え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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9. 綾紬さん回収から酒寄さんの用事まで

 

 

 

諌山さんとの買い物を終えて元の場所に戻ると、かぐやちゃんが待ってましたとばかりに近づいて来た。

 

かぐやちゃんに袋を渡して辺りを見渡すが、近くにいるのは酒寄さんとかぐやちゃんだけ。

 

ビーチベットで寛いでいる酒寄さんに綾紬さんが戻ってきたかを聞く。

 

どうやらまだ戻って来ていないらしい。

 

ふぅむ…トイレって確か海の家と逆方向よな?

 

その問いに焼きそばを食べながらそうだと答える諌山さん。

 

食べるか喋るかどちらかにしなさいな。

 

それより…んー、海の家よりもここから距離があるとはいえ、ちょっと遅い気もする…。

 

今度はちゃんと焼きそばを食べる手を止めた諌山さんが、確かにと肯定の意を示す。

 

…ま、無駄足だったらそれはそれでいいか。

 

俺ちょっと様子見てくるから、三人はすれ違った時のためにこのまま此処に居てくれ。

 

ご飯は先に食べてていいからと追加で言い残し、足早にその場を去る。

 

お昼時を回って、海水浴場の人は更に増えていた。

 

寄せては返す人の波をうまく掻き分けたり、避けたりしながら早足でトイレがある方へと向かう。

 

ん〜…心配で飛び出ては来たものの、今更になって杞憂だったのではと怖くなってきたぞぉ…。

 

女の子のトイレって時間かかるイメージあるしな…。

 

というか本当にお手洗いだったのか?

 

実はメイク直してますみたいなオチとかあるんじゃない?

 

綾紬さんは美容ガールだから、手の込んだメイクしてて直すのに時間かかってるとか。

 

うっひょ〜…もう早とちりな気しかしなくなってきた〜…。

 

少し冷静になった瞬間に、出てくるわ出てくるわあらゆる可能性の数々。

 

もういっそのこと戻っちゃおうかしら…。

 

いぃやいや!万が一トラブルに巻き込まれてるとかだったら大変だし!

 

…海でトラブルって言えば、アニメとかラノベだとよくナンパ男出てくるよな。

 

あの類のものを見るたびに、こんな奴このご時世にいるわけないやろとか思わん?

 

いるにはいるだろうがなぁ…絶滅危惧種だろもはや。

 

なんか…物語を深める為の舞台装置感が否めないというか…。

 

いや別に出てくるのは良いしシチュとしては好物なんだけどさ、あぁはいはいあれね?みたいな感じがね…。

 

身の程を知らないまま世のラノベ作家達にケチをつけていると、近くの女性グループの話し声が耳に入ってきた。

 

どうやら近くでナンパしてる野郎共がいるらしい。

 

いたわ絶滅危惧種。

 

興味本位で詳細を聞きたかったが、流石に寄り道するわけにも行かないので断念。

 

そのまま女性グループの横を通り過ぎた。

 

いやーしっかし、本当にいるんだなナンパ。

 

前々から疑問に思ってたんだけど、ナンパって本当に成功するんかな?

 

知らない人に声かけられるどころか一緒にお茶しないとか言われて。

 

俺だったら恐怖の感情しか湧かないんだがねぇ…。

 

イケメンの前には全ての思考は無に帰すのかしら。

 

そう考えると……まぁ…わからんでもない。

 

なんて事を考えていると、今度は男性グループの会話が耳に入ってきた。

 

俺が向かっている方に、黒いワンピース型の水着でピンクベージュの髪のえげつない美人がいたとか。

 

…あなんかすっげぇ心当たりあるわ。

 

語られる特徴から綾紬さんであると断定し、ワンチャン声かけてみようかなと浮かれ気味の男性グループの横を通り過ぎる。

 

いや〜彼女はスパダリ女神にホの字だからワンチャンもないぞ多分。

 

そんな事を思いながら綾紬さんがいるであろう方向に向かっている足が、ふと止まる。

 

…あれ、もしかして綾紬さんがナンパされてたりしないこれ。

 

話を盗み聞きしたグループは別々ではあったが、可能性としてはゼロではない。

 

とはいえど、妄想が激しすぎると言われればそれはそうですと返せるレベル。

 

うえぇ…どうしたもんかなぁ…。

 

結局、悪い方向に転がる妄想を止めることはできず。

 

向かう途中に見つけたライフセーバーさんに、連れとはぐれてしまったこと、向こうでナンパ騒ぎが起こってるらしいということ、ワンチャンそれが連れかもしれないということを伝えた。

 

気前もガタイもいいライフセーバーのお兄さんは、確度が低い俺の情報を疑うことなくそのまま着いてきてくれた。

 

うぉ…お前…最高や。

 

いやてか…でけぇな色々と。

 

腹筋とか6LDKどころか違法建築だろこんなん。

 

ライフセーバーさんの筋骨隆々な体を褒めちぎりながら歩を進めていく。

 

すると、先の方に少し人だかりが出来ているのを見つけた。

 

うわすっげぇ嫌な予感するわ〜…。

 

ライフセーバーさんの静止の声が耳に入るよりも早く、人だかりに向けて走り出す。

 

人だかりに着いて、すみませんと人を掻き分けようとした瞬間。

 

 

 

「いい加減にしてください!しつこいです!」

 

 

 

はーいナンパ確定で〜すふぁっきゅー。

 

聞こえてきたのは聞き間違えるはずもない、綾紬さんの声だった。

 

はいちょっとごめんね〜と言いながら野次馬を掻き分けて前に出る。

 

その瞬間にナンパ男が綾紬さんの腕を掴もうとし出したので、慌てて近づきナンパ男の腕を掴んで止める。

 

その後、綾紬さんとナンパ男の間に入るように自分の体を滑り込ませた。

 

うぉっとっとぉ!ごめんねお兄さん邪魔しちゃって。

 

誰って、この子の保護者ですよ保護者。

 

この子が嫌がってるっぽかったんで、間に入らせてもらったんだけども。

 

そう言いながら、着ていたラッシュガードパーカーを綾紬さんの頭に軽く被せる。

 

綾紬さんは美容系インフルエンサー。

 

コスメとかの紹介動画を投稿している都合上、彼女のリアルの顔は割れている。

 

もう遅いかもしれんがこれ以上面倒事を増やさない為にも、顔は隠しておいた方がいいからね。

 

あ待って、夏場の砂浜走ってきたし素肌に触れてた上着だからクッソ臭いし汚いのでは?

 

す、すみません後で切腹するんで許して…。

 

そんな事を考えていると、対面しているナンパ男がお前は関係ねぇだろと吠えてきた。

 

その後ろには、四人の男が不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。

 

おーまいがー…一人対五人…。

 

不味いですよこれは。

 

俺の貧弱体型の都合上、暴力に物を言わされたらボコボコにされるのは明白。

 

あやめてください恫喝しないでください恐怖で漏らしてしまいます。

 

とはいえ、前に躍り出てきた手前やっぱ今の無しとは言えるわけもなく。

 

取り敢えずペラペラ口を回してなんとか乗り切る方向に舵を切った。

 

いや〜ね?保護者とはいえど確かにこの子が誰と行動するかというのに俺は関係ないよ?

 

でも、この子本人が嫌だと言ってるんだったら、流石に保護者としては関係ないです〜でスルーできないわけ。

 

それによ、お宅さんらもここまできたら手を引いた方がよくない?

 

周り見てみ?軽い人だかりできてるぞ。

 

それにあそこの人、手に持ってるスマホのカメラでお兄さんらがナンパしてるとこ撮ってたぜ?

 

因みにこれは咄嗟に口から出た真っ赤な嘘です。

 

スマホは手に持ってるけど現場の映像を撮影してるかどうかなんて一ミリも知りません。

 

許してな…スマホ持ってただけのお兄さん…。

 

ここまでの話を聞いて、焦り始めるナンパ男達。

 

注目される事に気持ちよくなって人払いしてなかったのかしらね。

 

今になって見せ物じゃねぇと周りに叫び出した。

 

へへへ…そうだよなぁお兄さんら。

 

SNSに上げられて万が一身バレなんてしたら、このご時世たぁいへんな事になるもんなぁ。

 

あとさぁ…最初から気になってたけど言いづらいなって思ってたことを今言うんだけどさ…。

 

 

 

大学名がでっかく背中に刺繍されてるジャージは…流石にナンパ前に脱いでおいた方がいいと思うぞ…?

 

 

 

そういうと、ジャージを羽織っていたナンパ男とその仲間の数人が、あっと一言漏らした後に急いでジャージを脱ぎ始めた。

 

うっそだろお前ら気づいてなかったんかい。

 

とはいえこれは好都合。

 

大学名が書かれてるジャージ着てナンパして、もしそれがSNS上で炎上なんてしようもんなら。

 

そこからの流れは、昨今のニュースを鑑みても想像に難くない。

 

下手すれば退学なんて事にもなりかねない。

 

同じような考えに至ったのか、お仲間の一人がおい逃げようぜとナンパ男に言った。

 

早いとこ逃げた方がいいんじゃないかお兄さんら。

 

じゃないと…あらら、もう遅かったみたいだな。

 

俺がそう言うと同時に、ナンパ男達の背後から筋骨隆々クソデカライフセーバーのお兄さんが登場した。

 

どうやらちゃんと俺の後を追ってきてくれたらしい。

 

ありがとうライフセーバーニキ…愛してる。

 

一部始終もちゃんと見ていてくれたらしく、怯むナンパ男達に休憩所まで同行願えるかな〜と笑顔で言っていた。

 

うぉ…笑顔こっっっわ。

 

まぁまぁ、取り敢えず事態は収拾できそうな雰囲気だ。

 

これ以上面倒なのは嫌なので、後のことお願いね〜とライフセーバーのお兄さんに全投げ。

 

怖かったのだろうか少し震えている綾紬さんの手を、恐怖によってその三倍以上は震えている俺の手で握る。

 

そのまま手を引っ張り、そそくさとその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

あっっっっっっぶねぇぇぇ!!!

 

ガチで終わったかと思ったぁぁぁ!!

 

思わずといった感じで飛び出したけど、マジで無策だったから生きた心地がしなかった…。

 

ナンパ男達が拳で早々にわからせに来なくてよかった…。

 

あでも、KASSENでなら勝ってだけどね絶対。

 

ま、負けなかったし。負けなかったしぃ!!!

 

いやでも本当行き道で一応ライフセーバーさんに声かけといて正解だったわ。

 

ライフセーバーさんいなかったら、ワンチャン悪あがきの暴力に晒される可能性だってあったし。

 

後始末も全部ほっぽり投げれたし。(押し付けた)

 

あとはSNSに助けられたな…。

 

いやー、なんの権限もないのに他人の映像を無許可でアップして義憤の感情を満たすクソ文化に感謝しないとな!

 

ありがとうクソ文化、ありがとうクソ民度、いやありがたくねぇわやっぱ。

 

あ〜取り敢えず早く戻って飯食おうめs

 

 

 

「あっ、あのっ!」

 

 

 

綾紬さんの声でハッとなり、ようやく正気を取り戻す。

 

どうやら自分が思っている以上にテンパっていたようだ。

 

気づかない間にやたらと早くなった足並みを通常速度に戻す。

 

…ていうかめっちゃナチュラルに手握っちゃった。

 

ご、ごめんね!?いきなり手握ったりなんかしちゃって!

 

し、しかもあれだパーカーもかけちゃったし。

 

汗かいてるだろうし汚いものを被せたりなんかもしてしまって…いやほんと…スミマセン…。

 

正気になればなるほどやばいプレミをしている事を思い出し、言葉尻が萎んで最後には謝罪まで漏れ出るが、綾紬さんは慌てたように大丈夫ですよとフォローを入れてくれた。

 

助けてくれてありがとうございますと、頭に被されていたラッシュガードパーカーを肩に羽織り直しながらお礼を言ってくる綾紬さん。

 

あぁもう気にしないで!これも一応保護者の務めの内だからね。

 

なんでもないように胸の前で手を振りながら、気にしないように綾紬さんに言う。

 

その様子に気が抜けたのか、綾紬さんは柔らかい笑みを浮かべ、肩に羽織ってるラッシュガードパーカーに手を当てた。

 

守ってくれたんですよね、と呟けように言う綾紬さん。

 

続けて、ラッシュガードパーカーを被せたのはインフルエンサーで顔割れしている私を衆目から隠すため、手を引いてその場をすぐ離れたのも私の立場を考えてこれ以上の面倒事を避けるため、と俺の行動に対する理由を推測して語ってくれた。

 

ッスー…ぜ、全部見透かされてるぅ…。

 

歳下のJKに勇んだ行動の理由全てを察せられた恥ずかしさに、思わず顔を赤くしてそっぽを向く。

 

その行動自体がもはや綾紬さんの推測に対する答え合わせになってしまっているのだが、そんな事を今の俺が考慮出来るはずもなく。

 

い、いやぁ〜…お恥ずかしい限りというか、もうちょっとスマートにカッコよく対処できりゃ良かったんだがねぇ…。

 

自分の考えが合っていた事に笑みを深める綾紬さんに、いよいよ気まずくなって対処方法が良くなかったという旨の発言をする。

 

否定するように、かっこよかったですよ?とフォローを入れてくれる綾紬さん。

 

続けるように、私を引っ張ってくれた手は凄く震えてましたけどと注釈を入れてくれた。

 

フォローしてくれるならそこは黙っていてくれると嬉しいんだけどね!?

 

その言葉を受けて綾紬さんがおかしそうに笑う。

 

どうやら気持ちの持ち直しはなんとか出来たようだ。

 

そりゃナンパ、しかも相手五人ってなったらそりゃ怖かっただろうしねぇ…。

 

恐怖を一時的に忘れるためにも、俺が醜態を晒したことは無駄にはならなかったようだ。

 

しっかし、大変だねぇナンパなんて。

 

あの手の輩に絡まれるのって、初めてだったりする?

 

綾紬さんはその質問に対し、首を横に振りながらNOと答えた。

 

聞くにどうやら、高校に入ってから輪をかけて数が増えたらしい。

 

んまぁ…このクソ強ビジュアルを考えたらそりゃそうか。

 

正直うんざりしているというか結構参ってしまっている、とげんなりした表情で呟く綾紬さん。

 

声かけられる度にわざわざ断んなきゃいけないし、色々大変そうだねぇ。

 

ん〜…一番早いのは彼氏作って常に一緒にいてもらうとかだろうけど…。

 

いやでも…綾紬さんには酒寄さんがいるから彼氏なんて作らないk

 

 

 

「ふへぇ??????」

 

 

 

そこまで言うと、綾紬さんの口から出たとは思えない間抜けな声が二人の間を通り過ぎる。

 

…あー、これはバレてないと思ってたパターンだな。

 

ていうか普通はバレてるなんて思わんわな。

 

はい、俺のプレミでーすごめんなさーい。

 

自身の想い人が把握されている事実を受け入れられず、ななななんなっなななと壊れたおもちゃみたいな様子の綾紬さん。

 

あ〜…別に誰かに教えて貰ったとかではなく…察することができたというか…。

 

いうて結構分かりやすかったというか…さ、酒寄さんは普通に気づいてないだろうけどね!?

 

なんとかフォローしようとするもどれも意味を成さず、綾紬さんが耳まで真っ赤に染まった顔を手で覆う結果となった。

 

な、なんか…ごめんね…?

 

諸悪の根源であることも棚に上げ、余りの居た堪れなさに謝罪する。

 

羞恥心で未だに顔から手が離せない綾紬さんは、蚊の鳴くような声でなぜわかったのかと問うてきた。

 

あー…なんというか…視線?眼差し?

 

酒寄さんに向けてる目に明らかに熱が篭ってるっていうか、恋情入って艶っぽくなってる時があるんだよね。

 

配信してる時とか酒寄さんが綾紬さんのことを見てる時は全く無いんだけど、プライベートになるとちょくちょく出てきてて…。

 

あとKASSENでツーマンセル組んでる時に気付いたんだけどさ、戦闘中に稀に、酒寄さんのアバターの太腿とか臀部に視線がいってr「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」…うん、ごめん。

 

気付いた要因の説明をしてるうちにまた要らないことを言うところだった俺を、普段じゃ絶対聞けないような叫び声で止めてくれた綾紬さん。

 

いや…止めてくれたというより、羞恥心が限界に達した感じか…。

 

息を弾ませ俺の両肩に手を置いている綾紬さん。

 

その呼吸を整えると、また蚊の鳴くような声でこの件は内密にお願いします…と懇願してきた。

 

お、おう…誰にも言わん…ほ、本当にごめんね?

 

いえ、お気になさらずと返事はしてくれたものの、その口からは魂のようなものがまろび出ていた。

 

気まずくなってお互い一言も発さないまま歩みを進める。

 

あー、これ絶対嫌われたーオワターなんて空を死んだように見上げたのも束の間。

 

 

 

「やっぱり…変…で、すよね…。女性なのに、同じ女性のことが好きなのって…。」

 

 

 

いきなり綾紬さんがそんなことを言い出した。

 

死んだ目で空を見上げていた俺は、その言葉の意味やバックボーンを深く考える暇なんてなかった。

 

へ?別に変じゃなくね?

 

思うままにノータイムで俺の口からポロッと出た言葉を聞いて、鳩が豆鉄砲を食らったようにポカーンとしている綾紬さん。

 

…ッスー…これあれだ、またプレミしたやつだわ。

 

どーしてもうちょっと相手のことを考えてから発言できないんですかねぇ…。

 

雰囲気とか話してる内容的に結構デリケートな部分だよってわかるじゃん!

 

何やってんだ俺ぁ…。

 

言い訳をすると、前世の妹が学生の時に家に彼女連れてくる機会が多かったんだ。

 

だから、あぁ最近の子の恋愛事情ってそんな感じなんだほぇ〜って納得したし慣れちゃったんよ。

 

いや、実際に変と思ってるかって聞かれたら微塵も思ってないのが本音ですよ?

 

つってももうちょっと考えてますよ感出すべきだったよな〜…適当に返されたとか思っちゃうよな〜…。

 

適当に言ってる訳じゃないということをなんとかアピールする為、いつものように口から出まかせよろしく舌を回し始める。

 

ジェンダーレストイレが設置され始めたのが15年くらい前。

 

戸籍の性別変更が可能になったのが…確か25年前くらいだったかな?

 

ほんで同性婚が世界で初めて認められたのが大体30年前。

 

記録に残ってる世界初の性転換手術なんか、もう100年も前の話だ。

 

性別の垣根なんて、とうの昔に撤去され始めてるんだよ。

 

流行にアンテナ張ってなきゃいけないインフルエンサーさんが、30年も前の価値観ぶら下げてるままでいいのかい?

 

それに、人間の脳みその大半は未だにブラックボックス、中でどういう仕組みでどう処理されてるかがわかってないんだってさ。

 

そんなわからんことだらけの脳みそが出力した好みとか感情とかがさ。

 

本当に変かどうかなんて誰が判断できるんだよって話。

 

それこそ人間作った神様にしか判断できんでしょ。

 

あれが変これが変って大勢が言ったとしたら、そいつらはどういう仕組みで出力された結果なのかを一ミリも理解せず、ただ正しい保証もない自分の中の物差しを聖剣よろしく振り回してる円卓の馬鹿さ。

 

因みにだがね、世の中にはドラゴンと車が性的に組んず解れつやってるのに興奮を覚える変な人もいるらしいぞ。

 

俺に変って言わせたいなら、それくらいユニークな性癖じゃないと…ね?

 

そこまで聞いた綾紬さんは、神様にしか判断できないのに変って言っちゃっていいんですか?と指摘してきた。

 

おっほっほ〜…痛いところついてくるねぇ…。

 

お手上げだと両手をあげる俺を見て、吹き出すように笑い始める綾紬さん。

 

吹っ切れたのか、悩むことが馬鹿らしくなったのか、呆れ返って諦めたのか。

 

綾紬さんが俺の話をどう解釈したかは分からないが、表情や雰囲気を見る限りは良い方に受け取ってくれたみたいだ。

 

あっぶねぇ〜…なんとか誤魔化せた…。

 

大人の尊厳をなんとか守り抜けたことに安堵する俺。

 

綾紬さんはひとしきり笑った後、お悩み相談みたいになってしまった事への謝罪を口にした。

 

諌山さんにも似たような事した気がするし一回も二回も変わらんからへーきへーき。

 

なんて事をそのまま言うのはちょっと憚られた為、気にしなくていい事と他に悩みがあったらいつでも相談に乗る事を伝えた。

 

それを聞いた綾紬さんは安心したようにホッと息を吐き、悩みを聞いてくれたおかげで少し楽になったとお礼を口にした。

 

どういたしまして、少しは自分の気持ちに自信持てるようになったかい?

 

そう聞くと、どうなんですかねと少し困ったように笑う綾紬さん。

 

自分でもこの気持ちに対して何を思いどうしたいかみたいなのがずっと纏まっていないらしい。

 

この気持ちが良いと思っているのか悪いと思っているのか。

 

決着をつけたいのかなぁなぁなままにしておきたいのか。

 

伝えたいのか秘めたいのか。

 

難儀なもんだねぇ…恋愛というのは。

 

精神年齢でいうと五十にもなるけど、未だに好きな人ができたことのない俺に恋情なんてものは何も分からない。

 

まぁ、綾紬さんにも色々事情があるだろうし、独り身の俺にアドバイスできることなんてほっとんど無いだろうけどさ。

 

そんな俺でも、君のその気持ちは大事にするべきものだってことだけは分かるよ。

 

そう言うと綾紬さんは嬉しそうに笑った。

 

そして何かを思いついた顔を一瞬だけした後、隣から俺の前に移動して顔を見上げてくる。

 

自分の気持ちのことは分かりきれてないが、俺が自分の気持ちの味方でいてくれることだけは分かった。

 

そんなことを俺に言ってウインクした後、また隣の位置に戻っていった。

 

なんだこの美人クッソ可愛いな…。

 

一生味方でいてくださいね〜沢山パシ…頼らせて貰うので〜なんて戯けた口調で言う綾紬さん。

 

西◯カナじゃねぇんだから永久保証なんて出来ねぇぞ、なんて思いながらお手柔らかに頼むよ〜と笑って返す。

 

優しすぎる彼女の行く末が少しでも良い方向であることを祈りながら、白い砂浜を並んで歩く。

 

どのくらい綾紬さんやみんなの味方でいられる時間があるかは分からない。

 

けど自分が出来うる限りは彼女達の味方であり続けたいと、改めて心から思うのだった。

 

 

 

 

 

 

あと流れでスルーしちゃったんだけどさ。

 

ラッシュガードパーカーは…返してくれないのかい…?

 

 

 


 

 

 

みんながいる場所が視界に入ってくると、ちょうど向こうから酒寄さんが走ってきた。

 

どうやら遅くなりすぎたようで、心配になって丁度探しに行こうとしていたらしい。

 

何かあったのかと問う酒寄さんに、綾紬さんはメイク直しに時間がかかったと答えていた。

 

どうやら変に心配かけたくないのか、誤魔化す方向らしい。

 

俺もそれに合わせて、普通に道に迷ってましたと嘘をついた。

 

それを聞いた酒寄さんは呆れたようで、眉間に手を当て深くため息をついた。

 

…う、嘘なんだけどな…でも訂正する訳にはいかないんだな…悲しいんだな…。

 

酒寄さんの後ろで手を合わせてゴメンのジェスチャーをしている綾紬さんに、軽く手を上げて応える。

 

ま、まぁ!何事もなかった訳だし!さっさと飯食おうぜ!

 

そう言って何か言いたげな酒寄さんを丸め込んで、レジャーシートの上に座る。

 

料理に目を向けると、そんなに手をつけていない様子だった。

 

どうやら俺らのことを待ってくれていたらしい。

 

諌山さんも一人用に頼んでた焼きそば以外には手をつけていなかった。

 

うぉ…彼女達の善性が…目に沁みますよ…。

 

全員揃ったので、いただきますの挨拶をして各々好きな料理に手を伸ばす。

 

いや〜、こういうイベントの時に買うご飯って割高すぎるイメージあるんだけどさ。

 

全然そんなことねぇわ、クッソ美味い。

 

カレーとかマジで段違いだわ、そりゃみんなこぞって注文するよ。

 

うわ〜…浜焼きとかも買ってくるんだったな〜。

 

そんな感想を抱きながら、海の家の料理に舌鼓をうつ。

 

途中で酒寄さんとのイカ焼き争奪戦が勃発したが、それをやってる間に横からかぐやちゃんが掻っ攫っていった。

 

漁夫の利ッ…姑息な真似をぉ!!

 

項垂れる俺を他所に、酒寄さんは綾紬さんの分のフランクフルトをアーンして分けてもらっていた。

 

敗北者は俺一人だけだった。

 

泣いていいか?

 

そんなこんなで腹ごしらえを済ませた我らが御一行。

 

今は海でお互いに水をかけ合いながら遊んでいた。

 

俺?そんな体力無いからビーチベットでだらけてますよ。

 

ビーチベットに投げ出している体に、容赦なく降り注ぐ熱い日差し。

 

お昼を回ってより凶暴になっていく太陽を思わず睨みつける。

 

あ"あ"あ"〜…あっっっぢぃ〜…。

 

思わず口から漏れ出た言葉に、隣のビーチベットに腰掛けてる酒寄さんが余計暑く感じるから黙ってくださいと文句を言う。

 

へいへいすんません…ていうか、酒寄さんは混ざらんの?

 

海で遊んでる三人を指さしながら酒寄さんにそう問うと、今は休憩中で〜すと間の抜けた声が返答された。

 

パラソルの日陰に入りたいから、早いとこ遊びに行って欲しいんだがねぇ…。

 

そう思ったところで、一つ分の陽だまりに二つはちょっと入れないとB◯MPも言っているし、それは日陰も例外ではない。

 

パラソルを酒寄さんに譲り、泣く泣く炎天下の日差しにそのまま晒される状態でビーチベットに寝転がっているのだ。

 

そうですか〜いと気の抜けた返事を酒寄さんにして、サングラスを貫通してくる眩しい陽の光をシャットアウトするように目を閉じる。

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

………。

 

…これ、酒寄さんがなんか用があるパターンだな。

 

この四人の中で、酒寄さんとの付き合いが一番長い。

 

それもあってか酒寄さんと二人になった場合に、気まずくなるようなことは殆ど無かった。

 

お互いが適度に話を振り合うので、基本的に会話が途切れることがないのだ。

 

それでも会話が途切れることはあるのだが、そういう時は決まって酒寄さんが俺に対して何か用事を抱えていた。

 

この子ねぇ…人に頼るのド下手だから、頼み事とかあっても素直にお願い出来ないのよね。

 

だから、会話の中に混ぜてさりげなくそうさせようとしてくる。

 

聞きづらいこととかがあった場合も、会話に混ぜてさりげなく聞こうとしてくる。

 

そんで、会話の内容を考えては見るけど何も思いつかず。

 

結局、気まずい空間が展開される。

 

これがいつもの流れです。

 

まぁ、今日に関しては此処に来る前からその兆候っぽいのあったんだよなぁ…。

 

車に乗る時、全員後ろでいいよ〜って言ってるのに助手席座ろうとしてきたし。

 

理由聞いても要領を得ない事ばっかり言ってたし。

 

その時はあんた助手席座ったら一人余っちゃうでしょうがって言って、後ろの席に追いやった訳だが。

 

こういう時は結局、俺の方から助け舟を出すのが恒例になっている。

 

ほんで?何か俺に用事でもあるのかい?

 

そう言うと、ピタリと考えを当てられたことに驚いたのかビクッと体を震わせた。

 

その後、なんで分かるんだみたいな視線をこちらに向けてきた。

 

綾紬さんも酒寄さんも、まぁそこそこ顔に出てくるタイプだからねぇ…。

 

お兄さん心読めるんだよねと冗談を言うと、何を馬鹿なことを…と呆れながら酒寄さんが返す。

 

そのまま息を吐くと、恐る恐る話し始めた。

 

いや恐る恐るというか、恥ずかしさに突っかかりながらってのが正しいか?

 

話された内容というのは、何か欲しいものとかやってほしいことがあるかというものだった。

 

…ど、どういう風の吹き回しだい?

 

脂汗を掻きながらそう問いかける俺に、何でそんなにおびえてるんですか!と不服そうに言う酒寄さん。

 

いやだって普段の酒寄さんは俺にそんなこと言わないし…えなんか企んでる?

 

それを聞いて企んでないですよ失礼な!と反論した後、酒寄さんはぽつりぽつりと理由を語りだした。

 

普段お世話になってることが多いし、借りっぱなしだと申し訳ないから何かお礼をしたいとのこと。

 

諌山さんが言っていたことは本当だったらしい。

 

いや別に疑ってたわけではないけどね?

 

こうして俺本人に直接言ってきてくれるとは思ってなくてな。

 

とはいえ、酒寄さんの質問に関してはぶっちゃけ特にないとしか返せない。

 

欲しいものも特に無いし、酒寄さんができる範囲でやってほしいこともない。

 

強いていうなら…なんだ、不労所得くらいか?欲しいの。

 

という訳で、お礼なんて気にする必要はないし甘えておきな〜と適当に手を振って返す。

 

すると、それじゃあ困ると酒寄さんが隣のビーチベットから身を乗り出してきた。

 

思ったより大きい声も出ていたのでびっくりしている俺を見て、我に帰ったようにすみませんと一言言って乗り出した身を引いていく。

 

聞くにどうやら、酒寄さん的に今の状況というのをあまりよく思っていないらしい。

 

かぐやちゃんの件をはじめ、金銭関係も碌に返せていないままだし、あまつさえ部屋を占領したり定期的にお邪魔したりして迷惑をかけてばかり。

 

かぐやちゃんが来たあの日以降、俺から貰ってばかりで何も返せていない。

 

これでは協力関係ではなく、ただの一方的な依存になってしまう。

 

ビーチベットの上で膝を抱えながら、酒寄さんはどこか震えた声で言葉を紡いでいた。

 

うーむ…思ったより思い詰めていらっしゃる…。

 

実際にかぐやちゃんのお世話に時間割いているのは酒寄さんだし。

 

部屋に関しては俺から提案した上で、提供してる訳だし。

 

ちなみに酒寄さんは部屋凸即就寝テロ事件以降、耐久配信をしてる日は俺の部屋で寝るようになった。

 

酒寄さんの危機感なら休暇とってベガスに行ってます。

 

連れ戻してほしい、切実に。

 

金銭面に関しては、まぁ増えたには増えたが別に致命傷という訳でもない。

 

総合的に見ても、俺は別に依存されてるとも迷惑をかけられているとも思っていない。

 

ビーチベットに寄りかかっていた体を起こし、酒寄さんの方を見る。

 

その辺の思っていることを全部言葉にして、酒寄さんに伝えた。

 

ちゃんと頼りにさせてもらってるよ、酒寄さんを。

 

そう言って軽くポンっと背中を叩くも、酒寄さんの顔は浮かないままだ。

 

何か引っ掛かるようなことでもあんのかねぇ…。

 

どうしたもんかねぇ…と考えていると、抱えていた足を元の位置に戻した酒寄さんが問いかけてきた。

 

 

 

「私のこと…頼りにしてくれるんですよね?」

 

 

 

あぁ、かぐやちゃんのお世話に関しては特にね。

 

 

 

「私は…斎藤さんに依存してる訳じゃないんですよね?」

 

 

 

心配せずとも、ちゃんと自分の足で立って歩けているよ。

 

 

 

「私は…私と斎藤さんは…対等な協力関係なんですよね?」

 

 

 

おぉそうだとも。持ちつ持たれつでやってきたじゃないか。

 

いくら答えても、酒寄さんの表情に明るさが戻ることはなかった。

 

ラッシュガードパーカーは未だに綾紬さんが羽織ったままの為、夏の日差しが裸体の上半身を刺し続ける。

 

酒寄さんの手が、あの日自傷して傷をつけ、未だに瘡蓋が残る俺の右腕に触れた。

 

 

 

「なんで…あの日何が起きたのか…何も教えてくれないんですか?」

 

 

 

………。

 

答えることは、出来なかった。

 

あの日というのは十中八九、俺が初めて透明化現象に見舞われ、テンパった挙句に酒寄さんとかぐやちゃんに心配をかけた日のことだろう。

 

対等だっていうなら、頼りにしてくれるというなら、悩みの一つくらいは打ち明けられるだろうと酒寄さんは言う。

 

続けて、言うだけならタダだって言ったのは俺だとも言った。

 

酒寄さんの喉に引っかかっていた小骨はきっとこれなのだろう。

 

実は、これより前にも二、三回同じような質問をされてはいた。

 

酒寄さんの質問から察せれるように、本当の事は一度も言ってない。

 

言い訳に聞こえるだろうが、打ち明けようとは思ったことは何回かあるのだ。

 

酒寄さんに透明化した手を見せて反応を伺ったのもこのためだ。

 

でもそう思う度に、そうしようとする度に、何からどう説明すればいいかわからなくなった。

 

だってなまじ現代科学で説明できるような現象じゃないし心当たりもない。

 

他人からは知覚することも出来ない。

 

上手くまとめられないし、そもそも言葉にしようがない。

 

そんな状態で打ち明けても、薬でラリった大人にしか見えないだろう。

 

うおっイかれた不審者。

 

という訳で色々諸事情あって、未だにこの事は誰にも言えず仕舞いのままだ。

 

あ、皮膚科の医者には言ったな、戯言で片付けられましたが。

 

酒寄さんに聞かれる度に、虫だよ虫なんて分かりきった嘘で話す気はないアピールをして有耶無耶にしてきた。

 

何も喋らない俺に、酒寄さんは俺の腕を握る力を強める。

 

なんで何も言ってくれないのか。

 

違う、俺が何一つ言葉に出来ないだけなんだ。

 

私はやっぱり頼りにはならないのか。

 

違う…そんなこと…ない…。

 

 

 

「私じゃあ…悩みをただ話すだけの相手にも…なれないです…か…?」

 

 

 

ふいに、酒寄さんと視線がぶつかる。

 

酒寄さんの目には、今にも溢れそうなくらいの涙が溜まっていた。

 

こんな顔、させたかった訳じゃない。

 

こんな顔をさせない為に、頼りになる大人であろうとしたんじゃないのか?

 

俺は今、本当に大人としての本分を全うできているのか?

 

俺が求めてた大人の理想像はこんなものなのか?

 

俺が欲して止まなかった大人は、本当にこれなのか?

 

否、断じて否だ。

 

自身の左拳を強く握り、そのまま自分の頬を殴りつける。

 

目を見開いて固まる酒寄さんを他所に、頭を下げて謝罪する。

 

ごめん、そんな顔をさせるつもりはなかった。

 

今は…どう話せばいいかわからなくて、全然言葉が出てこなくて…。

 

でも、約束する。

 

絶対、絶対にいつか酒寄さんに言う。

 

頼りにさせてもらう。

 

絶対に。

 

その時が来たら、一番最初に酒寄さんを頼るって約束する。

 

だから、今はこれで許して欲しい。

 

殴った勢いで切れた唇から血が伝うが、拭うこともせず酒寄さんを見つめる。

 

ここで目を逸らすのは、心を痛めて泣く直前までいった酒寄さんの優しさを、蔑ろにするように思えたから。

 

その様子を見て、驚きから今まで固まっていた酒寄さんが俺の右腕から手を離し口を開いた。

 

 

 

「あ…あの…な、なんで急に…顔をなぐ、殴ったん…ですか…?」

 

 

 

…あ、あっはは〜!!それはなんというか罰というか自戒というか〜…その〜…ね!!!

 

ご、ごめんね!!?いきなり顔殴り出すとか変よな!!?

 

頭がねぇ!!!おかしくなっちゃったねぇ!!?暑さでねぇ!!?

 

身体中の血液が顔に集まっている気がする。

 

自分でもわかるくらいに顔が赤くなっていっている。

 

いや本当に何!?なんで急に頬殴ったの!?

 

青春漫画とかアニメのキャラクター気取りですか!?

 

いい歳して何やってんの俺ほんとにもぉぉぉぉ!!!!!!

 

あまりの恥ずかしさに手で顔を覆う。

 

その様子を見て、一拍置いた後に酒寄さんは声をあげて笑いはじめた。

 

ひとしきり笑い終わった後、目元の涙を拭う。

 

そして、俺から打ち明けてくれるのを待つと言ってくれた。

 

情けない限りだ、子供に折れてもらうなんて。

 

仕舞いにゃ空回りして笑われる始末。

 

正直、調子に乗っていたのかもしれない。

 

上手く大人をやれているって。

 

やっぱり、俺には理想の大人になんかなれないのかな。

 

嘘ついたら指三本詰めてもらうと笑いながら言う酒寄さんに、針千本飲ますみたいに言うなと返す。

 

報復の仕方がカタギの人間じゃねぇ…。

 

酒寄さんがビーチベットから立ち上がって、休憩終わりと言いながら伸びをする。

 

そして、私も混ぜなさーいと言って海で遊んでいる三人の方へと走っていった。

 

顔を覆っていた手を下ろす。

 

羞恥心で忘れていた頬の痛みが、思い出したかのようにズキズキと主張を始めた。

 

はぁ…と重めのため息を一つ吐いて、再度ビーチベットに体を預ける。

 

天空に燦々と輝く太陽が、俺のことを嘲笑っているように思えた。

 

視界に入れたくなくて、目線を空から外す。

 

 

 

ふと、海の方に目を向けた。

 

そこには、四人が遊んでいる姿。

 

年相応の笑顔を見せながら、心底楽しそうに水を掛け合っていた。

 

その光景が、この笑顔が、とても尊くて失い難いくて眩いもののように思えて。

 

これが無くなると考えた途端に心の奥に痛みが走って。

 

 

 

…はぁ…ダメだなぁ…俺は。

 

確かに、俺は今日失敗した。

 

それはもう盛大に。

 

だとしてもだ。

 

だとしても、俺は大人であることを止めるわけにはいかない。

 

彼女らがちゃんと、子供として振る舞えて健やかに成長できるように。

 

今度はちゃんと、この子達に心配されないように、そして守れるように

 

失敗したなら反省してまた立ち上がろう。

 

何度でも、何度でも。

 

パンっと両頬を軽く叩いて気合いを入れ直す。

 

嘲笑っているように思えた太陽に向かって、なんとなく中指を突き立てたあと、再度海に目を向ける。

 

反抗の意志とは裏腹に、太陽の光が反射した海はとても綺麗に思えた。

 

そして、変わらず楽しそうにはしゃいでいる四人。

 

 

 

ありがとうな…酒寄さん。

 

 

 

呟いたその言葉は、本人に届く事なく波間に消えた。

 

結局みんなが戻ってくるまで、俺はその光景から目を離せないまま眺め続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに戻ってきた三人に、頬が赤くなっているがどうしたのかと聞かれた。

 

特に理由もなく、あっち向いてホイで勢い余った酒寄さんにやられたとホラを吹いた。

 

その瞬間に赤くなってる頬とは逆の頬に、勢い余っちゃいました〜と言う言葉と共に酒寄さんの鉄拳が突き刺さった。

 

両頬腫れ上がってアンパ◯マンみたいになった。

 

その後はいい時間だったので撤収、行きと同じく車にみんなで乗り込み帰宅した。

 

帰路を行く車内は行きと同じく終始盛り上がったままだった。

 

大半の時間が、何故俺は独り身のままなのかと言うことに対する考察だったのは納得いかないが。

 

しかもその話題出したの俺じゃないからね。

 

そこでJK達の忌憚のない意見(ナイフの切れ味)でバチボコのボコボコにされた挙句、最終的には諦めましょう、ナイストライという結論が出された。

 

もうっ…もう知らないっ!!!

 

守ってなんかやらないんだからぁ!!!

 

 

 

 







お盛ん寄エロ葉なるものが存在するなら綾つムッツリぎエロ花も存在していいんじゃないかなって。俺は訴え続けますよ。乙事照 琴にも、そう言わせます。必ず。

芦花から彩葉への感情って「特別な感情」と明言はされてたけど、これって恋愛的に好きって意味でいいんすかね?取り敢えずこの小説ではそういうことと解釈して書いてます。頑張れ芦花ちゃん負けるな芦花ちゃん。仮に負けたとしても其方は美しいぞ芦花ちゃん。

芦花ちゃん的には、ノータイムでそれって変なのか?って言ったのがバリ刺さっています。そりゃ世間的に圧倒的少数派の自分の価値観を当たり前のように肯定して支持くれる人がいたら嬉しいでしょうよ。まぁ期限付きなんですけどもね。短めだし。

妹が連れてきてたのは全部友達で、冗談で彼女として兄に紹介していただけです。ただ友達の二、三人くらいは彼女として紹介されたことでその気になって痛い目を見ています。アーカワウソ。

主人公は口では慣れただのチョケ混じりで言っていますが、理解できない透明化に実際のところ結構メンタル削られてます。イイゾーコレ^^

主人公が普段彩葉達の前で行っている振る舞いは、過去に自分が欲していた大人像がベースになって出力されてます。こういう大人が居てくれれば姉は死ななかっただろうという自分の中の理想の大人をエミュレートして彩葉達と接しています。なりチャかな?ネットの掲示板でやりなよそういうの。

なんか良い話風を装ってるけど、主人公はJK三人全員の体触ってんだよね。セクハラですよそれサイテー。口先だけの誤魔化しと吊り橋効果でしか好感度稼ぎしてないくせにー。お悩み相談の解決方法ワンパターンのくせにー。芦花ちゃんがラッシュガードパーカー羽織ってるの見て彼シャツみたいだなとか考えちゃった童貞のくせにー。
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