え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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11. 仕事早退から看病まで

 

 

 

小学校のいじめみたいな仕打ちを受けた上に、ヤバそうな奴らに捕捉されている事実を知らされて、心身ボロボロになった翌日。

 

悲しいかな…そんなことは知らぬと言わんばかりに、社会は寸分の狂いもなく回り続ける。

 

社会の歯車の一部である社畜の俺は、傷を負った心を引きずりながら会社へ出勤していた。

 

心ここに在らずといった感じの放心状態ではあったが、長年染みついた社畜のスキルによって手が勝手に動いていたようで。

 

仕事自体はつつがなく進んで行った。

 

白目を剥きながらキーボードを打ち続ける俺をみて、打ち合わせに来ていた別プロジェクトの顧客がびっくりしていたのはここだけの話にしておこう。

 

そして今は仕事に一区切りつけて、会議室で課長と面談を行なっていた。

 

まぁあれだよ、人事評価とか最近の調子とか悩みとか…あれこれやるやつだ。

 

評価については有難いことに高めらしい。

 

…いやそうじゃないと困るな。

 

関係ないプロジェクトが炎上した時のヘルプ、今年度だけで5件はやったぞ…。

 

という訳で他プロジェクトのカバーとかをそこそこやってたら評価に尾鰭がついたっぽい。

 

辞めてやろうかしら本当に。

 

フフフ、怖いか?引き継ぎ資料なんてとうの昔に作ってから欠かさずアップデートしてるからな…いつでも辞めれるぜぇ?

 

最近の調子については、俺の自認はそんな変わらんのだが、側から見てる分には随分と良さそうだとか。

 

退勤前とか結構機嫌良い時多いよって言われてちょっと恥ずかしくなったわ。

 

か、かぐやちゃんの配信見たりするの結構楽しみでして…へへ…。

 

へ?悩み?

 

えー…なんすかねー…最近世界から自分が消えてしまうんじゃないかって思う時があってー。

 

いや冗談すよ冗談、そんなどう答えればいいんだみたいな深刻そうな顔しないでくださいよ。

 

そんな会話も挟みながら、課長との面談は無事終了。

 

束の間の休憩を兼ねた雑談中に、ポケットに入れていたスマホが震え出す。

 

何かの通知…じゃないな、ずっと震えてる。

 

課長に許可を取りスマホを取り出すと、画面にはかぐやちゃんの名前が表示されていた。

 

酒寄さんじゃなくてかぐやちゃん、しかも就業時間中に…?

 

拭えぬ違和感もそこそこに、待たせるわけにもいかず通話に出る。

 

もしもし?かぐやちゃんかい?どうs

 

 

 

「ひでちゃぁぁぁぁぁぁん!!!たぁぁぁすけてぇぇぇ!!!」

 

 

 

うるっっっさぁ!!?

 

あまりの音量にスマホを耳から遠ざける。

 

クソデカ叫び声が聞こえたのか、課長も毛の逆立った猫のようにびっくりしていた。

 

すいませんという意を込めて軽く会釈した後、耳元にスマホを戻して通話に戻る。

 

あー…かぐやちゃん?どうしたの?

 

スマホに耳を傾けると、どうやらかぐやちゃんは泣いているようだった。

 

只事ではないらしい。

 

た、只事ではないのは理解できたから落ち着いて話してくれると助かるんですけどもぉ〜…。

 

スマホの向こう側でしゃくりをあげでいるかぐやちゃんを宥めながら、一体何があったのかを聞き出す。

 

落ち着く様子のないかぐやちゃんの口から、衝撃の事実が告げられた。

 

 

 

はぁ!!?酒寄さんが倒れた!!?

 

 

 

クソデカボイスを思わず出してしまい、ハッとなって口を抑える。

 

二回目の大音量に、またも課長は毛の逆立った猫のようにびっくりしていた。

 

ごめんな課長…。

 

謝罪もそこそこに、かぐやちゃんから詳細を聞き出す。

 

どうやら今日は二人で買い物に出かけていたらしい。

 

その途中で酒寄さんが突如蹲るようにしゃがみこんでしまい、その後に意識がなくなってしまったらしい。

 

異常事態であることを認識したかぐやちゃんはなんとかその場でタクシーを捕まえ、とりあえず自分達の部屋まで戻ってきたらしい。

 

だが戻ってきたはいいものの、何をすればいいか分からず途方に暮れ、俺に助けを求めにきたらしい。

 

な、なるほど…それは119に連絡したほうが早かったのでは?

 

そう言うとかぐやちゃんは、119!?119って何!?それで彩葉は助かるの!?と、それが何なのかが分かっていない様子だった。

 

いやそりゃそうだ、かぐやちゃんは月出身。

 

そもそも日常で、しかも家からあんまり出ない配信者には縁遠い緊急時の連絡先なんて、知る機会がなければ認識すらできないだろう。

 

あーっと…まずあれだ、通話を一回切って電話のアイk

 

 

 

「うぇぇぇぇ!!?切っちゃダメぇ!!!見捨てないでぇぇ!!!」

 

 

 

い、いや…見捨て…あの…見捨てるわけじゃ…駄目だ、声が届いてねぇ。

 

弁明を試みるも、こっちの声が聞こえていないのか切らないでくれの一点張りだ。

 

多分、かぐやちゃんは今すごいテンパっているのだろう。

 

目の前で大好きな酒寄さんが倒れて、かなり動揺してしまっている。

 

ここで通話を一回切ってしまうのは、おそらく悪手だ。

 

それこそかぐやちゃんが勘違いと動揺によって、動けなくなる可能性がある。

 

てなると119を呼ぶのは一旦保留だ。

 

なんとかかぐやちゃんをラジコンして、酒寄さんの安否確認と看病に当てるしかない。

 

そうなると、俺が慌てるようなことがあってはいけない。

 

一度、深く深呼吸をする。

 

頭の中でやることを整理して、再度息を深く吸い込む。

 

そして、未だに泣きながら切らないでと繰り返しているかぐやちゃんに向けて、できる限りの大声で呼びかけた。

 

かぐやちゃんっ!!!!!!

 

まさかの三回目の大音量に、上司は飲もうとしていたコーヒーを机にぶち撒けていた。

 

いやほんまにごめん課長。

 

でもその甲斐あってか、泣き続けていたかぐやちゃんがびっくりしたのか静かになった。

 

そのまま俺は、ゆっくりかつハッキリと言葉を伝えていく。

 

…俺の声を聞いて?

 

いい?今酒寄さんの近くにいるのはかぐやちゃんだけ。

 

誰かが助けに行くにしても、それなりに時間がかかっちゃう。

 

そうなると、酒寄さんを今すぐ助けられるのはかぐやちゃんだけだ。

 

君が、君こそが、一番焦っちゃいけない。

 

そこまで言うと、かぐやちゃんもようやく落ち着き始めたのか、ごめんなさいと謝ってきた。

 

おそらくティッシュで鼻をかんだであろうズゴゴォォォッ!という乙女が聞かせちゃいけないレベルの音の後に、落ち着いた!何やればいい!?と持ち直した声で聞いてきた。

 

そこまで聞いてOKと言いながら、会議室のドアを乱暴に開けて足早に自分の席に戻る。

 

自分のPCや机に広げっぱなしの資料を片付けて帰り支度をしながら、かぐやちゃんに指示を出す。

 

そうだな…まず手首に軽く指当ててみて。

 

血が通ってるのが分かると思うけど、なんかリズムがおかしくなってたりしない?

 

一定のペースになってる?…よし。

 

手足はどう?変に痙攣…ビクビクってしてたりとか…あと出かけてる時に足攣ったりとかしてなかった?

 

特にしてない…OK。

 

汗は?拭いても拭いても出てきたりとか、逆に全然出てないとか…。

 

普通に出てるだけか…。

 

出かける前とかに水分取ってた?お出かけ中とかでも…。

 

…あ、取ってるか…てなると熱中症ではなさそう…。

 

熱はありそう?おでこ触ってみて。

 

熱い?んー、てことは疲労による発熱が一番怪しいかな…。

 

直前までちゃんと話せててた?呂律回らなくなってたりは…。

 

してないか…ありがとう。

 

机の上を最低限片付けてPCを乱暴にシャットダウンし、カバンと上着を持ってオフィスの出口にダッシュで向かう。

 

会議室から出てきた課長と鉢合わせし、何があったんだという質問に、手早く身内が倒れたので早退します!とだけ告げて駆け足でオフィスを去る。

 

とりあえずは部屋を涼しくしておいて。

 

冷房もつけちゃっていいから、後で俺が怒られとくよそこは。

 

あとは布団敷いて寝かせてあげて。

 

服も着替えさせられそうだったら…いやいいか。

 

無理に着替えさせなくていいけど、首元とか腰回りとか緩くしといて。

 

拭ける範囲だけでいいから汗も拭いておこうか。

 

あとは……あれだ、目を覚ました時用になんか消化にいい料理用意しといて。

 

お粥とかおじやとかで調べれば出でくると思う…材料なさそうだったら俺の部屋の冷蔵庫も漁っていいから。

 

…うん、一旦はそれぐらいかな。

 

俺も今から全速力で帰るから、それまで酒寄さんのこと頼んでいいかい?

 

そう問いかけると、気合の入った声で任せて!と答えられた後に通話がぶつ切りされた。

 

まぁいいかと思いつつスマホをポケットに乱雑に突っ込む。

 

どうか無事でいてくれよと心で念じながら、駅への道を走っていくのだった。

 

 

 

なおこれ以降、日を跨ぐまで俺の頭からも119という概念が頭から消え去ったことについては、ご愛嬌ということにしておく。

 

ご、ご愛嬌で済むかなぁ!!?本当に!?

 

 

 


 

 

 

帰りがけにドラッグストアに駆け込み、冷却ジェルシートとスポーツドリンクに解熱剤、あと一応ということで経口補水液を購入。

 

日頃の運動不足により悲鳴を上げる関節や肺と、ツクヨミ内のアバターとのギャップに苦しみながら、なんとかアパートまで戻ってきた。

 

踏み外しそうになりながら階段を駆け上がり、酒寄さんの部屋の呼び鈴を鳴らす。

 

数秒もしないうちに、中からかぐやちゃんが出迎えてくれた。

 

ハァ…ハァ…た、ただいまかぐやちゃっどおぉい危ないどうしたぁ!?

 

息も絶え絶えに帰宅の挨拶をしていると、かぐやちゃんが勢いよく抱きついてきた。

 

何事かと思って目をやると、顔は俺の胸に埋められ見えなかったが、その両肩は震えていた。

 

…よく頑張ったね…ありがとう、助かったよ。

 

そう言いながら頭を撫でてやる。

 

俺らが関係を持つようになってから、酒寄さんがここまで体調を崩したのは初めてだった。

 

更にかぐやちゃんは宇宙人。

 

地球人の看病なんてしたこともないだろう。

 

そんな中で隣でいきなり同居人がぶっ倒れたのだから、気が気じゃなかっただろう。

 

とはいえ、いつまでもこうしてはいられない。

 

かぐやちゃんに酒寄さんの容態を聞くと、ハッとなって俺から離れたあと部屋へと入っていった。

 

冷房が効いていて涼しくなっている部屋には布団が敷かれ、そこに酒寄さんは眠っていた。

 

制服のタイは緩められ、汗もおそらく拭かれたのであろう、そんなにかいている様子はなかった。

 

指示したことはちゃんと遂行してくれたようだ。

 

とりあえず料理をしている途中だった様子のかぐやちゃんに火元から離れないように指示を出し、酒寄さんのおでこに手をやる。

 

…うーん、39℃とかはいってなさそう…でも熱いな。

 

後で体温計を部屋から持って来ないとな…。

 

そう思いながらレジ袋の中から、冷却ジェルシートを取り出す。

 

これって水につけたらめっちゃブヨブヨすんだよなぁ…と危機感のないことを考えながら、酒寄さんのおでこにシートを貼り付けた。

 

一瞬コンプラのことを考えそうになったが、今回に限ってはスルーした。

 

あいつ束縛厳しくてさぁ…今だけは忘れさせてくれよ。

 

心頭滅却しながらシートを貼り終わった瞬間、目を覚ました酒寄さんと目が合った。

 

あっごめん、起こしちゃったかな?

 

そう言うと、いまだに目覚めきれていないのか俺に向かってお父さん…?と呟いていた。

 

同期達が本当にお父さんになりだしてて俺だけ置いていかれてるから、あんまりそう呼んでほしくはないかなぁ〜…。

 

苦笑いでそう告げると、ようやく意識がハッキリしたらしい。

 

なんだ斎藤さんか…というどこか落胆した声音の酒寄さんは、自分のスマホを手に取った。

 

おい待てなんで今ちょっとガッカリした。

 

かぐやちゃんも酒寄さんが目を覚ましたのに気づいたのか、こちらに寄ってきた。

 

と思ったのも束の間、ヤバい…バイトっ!なんて言いながら勢いよく身を起こし始めた。

 

ちょちょちょちょい待ち!流石に休みなって!

 

立ちあがろうとする肩を抑えて、優しく酒寄さんを布団に押し戻す。

 

酒寄さんはで、でもっ…と抵抗してきたが、でももヘチマもありませんと一蹴し、成人男性の力を惜しみなく使い制圧した。

 

そこへかぐやちゃんも加勢に入り、バイト先に休みの連絡は入れておいたから休んでくれと言った。

 

うぉっと…俺はそこまで気が回ってなかった…かぐやちゃんナイスカバーだね。

 

酒寄さんのスマホの画面に映るチャットルームには、おそらくバイト先の店長であろうユーザーとビデオチャットの使用履歴、そして休みの連絡を受け取った旨のメッセージがあった。

 

それを見てかぐやちゃんにお礼を言う酒寄さん。

 

落ち着いたかなと思ったが、今度は驚いた様子で俺の方を向き何でここにいるのか、仕事はどうしたのかと聞いてきた。

 

かぐやちゃんから酒寄さんが倒れた〜って連絡貰ってね、早退してきたよ。

 

聞くや否や、酒寄さんの表情が深刻そうな様子に変わった。

 

別に気にしなくてもいいのにね〜…と思ったけど逆の立場だったらまぁ申し訳ないわな。

 

そんな事を考えつつ、今にも謝罪が口から出そうな酒寄さんに割り込んで口を開く。

 

お前の次のセリフは、すみません迷惑をかけて…という!…なんつってね。

 

お節介焼いた側からしたら、謝られるよか感謝される方がよっぽど嬉しいもんよ?

 

指を指された酒寄さんは、驚きでしどろもどろになりながらもお礼を口にしてくれた。

 

うん、よろしい。

 

腕を組んで満足していると、後ろから思い出した様子で病院に行こうと提案してきたのはかぐやちゃんだった。

 

そうだね…って言いたいところなのは山々なんだかねぇ。

 

いかんせんもう夕方だ。

 

行って帰っての時間とか起き抜けの酒寄さんのことも考えると、今日はやめておいた方がいい。

 

そう言いながら、レジ袋のスポーツドリンクを酒寄さんに手渡す。

 

蓋を開けて飲み始めた酒寄さんに、今の体調の具合を聞く。

 

頭痛と倦怠感ね…喉とかは?咳出たりとか。

 

特になしか…あ、一応マスクつけときな。

 

聞いた感じ、風邪にかかったとかではなく単純な過労による発熱のようだ。

 

一旦明日まで様子見しようか。

 

明日になっても辛いようだったら行くことにしよう。

 

俺も明日休み取るから、かぐやちゃんも一緒に三人で…。

 

そこまで言ったあたりで、流石に申し訳ないと割って入ってくる酒寄さん。

 

これに関しては、お節介っていうより俺の我儘だよ。

 

俺が勝手に休むだけだからあんまり気にしないで。

 

今日明日くらいはさ、俺に保護者面させてくれない?

 

両手を合わせてお願いのポーズをとりながら、押し切る形に舵を切っていく。

 

しかしいつもなら押し切られてくれる展開だったが、今日に限ってはでも…とやたら粘ってくる酒寄さん。

 

曰く、病院はお金がかかるから嫌だと。

 

そんな事を言ってる場合ではなぁい!!!

 

思わず怒髪天が部屋の天井を突き破りそうになったが、先にかぐやちゃんがお金については任せろと言った。

 

そうだわ、かぐやちゃんは今月だけでも何十万と稼いでいるんだった。

 

俺の月給を優に越してくる稼ぎの超新星ライバーに屈すると思っていたが、酒寄さんはそれでもなお抵抗を続けた。

 

今回はやけに粘るな...またなんかある感じか?

 

顔を手で覆いながら、予定ギリギリで組んでるから何日も休むと勉強で置いていかれる上に最悪奨学金も止まるかもしれないと語る酒寄さん。

 

その表情には焦りや不安などの悲観的な感情がありありと浮かんでいた。

 

あー...体調不良にメンタル引っ張られてる感じだなぁ...。

 

インフルとかになった時に、関係ないのにありもしないようなこと考えだして不安になることあるよなー...。

 

まぁ往々にして、その時考える不安とかは的外れかつ取り越し苦労なんだが。

 

悪い想像が後を絶たずに浮かんでくるのか、顔色が優れない酒寄さんの両頬に手を添えてこちらに顔を向けさせる。

 

コンプラの四文字がダブルピースしながら俺の頭にピークしてきたが、あんなやつはもう知らん!

 

あいつにはこの後別れ話をぶつけてやるんだ。

 

というか俺の社会的な立場どうこう以前に、まず目の前で泣きそうになっている酒寄さんの不安を拭ってあげるのが先決。

 

酒寄さん、こっち向いて、よく聞いて。

 

知識は積み重ねだ。

 

一朝一夕で成り立つものじゃないし近道なんて無い。

 

上京してからずっと成績優秀で通してきた、酒寄さんが一番よく知っているはず。

 

だからこそ、その過程でどれだけ自分が血のにじむような努力を積み重ねてきたかもわかるはずだ。

 

その積み重ねがたった数日の休みで崩れるなんて、そんなことあるわけない。

 

それに、遅れを気にするのであればなおのこと、今ちゃんと休んで直すべきだ。

 

中途半端に休んで治りきらないまま放置してたら、最悪慢性的な体調不良になるかもしれない。

 

日々のパフォーマンスに影響出るだろうし、日常的に限界ギリギリな状態で過ごしているならダウンする回数も増えてくる。

 

酒寄さんからしたらそっちの方が致命的になると思うよ。

 

...自分を労わったりほめてあげたりっていうのは、社会に出るほど誰もやってくれなくなるし自分でやらなくちゃいけなくなる。

 

少しは自分の努力を認めてあげてもいいんじゃないかな?

 

どうしても信じれないって言うならさ、俺のことを信じてよ。

 

俺は酒寄さんの努力をいっぱい褒めるし、認めるし、信じてあげるからさ。

 

ね?と優しく微笑みかけると、酒寄さんはどこか肩の力が抜けたように息を吐き、幾分か柔らかくなった表情ではい...と呟いた。

 

とりあえず、酒寄さんの頭を埋め尽くしていた不安については取り除けたっぽい。

 

お前が信じる俺をなんとやら...ドリルはやっぱ偉大ですわ。

 

そんなやり取りが展開されていた傍ら。

 

今まで沈黙を貫いていたかぐやちゃんが、ふと口を開いた。

 

 

 

「何で彩葉は、一人でそんなに頑張らないといけないの?」

 

 

 

その声は、今までに聞いたことがない位には弱々しい声だった。

 

言われてみれば確かに、とそう思った。

 

俺ら二人は、酒寄さんが何故そんなに張りつめて生活しているのかの理由を知らない。

 

かぐやちゃんには語っていないだろうし、俺が知っているのは世間話でポロリしてた情報を推測で肉付けした曖昧なものだ。

 

彼女の行動、ひいては生き方にまで直結するような...いわばオリジンのようなもの。

 

正直そういう性格なのかなとは思ったし実際その面もあると思うが、それ以上に大きい理由があるだろう。

 

かぐやちゃんは続けて言う。

 

私が無理を言っているからそのせいなのかと。

 

終いには、瞳から大粒の涙を流し始めては、死んじゃ嫌だと叫びだす始末。

 

あぁ~泣かないの泣かないの...かぐやちゃんのせいじゃないから。

 

仮にとはいえ保護者の立ち位置にいる俺がブレーキ踏まなかったのが悪いんだと言いつつ、そばに来たかぐやちゃんを胸に抱き寄せて頭を撫でる。

 

竹取物語を初めて聞かされた時にあやしてもらったのが癖になっているのか、かぐやちゃんはそれ以降何かにつけては俺に頭を撫でてもらおうとしてくる。

 

正直体が酒寄さんと同じくらいデカくなったあたりでやめてほしかったのだが、微塵もその気配がないので諦めた。

 

諦めが肝心なのよね、世の中って。

 

ていうか待て俺のワイシャツで涙拭くな鼻かむなバカタレ。

 

ポケットティッシュを取り出して、かぐやちゃんの鼻水を拭ってあげる。

 

あやされた様子に毒気を抜かれたのか、かぐやちゃんの叫びを聞いて死ぬなんて大げさだと返す酒寄さん。

 

それを聞いて、フラッシュバックする前世の光景。

 

 

 

 

 

 

死ぬよ?

 

 

 

 

 

 

死ぬよ、人はすごく簡単に。

 

 

 

 

 

 

昨日まで喋ってたのに、何も応えてくれなくなるし。

 

 

 

 

 

 

体は冷たくなって、どこを見てるのかもわからなくなる。

 

 

 

 

 

 

今も鮮明に思い出せる記憶の中で、横たわる姉の姿。

 

予感はしていながら、実際はそんなこと起こるわけがないって心のどこかで甘いこと考えていた。

 

両の腕にリアルに蘇る、姉の体を触った時の冷たく硬い感触。

 

確かにあったはずのぬくもりがなくなったそれは、まるで別の物質で作られた人形のようだった。

 

確かに姉の瞳に反射して映っている筈の俺を、認識していないかのような暗く虚ろな瞳。

 

あれから結構時間は立ったが、正直今でも思い出す度に体が強張る。

 

いつの間にか、かぐやちゃんの頭をなでるのを止めていた自身の手のひらを見つめると、じっとりと汗がにじんでいた。

 

それと同時に、やけに静まり返った今の状況に気づく。

 

...あ、あれ?もしかして...声に出てた...?

 

戸惑いながら声に出てたと肯定するかぐやちゃんと、申し訳なさそうに謝罪してくる酒寄さん。

 

だぁぁぁ!!!ごめんごめん!苦言を呈したかった訳じゃ全然ないんだ!

 

その~...口に出すつもりとかなくて、圧かけるとかもこれっぽっちも...。

 

いやそうだよね大人の男にキツイ言い方されると怖いよねぇごめんねぇ...。

 

わたわたと手を振りながら悪意がないことをアピールする。

 

期せずして圧みたいなのが出てしまったのだろうか、酒寄さんも普段ならすいませんって謝るだろうにごめんなさいの方が出てきてたし。

 

とにもかくにも本題は死生観的なのじゃなくて酒寄さんのオリジンの方だ。

 

話題を元に戻すように話を続ける。

 

無理を重ねていなくなった奴が身近にいたからさ~...なんか思い出しちゃって。

 

そうならないように気を付けてほしいなって話!

 

ごめんな、変な空気出しちゃって!

 

んで本題は、酒寄さんが何故こんなに頑張っているかの理由だっけ。

 

差し支えなければかぐやちゃんに教えてあげてくれないかい?

 

俺は、酒寄さんがかぐやちゃんを責めるとは思っていないし、かぐやちゃんも自分のせいじゃないって納得したいだろうから。

 

デリケートな話になるだろうから、どこまで話すかは一任するし...。

 

俺も聞いておきたいところではあるけど、話しづらいなら席外すからさ。

 

だから...と続けようとしたとき、クールビスなんてない我が社のせいでくそ暑い中に着ていた長袖ワイシャツの袖が引かれた。

 

袖を引いていたのは酒寄さんだった。

 

 

 

「斎藤さんにも...聞いてほしいです...。」

 

 

 

消え入るような声でつぶやく酒寄さん。

 

自分の根源を見つめなおし思い出すかのように、ポツリポツリと話し始めた。

 

 

 


 

 

 

病人の酒寄さんを挟むように、右にかぐやちゃん左に俺と三人仲良く並びなおして、酒寄さんの話に耳を傾けた。

 

語られた内容は結構ハードなものだった。

 

幸せだった幼少期の話。

 

死んでしまったお父さんの話。

 

それをきっかけに変わってしまった母の話。

 

出て行ってしまった兄の話。

 

結局自分も反りが合わずに単身上京してきた話。

 

今までぼんやりとしていた頭の中の酒寄さんの情報が真実味を帯びていき、イメージ像に肉が付き具体的な形になっていく。

 

反りが合わないと言って家を出てきたのは、数ある理由の内の一つでしかないのだろう。

 

その本質的な理由に一番近いのは、おそらく母と対等になって向き合うため。

 

酒寄さんの母は聞いていた通りの超人だったらしく、まともに風邪を引いてるところは見たことないとか。

 

それどころか、親なし状態で四弟妹養っただの、養いながら京大現役合格しただの、今は敏腕弁護士だの、出てくるわ出てくるわ超人エピソードの数々。

 

か、怪物か?...いや疑問符いらねぇな怪物だわ。

 

...ていうかあんまり触れたくないんだけどさ。

 

二人の妹育てるために、文字通り身を粉...というか遺灰?にして頑張ってた俺と姉さんの立つ瀬が...。

 

もしかして:犬死 ←

 

う、うごごごご...所詮俺等姉弟は才の無い凡人なのだ...。

 

草葉の陰で姉さんがこの話を聞いていようものなら大号泣していただろう...なんなら俺も一緒に泣く。

 

今度からヤチヨさんじゃなくて月見様と呼ぼう、畏怖を込めて。

 

ま、まぁそんな完璧人間の酒寄母と向き合うためには、同じくらいの功績や力が必要と考えた酒寄さん。

 

当時の母ならこれくらいはできて当然だよねといった感じで、自分を追い詰めながら母親が歩いていた道をなぞっていたらしい。

 

簡単に言うがそんな事他の人はやってないのでは?と問うかぐやちゃんに、母はその程度平気でやっていたと返していた。

 

そうして独り立ちした後、初めてこの部屋で目を覚ました時のことを語る酒寄さん。

 

曰く、ラッキーと思ったとか。

 

…なんだろう、人間強度?みたいなところが圧倒的に違う気がするな。

 

母と衝突しなくて良くなった事とか新生活への期待感とか、色々混ざって清々しい朝になったんだろうけど…。

 

幸運と思えるそのメンタリティは、まぁ常人離れしているとは思うよ。

 

流石に月出身のかぐやちゃんでも、これはちょっと一般から外れていると気づいたらしい。

 

宇宙人調べでも流石に激ヤバでおかしいと自分の体を揺らし始めた。

 

それを聞いて、ぬいぐるみを抱く手に力が入る酒寄さん。

 

だとしても、酒寄さんにとってお母さんは…なんて思ってたのも束の間。

 

ひでちゃんもおかしいと思うよねと、かぐやちゃんが俺に同意を求めてきた。

 

唐突に振られた質問に答えようと、シンプルに考えを巡らせる。

 

へ?あー…えっと…。

 

…………参ったなこれは。

 

 

 

 

 

 

おかしいかどうか分からない。

 

 

 

 

 

 

いやまぁ、世間一般の物差しで測るのであれば、十分におかしい側ではあると思う。

 

その…はずだ…。

 

でも俺の感性でどうかと問われれば、寄る辺を無くした俺は途端に回答に困ってしまう。

 

この世に生を受けて二十五年。

 

前世と同じくらいの時間を過ごしてきたわけだが、依然として俺の自認は前世の方に寄っている。

 

なので、俺の両親と問われれば口では今世の両親と返せども、頭の中には未だにあの人達がいたままだ。

 

それを踏まえて酒寄母がおかしいかを、俺が考えた場合どうなるか。

 

ネグレクトしてないし…意味なく暴力振るわない…。

 

子供の話を無視しないし…浮気しない…。

 

殺傷沙汰起こさないし…金持って消えない。

 

………。

 

あ、あれ?べ、別に良い親なのでは???

 

悲しいかな、驚くような治安の悪さの中で過ごした幼少期に育まれた価値観は、今もなお健在である。

 

結局うんともすんとも言えず。

 

ぐるぐると回り続ける思考回路に明確な回答は出せずに、意図せずだんまりしてしまった。

 

答えない俺を不思議そうに見るかぐやちゃん

 

その裏で、酒寄さんが消え入りそうな声でかぐやには…と何か言いかけていた。

 

しかし、それに続く言葉は出なかった。

 

自分の名前が呼ばれたことに反応するかぐやちゃんに、なんでもないと返す酒寄さん。

 

何か考えているような雰囲気で酒寄さんの顔を覗いていたが、火にかけていた土鍋が吹きこぼれ始めたので、かぐやちゃんは慌てて火を止めに行った。

 

土鍋の様子を見ているかぐやちゃんの後ろ姿を見ながら、酒寄さんに語りかける。

 

難しいよね、人間関係って。

 

血が繋がってる中だと、余計にこんがらがったりややこしくなったりするし。

 

…俺もさ、両親とは上手くやれなくてさ。

 

いや、仲が悪いってわけじゃないんだけどさ…なんていうか、こう…こっちから線引いちゃったっていうか…。

 

なんか…中古品の世話させちゃって…申し訳ねぇな〜っていうか。

 

…ご、ごめんな!何言ってるか分かんないよな!

 

自分でも何言ってるのか…そんで…どうしたいのか、どうしてほしいのか…それすらも分かんなくて…。

 

多分みんなこうやって、悩んで間違って衝突しながら手探りで進んで、進んだ果ての落とし所を上手く見つけるしかないんだろうな。

 

俺が思うに酒寄さんはきっと、今手探りで進んでる最中なんだと思う。

 

だから、間違ってないよ。

 

お母さんを好きだって思う気持ちも、尊敬する気持ちも。

 

こちらを向く酒寄さんの目が見開かれる。

 

宝石のような翡翠色の瞳に瞬く光が、潤んで揺れているのが横目から見えた。

 

捨てられないよなぁ、わかるよ。

 

どんだけすれ違っても、またやり直せるって、やり直せずとも折り合いくらいはつけれるんじゃないかって。

 

信じちゃうよなぁ…だって、だって家族だから。

 

脳裏をよぎったのは無機質な部屋。

 

汚れたアクリル板一枚挟んで向こう側。

 

面倒な宿題から目を逸らすようなそぶり。

 

俺を産んでくれたあんたは、俺のことをどう思っていたのだろう。

 

その曇りきった瞳に、果たして俺は映っていたのだろうか。

 

俺は少なくともあの場にいた時は、あんたのことを信じたかったよ。

 

なんて柄にもなくおセンチなことを考えていると、酒寄さんが両親の人となりについて聞いてきた。

 

流石に宇宙人調べでも天元突破レベルで激ヤバおかしいであろうあの人達のことを言うわけにはいかないので、今世の両親を対象に話した。

 

海に行く際の車で話してたのは、職業とか住んでるところとかそっち系の話だったし、被りもないだろう。

 

そう思いながら口を開く。

 

両親かぁ…そうだなぁ…。

 

母さんは、明るくてお喋りで、すごく…優しい人だよ。

 

いつどんな時でも俺のことを考えてくれて、沢山の愛情を注いでくれた。

 

父さんは、寡黙だけどすごく真面目で、誠実な…真っ直ぐな人。

 

仕事してる時は頼り甲斐があって格好良くて、お前のことを誇りに思ってるっていつも言ってくれて。

 

身内贔屓抜きにしても良い人達なんだよ、本当に。

 

そう…本当に良い人達…俺には、勿体ない、くらい…良い人で…。

 

そこまで言って、不意に言葉が出てこなくなった。

 

…んあぁ〜!!だぁめだ!なんか今日センチメンタルになりがちだぁ…!

 

変に小っ恥ずかしくなって、手のひらで顔を覆う。

 

なんとか紛らわすために、両頬を抓って引っ張る。

 

 

 

「…私は、斎藤さんに…。」

 

 

 

…ん?なに?

 

頬に集まる熱気を誤魔化していたら、酒寄さんから名前を呼ばれたのでそれに反応する。

 

しかし、その先の言葉が酒寄さんの口から出てくることはなかった。

 

二人の間に沈黙が訪れる。

 

部屋には、かぐやちゃんがおじやと格闘する音だけが響いた。

 

き、きまじぃ〜…!!!

 

この空気から逃げるように、別の話題をわざとらしく提示する。

 

さ、酒寄さんはさ!この先何かしたい事とかある?

 

突拍子もない質問に虚をつかれたのか、困惑した声で返す酒寄さん。

 

そう、したい事…とか、なりたいものとか。

 

例えばさ、このまま一人暮らしで高校卒業したら、お母さんが酒寄さんのこと認めます〜あなたと私は対等で〜すって言い出したとするじゃん?

 

想像できねぇ〜…と口角をひくつかせる酒寄さんに、仮にだよ仮にという補足を加えて話を続ける。

 

そうなった後はどうするんだい?お母さんと同じ弁護士になるのかい?それとも別の職業?

 

そう質問すると、酒寄さんは顎に手を当てて考え始めた。

 

酒寄さんの話を聞いてて、一つ気になったことがあった。

 

母と対等になるために母の足跡を追う酒寄さん。

 

そこに目的は見えても、本人の意思みたいなのがはっきり見えてこなかった。

 

端的に言うと、やりたくてやってるように聞こえなかったのだ。

 

勿論やりたいという気持ちが全く無いわけではないとは思う。

 

けど…な、なんだろ…難しいな…なんか、環境によってそれをやりたいと思わざるを得なくなったというか…。

 

変わってしまった母に心を痛めた結果として、母を理解できるように対等になりたい!みたいな。

 

環境として母が変わってしまったっていうのがあったから、対等になって理解したいって思わざるを得なくなった…ていう感じ。

 

だから、そういう周りの影響抜きにして、酒寄さん自身の欲としてやりたいことはなんなのかなっていうのがふと気になった。

 

あと環境起因のモチベーションって、いざその環境が無くなったりとか、ふと自分の立場を客観視した時に、実に空虚な人生じゃあありゃあせんか?みたいに思いかねないし。

 

そういう意味でも、自分起因のモチベーションでやれることを把握しとくのは大事なのだ。

 

丁度変な空気で困ってたし、このふと湧いてきた疑問を払拭しよ〜と軽い気持ちで投げかけたのだが…。

 

あ、あ〜…酒寄さん?難しく考えなくていいぞ?

 

答えを持ち合わせていないのか、顎に手を当て虚空を見つめたままフリーズしてしまった。

 

心なしか頭から湯気が出ている気がする。

 

も、もっとラフに考えよう!実現性の可否とか無視して…そう!ガキンチョが書く将来の夢みたいなレベルでいいからさ!

 

そう言われた酒寄さんは、将来の夢と呟きながら再度考える構えに入った。

 

…。

 

……。

 

………。

 

驚くほどに出てこないねぇ!!?

 

横にいる酒寄さんは、ショウライ…ユメ…ショウライ…という片言を壊れた機械のように繰り返していた。

 

三秒に一回のペースで眉間に皺よってくの面白いからやめてほしい。

 

とにかく、発熱している病人の脳みそに負荷をかけるのは良くないと思い至ったので、思考を止めるように呼びかける。

 

い、いや無いなら無いでいいんだ。

 

君は高校二年生、大人になるまでまだ幾分かの時間はある。

 

ゆっくり自分を見つめ直して、いつかちゃんと答えを出せるようになれば、それでいいから。

 

そう言って酒寄さんに微笑みかける。

 

思考するのはやめたみたいだが、それでも何か引っかかることがあるのか。

 

少し浮かない表情を浮かべていた。

 

もうちょい自分の欲に素直になってみてもいいと思うんだけどねぇ〜…。

 

この分だと、答えが出るのは当分先になるかな。

 

なまじ能力が高いし頭も回るから、変に夢見がちな目標とかは自分でストップかけちゃいそうだし。

 

けど大体のことは出来るから選択肢も無駄に広くなって一つに絞りにくい。

 

何でもできて何にもできないってことあるんだねぇ…。

 

まぁなんにせよ、酒寄さんが本気でやりたいことが見つけられると、俺も嬉しい。

 

いつか、私やりたいこと見つけましたこれやりますっ!て酒寄さんが胸張って報告してきてくれたらなぁ〜…。

 

そんな事を心の底から願うのであった。

 

…というか薄らと頭をよぎった可能性が一つあるんだけどさ。

 

ワンチャン、母を追ってライバーになったりとかすんのかね。

 

ノックしてコンコ〜ンとコンにちは!狐系ライバーの色ぴコン子で〜すみたいな…。

 

二秒で考えた寿命半年くらいの売れなさそうなライバーは頭から消して、シンプルに酒寄さんに質問してみた。

 

ちなみに、いろPとして独立してライバー活動するみたいなのは?

 

…あ、無いんだ。

 

え、そんな秀でた才能がないから見栄えしない?

 

お、お前それ…本気で言ってるのか…?

 

え怖、普通に怖、自分の才覚を理解していないマ?

 

SNSでエゴサしたら、隠れファンとか好きだ〜みたいな呟きそこそこ見つかるのに?

 

ほら、「KASSEN強くてかっこいい」とか。

 

「オリ曲のクオリティ高すぎ!いろPすごい!」とか。

 

おう照れんなってもっと聞かせてやんよ遠慮すんな。

 

ほぅ…「声が可愛い」とな。

 

「動きの節々に初々しさがみて取れて大変良き」だとよ。

 

「いろPが可愛すぎて幾千の夜も超えてしまったのです〜よよよ〜」なんてツイートもある。

 

他にもほらいっぱいツイートされいぃぃぃたたた鼻を摘むなもげるぅ!!!

 

どうやら揶揄いすぎたようで、万力と錯覚するくらいの指圧で酒寄さんに鼻を摘まれた。

 

えこれ鼻消えてねぇよな?

 

おそらく真っ赤になっているであろう鼻をさすっていると、おじやが出来上がったのだろう、料理を持ったかぐやちゃんがこっちに来た。

 

お盆に乗せられた料理から立ち上る湯気が、負傷していた鼻先を掠める。

 

鰹節や薬味のいい匂いが鼻腔を突き抜け、自然と涎が垂れそうになった。

 

メニューはネギ味噌生姜の卵おじやに味噌汁だそうだ。

 

二倍速にでもなったようなかぐやちゃん渾身の解説を聞き終わり、ようやく酒寄さんが味噌汁の入ったお椀を手に取る。

 

冷まし忘れたのか、そのまま口をつけては熱さで一度口を離す。

 

再度口をつけて少し啜り、ホッと一息吐いた。

 

お椀を置き、今度はおじやが入った器を手に持ってスプーンで掬った。

 

今度はちゃんとふー、ふーと息で冷ました後に、口に運んで咀嚼する。

 

飲み込み終えた酒寄さんの口からは、超うまいという花丸満点の評価が溢れてきた。

 

それを聞いたかぐやちゃんは、でっしょぉぉぉぉぉぉう?と病人に見せるにはくどすぎるドヤ顔と謎ポーズを取るのだった。

 

 

 

 

 

 

特に手伝ってないが、なんとなく俺も同じ表情とポーズを取ってかぐやちゃんの隣に並んでみた。

 

空いてた口に激熱のおじやをぶち込まれた。

 

あ"っっっ…ふぉ…は"っはっはふ"っは…お"…お"あ"あ"あ!!!お"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 

死ぬかと思った。

 

みんなも火傷には気をつけようね。

 

 

 

 







意識が無くなった時点で119呼ばない理由はないそうなので、みんなはちゃんと119に通報しましょう。

主人公は両親のことを親として見れていません。前世に引っ張られすぎて自認が大人の為、めちゃくちゃ世話になったし迷惑かけたのに凄く愛してくれる人達として見てます。愛情に愛情で返せないことを申し訳ないと思ってます。

前世での主人公は刑務所に収監された母親と2度面会しています。1回目は姉が亡くなった後直ぐで、2回目は妹の発言でメンブレした後。母親は2度の面会両方で一言も喋る事はありませんでした。

酒寄さんは何を言いかけたんでしょうか…それを聞くには好感度が足らんかったぁ〜…。

・今世のお父さん
生真面目で誠実、責任感強めでちょっとお喋り苦手。
自身で経営している鉄工所の社長(従業員は妻を含めて7人程度)。
鉄工所の経営が一時期傾いてしまい頭を抱えていた所に、息子から今まで拒否していた天才児メインの家族特番の密着取材を受けようと言われる。従業員の給料を滞納するか息子を見せ物にするかを天秤にかけた結果、生来の責任感の強さが顔を出して息子を見せ物にする方に舵を切った。この時の最終判断を今でも悔いている。
この特番が大ブームになった影響によりギャラが増え仕事も増えた事で経営状況が問題ないくらいまで回復したが、そんな折に息子が学校帰りにストレス性の発熱で一時意識不明になる事態に。倒れたところや搬送されるところを取れ高と称し嬉々としてカメラを向けてくる大人達を見て、自分が社長として間違ってはいなかったが一家の大黒柱としては致命的な赤点を叩き出してしまった事を悟った。
それ以降は取材は全拒否、意気消沈しながら仕事をする日々だったが、参観日に尊敬する人というテーマの作文で息子が「経営が傾いても腐らず折れず、社長として誠実に社員や顧客の前に立って働き続けた父を尊敬している」と発表しているのを聞き、声は何とか殺せたが人目を憚ることもできずに号泣した。(主人公は父親に向けての尊敬という概念をうまく理解できなかった為、一社会人に向けての尊敬という意味で作文を書いた。)
18で親元離れて上京した息子とお酒が飲むのが直近の夢で、最近はワインセラーを購入して息子と飲むための美味しいワインを用意し始めている。


・今世のお母さん
元グラビアアイドルでお喋りと家族大好きウーマン。
両親は物心つく前に離婚し父親の元で育てられる。
最初はお利口で手が掛からないと思っていたが、余りにも我儘言わずに大人びていたので、母がいない自分の愛し方や子供の育て方に疑問を持ち始める。
我欲の薄い息子に対して色々な事に興味を持って欲しいと自身が子供自体にやりたくてもやれなかった複数の習い事を善意で勧めてみるが、全てに楽しんでる様子が無かった為に、自身の価値観を押し付けて子供をラジコンしたいという本性が自分にあったのではないかとドカ曇りした。(なお主人公は、親ってこういう感じなのかな〜という未知への困惑が表に出てただけで、習い事自体は割と楽しんでやってた。)
今までの件や取材中に息子がストレスで倒れた件から、自身は母親失格だとガチ凹みしていた所に、初めて貰ったお小遣いを母の日のプレゼントに全ツッパした息子からバレッタをプレゼントされ、今後は何度間違え傷つけ嫌われてしまったとしても生涯息子を愛し続けると心に決めた。嬉しさのあまり号泣して終いには過呼吸一歩手前までいった。バレッタは今でも大切に保管している。(主人公がプレゼントを買った理由は単純にお小遣いの使い道が無かったから。)
上京してから一回も帰省していない息子に、月に一回のペースで、帰省してよ〜と電話をしている。
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