え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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更新頻度とタイミングについてです。

週一の土日どっちかにアップできたら…嬉しいな…って感じです。もちろん完成し次第アップするつもりなので平日に上がることもあるかもです。

タイミングはまぁ深夜帯になると思います。


4. 豪華な晩餐からツクヨミのキャラクリまで

 

 

 

かぐやちゃんと仲良く手を繋いで歩いてたら、いつの間にかアパートまで戻ってきていた。

 

自分の部屋へと向かおうとする酒寄さんに、かぐやちゃんが部屋の戸を開けたまま待つように指示する。

 

鍵を開けて俺の部屋へ入っていくかぐやちゃんを見て、今度は何をしたんですかと疲れ切った視線を寄越してくる酒寄さん。

 

大丈夫よ〜、マジで信用できないかもしれないけど本当に大丈夫よ〜。

 

そう言い残し、俺もかぐやちゃんを追って部屋に戻る。

 

そこには一度に全部の料理を運ぼうとするかぐやちゃんの姿があった。

 

おう待て待て、俺も持つからちょっと渡しな。

 

そう言いながらお盆を棚から二つ取り出す。

 

お盆にそれぞれ料理を置き直したかぐやちゃんは、駆け足で部屋を出て行った。

 

お〜、転ぶんじゃないよぉ〜。

 

そう声をかけるも、おそらく彼女の耳には届いてないだろうな。

 

疲れを感じさせないかぐやちゃんのパッションに癒されつつ、酒寄さんの部屋に料理を運ぶ。

 

未だにJKの部屋に入るのに気後れしているのか躊躇している右腕を動かして、部屋に入った。

 

そこには驚いた表情で料理を眺める酒寄さんと、褒めて褒めてと言わんばかりに目を輝かせるかぐやちゃんがいた。

 

これどうしたんですか?と至極ごもっともな疑問を投げてくる酒寄さんに、かぐやちゃんが料理したかったらしいからそれでね、と答える。

 

一度お盆の上の料理をテーブルに全て置き、ハンバーグとソテーを軽く温める為に電子レンジに入れる。

 

1秒でも早く感想を聞きたいのか、早く食べろと急かすかぐやちゃんの圧に負け、恐る恐るスプーンを手に取る酒寄さん。

 

盛り付ける前に鍋で温められ、芳しい香りの湯気がたちのぼるポタージュを掬い口に運んだ。

 

その瞬間目が見開かれ、思わずといった感じで口から美味しいという言葉が漏れた。

 

それを聞いたかぐやちゃんは嬉しそうに飛び跳ねる。

 

味見した時点でわかってはいたことだが、無事に成功したみたいだね。

 

謎テンションのまま俺の体を揺するかぐやちゃんに両の掌を向け、そのままハイタッチする。

 

驚いたかい?しかもこれら全部、かぐやちゃんがほぼ一人で作ったんだよ?

 

ハンバーグとソテーを電子レンジから取り出しつつ、スプーンを持って呆けたままの酒寄さんに声をかける。

 

その言葉の意味を理解して再起動したのか、驚愕の表情で件の料理人を見る酒寄さんと、それを受けてダブルピースで返すかぐやちゃん。

 

よほど嬉しかったのか、これはあれを使ってねそれはそうやってねと材料や作り方を事細かに説明し始めた。

 

なんか、幼稚園で作った紙細工を親御さんに自慢する子供みたいで可愛いな…。

 

…う、うんかぐやちゃん、彩葉のパンケーキ不味すぎるから私が料理作らないとだねとかは今言わなくていいんだよ〜。

 

あもう、それを聞いたヒデちゃんも凄い微妙な顔してたとか本当に言わなくていいからね〜。

 

ステイステイ落ち着こう酒寄さん人間には口があって喋れるんだから表情と視線の圧だけでコミュニケーション(恫喝)を取ろうとするのはやめよう。

 

違いますよ分かってますよね?という声がいよいよ聞こえてきそうな表情で、詰め寄ってきている酒寄さんを宥める。

 

…とはいえ、酒寄さんが自炊してるとこ見たことないから判断つけられないんだよなぁ…。

 

どうするよこれでいざ蓋開けてみたら、もやしのアレンジレシピしか作れませんとかだったら。

 

…料理できないんだなぁよりも普通に心配が勝つなこれ。

 

まぁどれくらい料理できるかは置いとくにして、やっぱりこの子食に関して切り詰めすぎだよな…。

 

家に大量にある夏野菜と、特に他意はないがべらぼうに高価な食材を適当に見繕って送りつけるか…と心の中で密かに決意する。

 

札束ビンタをすることに抵抗感が一切無い俺を他所に、酒寄さんは目の前の料理に舌鼓を打っていた。

 

しかし、結構なスピードで進んでいた右手が突如として動きを止めた。

 

そして俺に目を向けて、恐る恐るといった感じで質問を投げかけてきた。

 

曰く、この食材はどうしたのか…。

 

君のような勘のいいガキは、というやつだなこれは。

 

普段からまともなもの食べられてなさそうなのに、いやむしろだから気づいたのか…?

 

使われてる食材がまぁまぁ値を張る品物だということに。

 

酒寄さんになんか失礼なこと考えてませんかと言われたが、この言葉に関しては無視しておこう。

 

なんでナチュラルに思考を読まれてるんだ…。

 

将来は鬼無辻なパワハラ上司だなとか考えながら、いったん誤魔化す方向に舵を取ろうとする。

 

い、いやぁ?家の中にあったやつですけどぉ!?

 

…やっべ、めっちゃ声上擦っちゃった。

 

酒寄の友達に披露していた演技力は何処へやら。

 

大根役者に鼻で笑われるような誤魔化しに何かを察したのか、酒寄さんは細い声で更に問いかけてきた。

 

か、買ったの俺だしぃ!?ふ、普通に自分で買ったしぃ!?

 

えいやだから俺が買った…アッハイ…カグヤチャンデス。

 

…あ、値段ですか…?食材の?

 

君のような勘のいいガ、あはいすいませんふざけてました。

 

あー、えーっと…し、知らない方がいいかも…っすねぇ。

 

1ミリも隠せていない事実に焦り散らかし、流石に値段いうのは…と最終防衛ラインを張る俺を見て、疑念が確信に変わり口から魂が抜け出る酒寄さん。

 

仮にも自分が世話している子が、人様に12万+追加で恐らく◯万の出費を強いている事に気づいてしまった酒寄さんの胸中は、さしもの世紀末もまだマシと思えるくらいには荒れているだろう。

 

ユアーショーック、愛で残高、落ちてくーる。

 

そんな光景など目に入っていないとばかりに、今もなお途切れることなく調理工程や工夫した点をペラペラと喋り続けていたかぐやちゃん。

 

精神が体の外にまろび出てしまった酒寄さんを見て、どうやら最初のはおべっかで実は好みに合わなかったから食べるのをやめたと解釈してしまったらしい。

 

落ち込んだような表情と少し目に涙を浮かべて、酒寄さんに美味しくなかった?と問いかけた。

 

その表情を視界に入れられた酒寄さんは再起動して、質問に答えはしないもののまた食べる手を進め始めた。

 

それを見てまた笑顔に戻るかぐやちゃん。

 

手を動かすたびに、美味いじゃないか、お前はなんなんだ、体が喜びに満ちていく、こっちは切り詰めて生活しているのに人の気も知らないで、と纏まりきらない感情を泣きながら吐き出している酒寄さん。

 

中々見ない変な光景に苦笑いを浮かべる俺。

 

なんともいえない空気の時間は、酒寄さんがご飯を食べ終わるまで続くのだった。

 

 

 


 

 

 

かぐやちゃんの手料理を全て食べ終えた酒寄さんが、フローリングに仰向けで横たわった。

 

そんな食べた直後に寝っ転がると豚さんになっちゃうよ〜。

 

そう軽く注意してみるも聞く耳持たず、五臓六腑に行き渡る幸せを噛み締める酒寄さん。

 

花のJKがこんな隙だらけでいいんですかねぇ…。

 

下手したらお腹見えちゃいますよ本当に。

 

日に日に成人男性(俺)に対する警戒心が下がっていっている酒寄さんに大丈夫かよと思いながら視線を向ける。

 

そうしたら、テーブルに置いていたスマホに徐に手を伸ばし、操作していく酒寄さん。

 

何をしているのかと問えば、大人の男性に豚かよと言われた事実をSNSに書き込んでいると言い出した。

 

いやぁ軽い冗談じゃぁないっすかぁ酒寄さぁん!勘弁してくださいよぉ〜!あぁ食べた後の食器洗いはあっしがやりますぜへへへ!

 

チーターも目をひん剥くであろう速度でごまをする俺に対し、くるしゅうないと言わんばかりにスマホを操作している手を下ろす。

 

あ、危ねぇ危ねぇ…。

 

後少しでも媚び諂うのが遅かったら、俺は社会的な意味で間違いなく死んでいた…。

 

哀しきかな、このご時世オジさんの人権というのは、吹いて飛ぶくらいに軽く向こうが透けて見えるくらいにはペラッペラなのだ。

 

JKのSNSに書かれようものなら、なんと即日で犯罪者の仲間入り。

 

理不尽ッ…余りにも理不尽ッ…!

 

無いのだッ…基本的な人権なぞ…おじさんには…!

 

ご飯食べている時に、かぐやちゃんに対して悪魔だのなんだのと言ってましたけども。

 

普通に酒寄さんの方が悪魔らしいんじゃないんですかねこの所業を考えるに。

 

抗議の意味も込めての視線を向けたら、今度は隣の部屋の成人男性から邪な視線を向けられると友達に連絡すると言い出した。

 

私奴が豚でございます何なりとお申し付け下さい。

 

自認を畜生レベルに改め地面に叩きつけるように頭を下げる俺に、冗談はさておいてと別の話に移行しようとする酒寄さん。

 

酒寄さんの冗談一つで俺の生命消えちゃうとこだったんだけどなぁ〜?

 

そんな言葉も耳に届かなかったのか、そのまま話を続ける酒寄さん。

 

内容としては、やっぱりかぐやちゃんを匿うのは無理なんじゃないかということだった。

 

んーむ、まぁ昼間の件に関しては俺の監督不行届だからなぁ…何も言えないねぇ。

 

ごめんと謝罪する俺に対し、俺の監視に不備があったと考えにくいと酒寄さんは言った。

 

それに続け、どっちかと言えば監視対象の方がリードを引きちぎるタイプだったからしょうがないと付け加えた。

 

まぁ確かに…というか引きちぎるっていうより知覚していない間に切断されてんだよなぁ…リードが。

 

若干心当たりがあるのか苦笑いを浮かべる酒寄さん。

 

ちゃんと監視していても今のペースで問題行動を起こすとなると、俺の連休が終わったらもう誰にも止められなくなる。

 

酒寄さんにそう言われ、そういえば連休明けた後のことをなにも考えていなかったなと思い至る。

 

連休が明けたら、必然的に平日の日中はかぐやちゃん一人でお留守番になる。

 

しかし、かぐやちゃんのクソデカ好奇心をこの部屋だけで抑え切るというのは中々無理な注文だ。

 

というかこの世のどんな部屋でもまぁまぁ無理な気がするな…。

 

酒寄さんに断りを入れて使わせてもらっている流しで、食器類を洗いながら呟く。

 

かぐやちゃんの好奇心を釘付けにできるような何かが、この部屋の中にあれば話は早いんだけどねぇ…。

 

そんなものあるんですか?と問いかけてくる酒寄さんに、分からんと皿洗いが終わって空いた両手を上げてお手上げポーズで肩をすくめる俺。

 

話の議題に挙がっているかぐやちゃんに二人して目を向けると、何やら目にも止まらない速さで酒寄さんのPCを操作していた。

 

話聞いてないし…と未だに起き上がることが億劫になっているであろう酒寄さんの目には、どこか哀愁や懐旧の情が見てとれた。

 

幼い頃の自分にでも重ねてるのかなと思っていたら、かぐやちゃんのしていた作業が終わったらしい。

 

かぐやちゃんの出来たという声に対して、即座にサイバー犯罪を疑う酒寄さん。

 

流石に酷くねぇかとも思ったが、銀行の残高を改竄するという倫理観を著しく欠如した案を出した前例があるのを思い出して、別にそうでもねぇかと切り捨てる。

 

幸いなことに出来たのはサイバー犯罪等ではなく、レトロな卵形の携帯ゲーム機の画面に映る柴犬みたいなキャラだった。

 

名前は犬DOGEというらしい。

 

こんなキャラいなかった気がすると隣の酒寄さんが言っているのを聞くに、どうやらかぐやちゃん自身の手で生み出したものらしい。

 

そういえば操作していたPCの画面にはコードエディタみたいなの映ってたしな。

 

というかプログラミングも出来んの?

 

…スッー…弊社で何とか雇えたりしねぇかな?

 

選り好みしてるのに人手不足だと日々嘆き散らかしてる弊社を黙らせる為にかぐやちゃんのコネ入社を一瞬考えたが、履歴書が余りにも厄ネタすぎるのでやめた。

 

年齢0歳0か月4日、出身地は月、卒業学科はおろか学校そもそも出てません。

 

どう足掻いても審査が通る未来が見えん。

 

ひたすら黒塗りされた上で検閲の判子を押された履歴書を頭にイメージしている俺を他所に、解剖されるかもしれないからと居住権をもぎ取ろうとするかぐやちゃん。

 

しかし、酒寄さんはそんな懇願に一瞥もくれずに、帰り方を思い出して月に帰ればいいじゃんと返した。

 

うぉ、すっげぇ正論パンチ。

 

そんなパンチも糠に釘だったのか、当のかぐやちゃんはさっき改造していたゲーム機をプレイしながら、努力はしてるけどむずかしいとどっちに当てたかも分からない回答をした。

 

かぐやちゃんの態度を見て埒が明かないと体をようやく起こした酒寄さんが出したのは、迎えにくるまではいてもいいという折衷案。

 

いいの!?と食いつくかぐやちゃんに、酒寄さんはすかさずその為の条件を叩きつけた。

 

一に目立つな、二に外に出るな、三に私の邪魔をするな。

 

えー彼女さんきびしー!私ならそんなこと言わないのn…すみません黙ります。

 

余計な茶々入れを酒寄さんの一瞥で止められた俺を尻目に、一部の望みにかけてあれは大丈夫かこれは大丈夫かと確認するかぐやちゃん。

 

しかし、この涙も流れなければ血の色もおよそ緑と推測される人の心の無い酒寄さんは、第◯項により、ないとフォーマットに沿いかつ冷徹な返しでかぐやちゃんの希望を打ち砕いていった。

 

おうおう…酒寄さん取り付く島もないねぇ。

 

二人のやりとりを傍観していると、かぐやちゃんがそれならひでちゃんのとこに行くと言い出した。

 

まぁ、かぐやちゃんにとってはかなり苦痛になりそうな条件だったしな。

 

俺も正直な話、酒寄さん主体で世話(というか監視?)をさせるのキツいんじゃないかなと思ってたし。

 

他ならぬ今日一日かぐやちゃんについて回ってた俺が言うのだからなぁ。

 

ちゃぶ台を返すような意見で申し訳なさを覚えつつも救いの手がてら主導権の移動を提案しようとした矢先、酒寄さんがいつもより声を大きくしてダメだと言い放った。

 

今日一日で俺にとんでもない量の迷惑をかけているのに、更に追加で迷惑をかけるのはよくないとも言った。

 

珍しく強めに言ったなぁとぼんやり思ってたら、俺はかぐやちゃんを甘やかすようなことはするなと釘を刺された。

 

わーお助け舟出そうとしたのバレてーら…。

 

助けてくれないのぉ?と言わんばかりに見つめてくるかぐやちゃんに両手を合わせて謝罪の意を示す。

 

これでまぁ、かぐやちゃんは酒寄さん家の厳しいルールで生活せざるを得なくなったわけだ。

 

意地悪と足掻くかぐやちゃんに、血じゃなくてガソリンが通っているであろうマシーンウーマン酒寄さんは、この状況もハッピーに楽しんでくれと突き放す。

 

んまぁかぐやちゃんからしたら、刺激の少ない部屋の中に幽閉されるのは好きじゃないだr

 

 

 

「こんな映えないつまんない家で!?」

 

 

 

ブッッッッッッハッッッッッッ!!!!!

 

とても生を受けて幾日と経っていない人から出たとは思えない言葉の鋭さに、思わず吹き出す。

 

ッ……映え……こんなてッ…クッ……。

 

あ、やばいこれ。

 

予想外すぎてドツボハマっちゃったこれ。

 

酒寄さんが女性に似つかわしくないような握力で肩を握りつぶしてくるが、一度押された笑いのツボは中々治ることはなく。

 

ご、ごめっ…さかよりっ……ごめっ…つ、ツボに……クッ…あとで…ど、どうとでもしていいからっ……。

 

肩の痛みも込み上げてくる笑いが全て消し去ってしまう。

 

後で好きにしていいから一旦治るまで待ってくれという意図はどうやら酒寄さんにも伝わったらしい。

 

後で覚えておけよと鬼も裸足で逃げ出しそうなほど恐ろしい形相をこちらに向け、肩から手を離す酒寄さん。

 

その瞬間に、スマホのアラームがけたたましく鳴り出した。

 

突然のアラームに驚いたことで、脱出不可能かと思われた笑い地獄から意図せず抜け出すことができた。

 

俺はこの時間にアラームをセットしていないので、恐らく酒寄さんだろう。

 

予想通り、酒寄さんが自分のスマホを操作してアラームを止める。

 

何かを察したのか、置いていくのかと酒寄さんにタックルよろしく抱きついたかぐやちゃん。

 

そんなかぐやちゃんを引き剥がしながら、酒寄さんはツクヨミに行くだけだと告げた。

 

ツクヨミか…お友達との約束でもあるのかな?

 

自分も連れてけと訴えるかぐやちゃんに、無理だと言おうとしたが自分のスマコンを持っている為、連れてくしかないかと呟く酒寄さん。

 

二人のやりとりを聞きながらスマホを見ると、そこそこにいい時間だった。

 

じゃあ、そろそろ俺は部屋に戻るよお二人さん。

 

既に乾いたであろう自分の部屋から持ってきた食器類を手に取る。

 

そこに待ったをかけたのは、さっきまで引き剥がされまいと格闘していたかぐやちゃんだった。

 

どうやら俺も一緒にツクヨミに行って欲しいとのこと。

 

うえぇ…でも酒寄さん多分用事あってツクヨミに入るんだろ?俺邪魔にならん?

 

本当はスマコンつけるのがいまだに怖いだけである。

 

そんな本音をJKと0歳児の前で堂々と白状する気も起きず、何とか誤魔化そうとする。

 

しかし残念無念。

 

かぐやが来るから三人に増えてもあんまり変わらないですよと、酒寄さんから指摘された。

 

指摘してきた酒寄さんの目からは、かぐやの世話なんて私一人で出来るわけないだろという圧が垣間見えた。

 

というかさっき、後でどうとでもしていいって言ってましたよね?と追撃の一手を加えてくる。

 

アッハイ…イキマス…。

 

食器類を自分の部屋に置き、ちょっと型の古いスマコンを持って酒寄さんの部屋に戻る。

 

既にスマコンのセットを終えている酒寄さんと、なんとかスマコンを入れようと格闘しているかぐやちゃん。

 

自分も部屋に上がってスマコンをつけようと思って、ふと言おうとした事があったのを思い出し、酒寄さんを呼ぶ。

 

あ〜ごめんごめん、大した事じゃないんだけどさ。

 

ありがとうね、支払いとかの件でかぐやちゃんに怒ってくれて。

 

いつもより声張ってたから何となく怒ってくれてるんだなってわかった。

 

俺だったら多分なあなあにするかおちゃらけ入ってちゃんと注意できなかったと思うから。

 

それだとかぐやちゃんの為にもならないからね。

 

だから、ありがとう。

 

あ、それともう一つ。

 

今日の件があったからって、今後何か問題起きた時に俺に黙ってるの無しな。

 

ちゃんと必要に応じて俺に相談するって約束してくれ。

 

言うだけタダだし気軽に打ち明けてよ。

 

解決できるかは保証できないけど、できる限りの努力はするからさ。

 

それに金銭面の問題だったら尚のこと、遠慮なしで相談して欲しい。

 

言いたくはないけど、酒寄さんには解決難しいだろうし。

 

OK?ちゃんと約束してくれる?

 

半ば強引とも取れる方法で約束を取り付けようとするが、やはり今日の一件を重く見ているのか、酒寄さんはすぐに了承できずにいた。

 

その表情からはやはりと言った感じ、申し訳なさが滲んでいるのが見てとれた。

 

うーむ…するってぇとこう言った方がいいか。

 

ふふっ…俺さ、今日は確かに参っちゃったところはあったけどさ、それ以上に楽しかったよ。

 

かぐやちゃんにも後でお礼を言わなきゃね。

 

それに、かぐやちゃんのお世話を俺に任せてくれた時、頼りにしてくれたんだなって思うとすごく嬉しくなった。

 

そう、頼りにされるのが嬉しいんだよ。

 

酒寄さんは俺を頼れて、俺はそれを受けて嬉しくなる。

 

これでwin-winだから迷惑とか貸し借りとか気にしなくていいじゃん?

 

俺、もっと酒寄さんの役に立ちたいし支えたいからさ!

 

だからさ、俺を助けると思ってお願い!

 

俺をどうか、頼りになる大人でいさせて欲しい。

 

こうやって強い善性を持って大人からそうしたいからと懇願されると、多分酒寄さん断れないんだよねぇ…。

 

ぐへへ俺は汚い大人だからな…ペテン師よろしく言い方言い分コロコロ変えて自分の都合のいいように子供を操るのさ…。

 

俺の毒牙にかかった酒寄さんは、まいりましたと言うように息を吐いて、ちゃんと約束してくれた。

 

頼りになる大人っていうステータスは婚活だと強いカードになるからねぇ〜よろしく頼むよ酒寄さぁん?

 

そう冗談めかした事を言いながら、スマコンのセットアップができて早くしろと急かしているかぐやちゃんの元へと俺は戻る。

 

酒寄さんは呆れたように息を吐くものの、笑顔で俺の後を追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へ、婚活でいい相手とかいなかったんですかって?

 

い、いやぁいやぁもうね!引くて数多の大盛況ぶち上げ黒字の成績ナンバーワンってなもんですよ!?

 

な、なんすか…その疑いの目は…。

 

んだよ!いなかったよ誰も!連絡先すら貰えたことねぇよちきしょう!

 

ん婚活ってなぁにってぇ…か、かぐやちゃんにはちょっと早いかなぁ…?

 

ちょっと酒寄さぁん!!人の婚活成績聞いた途端に笑わないでくれますぅ!?

 

しかもツボに入ったみたいな笑い方して仕返しですかぁ!??

 

あーかぐやちゃん俺のスマホで調べなくていいよそんなことスマホ置こうね一旦ね。

 

相手いないんだ〜ぷぷぷ〜って言ったのかなぁかぐやちゃんねいまねぇ。

 

だからツボるなって…だぁ…もう…。

 

酒寄さんがハマったツボから復活するまでの2分間、俺はひたすらかぐやちゃんにいじられるのであった。

 

しかもこの後、俺が恐怖に打ち勝ちスマコンを目に入れるのに追加で5分かかった。

 

この歳になっても眼球に物入れるの怖いんだよ悪いかよ。

 

なおその横では、入れるのに手こずってるんじゃなくて単純に怖いんだ〜ぷぷぷ、あれで頼りになる大人を自称してるらしいよ、という会話が繰り広げられていた。

 

おっと…心は硝子だぞ。(既に木っ端微塵)

 

 

 


 

 

 

心に消えない傷を負い、そもそも同じ部屋でログインする必要なくね?とごもっともな疑問を抱えながら目を閉じる。

 

その瞬間、視界いっぱいに銀河が広がった。

 

思わずうおっと声が漏れる。

 

そのまま、まるで銀河の果て消えてしまうかのような速度で視界が加速していく。

 

更に視界いっぱいに波飛沫が立ち上がる。

 

抜けた先には、赤く大きな鳥居に無限に続く浅い湖と、水面を蛍が飛ぶかのように漂う鳥居の数々。

 

そして、空が暗転する。

 

綺麗な声と共に目の前に現れたのは、10年どころか8000年に一人くらいしかおらんやろと言わんばかりの別嬪さん。

 

あ、えーと…こんにちは。

 

とても場にそぐわないテンションで挨拶をかます俺。

 

空気の読めないコミュニケーションにドン引かれてしまったかと思った矢先、まるで雪のように白い別嬪さんの手が俺の手を掴んだ。

 

そのまま為されるがままに手を引かれると、出かける前にその恰好じゃあつまらない!と別嬪さんが言った途端、視界が光に包まれる。

 

光が止んだ頃には、目の前に巨大で宙に浮くウィンドウが広がっていた。

 

あーなるほど、これはキャラメイクのあれか。

 

今世でやってたゲームにも似たようなレイアウトの画面を見た事がある。

 

過去の経験を遡るように、目の前のウィンドウに表示されている項目に手を伸ばす。

 

手がウィンドウに触れた瞬間、俺の服が赤色に変わった。

 

タッチパネル的な感じか…指に当たった感じがあるようでない…不思議な感覚。

 

虚空に浮かぶウィンドウの感触を確かめながら、自分の好きなようにキャラを変えていく。

 

と言っても余り自機の見た目に頓着は無い。

 

見た目どうこうよりも早くゲーム楽しみたいみたいなタイプだったしねぇ…。

 

苦笑いしながらざっと表示されてる全ての項目に目を通した。

 

うーん…髪色はまぁ黒でいいか。

 

髪型も特に気を衒った様なものではなく普通のショートに設定。

 

着物は…色々種類ありすぎだな。

 

靴だけ草履から動きやすそうなものに変える。

 

色もデフォルトの紺のまま…あ待って、上に赤い羽織だけ追加しとこ。

 

まぁこんなもんでいい…ん?何だこの項目。

 

見慣れない項目に興味を惹かれ、取り敢えず押してみる。

 

画面に出てきたのはうさぎや狐といった動物や、鬼や河童などの妖怪などなどを模したアイコン群だった。

 

何となく狐のアイコンに触れてみる。

 

すると、頭に狐耳が生えて腰に立派な尻尾が生えてきた。

 

どわぁ!なんやこれ!

 

思わず声を出して驚いてしまったが、何となくどういう項目かは分かった。

 

おそらくアイコンの生物の特徴をアバターに反映させる事が出来るのだろう。

 

面白いことを考えるねぇ〜ツクヨミ。

 

そんな事を考えながら適当にウィンドウをスライドしていく。

 

目に留まったのは髑髏のアイコン。

 

触れてみると、自身のアバター全部が骸骨に変わった。

 

あ、全身変わるのこれ、おもろ。

 

これで行こうかと一瞬思ったが、キャラクリ後に酒寄さんと合流するとなると、流石に不便そうすぎる。

 

ただせっかくの縁(?)だという事でモチーフは骸骨のままにした。

 

骸骨…というか人魂っぽいの浮いてるし、世界観的にも多分がしゃどくろかな。

 

モチーフの有効化範囲を右腕だけに限定する。

 

すると元のアバターが姿をあらわし、右腕だけが骸骨のままになった。

 

…いいね、なんか厨二なあれが刺激されてる。

 

持っていかれたと言いたいが為だけに左足も骨だけにしようかと考えたが、シルエット的にバランス悪そうなのでやめておいた。

 

その後、装飾品の欄から誰も使っていないであろう骸骨のお面を選択した。

 

なんか詳細欄の使用率の項目が0.0%だったんだが…。

 

まぁその理由の大部分は十中八九顔全体を覆ってしまうからだろう。

 

後はデザインがちょっとデフォルメチックで骸骨のかっこいいイメージから離れているとこ。

 

そして、下顎で右の犬歯が前に倒れて、その先から火が出るという無駄機能がついているとこだろう。

 

タバコモチーフなのか?

 

とまぁ色々とあったがキャラメイク大体2分くらいで完了した。

 

…こ、この後どうするんだべか。

 

完了みたいなボタンもウィンドウ内に見つからず、取り敢えずいつの間にか後ろにいた別嬪さんに終わった旨を告げる。

 

すると、準備はいいかい?じゃあレッツゴー!という別嬪さんの声と共にウィンドウが消えて、新たに光の渦が現れた。

 

それが何かを確認するまもなく、突如として後ろから吹いてきた強烈な風に煽られた。

 

バランスを崩した俺は立て直す暇もなく、光の渦に頭から突っ込んで行くのだった。

 

 

 

 







二枚舌ペテン師クソ野郎にいい様にされてる彩葉ちゃんかわいそう…。

キャラメイクの演出とかは適当に文章で補完しただけなので映像作品とかノベライズとかと違う感じになってます許して。

わかりにくかった方用に主人公のアバター情報まとめ
・黒髪ショート
・骸骨のお面(アンパン◯ンのホラーマンみたいなデザインで顔全体を覆う大きさ)
・紺の着物に茶色の帯
・赤い羽織
・動きやすそうな靴
・右腕だけ骸骨

因みに主人公の今世の婚活戦績は17敗です。
伴侶作ってもお前消えるんやから必要ないやろ。
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