俺の名前は才羽アオイ………ただのお兄ちゃんだ! 作:妄想垂れ流し部
それではどうぞ!
「ねぇねぇ、お兄ちゃん!ミドリ!」
「ん?どうした?」
「何?」
モモイは、俺とミドリにラーメン屋の写真を見せてきた
その写真には大将と思われる柴犬が写っていた
……なるほど、あの店か
「そのラーメン屋さんがどうしたの?」
「美味しいお店って最近評判らしいから、行ってみたいなって!」
「場所は?」
「えーっと……アビドスだって」
「うーん…アビドスかぁ…」
「えー嫌?」
「だって暑いだろうし…」
「うーんそっかぁ…お兄ちゃんは?」
「うーん…」
正直アビドスには行きたくないんだよな…
アビドスには厄ネタが多すぎるし…何より今の時期はまだ…
「お兄ちゃん、ダメ?」
「………行くかぁ…」
「やったぁ!」
まぁ、今までも特に問題は起きてないし、大丈夫だろ
「お兄ちゃんいいの?何か用事とかあったんじゃ...」
「ラーメン食べて帰るだけだし、多分大丈夫だと思う」
「お兄ちゃんありがとう!」
まぁ、何とかなるか
「暑い…」
「ちゃんと水分補給しろよ…」
アビドスに着いたはいいものの、暑すぎる
アビドスは暑いイメージが強かったけど、ここまで暑いとは…
「お兄ちゃん…怒らないで聞いて欲しいんだけど、いい?」
「ん?どうした?お兄ちゃんがモモイに怒ることはないから、何でも言ってくれ」
「ほんとに怒らない…?絶対?」
「絶対」
「じゃあ…………迷っちゃった」
迷った??????アビドスで?????この灼熱の中で???????
俺の聞き間違いだな
「ごめん、もう一回言ってもらえるか?」
「迷っちゃった」
…………なるほど
「どうしよう…」
「どうしようか…」
一応水は多めに持ってきたけど、早く戻らないとだな...
「「うーん………」」
どうしたもんかねぇ……
「すみません、何か困ってるみたいだけど、大丈夫ですか?」
モモイと頭をひねっていると、後ろから声を掛けられた
ちょうどいい、ここの住民なら道を聞くのもいいかもしれな────
「…………………………は?」
「えっと...お姉さん誰?」
「あっそうだよね、まずは自己紹介を…」
「私は梔子ユメ、アビドス高等学校の生徒会長だよ!」
俺たちに話しかけてきた人は、そう名乗った
「ここがその紫関ラーメンだよ」
「道案内ありがとうございます。忙しいだろうに時間を取らせてしまって…」
「全然いいよ、私もお昼食べ損ねてペコペコだったし、ちょうど何か食べたかったからね」
「…ありがとうございます」
「やっぱり生徒会長さんって忙しいの?」
「んー?日によるけど…やることがなくなることはないかな」
「大変そう…」
「でも、やりたいことがあるからね」
「やりたい事?」
「うん、アビドスはね、今はこんな感じだけど……昔はもっと人がいて、にぎやかだったんだ」
「だからね、私は思うんだ」
「またあの頃みたいに……笑ってる人がいる場所にしたいなって」
「それにね!今は可愛い後輩も出来たんだ!だから、もっといっぱい頑張らないと!」
「アビドスに活気が戻ったその時は、妹ちゃんも一緒に来て。みんなで遊ぼうね!」
「うん!また来るね!約束!」
「約束!」
「お兄ちゃん、楽しみだね!」
「…そうだな。今度はミドリも連れて、みんなで遊びに来ような」
「うん!」
「ふふっ……そんなふうに言ってもらえると、嬉しいな」
「ささっ!話はこれくらいにして、ラーメン食べよ!」
「うん!もうペコペコ!」
「ふぃ、想像以上の美味しさだった…ミドリも連れてくればよかった」
「そうだな、この暑さの中でも来た甲斐があったな」
「それじゃあ、私はそろそろ学校に戻らないとだから、今日はお話しできて良かった!」
「うん!今日はありがとう!お仕事頑張って!」
「ふふっありがとう」
「俺からも、迷ってたところを助けてくれて、ありがとうございました」
「うん、アビドスは迷いやすいから、帰りも気を付けてね」
「はい…………………あの」
「ん?どうしたの?」
「……応援、してますね」
「うん!ありがとう!」
その笑顔は、とても、綺麗だった
そんな顔が、俺は怖かった
伝えるチャンスだったかもしれない
でも、言わなかった
だって言ってしまっては、変わるから
だから、伝えなかった
…可能性はゼロじゃなかった
遭遇する可能性はあった
でも、今まで何もなかったから今日も大丈夫だと油断していた
それがダメだった
あの人に……梔子ユメに、会ってしまった
本当にバカだ
こんなことで、揺らぐなんて
干渉しないと、決めていたはずなのに
そう、決めていたはずなのに
それでも、直接会話してしまった
梔子ユメは…今年中に死ぬ
そして、俺は梔子ユメの死を、回避できる
今すぐにでも、伝えればいい
梔子ユメなら、信じるだろう
そうしたら、梔子ユメは死なない
あんたさえいなければ…
関わらなければ…
………でも、答えは最初から決まっていて
だから、俺が、とるべき行動は───
最近、お兄ちゃんの様子がおかしい
どこか悩んでいるような感じがする
それは私だけじゃなくて、お姉ちゃんも感じていた
でも、お兄ちゃんに聞いても
「テストの点数が悪くて……」
とか
「ゲームの戦績が悪くてなぁ……」
って、ごまかされる
たまに散歩に出ては、すぐ帰ってくる
そんな、少し不思議な行動もしていた
結局、何に悩んでいるのかは分からなかった
それでもお兄ちゃんは、いつも通りに過ごしていた
そんな日が続いた
気づいたら、お兄ちゃんは悩んでいるようには見えなくなっていた
でも、たまに見る笑顔は、前よりちょっとだけ違う気がした
でも、お兄ちゃんは大丈夫だと言って、いつもみたいに頭を撫でてくる
その目が、一瞬だけ知らない人みたいに見えた気がした