返坂高校ボードゲーム研究部によるエロボドゲプレイ記録 作:自宅戦闘員
「みょ、妙に緊張してきたな……」
一度決意したのに開始前にぐらついた副部長に対して、俺は少し強めに言う。
「副部長。俺は止めました。が、選んだのはあなただ。ならば、逃げることは許されない。だって……めっちゃ乃々の楽しそうにしてますからね? 今ココで『やっぱやめた』とか言い出したらあの笑顔が曇るんですよ? いいんですか? 俺は良くないです」
乃々はエロボドゲが趣味の清純な女の子です。
もしも、やらないのなら最初からそう言うべきなのだ。途中で止めるとか、餌を見せびらかしておいて急にひっこめるようなもんである。
あと個人的に真面目マッチョな副部長の性癖語りとか、すっごい気になる。
そのためには俺の性癖を晒しても後悔はない。
「軽い遊びです、五回戦の合計得点を競いましょうか。あ、今回使う山札には拡張パックのカードも使用していますので、購入する際は気をつけてください」
乃々の用意した山札にちょっとお乃々乃いてしまう。
コスプレックスカード。
名前してあんまりにもあんまりなゲームだが、始まってしまった。
それぞれに配られてカードは6枚。
「ゲームとしての勝敗が“相手を言い負かす”である以上、勝敗で揉めることもあるでしょう。なので合意が出なかった場合の判断は、私が勤めさせていただきますね」
そこら辺は慣れてる乃々が一番だろう。
俺も古池副部長も頷きゲーム開始。まずは手札を確認する。
【バニーガール(2)】
【ピンクローター(3)】
【バニーガール(2)】
【ハチミツ(1)】
【ピンクローター(3)】
【汗(1)】
ふふ、だと思ったぜ……!
絶対アダルトグッズ系のカードあると思った。
しかも既に2ペアだから逃れられない。
だが侮るなかれ。俺は乃々の逆バニー聖騎士に耐えきった男。
この程度で動揺などするはずもなし。
「なっ、なぁ……っ!?」
だが古池副部長も驚愕している。
ここまでラインをぶっちぎったゲームとは思わなかったのだろう。
「まず一回目のカードチェンジ」
言いながら乃々は3枚カードを交換する。ということは、1ぺア。
俺は【ハチミツ】を捨てて1枚交換。汗とハチミツならポイントは同じでも絶対汗の方が語りやすい。
「お、俺は、二枚、カードチェンジ、だ?」
古池副部長も交換。
なんだかんだプレイするのは、刺した釘が効いているからだろう。ここで逃げたら男じゃねえ、くらいは思っているのかもしれない。
さらに二回目のカード交換。乃々はまた三枚交換した。いいカードが来なかったのか?
「ああ、そうだ。このゲーム、勝負する際は『開示』、降りる際には『隠す』、役がない状態を『ブタ』です。このうち『隠す』は役が揃っているのに勝負をしない、という状況にのみ使います。ですが、ブタでも隠すでも、手札を提示してもらうルールになっています」
「それは何故だ?」と副部長が問う。
「揃っているのに性癖開示をしたくない、でも逃げたとも思われたくないからからブタということにする、といったプレイを禁止するためです。なお、開示したプレイヤーが一人だけの場合、性癖語りをせずにポイントが入るので、頑張って役を作りましょう」
なるほど、副部長に語らせるためには俺も語らなければならない、と。
肉を切らせて骨を断つゲームだな、これ。
「では、二回の交換が終わりました。……ごめんなさい、散々言いましたが私、ブタです」
カードは【幼馴染】が2枚、【亀甲縛り】、【三つ編み】、【ツインテール】、【競泳水着】。
しかし俺は、そのカードを見て戦慄した。
「お、幼馴染み……?」
属性しては定番。
でも、それはまずい。
何故なら。
「ああ、これは拡張パック『学園編』の追加カードですよ」
つまり、わざわざ入れたってことですか?
やべえ、アレはやべえ。
何せ俺の場合、アレを揃えてしまった暁には、幼馴染みの魅力について語らねばならなくなる。取りも直さず、葵の魅力、ということだ。
「ちなみに、これは自分の性癖じゃないな、という場合は捨ててもルール上問題ありません。でもチェンジ後の捨て札も公開しますから、『こいつ、幼馴染みについて語りたくなくて捨てたな』というのが分かる仕様です」
ピンポイントで俺を狙い撃つデッキ構築じゃねえか。
ねえ、なんで? なんでそんなひどいことを見惚れるくらい綺麗な笑顔で出来るの?
「では、どうぞ」
「くっ、俺は、尻込みはしませんぜ副部長……! 開示だ!」
【バニーガール(2)】、【汗(1)】、【ピンクローター(3)】の3ペアだ。
対して、古池副部長も開示する。
「……【セーラー服(1)】、【香水(2)】、【ブレザー(1)】、だ」
これで複数のプレイヤーが開示に至った。
ゆえに対話、性癖開示で決着をつける。
乃々が俺に合図をしたので、まずはこちらから仕掛ける。
ルールは三つのカードをキーワードとして使い、より癖を強く猥談をした方が勝つ。
ほとんど幸運だが、俺の方はかなりバランスがいい。
「【バニーガール】の、ぴっちりしたスーツがいいっすよね。ナカに【ピンクローター】を挿れた状態で、【汗】を流しながら悶える姿は、堪らなくエロいといいますか」
俺は同級生の女の子の前で何を言ってるんだろう?
「なるほど……初めてなのに中々いいですよ、久世くん」
「乃々、やめて。メモらないで。俺の言葉を一言一句記録しないで」
ふむふむ、と頷きながら走らせるペン。
引かれてないのは救いだけど、あのメモ帳超怖い。
「さ、さあ! 今度は副部長の番っすよ!」
「おう……せ、【セーラー服】と【ブレザー】は、かわいくて、【香水】はいい匂いで」
「シンプルに話が下手」
「はい、久世くんの勝利です。合計6ポイントですね」
「ぬぉおぉおぉ……」
うなだれてるけど仕方ないよ、副部長。
だってキーワード並べただけだから、性癖開示もあったもんじゃない。
「そもそも服装が二つ手札にある場合、とよほど話術に優れてないと『あっちもかわいい、こっちもかわいい』になるからトークしては弱いんですよね。基本は大きな要素を一つ残して、アクセサリーや髪型を二つ、という形にすると喋りやすいですよ」
意外にもこういうゲームでも戦略はいるらしい。
そして二回戦開始。乃々は、またも3枚交換だ。
俺の手札は、
【幼馴染(1)】
【ツインテール(1)】
【ボールギャグ(3)】
【セーラー服(1)】
【競泳水着(2)】
【腹パン(5)】
……腹パン?
いや無理。これについては絶対語れない。
さっきので分かった。高得点を狙うと色々大変なことになるので、なるべく低く、喋りやすい要素で役を作る。
多分本来の遊び方とは違うけど、この場ではこれが正解だ。
なので捨てるのは【競泳水着(2)】、【ボールギャグ(3)】、【腹パン(5)】。ツインテールがあるなら、幼馴染みは残していい。むしろここでペアになれば、葵の印象から離れる。
「三枚チェンジで」
来たカードは【セーラー服(1)】、【ローション(3)】、【ポニーテール(1)】
セーラー服でペアができた。もう一度、今度は2枚チェンジ。来たのは【飴玉(2)】、【ピアス(3)】。
ピアスは、オシャレな人が好きみたいなので語れるけど、飴玉はどんなフェチだ?
ていうか、二回交換したけどブタになった。
「では、開示です」
乃々が勝負を仕掛けた。
彼女のカードは【三つ編み(1)】、【眼鏡(1)】、【子供用プール(2)】。
「俺はブタだ」
「すまん、俺もブタ、というやつだ」
どうやら副部長も上手くいかなかったらしい。
ということは、開示が乃々だけなので、語りなしでポイント獲得か。
……あの組み合わせで何を語るつもりだったんだろう。
「では、ポイントを合計4点いただきますね」
「なあ、乃々。このゲームってさ。『隠す』……役が揃ってるのに勝負を降りる意味なくないか?」
「ええと、基本的にコスプレックスカードは、仲良しパーティーでやるバカゲーなんです。久世くんも私も基本戦術は、低いポイントで自分にダメージを少なく、ですよね? でも本来はお酒の勢いでどんどん卑猥な雑談をしましょう、という流れになります。面白く話せると、場が盛り上がりますから」
「ああ、そっか。性癖開示は罰ゲームじゃなくて、自分のトークスキルを見せる場で、『お前変態かよ!』みたいなツッコミ待ちでもあるのか」
「その認識で間違いないかと。だから、“盛り上がりに欠ける”が一番のリスク。なので、つまらない組み合わせの場合敢えて勝負を降ります。他には、大人数の場合何人かで共謀して意図した二人にだけ語らせる、みたいな方法も」
このゲームも勝敗ではなく、大勢で騒ぐことの方が焦点、ということだ。
俺は未成年だからよく分からないが、お酒が入るとこの下ネタ合戦も笑いながらできるんだろうか。
「ほぉぉ、かなりきわどい代物かと思ったが、ボードゲームというのは考えて作られているんだな」
感心したように古池副部長が息を吐く。
乃々は真剣な表情でこくりと頷いた。
「題材は多種多様ですが、どれもプレイヤーに楽しんでもらおうという製作者の心意気が込められた作品です。プレイヤーもまた、ゲームを盛り上げようと試行錯誤します。だから私はボードゲームが好きです。製作者もプレイヤーも、楽しい時間を作るために力を合わせる……とても、素敵なことだと思いませんか?」
「うむ。今まで、無関心でい過ぎたのは良くなかったかもしれん」
みんなで楽しい時間を、というのは俺としても好ましい部分だ。
それはそれとして【バイブレーター(4)】のカードを持ったままいい顔している副部長がちょっと面白くて、俺は笑うのを我慢していた。
「副部長にもボードゲームの良さが多少なりとも伝わったところで、三回戦と行きましょう」
三度、乃々がカードを配る。
……ヤバいのが来た。
【幼馴染(1)】×2、【ポニーテール(1)】×2、【マイクロビキニ(3)】、【指輪(3)】
幼馴染みとポニーテール……どう考えても葵を想起させやがる。
「よっし、チェンジで」
「久世くん、速攻で幼馴染交換に来ましたね」
「ごめん、無理。どうしても葵がちらつく……おい待て、なんで今の発言メモった?」
問い詰めたらすごく優しいが笑み返ってきた。
若干引っかかりながらも二回目は、普通にそろえるつもりで四枚交換。
で、これが失敗だった。
「やべ、【鞭(4)】と【ハチミツ(1)】のペアが同時に来た……っ」
そうか、一度に四枚以上交換すると、ペアが二組入ってくる可能性があるのか。それが二回目の交換だと、捨てることが出来なくなる。
結果として俺の手札は【ポニーテール(1)】と【鞭(4)】と【ハチミツ(1)】。訳の分からない組み合わせになってしまった。
でも降りて、もし『開示』が一人になってペナルティなしでポイント獲得されるのも癪だ。幼馴染みから逃げたのに更に逃げるのは格好悪いし。
「ええい、開示だ!」
「私も開示です」
「俺も、開示するぞ。今度こそは」
今回は三人同時の性癖開示。
古池副部長は【下着(2)】、【ネコミミ(1)】。
乃々は【委員長(3)】、【三つ編み(1)】、【眼鏡(1)】
「どうやら全員が性癖語りのようですね。では、久世くんからお願いします」
「お、おお。……【ハチミツ】を塗った、【ポニーテル】娘を【鞭】で叩くと、てらてらしててセクシー、だよね?」
急に部室が静かになった。
「ごめんなさい。ちょっと意味が分からないです」
「すまん。俺も分からん」
「安心してください副部長。言ってる本人が一番意味分かってません」
だだ滑ったよちくしょう。
「な、なら次は副部長の番っすよ!?」」
「そ、そうだな。うむ、恥は、かきすて。し、思春期の男子としては! 【下着】姿の女子の艶姿に反応しない訳がないだろう! 【ネコミミ】が付いたら、もっと可愛いと思う!」
おお、副部長が頑張った
乃々もその成長に拍手を送っている。
成長じゃなくていけない方向に染まっただけかもしれない。
「次は私ですね。【三つ編み】で【眼鏡】、【委員長】。真面目そうな子ほど実は、というのは鉄板のシチュエーションだと思います。……ダメですね、今回は古池副部長の勝利です」
「異存なしー」
「よし!」
初ポイントゲットで古池副部長はガッツポーズ。
大分毒されているような気がしないでもない。
ところで、ここまでゲームを進めておいて今更だが、ちょっと乃々がおかしい。
淫魔の迷宮TRPGの時よりもだいぶ控え目なような? 前回は喘ぎとか聖騎士の設定とか、かなりエロ全振りだったのに。
なので、こそっと乃々に耳打ちしてみる。
「なあ、今日ちょっと調子悪いか? だいぶ控え目だけど」
「なにを言っているんですか。久世くん以外の殿方がいるのなら、ちゃんと弁えますよ」
「あーと、つまり?」
「あなたなら、私のダメなところを見ても笑って済ませてくれる確信がある、です。言わせないでください、恥ずかしい」
個人的に乃々に10万チカちゃんポイントです。