「まゆ部長、羨ましいです。私は中々参加する機会が……」

「ああ、乃々乃はお家が厳しいものね。いつか部活動の一環として参加してみましょうか」

「ぜひっ」

 

 ぱぁ、と明るい表情になった。

 こういう時は純正美少女なので、教室と部室で慣れている俺でもドキドキする。

 

「では、今日のところは皆でくノ一調教カードを楽しみましょう。これはタイトルの通り、捉えたくノ一をあの手この手で調教し、快楽堕ちさせるゲームです」

 

 こういう時は淫猥美少女なので、別の意味でドキドキする。

 

「ルールは、シンプルにブラックジャックが近いですね。まず、ディーラー役をこのゲームでは『頭領』と呼びます。今回は私が勤めますね。頭領はくノ一を取りまとめる、忍者軍団のトップです。頭領は、ゲームの前に4枚の【くノ一カード】を並べます」

 

 乃々乃頭領が四人のくノ一を場に出す。

 全員が扇情的な衣装を身にまとっており、ふんどしチラ乳輪チラくらい当たり前っすよダンナ。ダンナ誰だよ。

 カードにはそれぞれ『快楽値』なるものが設定されており、全キャラ数値が違う。

 

「ブラックジャックは21を目指しますが、くノ一調教では快楽値に記された数値を目指します。例えば、【くノ一葵】を例にお試しプレイをしてみましょう」

「待って? なんでわざわざ葵を選んだの?」

「葵って名前、くノ一っぽいですからね。仕方ありません」

 

 答えになってねえ。

 

「まず、久世くん……いえ、悪代官に仕える抜け忍びであり調教師でもある性の達人“友近”は、調教する相手として葵を選びます。葵の快楽値は27。つまり、あなたは葵に数字のカードを重ねて、27を目指します。この辺りは数値が違うだけで、ブラックジャックと変わりません」

 

 なるほど、確かに。

 

「違うのは、頭領である私もまた葵に対してカードを重ねる点」

「ああ、ブラックジャックはディーラーの手元にもカードを置くもんな」

「はい、ですがくノ一調教は、チップの取り合いじゃなくてくノ一の取り合いです。私と久世くんは、葵に対してカードを重ね、より27に近い数値を叩き出した方が、葵のカードを入手します。他のプレイヤーとも複数回この勝負を行い、最終的に入手したくノ一の数が多い方の勝利です」

 

 つまり、「頭領のまとめる忍者軍団のくノ一を、悪代官の調教師であるプレイヤーが捕縛し調教する。だが、頭領もまたそれに対抗する、くノ一の奪い合いエロゲ」ということ。

 ということは、だ。

 重ねる数字カードというのは、トランプのようなシンプルなものではなく……。

 

「うっ、想像通りだけど……」

 

 予想通り、数字カードには性行為が描かれている。

【クンニ】【乳首責め】【緊縛縄責め】【深い口づけ】、まだまだあるよエロカード。

 

「確認してくれました? 葵に、クンニや乳首責めをして、快楽値に近付ける。27で快楽堕ち、くノ一はあなたのものになります。頭領→調教師の順でカードを引き、27を越えたらバーストで自動的に相手のものになります。カードごとに基準となる数値が違うのでブラックジャックに当たる役はありません」

「そんで、頭領のが27に近かったら、くノ一は守られる。最終的にくノ一の数が多かった方の勝利と」

「そうですね。後は、援護ルール。くノ一には『援護値』というものが設定されています。ゲーム中一枚につき一回だけ、数字カードを引く代わりに、入手したくノ一の援護値に記された数字を使用できます」

 

 微調整にくノ一の援護が使える、と。

 ……アレ? それ快楽落ちしたくノ一が、仲間をイカせるために手伝うみたいなシチュにならね?

 

「頭領の獲得くノ一数は合計ではなく、各々のプレイヤーとの勝敗だけを数えます。私が部長に二回、久世くんに二回勝ったとしても、四人確保ではなくそれぞれに二回勝ったという扱いなので、理不尽にプレイヤー側の敗北にはなりません。そして最後に……あ、久世くん、試しに、くノ一葵の上に【クンニ】を置いてください」

「お、おお」

 

 言われるまま置くと、乃々が一度咳払いして喉の調子を整えた後、

 

「あっ、ああん……♡」

 

 めっちゃ迫真の喘ぎとかやってきおった。

 

「不肖、わたくし能登乃々乃が、頭領兼くノ一ボイスを担当させていただきます」

 

 こ、こいつ。

 副部長がいないのを、いいことに。

 全力でエロ・ロール・プレイ、ERPをヤるつもりだな……!?

 

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