え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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本編の1話か、1話の後書きを見てないとよく分からない話かもです。
なので、見てない方はそっちを見てからどうぞ。

つま先程度の残酷描写とちょっとの曇らせ入るのでご承知おきください。


番外編
ex1. 妹の回想からその後まで


 

 

 

親には、恵まれてなかったと思う。

 

父に関する記憶は多くないが、良い人ではなかった。

 

姉や兄に話しかけられても、いつも無視していた。

 

そのくせに、アタシ達双子には何故か優しかったのが幼いながらに薄気味悪かった。

 

母とは会話はしたが、まるで中身が入っていないかの様な空返事ばかり返していた。

 

街を歩けば、道ゆく女性に見境なく声をかけて夜の闇に消えていったことは数知れず。

 

母も、少なくとも良い人ではなかった。

 

私が物心ついた時には既に、父と母の中は最悪で。

 

ヒステリックに喚く母の声が聞こえていない様に、終始上体を椅子に預けてスマホを触る父。

 

相手にされないストレスは、いつも私達双子に向けられた。

 

 

 

 

 

 

でも、兄弟には恵まれていたと思う。

 

姉の灯は、自慢の長女だった。

 

才色兼備、文武両道で真面目な優等生。

 

何でも知ってて、何でも出来る。

 

どんな事を聞いても、灯は必ず答えてくれた。

 

ちょっとした我儘だって、必ず叶えてくれた。

 

アタシ達双子の誕生日に作ってくれた手作りのケーキの味は、今でも思い出せる。

 

姉の学校では、いつも灯を褒める声が聞こえていた。

 

友達も多くて先生達からも気に入られてる。

 

参観日の作文で同級生が自分の父や母を自慢する時、アタシは決まって灯を自慢した。

 

かっこうよくて、やさしくて、あたまのいい、じまんのおねえちゃん。

 

 

 

そんな灯はアタシが13の時に亡くなった。

 

 

 

アタシが9歳の時に、父が担任の先生と二人で、家のお金を全て持ち出して何処かに消えた。

 

そのショックで母は精神を病み、いくばくもしないうちに勤めている職場で上司を殺そうとした。

 

失踪した父と刑務所に入れられた母、一家を養うべき人は姿を消した。

 

両親の事情で頼れる親戚もいない。

 

長女である灯が、親の代わりに一家を養う役目になった。

 

それからの姉は、ボロボロになっていく一方だった。

 

髪は傷み、肌は荒れ、隈は深く、目も虚に。

 

それでも姉は、私達にも兄にも大丈夫としか返さなかった。

 

そして4年間、灯は家族の為に身を削り続け。

 

いつしか、削れる身がどこにも無くなった。

 

辛かった。

 

悲しかった。

 

何度も何度も泣いた。

 

中学生にもなって、姉を燃やさないでくれと、光と一緒に棺桶にしがみついて泣き喚いた。

 

そしてアタシ達が泣くたびに、兄は私達を慰めてくれた。

 

 

 

死んだ姉の亡霊が取り憑いたかの様に、何度も大丈夫と呟きながら。

 

 

 

 

 

 

兄の大我も、やっぱり自慢の兄だった。

 

優しくて、いつも私達を可愛がってくれた。

 

頭を撫でてくれる大我の手は、不思議と私達の心を温めてくれた。

 

いつも一生懸命で、光みたいによく笑う明るい人だった。

 

喧嘩なんかした日には、いの一番に駆けつけてアタシ達を守ってくれた。

 

八つ当たりをしてくる母からも、大我はいつも守ってくれた。

 

どんなに傷ついても、こんな傷へっちゃらだって笑い飛ばす兄の笑顔に、アタシ達はいつも救われた。

 

 

 

でも、いつからだろう。

 

 

 

大我が笑わなくなったのは。

 

 

 

いや、笑ってはいるが、すごくぎこちなくなった。

 

灯が亡くなった後も、彼はアタシ達を元気づける様に笑っていてくれた。

 

いつもの大我の姿に励まされ、アタシ達も徐々に立ち直ることができていた。

 

なのにふと気づいた時には、大我の心からの笑顔が消えていて。

 

代わりにいつも申し訳なさそうな表情を浮かべる様になった。

 

私達には原因が分からなかった。

 

だから大我を元気づける為にいろんな事をした。

 

体中泥だらけになりながら摘んだ、綺麗なお花を渡したり。

 

近所の苺農家のお手伝いをして、貰った苺を一緒に食べたり。

 

初めてのバイト代で遊園地に行ってみたりもした。

 

それでも大我は、泣きそうになりながらぎこちなく笑っては最後に消え入る様にごめんと呟くだけだった。

 

いつも謝る大我に、アタシと光は謝って欲しいんじゃない、ありがとうって言って欲しいと、泣きながら抱きついていた。

 

それ以外、大我が弱音らしい弱音を吐いているのを聞いたことがなかった。

 

ずっと張り詰めて生活していたんだと思う。

 

アタシ達を不安にさせない様にって。

 

高校も全部バイトに注ぎ込んで。

 

高卒で何とか会社に入って。

 

深夜までずっと仕事をして。

 

亡くなった灯の分も背負う様に、大我は身を粉にして働いていた。

 

そんな大我と、気がつけば楽しく喋れなくなって。

 

顔を合わせるとどこか気まずくなって。

 

大我と目を合わせることもできなくなってた。

 

アタシは口下手で不器用で。

 

会話はいつも、灯や大我や光が意図を汲み取ってくれてた。

 

光だったら、もっとちゃんと上手く話せてたのかな。

 

 

 

 

 

 

時が過ぎて、アタシ達も大学生になった。

 

奨学金や親なしの負担を軽減する制度やバイト代を上手くやりくりして、何とか一人で生きていける様にはなった。

 

こうなれば、兄の負担も少しは減ると当初は思っていた。

 

でも、兄は止まらなかった。

 

アタシ達が必要ないと言っても、働き詰めの生活を変える事をせず、稼ぎの殆どをアタシ達にあてがった。

 

まるで何かに許しを乞う様な顔で、大我は働き続けた。

 

その様子を見て一年、ようやくアタシは18の時に考えていた計画を実行する事を決意した。

 

物々しい言い方をしたが中身は至って単純。

 

生き急ぐ様な生活をする大我を一人にしない為に、アタシと光と大我の三人で同棲をすること。

 

住む場所探しとかそれぞれの生活の忙しさとか、色々な要因があって実行に動けなかったが、20歳になってようやく準備が整った。

 

いや、動けなかったって言ったけど、結局動かなかっただけだったんだと思う。

 

これ以上雰囲気悪くなったらどうしようとか。

 

臆病な事ばっかり考えて。

 

大我から拒絶されることが、ただただ怖かっただけだった。

 

その事には気づかない様に蓋をして。

 

物件も決めて、引越しの手配もして。

 

光とアタシの家で顔を合わせては、久しぶりに三人集まれるねって。

 

断られたらどうするとか不安になって。

 

流石に強引に連れてくよって二人で笑って。

 

寝室みんな一緒にしちゃおうかな〜なんて冗談言ったり。

 

流石に恥ずかしいから無しにしようかって我に帰って慌てたり。

 

でも、久しぶりだし、一回くらいはいいよね、とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝二人でご飯を食べてたら、光のスマホが鳴ってて。

 

電話に出た光が少し話したかと思えば、は?なんて間の抜けた声を出して。

 

その後、震える声で

 

 

 

「お兄ちゃんが…会社で、た、倒れたって…」

 

 

 

その後どうなったんだっけ。

 

 

 

化粧もせずにその辺の上着を引っ掴んで二人して飛び出す。

 

 

 

どうなったんだっけ。

 

 

 

怒鳴るような声でタクシーを捕まえた。

 

 

 

どうなったんだっけかな。

 

 

 

病院に着くや否や、受付の人の襟首掴んで場所を聞いて。

 

 

 

えーと、どうしたんだっけ。

 

 

 

静止の声も聞かずに走った。

 

 

 

看護師さんにぶつかったが無視した。

 

 

 

視界が揺れて。

 

 

 

息が上手くできなくて。

 

 

 

嘘だ嘘だと言葉にならない何かが口から出るばかり。

 

 

 

派手に転んで。

 

 

 

脳がまるでかき混ぜられてるみたいに痛い。

 

 

 

角を曲がって。

 

 

 

背中から嫌な汗が止まらなかった。

 

 

 

集中治療室の前に来て。

 

 

 

手先が異様に冷たい。

 

 

 

部屋から出てきた医者は何て言ったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うまく、思い出せないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

その場でどうしたかは覚えてなかった。

 

どうやって帰ったかも、その後どうやって過ごしたかも。

 

気がつけば、告別式も終わってて。

 

私と縁は、三人で住むはずだった部屋で呆然としていた。

 

いや、ちゃんとお兄ちゃんも部屋にはいた。

 

縁が作文でお姉ちゃんのことを書く時、私は決まってお兄ちゃんの事を書いてた。

 

お兄ちゃんの背中が好きだった。

 

いつ飛びついても、どうした?なんて言って優しく受け止めてくれて。

 

足を怪我して一人で泣いてた時に、肩を弾ませながら汗だくで走ってきては、私をおぶってくれて。

 

あったかくて、いい匂いで、落ち着く。

 

大きな大きなその背中が大好きだった。

 

でも今のお兄ちゃんは、私の懐に入るくらい小さな小さな箱の中に収まっていた。

 

少しでもお兄ちゃんを感じたくて、お墓に入れる分の骨とは分けて入れてもらった骨壷。

 

骨壷の入った箱をキツく抱きしめる。

 

寒い。

 

寂しい。

 

痛い。

 

助けてよお兄ちゃん。

 

どれだけ心で念じても、物言わぬ骨となったお兄ちゃんの体は冷たいまま。

 

お兄ちゃんはもう、この世の何処にもいないという証拠を、むざむざと突きつけられたようだ。

 

 

 

立ち直るのに、とても時間がかかった。

 

動かぬ体に鞭を打って、二人で休学申請を大学に出した。

 

そこから2週間は、お互いに何も喋らず無気力に過ごしていた。

 

このまま、何も口にしなければ、二人の元に行けるのかな…。

 

そう考えるたびに夢で、大好きなお兄ちゃんと大好きなお姉ちゃんが幸せになれと笑顔で語ってきた。

 

所詮夢と片付けて、涙を拭くこともせず、戸棚からハサミを持ち出す。

 

両の手で強く握り、喉を目掛けて刃を突き出す。

 

ピタリと、腕が震えて、止まった。

 

それでも、そのハサミで喉を突き刺す勇気は、私には無かった。

 

お兄ちゃんとお姉ちゃんが、それを望まないのは、痛いほどよく分かってたから。

 

ねぇお姉ちゃん。

 

私、確かに幸せだったんだよ?

 

生活は苦しかったけど、あの狭くてボロい一室で、みんなで食べるご飯が好きだったんだよ?

 

でも、薄い氷の上で成り立ってる幸せって気づけなくて。

 

私は何もできないどころか知りもしなくて。

 

お姉ちゃんの命は、掌の端から零れ落ちた。

 

ねぇお兄ちゃん。

 

私、本当に幸せだったんだよ?

 

お姉ちゃんがいなくなった後も、一生懸命励ましてくれて、私も縁も寂しくなかったし、前を向くことができたよ?

 

でも、お兄ちゃんは言えない何かを抱えていて。

 

私はその荷物を一緒に持つどころか抱えてるものすらわからなくて。

 

お兄ちゃんの命は、指の隙間をすり抜けていった。

 

見つめる手の中には空っぽの器だけ。

 

ねぇお兄ちゃん、お姉ちゃん。

 

 

 

私の幸せ、もう…無くなっちゃったよ…?

 

 

 


 

 

 

あれから2年が経った。

 

休学を終え、また大学に通い始めた。

 

バイトにも復帰し始めて、いつも通りの生活に戻っている様に思えた。

 

でもその実、以前の様には戻れていなかった。

 

心に空いた大きな穴が、埋まる事なく風を通す。

 

傷跡は瘡蓋になる事を知らないかの様にグジュグジュと生々しさと痛みを保ったまま。

 

私も縁も、形だけ前を向いただけで、向かう先に光を見出せていない。

 

すがる様にまた、縁と二人でこの部屋に来る。

 

お兄ちゃんが住んでた部屋。

 

お兄ちゃんが亡くなった後も、契約名義を私に変更してそのままにしてある。

 

こうでもしないと、お兄ちゃんの温もりを忘れてしまいそうになるから。

 

口では二人で、遺品整理しないとねなんて言ってるのに。

 

実際に整理できたのは2割も無い。

 

今日も微かに残るお兄ちゃんの残穢を探す様に、部屋に沈み込む。

 

少し時間が経って。

 

縁が不意に立ち上がり、何か腹に収まるものを買ってくると言って、部屋を出た。

 

もちろん部屋には私一人だけ。

 

お兄ちゃんが化けて出てきてくれないのは、2年のうちに分かりきっていた。

 

あぁ、まただ。

 

寂しい。

 

寒い。

 

身体をさすりながら、本棚にあるお兄ちゃんの卒業アルバムを手に取る。

 

体が震える時、いつもこうしてお兄ちゃんが感じ取れるものを見聞きすると、震えがおさまるのだ。

 

何度も見てきた筈なのに、お兄ちゃんが写ってる写真が目に入るたびに、涙が目に浮かぶ。

 

だめだなぁ…私。

 

そう思いながらアルバムを閉じる。

 

本棚に戻そうとして、ふと奥の方に封筒が押し込まれているのが目についた。

 

なんだろうと思い、手を伸ばして取り出す。

 

少しクシャクシャになった封筒の表には。

 

 

 

「遺書」

 

 

 

息が詰まった。

 

胃の中のものが競り上がってくるのを感じる。

 

視界が明滅して、両足で立つことができなくなった。

 

床にへたり込んだ後、目を擦るが書かれてる文字は変わらない。

 

呼吸が荒くなる。

 

額に汗が滲む。

 

手を、封筒に伸ばす。

 

封を開けて、中身を取り出す。

 

脳が異常なまでにアラートをあげている。

 

まるで後悔するぞと言わんばかりに。

 

しかし、折り畳まれた紙をあける手は、止まることはなかった。

 

読み始めた瞬間、荒かった呼吸が嘘の様に止まった。

 

そこに書かれていたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さんが死んだのは、一番近くにいたくせに助けられなかった俺のせいです」

 

「姉さんを生かしてあげられなくてごめんなさい。」

 

 

 

お姉ちゃんを救えなかったことに対する懺悔と。

 

 

 

「生きていたのが俺でごめんなさい。」

 

「俺が兄でごめんなさい。」

 

「俺にはもう、お金を残してあげることしかできません。」

 

「それ以外に、許してもらえる方法が思いつきません。」

 

「こんなことしかできなくてごめんなさい。」

 

「謝ることしかできなくてごめんなさい。」

 

 

 

夥しい数の自分の無力を蔑み、ひたすら赦しを求める文章と。

 

 

 

「二人が俺を恨んでいるのは百も承知だけど。」

 

「でもどうか、こんな俺の願いを聞いてくれるなら」

 

 

 

 

 

 

「どうか、どうか俺なんかを忘れて幸せに生きてください。」

 

 

 

 

 

 

震える手で遺書をテーブルに置く。

 

止まってた呼吸が堰を切るように暴れ出す。

 

視界が歪み、上も下もわからなくなった。

 

まるで胃が裏返った様な感覚。

 

トイレに駆け出そうとするも、震える足では動くことも出来ず。

 

その場で全てをぶち撒けた。

 

 

 

恨んでる?

 

私と縁が?

 

お兄ちゃんを?

 

 

 

震える手で力任せに床を叩く。

 

 

 

そんなわけない。

 

恨んだことなんて一回もない。

 

 

 

吐瀉物に目もくれず額を床に叩きつける。

 

 

 

いやそれよりも。

 

問題なのは。

 

 

 

有らん限りの力で頭を掻きむしる。

 

 

 

勘違いしていたお兄ちゃんが問題なんじゃない。

 

お兄ちゃんにそう思わせてしまっていた私達がいるという事実が問題なんだ。

 

 

 

何度も頭を打ちつける。

 

 

 

誰がお兄ちゃんを、笑えなくさせた?

 

きっと私達だ。

 

恨まれてると思ってる相手の前で、心の底から笑えるわけがない。

 

 

 

喉を引っ掻く。

 

皮がめくれた。

 

 

 

誰がお兄ちゃんを、あんなに追い詰めた?

 

きっと私達だ。

 

贖罪の対象である私達がいる限り、お兄ちゃんは止まることなんてできなかったはずだ。

 

 

 

喉を引っ掻く。

 

血が滲んだ。

 

 

 

誰がお兄ちゃんから、許される機会を奪った?

 

きっと。

 

 

 

喉を引っ掻く。

 

爪が剥がれた。

 

 

 

誰が誰が誰が誰が誰が

 

 

 

 

 

 

「…大我。アタシ達は、謝って欲しいわけじゃないの…。」

 

「笑って、ありがとうって、言って欲しいなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

私達だ。

 

 

 

 

 

 

獣の様な声をあげて暴れ回る。

 

気が狂いそうだった。

 

だって他でもない。

 

 

 

私達双子の存在がお兄ちゃんを死に追いやったのだから。

 

 

 


 

 

 

コンビニから大我の部屋に戻ると、尋常じゃない声をあげて光が暴れていた。

 

何が起こっているのか全くわからなかった。

 

自傷行為を繰り返す光をなんとか押さえつけて、救急に連絡を入れる。

 

泣きながら光の名前を呼び続けるが、本人の耳に入った様子は無く。

 

救急が来る少し前に、パタリと意識を失った。

 

運ばれていく光について行こうとして、ふとテーブルに目が向いた。

 

背筋が凍った。

 

恐らくこれを見て光はああなったんだろうって直ぐに予測がついた。

 

ひったくる様に遺書を懐のポケットに仕舞い込み、光が運ばれた救急車に乗り込んだ。

 

大我の時のトラウマで吐きそうになりながら、ベンチに座り先生を待つ。

 

幸いな事に光の命に別状はなかった。

 

光がそのまま検査入院になる事を聞いた後、アタシは病院のロビーで座って、遺書を取り出した。

 

身体が強張る。

 

灯や大我の時にお世話になった看護師さんが、隣で背中をさすってくれた。

 

とても、一人の部屋で見る気は起きなくて、ここで見ていいか許可を取って、遺書を開いた。

 

そこには書かれた内容は、余りにも残酷な事実を私に突きつけてきた。

 

アタシ達が大我の心の傷になっていた事。

 

アタシ達が癒してあげなきゃ行けなかったのに。

 

むしろ謝らなきゃ行けなかったのはアタシ達なのに。

 

遺書を読み終わったアタシは、人目も憚らず泣き叫んだ。

 

 

 

そこから5年が経った。

 

茹だる様に暑い日差しの中、お墓の前に光と二人で訪れる。

 

そこは灯と大我の遺骨が収められているお墓だ。

 

今日は一段と暑いね?なんてお墓に語りかける。

 

傷は未だに癒えることはなかった。

 

光も、メンタル面は落ち着いてきたが、首に残る傷跡は消えることなく残っていた。

 

夢も希望も救いも、アタシ達の人生には無くなってしまった。

 

今のアタシ達をこの現世に辛うじて繋ぎ止めているのは、大我の遺書にあった幸せに生きてくれという言葉だけだった。

 

幸せ…思えば生まれた時から縁遠いものだった気もする。

 

この先老人になって天寿を全うするとしても、幸せを手にすることはないんだろうな。

 

それでも、大我が生きろって言うなら、アタシと光は…。

 

その時、付近の道路に一台の車が止まった。

 

そしてそのまま、クラクションを鳴らしてきた。

 

車から出てきたのは

 

 

 

 

 

 

「やぁ、縁ちゃんに光ちゃん。久しぶり!」

 

 

 

 

 

 

「えなに、忘れちゃったのぉ?お父さんだよお父さん。」

 

 

 

 

 

 

「あいつ死んでたんだろ?えーと…なんだっけ。」

 

 

 

 

 

 

「あそうだ大我だ!それで墓参りに来てよぉ。」

 

 

 

 

 

 

「いやぁしっかし暑いねぇ…あぁ、忘れてた。そういや灯も墓にいたな。」

 

 

 

 

 

 

「あーほら、これお供物な大我。お前好きだったろポテチ。来る途中で開けてつまんじまったけど。」

 

 

 

 

 

 

「さーて墓参りも終わったし、縁ちゃんに光ちゃん!急なんだけどさぁ、一緒に暮らさない?」

 

 

 

 

 

 

「今すっげぇ金持っててさぁ!海外に住んでんだぜ?どう?一緒に来ない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様、アタシはあんたの事が嫌いです。

 

 

 

 

 

 

だって灯と大我を連れていったから。

 

 

 

 

 

 

でも、今日だけは心の底から感謝します。

 

 

 

 

 

 

この男を、ここに連れてきてくれてありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

そして不躾にもお願いが一つあります。

 

 

 

 

 

 

どうか。

 

 

 

 

 

 

どうかアタシ達に。

 

 

 

 

 

 

人を殺させてください。

 

 

 

 

 

 

カバンの中から、お菓子の袋を開ける用に用意していたハサミを手に取る。

 

光は、お墓を拭く用のタオルを手に握った。

 

そして。

 

上機嫌に車へと案内するこの男の背後から。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「ニュースのお時間です。」

 

「昨夜未明、〇〇山の奥地で男性の遺体が……」

 

「遺体には絞殺痕と複数の刺し傷が残っており……」

 

 

 


 

 

 

「ねぇ…光。」

 

「ん?…なぁに…縁。」

 

「あっちに行ったらさ、ちゃんと大我に謝んないとね…。」

 

「…ふふっ、そうだね。沢山謝って許してもらって。」

 

「…それで、灯も呼んでさ。皆んなで美味しいものでも食べようよ。」

 

「そうだね。…楽しみだなぁ。」

 

「…。」

 

「…。」

 

「ちゃんと…行けるかな。二人のところと同じ場所に…。」

 

「んー…どうだろ。」

 

「…ちょっと…こわい…な。」

 

「…じゃあ…手…つなご…?」

 

「…うん。」

 

「…へへ、あったかい…。」

 

「…ねむく…なっ…てきた…ね。」

 

「…うん…わた…し…も。」

 

「…ひ…かり…おや…す…み…。」

 

「…ゆか…りも…お…やす…み…。」

 

 

 

落ちてくる瞼。

 

揺らぐ視界は、重苦しい色の煙で塞がれ。

 

鼻先を掠めるのは、焼ける炭の臭い。

 

人も物も入る事ができない二人きりの世界。

 

眠る双子の顔は穏やかに。

 

見る夢は永遠に覚めず。

 

薫る煙と共に空へ旅立つ。

 

 

 

 







突然のQ&Aによる補足!!

Q. なんで川島マッマは双子に八つ当たりしたの?
A. 川島パッパが双子には優しくしてるのを見てイラついたから

Q. 川島パッパが双子に優しかった理由は?
A. 大人になったら好みの美人になりそうだったから。灯ちゃんは好みじゃなかったらしい。

Q. なんで大我は笑わなくなったん?
A. 本編1話とその後書きに書いてる「一番近かった兄さんだから〜」と「お兄ちゃんじゃなくて〜」のセリフが心にグサリと刺さったから。主人公側がどう受け取ったかは後書きにかいてるよ。

Q. 本文の中で主人公のメンタル抉ったセリフ出てこなかったのなんで?
A. 双子両方ともが言った事実そのものを覚えていないからです。そんな議事録書いてるわけでもねぇのに言ったこと一つ一つ覚えてるわけないじゃんね。

Q. 愛する妹の為に一回くらい化けて出てやれよ。
A. 当の本人はグラビアアイドルのお乳吸うのに忙しかった時期だから無理だぞ。

Q. 遺書はどういう経緯であそこに?
A. 大我「うーむ書いたはいいが文が悲劇のヒロインぶっててちょっと」 → 光「お兄ちゃーん、今ちょっといーい?」 → 大我「どわぁぁぁっしゃぁぁいやいいいよぉどんどんこぉい!」(咄嗟に本棚の奥に捩じ込む) → その後、書かれたことすら忘れ去られこの始末。全部大我が悪いよ。

Q. え結局何で光ちゃん暴れたん?
A. 兄が身を犠牲にして働いていたのが自分達から姉を奪ってしまったということに対する贖罪であることと、そもそも勘違いさせる様な言動が無ければその贖罪の必要も兄が体を壊すこともなかったことと、そこそこ限界の兄から漏れ出た謝罪を受け取らずにありがとうを強制したことで兄を許す機会を潰していたことを、全部いっぺんに思い出して理解しちゃったから。いやどう見ても大我が悪いよ。妹ちゃん気にする必要ないよ。

Q. 川島パッパが墓参りに来たのはなんで?
A. いい年齢になった双子を収穫(R18)しにきたから。なお三日前くらいまで普通に忘れてた様子。

Q. 最後クソポエムみたいなのと行間多すぎるせいでどうなったのかわからんのやが?
A. 双子は川島パッパを亡き者にし山へ放棄。翌日、大我の部屋で練炭使って二人一緒に世界からログアウトしてます。

Q. お空の向こうで四人集まれたんですか?
A. 灯ちゃんはなんもしてないんで天国にいます。大我はそもそも別の世界で第二の生を送ってるのでお空にいません。双子ちゃんは、人を亡き者にしてるので…うん。

Q. 元凶その一の灯さん、貴方がガス抜きちゃんとしとけばもうちょいマシになったかもしれないこの状況を見て一言!
A. 「(絶賛嘔吐中)」

Q. 元凶その二の川島パッパさん、貴方が作り出したこの状況を見て一言!
A. …と思ったらもう回答席に居ませんね。恐らく地獄で女追い回してます。あんま家族に興味ないってさ。
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