返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録 作:自宅戦闘員
ボードゲーム部に所属しているのは五名。
まず部長の来栖まゆ先輩。
副部長の古池康太先輩。
この二人が二年生で、部員は俺こと久世友近、元気なボクっ娘幼馴染み・水科葵、なんちゃって清楚系・能登乃々乃の一年生トリオという構成だ。
古池副部長は生徒会があるのであまり顔を出さず、葵はフットサル同好会と掛け持ちなので来ない日もある。
今回は時間が取れたようで、放課後に古池副部長が部室にやってきた。
「お、おぉ、久世」
「うっす、古池副部長」
ただ、若干居場所がなさげな感じ。
古池副部長は見た目完全体育系の、マッチョな先輩だ。生徒会に所属しているが、成績はそんなに良くない。むしろ、成績が良くない分内申点をどうにかしようと頑張っているタイプである。
俺も中学の頃はサッカー部のため、一年生にしては身長も高いしガタイもいい。
二人そろってボドゲ研究部とは縁遠そうな外見だった。
そんな副部長が似合わない部活に来るのには理由がある。
「あー、なんだ。今日は、来栖は?」
「家の用事だそうで早めに帰りました。ちなみに葵……水科もフットサルの方に行ってるんで、俺と乃々だけっすね」
「そ、そうか……」
ぶっちゃけると、古池康太は来栖まゆ部長ガチ勢である。
もともと上の世代が抜けたことで廃部になりそうだったボドゲ研究部は部員獲得が急務だった。そんな時、いの一番に名乗り出たのが古池副部長だ。
そのおかげで助かったので一応恩人ポジではあるものの、俺の目から見ても副部長の想いは伝わっていない。
それもそのはず、なにせ彼の目的は「来栖まゆを助けること」で、変な話ボードゲームには然程の興味もなかったのだ。
なので来栖部長と趣味で盛り上げることもなく、生徒会の仕事でこちらに来る日数も少なく、「名前を貸してくれてありがとね」状態に陥ってしまっている。
「能登は、なにを読んでるんだ?」
「新しく仕入れたボドゲのマニュアルです」
「そ、そうか」
同じ理論でボドゲが趣味の乃々ともあんまり盛り上がらない。
こっちは彼女の方が若干コミュニケーションにを苦手としている点も大きいけど。
「乃々、先輩に何たる口の聞き方を! しゃーっす、すんません! 古池部長! しゃーっす!」
「いや、久世。そんな挨拶はいらん」
「もう、なにやってるんですか久世くんは」
よし。
いい感じに二人が呆れてるのでこのまま畳みかけよう。
「運動部は先輩の言うことは絶対なんだ!」
「ここはボドゲ部ですよ?」
「でもチェスとかってマインドスポーツっていうし、分類としてはボドゲってスポーツじゃね?」
「そこで言うスポーツは“競技”の意味ですから、運動というわけでは」
「……古池副部長、乃々がいじめます」
「どういう流れでそうなるんですかっ?」
「ま、まぁ、落ち着け、久世も能登も」
適当に道化ておちゃらけて、上手く三人でお喋りしてますよな雰囲気を作っておこう。
「そうだ、副部長お菓子食います?」
「む、一応生徒会に身を置いているから、あまり持ち込みを見せられるのは」
「なに言ってんすか。ボドゲのお供にはお菓子とジュース。これは来栖部長も認めていることです。ちなみに、副部長は普段どんなの食うんですか?」
「間食はそれほどしないが。だが、好みで言ったら海苔巻きあられか?」
「うまいっすよね。乃々も普段は間食しない派だっけ?」
「いえ、量をコントロールしているだけで甘いモノ好きですよ。ボドゲ中もクルミや素焼きアーモンド、ナッツ類を少量に。あまり塩分はとらないようにしています。でも、久世くん知っていますよね」
「まあまあまあ」
知ってるけど、話題を広げたいんでそこはツッコまないでください。
「俺はラーメンとハンバーガーだな」
「おやつの範疇を超えていません?」
「いや、運動部からするとわりと普通でな。帰りにラーメンは定番で」
「そうなんですか? 副部長も……?」
「元は柔道部だった」
ぎこちないながら会話はちょっとずつ増えてきた。
まあ同じ部室で重い空気は辛いからね。
「しかし、来栖が来ていないなら、このまま解散か?」
「あー、今日は乃々と二人だったから、ボドゲって感じでもなかったっすからね」
「私も久世くんとお喋りで十分楽しんでいましたから。ですが、三人集まったなら簡単なゲームでもしましょうか?」
乃々の提案に、わずかに躊躇う副部長。
「いや、俺は、この手のゲームに疎くてな」
「副部長がそれでどうするんですか」
ぴしゃりと言い切る。
彼女、こういう時にはきっちりと物申せるタイプなんだよな。
「正直なところ、私も分かっています。副部長が、来栖部長を想って廃部にならないように名義貸しをしただけ、ということは。ですが部に籍をいたからには、ボドゲへの理解を深めるべきです。そうでなければ、下心を隠して『えー、君もそれ好きなの? 俺も好きなんだよね、気が合うじゃん』と女性に近付くチャラ男となにが違うのですか?」
指摘されて副部長はかなり動揺している。
俺も動揺している。乃々の口からチャラ男とか出てきて。いや、絶頂とか淫紋に比べれば、まだ一般寄りの単語か?
「副部長に足りないのは、己をさらけ出す事。ゆえに、今日のゲームはこれにしましょう」
そこで乃々は、カバンから私物を取り出した。
「今日は部長も水科さんもいませんし、ちょっと性癖強めのゲーム、“コスプレックスカード”です」
はい、今日もエロボドゲのお時間です。
「大丈夫? とりあえず名前が既にライン越えだけど大丈夫?」
俺の問いに満面の笑みで乃々は応える。
「“コスプレックスカード”はポーカーなどの、役を作って勝負を決めるタイプの対話ゲームですね」
応えただけで答えてはくれねーよ。
俺の問いを華麗にスルーして乃々は解説を続ける。
「基本的なルールはポーカーを想像していただければ結構です。
まず各プレイヤーにカードが6枚配られます。
そのカードの組み合わせによって“役”を作り、強さを競うゲームです。
ただし、役は“2ペア”か“3ペア”しかありません。
途中で二回までカードの交換が認められ、全員の交換が終わった後に勝負するなら『開示』、しないなら『隠す』を宣言します。
複数のプレイヤーが役を作って『開示』した場合は、対話で決着というゲームです」
つまり、手札六枚の変形ポーカー?
でも役が二種類しかないのなら3ペアを目指さなかったら負けになるだけのゲームに思える。
俺が頭を悩ませていると、乃々は「では、実践してみせましょう」とカードを広げてくれた。
そうして俺はカードの絵柄を見て戦慄した。
「例えばこれ、私の手札には『スク水』が2枚、『眼鏡』が2枚揃っていますね? これで2ペアです」
「相手はこう。『ブルマ』と『手錠』と『ネコミミ』の3ペア」
「ここで私が開示を宣言すると、相手プレイヤーとの勝負になります。コスプレックスカードは2ペアより3ペアが強い訳ではありません。あくまで対話で決着……つまりこうです」
乃々は一度深呼吸して、ゆっくりと語る。
「『スク水でスポーティな印象なのに眼鏡って言うアンバランスさが良いよね』。『いやいや、ネコミミつけたブルマ娘の手錠シチュにはかなわんよ』。……つまり、手札でペアを作ったカードで性癖トークをして、相手を説き伏せた方が勝ちという対話型ゲーム。役がないというより、役を自分で作るゲームなんです。当然ながら2ペアさえ作れなかった人は『ブタ』ですので注意してください」
「なおカードにはそれぞれポイントが記載されています。眼鏡なら1ポイント、手錠なら2ポイント。他と組み合わせにくいカードほど得点は高くなります。最終的には性癖トークに使用したカードのポイントを集計して、獲得ポイントが高かったプレイヤーが勝利になります」
相変わらずだぜ。
そして俺にはもう分かっている。
たぶん、カードの中には普通に卑猥なアダルトグッズとかも含まれているに違いない。
「つか開示って性癖の話かっ!?」
「そうですよ? 言ったじゃないですか、性癖強めのゲーム」
きょとんとする顔が可愛らしい。
あっ、すべて説明を聞き終えてなお、古池副部長が混乱している。
これ初めの時の俺だ。乃々みたいな和風美少女の口からスク水とかブルマとか性癖なんて単語が出てくるのを飲み込めてないんだ。
「ひとまず、プレイしてみましょう。古池副部長、己の恥も晒せない殿方に、女性の心を動かせるとお思いですか?」
「いや、普通の女性は性癖晒す男になんてドン引き」
「久世くん、ステイ」
「いえすマム」
くそう、俺では彼女を止められない。
だが、肝心の古池部長は肩を震わせていた。
「恥を、晒せない男……。なるほど、その言葉にも一理ある」
「ないよ? 絶対これ危険なゲームだよ?」
「それに、挑まれて退くのは性に合わん」
「絶対退いても問題ないヤツだよ?」
「いいだろう……!」
「あれ? 俺の声は聞こえてないのかな?」
古池康太は、眼光も鋭くカードを見据える。
「そのゲーム、受けた!」
自ら地雷原に足を突っ込む人を見るのはこんな気持ちなんだなぁと思いました。
満足そうに頷いた乃々は、今度は俺をじっと見つめる。
「久世くんは、いっしょに遊んで、くれないんですか?」
「は? 舐めんなよ? 俺が乃々におねだりされて耐えられるわけないだろ、やるに決まってるっての」
「流石です」
ちなみに俺も地雷原愛好家です。
色々書いたけどカード部分を除くとルールは簡単。
組み合わせた単語でどれだけエロくキモく語れるかで勝敗を決めるゲーム。
『スク水』『セーラー服』『縄』
『三つ編みおさげ』『ギャル』『日焼け』など。
当然シナジーのない組合わせもあるから、わざと3ペアを崩して2ペアにして難度を下げる戦略もある