え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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14. 荷造りから引越し完了まで

 

 

 

ツクヨミ中に熱狂の嵐を巻き起こした、令和の竹取合戦から数日。

 

目覚ましい活躍を残したかぐやちゃんと酒寄さんはいつもの日常から一変、かなり忙しい日常へと身を投じている。

 

ヤチヨカップの優勝によって、二人はツクヨミ内で一躍有名人になった。

 

それによって増えたファンへの対応、注目度の上昇による言動の制限、鰻登りに増えていく案件やコラボの依頼。

 

やるべき事の多さに随分と目を回していた。

 

…まぁ、かぐやちゃんはほぼほぼいつも通りで、酒寄さんがひたすら対応に追われてた感じだったけど。

 

プロデューサーなんだからそれはしょうがないよね、頑張って。

 

さらにかぐやちゃんの人気の影響か、兄として顔を出していた俺の方にも、数は多くないがちょくちょくコラボ等のお声がかかったりしていた。

 

俺はライバーではないので、申し訳ないし心苦しいがそれらの依頼は全て丁重に断らせていただいている。

 

それらの依頼の大半は、日本ツクヨミ格闘武器学会(粘着ストーカー共)からの熱烈なラブコールだったが。

 

ふざけんな、ラブコールされるなら綺麗なお姉さんとかの方が良かったわ。

 

ちなみに、ラブコールの間に綺麗なお姉さんらしきアカウントからきてたDMがあり、そのメッセージ内のえっち♡な写真と書かれたリンクを踏んだ結果クレジットカードを不正利用されたという事実は墓まで持っていこうと思う。

 

俺の…俺の純情を弄んでっ…こんなっ…許せねぇ!!!

 

非モテを狩る為の悪辣かつ狡猾な出口に怨嗟の念を燃やしていたそんなある日。

 

いつものように仕事をこなし、いつものように絡んでくる天体大好きバカ同僚のダル絡みを躱し、いつもの様に帰宅した。

 

ったく…九月半ばの満月の日に月見とか、そんな風情を楽しむ感性が残ってる現代人なんていないっての…しかも二人っきりとか…。

 

そんな事を考えながら自室のドアを開けると、部屋の中にはかぐやちゃんが居た。

 

おかえり〜と返してくれるかぐやちゃんは、どうやら配信をしている訳ではなさそうだった。

 

配信してないなら、なんで俺の部屋に…?

 

かぐやちゃんは配信していない時、基本的に酒寄さんの部屋にいるので、俺の部屋にいてかつ配信していないのは珍しい。

 

不思議に思って本人に聞いてみたが、どうやら別の理由があるらしい。

 

これ聞いてびっくりなんだが、どうやら引越しの為の荷造り中なんだとか。

 

元々引っ越ししたい~みたいな話自体は、二人の中で上がっていたらしい。

 

純粋にものが多くなりすぎて普段の生活に支障が出ている酒寄さん。

 

新しい環境への興味関心が高いかぐやちゃん。

 

二人の利害自体は一致していたようで、なんなら酒寄さんが倒れたあの日も不動産屋で物件を見に行く途中だったそうだ。

 

ただ費用面やら保証人やら、あと当人…主に酒寄さんからの許可の面で折り合いがつかず、結局宙ぶらりんになったままの状態だった。

 

それが、この前の竹取合戦によって諸々の問題が解決したとのこと。

 

実のお兄さんであるアッk…帝さんが保証人になってくれた上に、酒寄さん自身の口からOKが出たらしい。

 

費用面に関しても、かぐやちゃんが大部分を負担する方向で纏まったらしく、であれば止まる理由はない。

 

というわけで、引っ越しに向けてせっせこ準備を進めているらしい。

 

あの折半絶対譲らないウーマンの酒寄さんから大部分の費用負担を勝ち取るとは…かぐやちゃんがやり手なのか、酒寄さんが絆されているのか。

 

というかそんな話、挙がってたことすら知らなかった…いつ引っ越すんだい?

 

特に相談らしい相談がなかったことに若干の寂しさを感じつつ、引っ越しの時期を聞くと来週には業者が来ると返ってきた。

 

来週中…来週までに…この量の荷物の…荷造りを?

 

俺の目に映るのは、所狭しと部屋を埋め尽くすかぐやちゃんの配信グッズの山。

 

配信部屋として日中は貸し出している都合上、配信で使う小物…小物かなぁこのトーテムポールとか…まぁ道具に関しては俺の部屋に置いている。

 

その道具たちの浸食率だが…大雑把に見積もっても六割程度、しかも俺が整理整頓した上でだ。

 

それだけの物量を来週までに全て荷造りするってなると…流石に厳しい。

 

…悪い事は言わないかぐやちゃん、荷造りがてら断捨離もしよう。

 

えぇ~じゃないし全部必要なわけないでしょうが!!!

 

このトーテムポールとか謎の木像とか、いつ何に使うんだ!!!

 

全部持っていくと言って聞かないかぐやちゃんは、両手を広げて道具たちを守るように前に立った。

 

貴様が両の手を目一杯広げて救える物の量なんぞたかが知れているわとにじり寄っていると、部屋の戸が開けられた。

 

戸を開けて入ってきたのは酒寄さんで、どうやらかぐやちゃんの荷造りの様子を見に来たらしい。

 

おぉ酒寄さんちょうどいいところに!かぐやちゃんがこの量の配信道具全部持ってくつもりらしくてな…。

 

断捨離するように説得してほしいというと、酒寄さんもさすがに全て持っていくとは思っていなかったらしい。

 

かぐやちゃんに、いらないものは捨てていけと腰に手を当てながら言った。

 

広い部屋に引っ越すとはいえスペースは有限、自分の部屋が狭くなってもいいのかと続ける酒寄さん。

 

うんうん、酒寄さんの言ってることはごもっともだぞかぐやちゃん。

 

 

 

「部屋に置けなくなったら、またひでちゃんの部屋にどんどん置いていけばよくね?部屋隣だし。」

 

 

 

そうそう、困ったら俺の部屋に置いとけば…う、うん?俺の部屋?

 

 

 

「駄目に決まってるでしょ!共同の生活とはいえプライベートってもんがあるでしょうが!」

 

 

 

さ、酒寄先生!俺のプライベート以上に、当たり前に守られるべき大前提が守られてない気がしていますっ!!!

 

何ですかいきなりといった困惑した表情をしている酒寄さんに確認するように問いかける。

 

え、いや、共同って…あのさ…お、俺も引っ越す…の?

 

 

 

「うん!ひでちゃんの部屋は二階ね!かぐやのお隣!」

 

 

 

えぇ~階段の上り下りしたくないから一階がいい~って違うわっ!!!

 

かぐやちゃんの無邪気さに思わず流されそうになったがノリツッコみで軌道修正した。

 

待て待て待て、何で俺まで引っ越しする流れになってんだ?

 

俺がいつの間にか許可してたのか?

 

だとしたら怖ぇよ、引っ越しの件は今日初耳なんだぞ。

 

何に許可だしたんだよその場合は。

 

それを聞いた酒寄さんは、言うのが遅れたことと相談もせずに引っ越しを決めたことについて謝罪してくれた。

 

あいや、別にそれはいいんだけどさ…「彩葉!ひでちゃんも引っ越してくれるってさ!」そういう意味でいいって言ったんじゃなぁい!!

 

ったく…というか、まず酒寄さんが俺も引っ越す前提だったのが驚きなんだけど…。

 

………。

 

…え待ってその、そういえばそうだったみたいな、今気づきましたみたいな顔するのやめてください?

 

同性としてかぐやちゃんの代わりに、酒寄さんが踏むべきブレーキを踏んでくれないとお兄さん困っちゃうんだが。

 

俺に指摘されて気付いたというのと、ナチュラルに成人男性と同棲しようとしていたという事実に頭を抱えている酒寄さん。

 

あ、良かった…それをヤバいと思えるだけの常識はまだあった…。

 

それを他所になんで一緒に住んでくれないのと、俺の襟首を掴んで揺するかぐやちゃん。

 

あ、駄目だ…こっちはそもそも常識そのものがなかった…。

 

兄妹なんだからいいじゃんと言われてもねぇ…兄妹以外の人間も同棲の範囲にいるじゃないの。

 

というか、心持ちは俺も兄妹だと思ってるけど、社会的な観点で見たら俺も酒寄さんもかぐやちゃんもお互いに友人レベルの関係値だからね?

 

しかも歳離れてるし異性だし…表立って同棲できるまともな理由がないんだよ。

 

そもそも未成年の人は同棲するのには、親の許可が必要だし。

 

こういう体裁とかルールとか守らないと俺が犯罪者になっちまう。

 

俺の言い分を聞いて、正論ばかっり~と口をとがらせて不満をこぼすかぐやちゃん。

 

ふふん、悔しかったら反論してみるんだな…もっとも、社会を味方につけた私に勝てる理由がないがな。

 

ん?自分が日中高頻度で入り浸ったり酒寄さんが部屋に上がり込んで朝まで寝てる時点で、体裁もクソもない?

 

…正論で確反を取るなぁ!!!返せない俺が可哀想でしょうがぁ!!!

 

思ったよりも言い返せない内容で反論してきた為、大声による威嚇と無視をすることで、対話のテーブルに付かないという択を押し通すことに成功、事なきを得た。

 

え?月にはそんなルールなかった?

 

この国に治外法権なんぞ一ミリたりとも存在しないんだよぉ!!!

 

宇宙人だろうと例外なく日本の法令に従ってもらうぜぇ!!!

 

それを聞いて横から一部大使館の関係者はその限りではないのでミリ程度はあると指摘を入れてくる酒寄さん。

 

ツッコミの間違いを指摘しないでくれ、俺の馬鹿さ加減がバレる。

 

とにかくっ!俺は引っ越さないからな!

 

そうと分かればテキパキ荷造りする!この量だと時間かかるだろうからね!

 

そう言って未だにぶーたれるかぐやちゃんを急かすように、荷造りを続けさせる。

 

ていうかどこに引っ越すんだい?ここよか良い場所なのは目に見えてるけど…。

 

質問を投げかけると酒寄さんはスマホを操作して、おそらく引っ越す予定であろう物件の情報を見せてくれた。

 

それは同じ立川にあるタワーマンション…タワーマンション!!?

 

思わずスマホの画面を二度見、いや三度見した挙句に目を擦り、さらには目薬を指して再度画面を見たが表示される物件が変わることはなかった。

 

信じられないのは分かるが目薬さすほどかと問うてくる酒寄さんの言葉も、衝撃のせいで耳に入ってこなかった。

 

タワマン…二階建ての部屋…家賃三十五万…3LDK…?

 

一握りしかいないであろう人生の成功者のみが居住できるような物件に思考回路はショート寸前だった。

 

いやでも冷静に考えてそりゃそうか。

 

かぐやちゃんの稼ぎの詳細額を聞いた訳ではないが、ヤチヨカップ期間中は順位表にプラスして獲得したふじゅ〜も掲載されていた。

 

海に行った時点でのかぐやちゃんの順位は二百八十位だったが、その時ですら社会人の月収平均値を余裕で超えるだけの額だったのだ。

 

黒鬼との死闘にヤチヨカップの優勝という結果までついてきた今を考えると、ぶっちゃけタワマン住めるくらいの稼ぎにはなってそう。

 

でもそうなると気になるのは、酒寄さんがこの物件に住むのを許可したことだ。

 

選んだのはかぐやちゃんだろうけど、酒寄さんならにべもなく断った後に普通寄りな物件提示しそうなのに…。

 

疑問に思って聞いてみると、部屋広いし駅が近いし…とそれらしい理由を並び立てていたが、酒寄さんがわざわざタワマンに住むことを許可する程の大きな理由はその中になかった。

 

ほーん…んで?本当の理由は?

 

そう聞くとギクっと擬音が出ているかのように露骨に体を跳ねさせた後に数秒の沈黙。

 

口を開けば、めっちゃくちゃ小さい声でかぐやが選んだから…と口にした。

 

それ即ち、かぐやちゃんが選んだ物件に住む為に自分の感性で引いてるラインとかその辺諸々を妥協したってことになる訳で。

 

ふふっ…随分とかぐやちゃんに甘くなっちゃったねぇ〜酒寄さん。

 

露骨にニヤニヤしながらそう言う俺が気に食わなかったのか、口を尖らせながらお互い様だと反論してきた。

 

え〜でもぉ〜同棲して欲しいってお願いはぁ〜俺ちゃんと断ったしぃ〜???

 

止まらない煽りと返せない口撃を受けて、酒寄さんはぐぬぬと悔しそうな顔をした。

 

弁護士の卵(暫定)も大したことなかったなガハハ。

 

いやぁ〜しっかし、あのドがつく程のけちんぼな酒寄さんがタワマンに住「倹約家と言ってください?」ごめん言葉が過ぎました私が悪かったので襟首を掴んで持ち上げるのはご勘弁をっ!

 

どうやら煽りが過ぎたらしく、酒寄さんに拳を振り抜かれる寸前まで来てしまった為即座に謝罪した。

 

忘れることなかれ、彼女は頭脳明晰でありながらフィジカルエリートなのだ。

 

天は人に二物を与えずと言うが、おそらく彼女の場合は天から全てを強奪してきたのだろう。

 

襟首を正しながらアンガーマネジメントを知っているか問うと、我流ですがそれなりにと言いながら何かを殴るように腕を動かしていた。

 

その動きだと解き放ってるじゃねぇか、管理しろよ。

 

あんたの流派イかれてるぜなんて与太話をしていると、痺れを切らしたかぐやちゃんが手伝えと声を挙げた。

 

はいはい今行きますよ〜と、怒れる酒寄さんから逃げるようにかぐやちゃんの元へと向かう。

 

その後はいい時間になるまで三人であーだこーだ言いながら断捨離兼荷造りを進めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

ちなみにその晩は酒寄さんが俺の部屋に寝にきた。

 

寝納めに来てんじゃないよあんた。

 

結局許可したけどさ。

 

 

 


 

 

 

こうして来週の中頃にする引越しの為に荷造りを進めていた俺達なのだが。

 

まぁなんと恐ろしい位に進まんときた。

 

その原因は当たり前の如くアホみたい量のかぐやちゃんの私物である。

 

断捨離も兼ねてる今回の荷造りにおいて、捨てるか持ってくかの判断は、当たり前だがかぐやちゃんがしなければならない。

 

その判断をするかぐやちゃんが、まぁ面倒くさがって荷造りに積極的に参加してくれないのだ。

 

もう隙あらばサボろうとしてる。

 

目を離したら俺の部屋の漫画やらゲームやらをしようとするし。

 

ちゃんとやってるって思ったら、スマコンつけて動画見てて手が動いてないとかもあった。

 

あと十分おきにトイレ行って二十分出てこないとか。

 

挙げ句の果てに密林でなんか買い足し始める始末。

 

かぐやちゃん正気か???

 

ちなみに買ってたのは跳び箱三段分。

 

なんで???

 

酒寄さんにも手伝ってもらっているが、それでも進みが遅いことには変わらず。

 

このスピード感だと荷造りが終わるのは、業者が来る当日の水曜までかかる見込みだ。

 

流石にそれはまずいということで、前日の火曜日と万が一荷造りが終わらなかったときの為に水曜日の二日分有給を取ることにした。

 

最悪荷造りしきれなかった分は、俺が箱詰めした後レンタカーでお届けする計画だ。

 

酒寄さんが倒れた日の面談の時に、有給消化してくれないと困ると課長には言われていたので丁度よかったと言えばよかったのだろう。

 

いや普通に休みたかったけどもね!?

 

そんな訳で一応有給は取ったものの、見込み的にはギリギリの為少しでも進めようとしている本日は日曜日。

 

前よりかは幾分荷造りが進んだ部屋で、俺とかぐやちゃんは昼ごはんを食べた後の休憩を取っていた。

 

食べたのはしめじとツナ缶の和風パスタ。

 

かぐやちゃんと初めてお留守番をした時と同じ献立の為、少しあの時のことを思い出した。

 

あれからもう一ヶ月か…………マイナス十二万…うっ胃が…。

 

物を食べたばかりのお腹によろしくなかったため、思い出すのを直ぐにやめた。

 

ちなみにお昼のリクエストはかぐやちゃん。

 

なんかこのパスタ気に入ったらしい。

 

いや…別に作るのは良いんだけどさ、たまにはかぐやちゃんの料理も食べてみたいなぁ〜なんて。

 

そう言ってみたが、それよりも俺の料理が食べたいという圧の方が強かった。

 

彩葉は作ってあげたい〜って感じだけど、ひでちゃんは作ってもらいたい〜って感じ!なんだとか。

 

ほへ〜…そんなもんなんかねぇ…。

 

熱量注げる誰かが居ればそう感じるようになれるのか〜なんて思いながら、食後の麦茶をごくごくと体に注ぎ込む。

 

丁度飲み終わったあたりで、バイトから帰宅した酒寄さんが俺の部屋にやってきた。

 

どうやらお昼は賄いを食べてきたということなので、そのまま三人揃ってまた断捨離兼荷造りを進めていく。

 

こけしにお手玉にコマ…なんたってこんな年代物の小物が…ってぇ!!タンバリン叩いてご機嫌に歌ってないで手を動かさんかい!!

 

進めていく。

 

この壺どうすっべ…酒寄さーん、梱包材ってまだ余ってたり…プチプチ潰して遊ぶなかぐやちゃん!!!使うんだぞそれぇ!!!

 

進めて…。

 

これは…竹馬…?なんで?ていうかこれ本当に竹で作ってんのか…分解できるかな…嘘持ってくの?…これを!?

 

進め…。

 

よいしょっ…んぁ?これ、いつぞやのペットボトルロケットか…これも解体して…ぶっ放していいわけねぇだろぉ!!!

 

………。

 

ん?なんだこれ?食用って書いてるな…黒豆…っっっ!!?!?ゴキっ…!?!?!?かぐやちゃんっ!!!こんなもん残すなぁ!!!捨てとけちゃんとぉ!!!

 

進まぁんっっっ!!!

 

かぐやちゃんの私物が一癖も二癖もありすぎて、中々作業が進まない。

 

かぐやちゃん自身も、サボりはちょくちょくすれど妨害している訳ではないのだが、それでも進捗は芳しくなかった。

 

…いや梱包材潰してるし妨害してるか。

 

しかし今日は日曜日。

 

明日は有給を取っていないから手伝える時間が少ない為、できるだけ今日でやってしまいたい気持ちがある。

 

火曜日もフルで手伝いできるのだが、そこまでには終わりの目処をつけれる位にしておきたい。

 

と、とりあえず前に進もう。

 

前に進んでればいつか必ず終わりが見えてくる。

 

そう思いながら空元気を振り絞って、私物の山に再度アタックを仕掛けていく。

 

途中、かぐやちゃんが荷造中の段ボールの中に俺の私物まで入れ出したが、目ざとくこれを阻止。

 

ブーイングされたが知ったことではない。

 

今は一分一秒が惜しいので心を鬼にして対応する。

 

慕ってくれるのは嬉しいんだが、何度言っても俺は引越ししないからな。

 

依然としてスタンス変わらず、一緒に引っ越そうよ〜と俺の背中にしなだれかかってくるかぐやちゃんを適当にあしらいながら手を動かす。

 

誰にもね、荷造りの修羅とかした俺を止められないのだよ。

 

その努力の甲斐あってか、日が沈みきった頃には何とか終わりの目処がつく位には荷造りを進めることができた。

 

んあ〜…これで、何とかなりそうなくらいにはなったな…。

 

体を伸ばすと背骨あたりからポキっと小君のいい音が聞こえた。

 

休憩がてら、冷蔵庫からコーラを三つ取り出す。

 

お疲れ様と労ってくるかぐやちゃんに、缶を一つ渡した。

 

受け取るや否や直ぐに開けて飲み始めるかぐやちゃんを尻目に、俺は片方の缶を机に置いて床にあった段ボールを持ち上げる。

 

その中に入っているのは、酒寄さんの私物だった。

 

荷造り中に発覚したことなのだが、かぐやちゃんは自分の私物だけじゃなくて酒寄さんの私物も俺の部屋に置きっぱなしにしていたらしい。

 

こいつらを勝手に断捨離する訳にいかないので、別の段ボールにまとめていた。

 

かぐやちゃんに一声かけてから、隣で自分の分の荷造りをしているであろう酒寄さんの元へ、段ボールと缶を持って向かう。

 

酒寄さんの部屋は依然見た時よりも随分とスッキリしていた。

 

荷造り自体もほぼほぼ終わったのか、小物は殆ど片付けられていた。

 

見違えたな〜なんて思いながら部屋に上がると、酒寄さんが何かを手に持ったまま動かないでいた。

 

酒寄さ〜ん、俺の部屋にあった私物持って…ん?写真立て?

 

どうしたのかと思いつつ声をかけると、どうやら酒寄さんが手に持っていたのは写真立てだった。

 

海の生き物を模した装飾が幾つか散りばめられているその写真立てには、ヤチヨさんの装飾も混じっていた。

 

中に入っている写真は俺にも見覚えがあるもので。

 

お、海に行った時の写真…全員集まったやつ、酒寄さんが持ってたんだ。

 

そう言うとえぇ…まぁ…と呆れ混じりに少し微笑みながら返してくる酒寄さん。

 

皆んなが良い顔で笑ってるので結構気に入っているらしい。

 

どっかの誰かさんが端っこギリギリにいるのだけ気になりますが、なんてことも言ってきたがそれに関してはダ、ダレノコトナンダーと言って誤魔化しておく。

 

ていうかなんか意外だな…前から思ってたけどヤチヨさんのグッズを本来の用途で使ってるの。

 

勝手な偏見だけど、観賞用みたいな感じで使わないで未開封のままにしとくタイプだとばかり…。

 

使えるものは使うタイプなのでと苦笑いで返してくる酒寄さん。

 

折角撮ってもらった写真を野晒しにしとく訳にもいかないと続けて言った。

 

写真を見つめながらそう言う酒寄さんは、随分と柔らかい微笑みを浮かべていた。

 

…前まではヤチヨさんのサイン入りブロマイド入れてたのをわざわざ抜いて、海に行った写真を入れてることに俺は気づいているんだが…突っつかなくていいか。

 

荷造りする手を止めて写真を見続ける酒寄さんを見て、揶揄ってやろうとした気持ちは鳴りを潜め自然と微笑みが浮かんできた。

 

酒寄さんのヤチヨさんに対する熱量の凄さは、関係を持ったここ一ヶ月で骨身に染みるくらい伝わった。

 

まぁ伝わったというか強引に解らされたというか…。

 

隙間時間見つけてヤチヨについての講習会開催するの…ちょっと控えません?

 

いや別に嫌ではないんだけど一回が長いし濃いんだよ。

 

二時間近くひたすら熱弁されるこっちの身にもなってくれ。

 

そんだけの熱量を持っていた酒寄さんが、自身の推しのサイン入りブロマイドじゃなくて友人達との写真を優先している辺り、酒寄さんにとっても大事な思い出になってるらしい。

 

そういう思い出がないと、社会人になってから過去を振り返るのがひたすら辛くなっちゃうからねぇ…。

 

人生二回やって二回とも辛くなってる俺が言うんだから間違いない。

 

…何で二回やって二回とも失敗してるんですかね?

 

俺の部屋にあった酒寄さんの私物ここに置いとくよと声をかけながら、持っていた段ボールを下ろす。

 

そういえば、ライブの練習の方はどう?上手くいってるかい?

 

気になっていたことを世間話がてら質問してみると、酒寄さんは痛いところを突かれたように苦い顔をこちらに向けた。

 

ヤチヨカップを優勝したかぐやちゃんには、ヤチヨさんとのコラボライブの権利が贈呈された。

 

そしてかぐやちゃんには権利を使わないと言う選択肢はない。

 

そうなると、かぐやちゃんのプロデューサーとして表舞台に結構出てきていた酒寄さんも、必然的にライブに参加することになる。

 

何よりかぐやちゃんの初ソロライブの時も、一緒にステージに上がって演奏してたし。

 

ヤチヨカップによって名実共にトップライバーの内の一組となった二人とヤチヨさんとのコラボライブに、ツクヨミでは既に楽しみと言った声や期待感が溢れていた。

 

感性が依然として一般人よりの酒寄さんは、それを受けてプレッシャーを感じてもおかしくはない。

 

そう考えていたが、表情を見る限りそれは正解のようだ。

 

音は頭に入っているが失敗しないかが不安と、げんなりした顔でそう答える酒寄さん。

 

今回のライブでの酒寄さんは、歌を歌うのではなく伴奏を担当するらしい。

 

かぐやちゃんは最後まで一緒に歌いたいとゴネていたが、流石にそこは譲らなかったみたいだ。

 

曲の譜面自体は覚えれたので、本番でのミスとかが怖いって感じかね。

 

そんな不安がることないと思うけどねぇ〜…。

 

酒寄さんの超人具合を考えると、本番ミスるとかそんな光景は正直思い浮かばない。

 

案ずるより産むが易しだよ〜と返す俺に、他人事だからってぇ…と文句ありげな表情をする酒寄さん。

 

あまつさえ、私がミスったらどうするんですかなんて言ってきた。

 

いやどうもしないっていうか、どないせっちゅうねん…。

 

聞き返されると思ってなかったのか具体例を挙げられずに、拗ねたような雰囲気で助けてくれないんですかと、酒寄さんは口を尖らせた。

 

そんな無茶言わんといてくれ?

 

かぐやちゃんの兄で通しているが、今回のライブに関しては本当に無関係な俺には特にできることはない。

 

一応席自体は奇跡的に取ることできたけども。

 

どう助けろって言うのさと呆れ半分笑い半分で俺は返す。

 

え?俺がステージに乱入してダイナマイトばら撒きながらソーラン節踊ってミスを有耶無耶にする?

 

毒を以て毒を制するみたいな思考回路やめません…?

 

思わず口から無理に決まってんだろと溢したのを聞いて、盆踊りとかでも全然大丈夫ですけど…と言い出す酒寄さん。

 

違います、ソーラン節が無理って話じゃないんです。

 

そう言いながら頓珍漢な救出方法を提案する酒寄さんに、手に持っていたコーラの缶を手渡す。

 

まぁ…心配いらないよ、きっと大丈夫だから。

 

そう言う俺に、何を呑気なことをと言うかのように眉をひそめる酒寄さん。

 

当人は、気づいていないかもしれない。

 

かぐやちゃんの初ソロライブのとき。

 

心配しすぎだって…ミスするかも〜なんて、考える暇もないくらい凄く楽しいライブになるよ。

 

酒寄さんが着ぐるみ越しでも分かるくらい楽しそうに演奏していたことを。

 

それは、観客席から見ていた俺だから気づけたことなのかもしれない。

 

演奏するのに必死で、自分の気持ちにまで目を向けることができていなかったのかもしれない。

 

でも、今回はちゃんと酒寄さん自身が楽しいって思える。

 

そんなライブになると、根拠のない自信が湧いてきて止まらないのだ。

 

適当に言ってないかと問いながらコーラの缶を開ける酒寄さんに、そんなことはないと答える。

 

まぁ練習したりないっていうなら、観客役くらいならいくらでも付き合うからさ、いつでも連絡してよ。

 

そう言いながら出口の方に向かい、部屋のドアに手をかける。

 

ライブする箱はデカくなっているが、隣にいるのは前回のライブと同じかぐやちゃんだ。

 

てか何ならお母さんもいるし。

 

多少のミス程度は彼女達、特にライブに関しては経験豊富なヤチヨさんがアドリブでどうにかしてくれるだろう。

 

んじゃ、頑張ってねぇ〜。

 

そう言って手を振りながら、酒寄さんの部屋を後にする。

 

このライブが酒寄さんにとってのマイナスになることは、度し難いレベルの不審者が乱入するとかがない限りまぁほぼないだろう。

 

熱量注いでる推しと今や生活の一部といってもいいくらい懐に入り込んできた娘とのライブ。

 

良い思い出になるだろうし、酒寄さんに限って必要とは思えないが所謂学チカにもなりえる規模のイベントだ。

 

是非とも成功させてほしいねぇ〜なんて思いながら自室へと戻っていくのだった。

 

…と思ったが、イタズラ心が芽生えた為自室へ向かう足を止めて再度酒寄さんの部屋へ。

 

戸を開けて顔だけ覗かせると、それに気づいた酒寄さんと目が合う。

 

酒寄さんが出るライブチケットなんだけどさ、倍率が50倍をゆうに越えてたよ!

 

め〜ちゃくちゃ期待されてるね!

 

これはツクヨミの歴史に残る、とんでもないライブになるぞぉ〜!!!あぁ〜たのしみだなぁ!!!

 

それプレッシャーになるんですけど!!!と叫んでくる酒寄さんに、プレッシャーがあるからこそ成功の喜びがより際立つのさと吐き捨てて、駆け足で自室へと戻っていく。

 

最高の興奮を味わう為に、是非とも頑張ってくれたまえ!!!酒寄君!!!

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ったら、かぐやちゃんが俺の分のコーラを飲みながら、俺の私物をこっそり段ボールに詰めていた。

 

この娘はこの娘で緊張感のかけらもねぇなおい。

 

無論段ボールに詰められた私物は元の場所に戻した。

 

 

 


 

 

 

日曜日の奮闘の甲斐あってか、火曜日もそれまで根を詰めずに作業することができた。

 

そして、いよいよ引っ越し当日の水曜日。

 

万が一の計画として用意していたレンタカーでの輸送計画を発動する必要はなく。

 

全ての荷造りを無事終えることができた為、引っ越し業者に全てを任せるべくひたすら邪魔にならない位置で立ち合いをしていた。

 

退屈すぎるが故かあちこちに動き出すかぐやちゃんの手を酒寄さんに握らせながら、業者の作業が終わるのを待った。

 

それでも退屈極めているのか酒寄さんの手を使って遊び始めるかぐやちゃんに、先に新居の方に行って待ってもらうようにお願いした。

 

本来は酒寄さんが行く予定だったのだが、今にも退屈で爆発しそうなかぐやちゃんの様子を見て急遽役割を変更する羽目になった。

 

その後、荷造りしていた荷物、冷蔵庫、洗濯機を運び出し終えた業者がこちらに挨拶をしてくる。

 

どうやら十五分程度で新居の方に着くらしい。

 

新居の方にかぐやちゃんがいることを伝えられた後、業者はトラックに乗って新居の方に向かって行った。

 

残された俺たちは、最後にお互いの部屋を見て忘れ物が無いかを確認する。

 

特に忘れ物らしいものがないことを確認しつつ、随分と寂しくなった部屋を見渡す。

 

この部屋…こんな広かったっけか。

 

かぐやちゃんの私物が多くを埋め尽くす状況がほぼデフォルトだった為、自分の部屋がいつもより広くなった錯覚に陥る。

 

不思議と部屋が広くなったのに、嬉しさは湧いてこなかった。

 

一抹の寂しさを覚えながら部屋を出ようとすると、丁度酒寄さんが俺の部屋に入ってきた。

 

どうやら向こうも忘れ物の確認が終わったらしい。

 

こちらも特にそれらしいものがなかったことを伝える。

 

しっかし、タワーマンションかぁ…一回住んでみたいもんだねぇ…。

 

そんな憧れるようなものですかと聞いてくる酒寄さんに、そりゃそうだと当たり前のように返す。

 

タワーマンション、それは成功者の証であり成功者にのみ住むことが許された聖域(サンクチュアリ)

 

そんな聖域(サンクチュアリ)に属する、聖闘士になりたいだけの人生ではあった。

 

少年は皆、心に小宇宙を宿しているものさ…。

 

遠くを見ながらそう言う俺に、何ですか小宇宙って…と聞き覚えのない単語に首を傾ける酒寄さん。

 

おっと…こっちの世界に車田先生はいらっしゃらないのか。

 

と言うか居ないという事にしておきます。

 

古すぎて知らないとか言われたら、俺の心にひびが入ってしまうので。

 

知らず知らずのうちに自分が知っている作品が昔のもの扱いされる現実に心を痛めていると、酒寄さんがもじもじしながら小声でポツポツと話し始めた。

 

曰く、そんなに住みたいのだったら一緒に引っ越せばいいじゃないかと。

 

同棲とは言わずとも、隣の部屋に住む分には法律上何の問題もないですし…と続ける酒寄さん。

 

それを聞いて思わずビクッと体を震わせる俺。

 

様子のおかしさに気づいたのかこちらの顔を覗き込んでくる酒寄さんの両肩を強く掴む。

 

いいかい、酒寄さん。

 

あんまり大きい声で言いたくないんだけどね。

 

かぐやちゃんの稼ぎに比べると俺の今月の稼ぎはカスだ。

 

タワマンの家賃なんて到底払えっこないんだ。

 

楽しんでニコニコ…配信してるかぐやちゃんより…身を粉にして…精神すり減らしてる俺の方が…稼ぎが…少ないんだ。

 

俺、お、俺の…俺が頑張って稼ぐお金なんて…端金も、端金で…頑張っても…意味が…い、む、無駄なんだ…。

 

血涙を流しながら壊れた笑顔を向ける俺に、なんかごめんなさい!と勢いよく謝罪を連呼する酒寄さん。

 

しばし意気消沈していたが、俺の襟首を掴んで揺らし続ける酒寄さんのおかげで、何とか正気に戻ることができた。

 

さて!与太話ばっかしててかぐやちゃんを一人にする訳にもいかないし、そろそろ解散しようか。

 

誰のせいですかと避難するような視線を酒寄さんが向けてきたので、ごめんごめんと返す。

 

…そっか、これで二人ともお別れか。

 

不意に、二人の間に沈黙が訪れる。

 

そりゃ勿論、今生の別れというわけではない。

 

でも今までみたいなご近所さんとしての距離の近い生活は終わりになる。

 

…寂しくなるね。

 

言うつもりのなかった言葉が、思わず口から飛び出る。

 

今日を過ぎれば、仕事から帰った後のかぐやちゃんのおかえりも、夜に不定期で凸してくる酒寄さんもいなくなる。

 

一ヶ月前はそれが当たり前だったのに、今はそれが酷く物悲しく思えた。

 

 

 

「…今まで、沢山お世話になりました。ありがとうございます。」

 

 

 

お礼を言ってくる酒寄さんに、これで終わりみたいな雰囲気になっちゃったねと冗談めかして返したのは、俺がそう思いたくなかったからだろう。

 

まぁ住まいは離れても、協力関係はそのままのつもりでいるからさ。

 

また何かあれば、いつでもここに来てよ。

 

そう言う俺に、面倒事じゃなくてもまた顔出しますと酒寄さんは返してくれた。

 

気を遣ってくれているのかは分からなかったが、それでも嬉しかった。

 

是非そうしてくれと返して、二人して微笑みあった。

 

そして、また沈黙が訪れる。

 

またね。

 

その一言を言うと終わってしまう。

 

そんな気がして。

 

別れの言葉を言えず、二人して立ち尽くす。

 

ふと、酒寄さんの顔を見る。

 

俺の驕りじゃなければ、彼女の表情からも寂しいという気持ちが窺えた。

 

酒寄さんから別れの言葉を切り出さないのも、多分そういう事なのかな。

 

そう思うと少し嬉しかった。

 

俺と同じように、向こうもそういう風に思ってくれて。

 

そうとわかれば、大人の俺が人肌脱ぐべきだろう。

 

この際、勘違いでも驕りでも何でもいい。

 

あ〜…その、なんだ。

 

一緒に引っ越すのは出来ないんだけど…。

 

やっぱ、俺も寂しいからさ!

 

あと、俺この後は一日中予定無いからさ!

 

だから…荷解き、手伝ってもいい…すか?

 

もう少し一緒にいれるのならば、多少の恥も飲み込もう。

 

タワマンに住めない俺には、きっとこれが精一杯だから。

 

荷解きの提案を受けた酒寄さんは驚いた表情をした後、少し呆れたように息を吐いては微笑みを浮かべて、じゃあ…お願いしますと返してきた。

 

なんか色々と見透かされてる気がするが、この際もうどうでもいいや。

 

海に行った時も綾紬さんに全部見透かされたしことあるし。

 

そうと決まれば早速移動しようか!かぐやちゃん待たせる訳にもいかないしね!

 

そう言って軽く身支度をした後、二人で新居へと向かった。

 

その後の荷解きも、随分と楽しくやらせてもらった。

 

明日以降は顔を合わせるはおろか、喋る頻度も減ってくるだろう。

 

長らく忘れていた寂しさを感じるような日もあるだろう。

 

それでも明日は、止まる事なくやってくるから。

 

タワマンからの帰り道、一人夜空を見上げるとそこには綺麗な月が出ていた。

 

もう暫くは、迎えにこなくていいですよ〜…なんてな。

 

そう呟いて、また歩き出す。

 

今日までの思い出を糧にして、今日という日を超えていこう。

 

また話して遊んで楽しんで、そんな輝かしい思い出になり得る明日を迎える為に。

 

ん〜…!よし!また明日もお仕事頑張りますか!

 

伸びをしながら一人そう言って帰路を行く。

 

それを照らす月が、少しノイズ混じりの変な光り方をした事を、俺は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて、エモーショナルに別れたつもりだったんだがねぇ…。

 

 

 

「ほぇ?何のこと?」

 

 

 

そう言いながら、麺から作ったパスタを頬張るかぐやちゃん。

 

お行儀悪いから口に物入れたまま喋るんじゃありません!

 

家に帰ってすぐにスマホが鳴り、画面を見ればかぐやちゃんの名前。

 

何かあったのかと通話に出れば、何故かビデオ通話になっていた。

 

曰く、なんか寂しいから通話かけたとのこと。

 

俺達が口にすることができずにギクシャクしながら跨いだハードルを、かぐやちゃんは最も容易く飛び越えてくる。

 

まぁ、それがかぐやちゃんの良いところなんだけどね…。

 

なんか言った〜?と聞いてくるかぐやちゃんに何でもないと返しながら、通話をかけてるスマホをキッチンの向かいにある窓枠に立てる。

 

晩御飯の準備をしている間もかぐやちゃんと酒寄さんと、他愛もなく、それでいて楽しい会話を続けるのだった。

 

因みに俺の晩御飯が出来た頃に向こうはご飯を食べ終わったのか、酒寄さんが止める間もなくそのまま通話をブチ切られた。

 

…せめて、俺が飯食ってる間も話してくれてよくないっすか…。

 

心なしかその日用意した晩御飯は、随分としょっぱい味だった気がした。

 

さ"、さ"ひ"し"く"な"ん"か"な"い"も"ん"っっっ!!!

 

 

 







天体大好きバカ同僚
・元ガールズバンドのベース
・主人公と同じ大学
・趣味は天体観測や天体に関する情報収集
・KASSENの腕には自信あり
・最近周りが結婚し始めて焦っている

彩葉が寝納めに来た日、かぐやは別に耐久配信をしていませんでした。

かぐやが主人公の作るパスタを気に入っているのは、あれが地球に来て初めて食べた手作りのまともな料理だからです。初めてって印象に残りやすいからね。粉と水のパンケーキ?あれはまともな料理ではないので、別のカテゴライズでかぐやの記憶に残ってます。

荷造り中に出てきたものは、食用のゴキ以外は一応映像の中で描写されていたものです。跳び箱もそうです。なんで跳び箱がかぐやちゃんの部屋にあるんですか?(困惑)

この世界には車田正美先生も諫山創先生もいません。そういう設定にします。

主人公が配信部屋として自身の部屋を貸し出す際に渡した鍵は、結局返されていません。彩葉は荷造りをしてる時に鍵の存在に気づいていましたが、主人公に返すことはしませんでした。
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