感想、ねっちょりと全て見させていただいた上で「ウケケ」と魔女のような声をあげて喜んでます。
ここすき、ぬっちょり全て見させていただいた上で「イヒヒ」と山姥のような声をあげて喜んでます。
あと、完結後にあげようかなと思ってた前世の双子視点の話を番外編としてあげました。
感想で要望あったのと完結前にエタる可能性もあるので。
本編1ミリも関係ない内容ですが興味があればどうぞ。
すんません。
投稿後に読み返したら結構書いてる内容と矛盾するような描写多かったんでチミチミ書き直しました。
感想とかで指摘してくれてた方いたらごめんです。
どわあぁぁぁぁぁぁぁあいでぇ!!!
キャラメイクを終えた後、謎の光の渦に頭から突っ込んでおよそ十秒。
光の渦の中を舞い上がる木の葉のように、はたまた某デジタルなモンスターのOP映像のキャラ張りにクルクル回転していたが、突如としてそれは終わりを告げた。
渦の中央へと急速に吸い込まれたと思いきや、いきなり地面のある空間に放り出された。
もちろんバランスなんぞ取れるはずもなく、強かに顔面を地に打ち付け熱い接吻を交わす。
初めてだったのに...と目に涙を浮かべつつ体を起こすと、そこには目を見張るような光景が広がっていた。
背後のどでかい鳥居の中から出てくる形の足場は、和を思わせるような木造だった。
その足場を囲う高欄には行燈のようなものがついており、この大鳥居の付近をほのかに照らしている。
足場から延びる通路は別の大地に伸びており、その入り口には別の鳥居が厳かに建っている。
そしてここからでも見える、鳥居の向こう側。
まるで吉原のように、夜を妖しく彩るライトの数々に照らされる城のような建物。
十を優に超える階層を持つ和風の建物が、まるで大地を埋め尽くさんばかりに建ち並んでいる。
とても仮想の空間とは思えないような精工で広大な空間がそこにはあった。
はえぇ~随分とクオリティの高いグラフィックだこと...。
おぞましい値段のグラフィックボードを搭載してひいこら悲鳴を上げながら担保していた画質を、優に超えるようなツクヨミの景色の綺麗さに心底驚嘆した。
身に着けている衣装の再現度の細かさにも目を向けていると、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには、二人の女の子がいた。
片方は、青と黒を基調とした着物とパーカーに膝くらいまでのブーツを合わせたストリート系衣装で、ショートカットと赤のアイラインが入った目と狐の耳やしっぽが特徴の子。
もう片方は、表が茜色メインで裏地が黄緑のノースリーブやらミニスカートやらの現代要素が混じった着物に、装飾品や耳に表れているウサギ要素が特徴のたれ目で金髪の子。
一瞬モテ期による逆ナンかとも考えたが、視界に入れた二人の女の子の姿からぼんやりと知り合いの顔が浮かび上がった。
んーとぉ?か...お嬢ちゃんと、お隣さんのJKかい?
普通に名前で呼びそうになったが、ツクヨミはネット上の仮想空間であることを思い出して踏みとどまる。
とりあえず直近までの呼び方と、まぁ伝わるであろう呼び方で確認をとる。
そう2人に言うと狐耳の女の子の方から、そういう貴方は婚活20連敗おじさんですか?という確認が返ってきた。
おほほぉ~喧嘩売ってるみたいだなぁてめこら狐ぇ!!!
あとまだ17連敗だ間違えるんじゃねぇ!!!
うさぎてめぇ腹抱えて笑うな!!!
狐ぇ!そのそんなに負けてたんですかみたいな憐みと気まずさが混じった顔で見てくるのやめろや!!!言い出したのてめぇだぞ!!!
俺の人生の汚点を自供させられた(冤罪)が、とりあえず合流自体はちゃんとできたらしい。
建物が建ってる方へと、3人と一匹で並んで歩き出す。
...ん?なんか多くね?
視線を下げると、かわいらしい一匹のワンちゃんがそこにいた。
ツクヨミのマスコットかなと思ったが、かぐやちゃん曰く先ほど酒寄さんのPCで造られた犬DOGEらしい。
え、えぇ?どういうこと...?
スマコンとあの携帯ゲーム機って、無線でも有線でも繋がってないよな?
携帯ゲーム機側にネットワークへの接続機能があって、そこ経由でオンライン上からツクヨミが引っ張ってきたか?
いやいやそんな人力の設定ありきみたいなこと別にやってないはずだし、ツクヨミ側がフルオートでやってくれるとも考えにくい。
でもこうしてここに存在しているってことは、ツクヨミ側がなんかサービスでも用意してんだろうな...。
ツクヨミ運営の技術力に恐怖しながら、初回ログインイベントと思われるなんかモフモフした奴の話を右から左に聞き流しているうちに、ふと思った疑問を二人にぶつける。
というか、よく俺だってわかったね。
アバターの顔はお面で隠れてるし、さっきからちらほら見えてきている他人の頭上に浮かぶユーザー名も俺の頭の上にはない。
多分デフォルトが非表示の設定なんだろうなぁ~新設設計だねぇ。
っていうかこうも現実に寄った空間だと、名前を出しっぱなしにしてる方が違和感あるか。
というわけで、現状俺だって断定できる要素もなかったんだが、この二人が声をかけてきたときにこの人であってるかな?みたいに迷っている様子がなかった。
疑問を投げかけると二人とも口をそろえて、雰囲気が頼りなさそうでひ弱そうだったからと答えてきた。
それだけの理由で確信をもって断定される僕の身にもなってくれませんか...?
哀愁漂う雰囲気をまといながら、初期スポーン位置の先にあった鳥居をくぐり橋を渡る。
ログアウトしたら「男 強い オーラ 出し方」で検索しようかと思ったが、新規ユーザーはみんなあの大鳥居から出てくる上に俺しかいなかったからわかったと真相を伝えてくれた。
無益に俺が傷つけられる必要性はあったのかと思いつつ、聞きたかった本題に入る。
あそうだ、困った事一つあるんだけど...君たちのことなんて呼べばいいんだ?
そういう俺に、かぐやじゃダメなのかひでちゃんと声を上げてくるかぐやちゃん。
...まぁ生まれて4日の人にネットリテラシー求めるのは酷よなぁ。
いいかいお嬢ちゃん、こういうネットの世界ではな?現実世界の一個人が特定可能な情報は伏せるのが一般的なんだよ。
あっち見てごらん、なんか頭の上に文字が浮かんでいる人がちらほらいるだろう?
あれは全部彼らの本当の名前ってわけじゃなくて、ツクヨミ内ではこういう名前で通してますっていうあだ名みたいなもの。
防犯の意味もあるけどね、この世界でどうありたいかという本人の願いの中で、表に出たものの一部がネット上のあだ名だと俺は思ってるよ。
まぁ色々語ったけど、そのあだ名...多分ユーザー名でいいのかね、そういうのがツクヨミにいる人全員にあるだろうから、それで呼んであげるようにしよう。
わかったよひでちゃん!と元気に返すかぐやちゃんに、本当に俺の話を聞いていたのだろうかと不安になった。
いや俺のユーザー名を頭上に出してないからしょうがないな。
っていうか、俺等って初回ログインだったのにユーザー名決めるようなタイミングなかったな...。
かぐやちゃんも一緒なんかね。
酒寄さんにユーザー名の決め方を聞こうとしたが、結局酒寄さんのユーザー名を聞いていなかったために、あ~えっと~と要領の得ない言葉が口から出た。
それを見て何を言いたいのか察したのか、手元を振ってウィンドウを操作しだす酒寄さん。
数秒後には、酒寄さんの頭上に「いろ」と表示された。
おぉ何も言ってないのに!さっすがいろさんできる女だねぇ~。
そういうと褒められて照れくさくなったのか少し頬を赤くした後、手早く頭上の名前を消してユーザー名の付け方を説明してくれた。
ちょっと早口になってる酒寄さん曰く、チュートリアル内では名前は付けずに終わるらしい。
チュートリアルが終わった後、各々で開くことのできるメニューのプロフィールから変える必要があるとか。
デフォルトで与えられるユーザー名は数字とアルファベットだけでできた一意な文字の羅列で、識別子としての意味しか果たしていない。
そのため、フレンド申請をしようとして自分の名前がおかしいことに気付くみたいなことはあるあるらしい。
そこまで来たら運営側でチュートリアルにねじ込むように修正したほうが良いのでは?と眉をひそめながら、ユーザー名変更画面にたどり着く。
どういう名前にするか一瞬悩んだが、どうせそんなにログインしないし考えるの無駄だなということで、そのまま現実世界で使ってる苗字+敬称のさんで設定した。
何にしたんですかと聞いてくる酒寄さんに、現実で君に呼ばれてるのとおんなじだよと返す。
ネットリテラシーがどうとか言ってたくせに...という酒寄さんのと指摘は、日本に67万人近くいる苗字だしへーきへーきといって躱した。
知ッテイマスカイロサーン...日本ニハ、木ヲ隠スナラ森ノ中トイウ言葉ガアリマース!
得意げに言う低解像度外国人の俺の言葉は無視して、名前を設定しようとしているかぐやちゃんのもとに向かう酒寄さん。
小ボケをスルーされたことに心を痛めつつ二人の会話に耳を傾けると、かぐやちゃんはどうやら現実そのままかぐやという名前で通すらしい。
「かぐや」という名前を甚く気に入っているようで、彩葉から貰った名前以外を名乗る気はないとかぐやちゃんは言った。
それを聞いて若干嬉しいのか、ニヤけかけてはそれを表に出さないように頬を抑える酒寄さん。
あらぁ~名付け親としてはこんなにうれしいことはないねぇいろさんねぇ隠さなくてもいいのに~。
これ幸いと照れてるのをウキウキで指摘した瞬間、彼女の裏拳が顔面に突き刺さる。
ツクヨミ内に触感が無いからか痛みは来なかったが、ノックバックが発生しそのまま頭から後ろに倒れる。
恐ろしく速い裏拳、俺でなきゃ見逃しちゃうね。
見逃さないだけで対応はできなかった俺をそのまま捨て置き、二人はそのまま門をくぐっていった。
二人を追って綺麗な桜が上からはみ出てる門をくぐると、大鳥居からも見えた街の全貌が見えてきた。
何処もかしこも背の高い和風の建物。
それにミスマッチと思いきや様になっているサイリウムの様な装飾。
そして宙を文字通り泳いでいる、光り輝く魚。
遠くで見るよりも、より一層輝いて見える街並みに圧倒された。
大きい通りに出ると沢山の出店の様なものが並んでいた。
横で説明してくれている酒寄さん曰く、このツクヨミには、ここ以外にも様々なワールドやゲームに体験施設なんかもあるらしい。
しかもそれらは基本的に全部無料で遊べるとか。
出店のお兄さんに許可を取って、出来の良さそうな扇子を手に取る。
赤い色の扇面に、桜の木の枝と白で表された花弁が描かれている。
アバターにつけられる多くのアイテムも基本的に無料だが、目の前の出店みたいにユーザーが作り出した物に関しては、ふじゅ〜なるものが必要だと横からひょっこり顔だけ出してきた酒寄さんが補足してくれた。
なにその絶妙に気が抜けそうになる名前のもの…。
さっきFUSHIが説明してくれませんでした?と聞く酒寄さんに対し全部聞き流してたと白状すると、大きなため息を吐きながらふじゅ〜についても説明してくれた。
どうやらこの世界における通貨らしく、クリエイターへの依頼とか物の購入とかのユーザー間のやり取りなんかに使われるらしい。
驚いたことにこのふじゅ〜、現実の金銭にも変換できるとのこと。
ツクヨミでライバーやってる人とかは、配信中に稼いだこのふじゅ〜がそのまま稼ぎになるとか。
はぇ〜…そこまで来ると、本当にもう一つの現実みたいな世界だねぇ。
出店のお兄さんに冷やかしとかじゃなくて初ログインでふじゅ〜がないんだと謝罪をしたら、ならサービスだ持っていきな!とそのまま無料で譲ってくれた。
えっ好き、俺と結婚しねぇかお兄さん。
お礼とふじゅ〜を手にすることがあったらまた来る事を言って、二人の元に駆け足で戻る。
すると二人は何やら美味しそうなパフェを手に持っていた。
あらま随分と美味しそうな物持ってんねぇ。
どうにもこのパフェもふじゅ〜無しの無料で楽しめるらしい。
俺ももらってこようかと思った直後、パフェを食べたかぐやちゃんが味がしないと言った。
そういえばここ仮想空間だし、味覚も嗅覚も触覚もねぇんだったわ。
天才科学者がいつかやってくれるでしょと言う酒寄さんに、今すぐがいいと駄々をこねるかぐやちゃん。
仮想空間における味覚の実装…いやぁ厳しくね?
視覚と聴覚に関しては、スマコンとイヤホンがあるからツクヨミでも実装できてるわけだ。
それが味覚、嗅覚、触覚あたりになると、途端に難易度が跳ね上がる。
匂いや味を現実世界で感じ取る器官の鼻と舌になんかつけるとか…いや邪魔だろ。
いやでも、この規模の仮想空間を作ってるツクヨミさんならなんとかしそうだな…。
そんな事を考えていると、いきなり酒寄さんが始まるから来いと言って何処かに駆け出した。
えちょちょちょどうした急に!?
何が始まるのかと問うかぐやちゃんに一瞥もくれずに、待たないから追いついてこいと言うだけで、駆けるスピードを緩めない。
走っても弾むことも上がることもない呼吸と、痛くもならない膝や腰に違和感を覚えながら、前を行く酒寄さんを追いかける。
いや触覚ないのが分かっているとはいえ違和感がすげぇな…慣れるのに時間かかりそう…。
酒寄さんの足が止まったのは、水に浮かぶ木造の足場が大きな鳥居を囲う様に設置されている所だった。
何かのイベント会場かぁ?
ツクヨミってなんかこういう出島っていうか埋立地みたいな造りの場所多いな。
そんな事を考えつつ、走り出した理由とこの場所について酒寄さんに聞こうと近づく。
何やら手元のウィンドウで何かを表示してたらしく、肩口から見えたのはライブチケットの文字だった。
どうやらライブの開始時間に間に合わせる為に走ってたらしい。
スマコン入れるのにかかった5分が無ければもっとスムーズに入れたな…ごめんな…。
隣に行って謝ろうしたが、その時見えた顔がとんでもないくらいにだらしなかった為、一旦声をかけるのを止めた。
普段と随分違う様子に多少戸惑いはしたが、なんでもできるスーパーマン気質な酒寄さんの人間らしい(?)表情が見れた事に少しホッとする。
そうこうしてるうちに、ライブの開始の合図なのか前口上的なアナウンスが会場に響く。
それに応える様に周りの観客から大きな歓声が上がった。
そしてその歓声はカウントダウンへと変わる。
何が始まるのかと問うかぐやちゃんを他所に、カウントダウンは0へ。
すると中央の鳥居の上に、ログイン初っ端の時に会った別嬪さんが現れた。
別嬪さんが、挨拶がてら今日が最高だったかと問うと会場は爆発する様な歓声が上がる。
ほぇ〜…あのキャラクリの時の別嬪さんって「月見ヤチヨね?」っあはいすみませんヤチヨさんですね凄い人気なんですね〜あはは〜…。
独り言の呟きに対して、鬼早いレスポンスで名前の訂正を入れてくる酒寄さん。
これ結構…重度のオタクだねぇ。
後からかぐやちゃんに聞いた話だが、キャラクリ前にちゃんと自己紹介してくれてたらしい。
もう幻想的な風景からえげつない別嬪さん出てきたのが衝撃的すぎて、何も話聞いてなかったんよごめんな…てかあれが月見ヤチヨだったのか。
名前だけならスマコンを使ったことのなかった俺でも知っている。
ツクヨミの管理人兼AIライバー兼ナビゲーター。
そんな彼女だが、正体というものが明らかにされていない。
所謂中の人と呼ばれる人物や、制作者にデザイナーにモデレーター等が一切不明。
企業の合作とか海外の国家プロジェクトとか色んな説があるが、そのどれもが確証に至っていない。
尻尾が掴めなさすぎて、人が演じてるのではなくガチで本当のAIなのでは?なんて説もあるくらいだ。
何でツクヨミのこと知らんのに、ヤチヨさんのことは詳しいのって?
なんかミステリーとかの解明されていない事象に対して、陰謀論とかよくわからん説上げる動画とか見るの好きなんだけどそれに出てきてた。
まぁ、確かにミステリアスな雰囲気出てるなぁ…。
そんな別嬪さん改め、ヤチヨさんに目を向けると、彼女は歓声を上げる観客を一望しながらうんうんとうなづいていた。
その一瞬。
ヤチヨさんの視線が酒寄さんにいった時、何かとても、熱の入った視線に変わった。
それはマイナスなんかじゃない大きなプラスの熱。
信仰?友愛?信頼?
いやどれも違う…なんていうか…そう、親愛。
家族に向ける感じの愛が籠った眼差しだ。
ふむ、この手のライバーと呼ばれる人達って、特定個人に入れ込んだりするの御法度だと思うんだけどな…。
不思議に思っていると、今度は酒寄さんの隣にいた俺と視線がぶつかる。
なんか物凄く眉を顰められて疑惑の視線を向けられた。
………へ?
しかしそれも一瞬、次に瞬きした時には元の楽しそうな表情に戻っていた。
お、俺…なんか、やっちゃいました?
こういう時は大抵何かやらかしているのが定説だが、勿論そんな心当たりなんてない。
ま、まぁ!人違いでしょ!
周りの人が特に反応してないあたり俺宛の可能性が高すぎるという事実からは一旦目を背けることにした。
ていうか見間違いの可能性だってあるし、忘れよ忘れよ。
一人脳内でワチャワチャしてる俺を他所に、ヤチヨさんは皆を誘うと宣言すると、ヤチヨさんや観客達が息を合わせたかの様にlet's go on a tripと叫び出す。
そして、慈しむような口調の歌い出しから、電子の歌姫のステージが幕を開けた。
ミニライブが終わった。
ライブの感想については、そうだな…。
まぁ俺ってばネット掲示板で無功績なのに偉そうに語ってくる口うるさい評論家(笑)みたいな人達並みにうるさいからねぇ…辛口で言わせてもらうけど。
まぁ、控えめに言って…5000兆点だね。
えいやだって無理だろ。
このクオリティのライブに赤点つけるとか。
控えれないって、むしろお前等が控えろよ頭が高いわ。(暴論)
えー、人生25年しか生きておりませんが、我が生涯最高のライブとさせていただきます。
いやもうまずね、歌唱力の高さよ。
艶やかで儚げでそれでいて芯のある歌声が、歌詞に沿った感情を手に取って鼓膜を揺らす。
そして体の動かし方。
一挙手一投足が緩やかで、虚空のキャンバスに線を描くように澱みなく綺麗だった。
それに合わせて集まってくる海洋生物達。
もう海の中にいるようだったわ、溺れそうだったもん俺。
溺れたのはヤチヨさんの魅力に、ですけど…ね?
サビに入れば、さまざまな色の魚達がヤチヨさんを中心に渦を巻くように集まってきて。
暗い海のような空間を鮮やかに彩る魚達の光景は、まさに星降る海のようだった。
俺もうこの瞬間は自認が浦島太郎になってた。
だって数多の海洋生物とド級に美しい乙姫が目の前にいたんだもんしゃーない。
そしてサビの最後に近づくにつれ、ヤチヨさん中心だった魚の渦が全体に広がった。
ヤチヨさんの上に、柱のようにして群がる魚達。
それを目印にするように、会場という大海原を泳ぐ魚達。
まるで俺達観客も仲間であり、ヤチヨさんを輝かせる為の星々の一員だと言われているようだった。
そこで俺は気づいたんだ…。
俺は星(?)であり…魚(?)だったんだって…。
曲が終わりに近づくにつれて、光の柱も渦も粒子のように空気に溶けて消えていった。
流れていた音楽が止み、一つ、また一つと声や拍手が上がっていき、やがて会場は大きな歓声に包まれた。
隣ではあまりの感動に涙を流している酒寄さんと、そんな酒寄さんに大声で呼びかけるかぐやちゃん。
しかしかぐやちゃんの声が届いていないのか、酒寄さんは一切反応しようとしない。
酒寄さん…君も…星と魚と浦島太郎になったんだな…。
自認が迷子になってるんだろうな…わかる…と思っていたらどうやら戻ってきたらしく、今まさにかぐやちゃんに気づいたかのように、えっと漏らした。
何で泣いているのかという問いにも、特に答える素振りのない酒寄さんを見ていると、ファンに手を振り終わったヤチヨさんが喋り出した。
どうも告知の類だったらしく、ヤチヨカップなるものが開かれるらしい。
期間一月の間で、獲得した新規のファン数を競い合う方式で、優勝者にはヤチヨさんとコラボライブができる権利が送られるとのこと。
その瞬間、涙しているだけだった酒寄さんがそこそこデカい声で驚いていた。
恐らくヤチヨさんガチオタであろう酒寄さんが力説するに、配信自体のコラボはあったらしいがライブのコラボに関しては一回もやったことがないらしい。
ほーん、あの感じだったらライブの方のコラボ依頼もひっきりなしにきてそうだけどねぇ…。
まぁでも、あの歌唱力と人気持ってるライバーとライブでコラボなんて、正直二の足踏んじゃうよなぁ…。
歴史的なライブになると説明する酒寄さんに、じゃあ一緒にやろうと声をかけるかぐやちゃん。
尻込みのしの字も知らないようなかぐやちゃんに、私等みたいなモブとはやらないし、大体こういうのは相手が決まってると酒寄さんは反論した。
その瞬間、バーンという轟音が会場内に響き渡る。
音の方に目を向けると、そこにいたのは屋形を引いてる虎だった。
更に屋形が割れて、中から三人の男女…いや全員男子か?…まぁ三人が姿を現した。
会場に響く歓声の大きさや数から人気者だという事は窺えるが、いかんせんどこの誰なのかはさっぱりだった。
知ってる風かつ何故かかぐやちゃんの後ろに隠れている酒寄さんに、彼らの素性を聞く。
歓声の大きさで聞き取りづらかったが、どうやら彼らはブラックおにぎりズというらしい。
爆弾おにぎりとか好きなんかね?
有名なeスポーツのプロゲーミングチームとのことで、会場のモニターからはユニットのロゴやスポンサー企業、大会成績やライブ映像が流されている。
大胆にも真ん中にいた赤髪の…歓声から察するに帝さんが勝利宣言をぶちかましていく。
あれワンチャン炎上するんじゃねぇか?
女性ライバーとライブコラボで炎上するなんて考えはもしかして古いのかしらなんて考えていると、横からかぐやちゃんが大声を上げた。
突然の大声になんだなんだと注目し始める野次馬を他所に、かぐやちゃんも負けじと大胆な勝利宣言をした。
ライバーですらないのに勝利宣言するの無敵すぎるな…。
慌ててかぐやちゃんの口を塞ぎ、何をしているんだと言うように詰め寄る酒寄さん。
一方でライブの終わりを告げたヤチヨさんは分身して、観客一人一人に話しかけていた。
そんなライブ終わりも関係なしと言わんばかりに、一緒にやろうと酒寄さんに言い続けるかぐやちゃん。
それに対して否定の意を示そうとした酒寄さんの声と重なって別の声が入ってきた。
声の主に目をやると、初回ログインの時に色々説明してくれた(全部聞いてない)FUSHIがいた。
そして、無理と言ったFUSHIを軽く咎めるように、こらっという声が聞こえた。
そこには、歌ってる時よりも少し小さくなったヤチヨさんだった。
あ〜…なんか昨夜のおしゃべりしだした辺りのかぐやちゃん位のサイズ感やね。
ヤチヨさんは、ヤチヨカップの参加条件がライバーであることをかぐやちゃんに伝えた。
すると、それを受けたかぐやちゃんはライバーになると即決し、そのままログアウトしていった。
かぐやちゃんの行動力は青天井だねぇ…。
かぐやちゃんのログアウトを見届けたヤチヨは、次に酒寄さんと話し出した。
そこで酒寄さんの肩口から見えたチケットに、握手券付きの文字が入っていたことを思い出す。
ん〜…と言うことは二人っきりにした方がいいよなぁ…。
思い立ったら即行動、若干放心気味になってる酒寄さんに、適当な方便を立ててその場を離れる。
いろさん、俺ちょっとあっちの方見てきていいかい?
会場の造りがちょっと気になってさ、終わったら先にログアウトしててもいいから〜。
俗に言う限界化に達したであろう酒寄さんがこっちに目線でヘルプサインを送ってくるが、俺は空気の読める男なのでスルーした。
とは言っても、ある程度人の捌けたライブ会場を見て回るにもそんなに時間は掛からなかった。
円形の会場をぐるっと回って元の場所に戻ってくるとちょうど話が終わったのか、握手を終えて頭を下げた後にログアウトする酒寄さんが見えた。
一応、1〜2分はちゃんと話せたみたいだねぇ…。
あの限界度合いも見る限り、最悪秒で退散するんじゃないかという懸念もあったが杞憂に終わったみたいだ。
であれば、俺もログアウトするかねぇ…。
そんなことを考えていると、不意にヤチヨさんの声が聞こえた。
「いつも来てくれてありがとうね、彩葉。」
…名前、言ったな。
サービス精神旺盛だなぁと一瞬スルーしようとしたが、拭えぬ違和感が過ぎる。
そうだ、あの酒寄さんだぞ。
ちゃんとしたネットリテラシーがあって、壁のシミになって推しを観察したいタイプのオタクの酒寄さんだ。
このツクヨミ上で彩葉という名前を出すこともしなさそうだし、推しであるヤチヨちゃんの前で自我を出して本名を晒すとも考えにくい。
仮にだ。
仮にヤチヨさん側からの何かしらのアプローチで名前を知れたとしても、それはツクヨミ内の名前である「いろ」の筈だ。
っと、よくないよくない。
こうやって気になることがあると無駄に邪推し始めるのは良くないねぇ…。
そう思いながら、伸びをしつつさっきまで酒寄さんと話してたヤチヨさんの横を通り抜けようとする。
「貴方はどうだった?」
おっと、俺にも話しかけてくるのか。
てっきりチケット持ちだけの特権かと思って油断していたが、まぁそれはそれ。
ヤチヨさんの方に身体を向ける。
「私のライブを楽しんでくれたかな?」
ヤチヨさんの顔は完璧な笑顔を保っていた、
しかし、その言葉の端にはほんの少しだけ、警戒の色が滲んでいた。
いやこれ絶対なんかやらかしたパターンだな…。
とはいえ、ツクヨミ初ログインが今日の俺にそんな心当たりはない。
こうなってはどうしようもないと、直接本人に聞くことにした。
あ〜すいません、私ってなんか失礼なことしてしまいましたか…?
ライブ開始前にも怪訝な目で私の事を見てらっしゃいましたし、今もちょっと言葉尻が鋭いというか…。
そこまで言うと彼女の目に少し驚きが宿った。
しかし、それもまた一瞬で元に戻る。
ポーカーフェイスだ…一流のライバーさんは大変そうやねぇ…。
客商売の大変さを憂いている傍ら、そういえばワンチャンこれなのでは?と思い当たる点を一個あげる。
あ〜、もしかしてチケット無しだとここ入っちゃダメだったりします?
そう言うと、それは別に問題ないとヤチヨさんは言った。
あのチケットは一枚につき、どうやら二人まで同行者がいてもいいものだったそうだ。
ふぇ〜…であればよかったです。
どうやら思いついた理由ではないらしく、口ではよかったと言いながら、内心はじゃあ本当に目をつけられる理由がないんですが?と焦り散らかす。
とりあえず、変に焦ってることは伝わらないように適当に話を繋げる。
ツクヨミ初ログインな上に、さか…じゃない。
案内役の知人が、理由も話さずに会場にダッシュするもんだから焦りましたよ。
すいません今も焦り散らかしてます。
焦りすぎて酒寄さんの苗字を滑って出しそうになってしまった。
その瞬間、またヤチヨさんの目に別の感情が宿った。
それはライブ開始時の時と同じく怪訝そうで。
そして、やはり少しの警戒心も含んでいた。
ふむ…。
正体不明のツクヨミの管理人兼AIライバーという立場。
さか…の時点で反応するし、彩葉という現実の名前を知っている。
ライブ開始時に酒寄さんに向けてた熱の籠った親愛を感じる視線。
そして俺を疑っているというか、警戒しているというか…まぁ敵意とまではいかないがあまりいい目で見ていない。
あと実をいうと、ログイン直前の時にヤチヨさんに出会った時、妙な知ってる感というか…謎の既視感というものを何故か感じていた。
正体不明。
酒寄彩葉。
親愛。
俺への警戒。
謎の既視感。
点と点が、繋がる感覚。
たった一つの真実を見抜くじっちゃんの名にかけた灰色の脳細胞が出した結論は。
あ〜…酒寄のお母さんかこれ。
あもう絶対これやん、そうとしか思えん。
娘も使ってるであろうツクヨミでの活動はミステリアスなヤチヨさんというキャラクターの性質上、バレるわけにはいかない。
酒寄さんの名前を知ってるのは、そりゃ勿論親だから。
酒寄さんの話を省みるに現実では反りが合わなかったみたいだが、いやだからこそ、ツクヨミではヤチヨさんという一枚の壁はあるものの親愛を表に出している。
俺への警戒は、娘に変な虫がついたからだ。
ゲーム内だけの知り合いならまだしも、苗字の一部まで出してくる辺り、現実での接点が窺える。
そんな匂わせを親が食らったら気が気じゃないだろう。
後、酒寄さんの母親像は詳しく聞いてるわけではないが、断片を組み合わせるとやたらとハイスペック超人なのが見えてくる。
ハイスペック超人なら、このツクヨミの管理人もライバーも同時にやれそうだ。
謎の既視感は、多分酒寄さんから来たかな?
ここだけふわっとしてる感あるけど、まぁ他が納得いってしまったから、ここもそういうことにします。
あぁ…そういうことか…。
連鎖的に謎が解けてしまった事によるあまりの気持ちよさに、名探偵みたいな言葉が思わず口から漏れ出してしまった。
それを聞き取ったヤチヨさんの目が、驚きで少し見開かれる。
まぁそりゃ、大事な高校生の娘に明らか成人の男性が近くにいる、そりゃ警戒するよ。
とりあえずヤチヨさんの立場もあろう。
事の詳細は語らず、酒寄さんの害ではない事をアピールする。
心配しないでください、手を出すつもりはありません。
うん、シンプルで伝わりやすい言葉選びだ。
自分の言語センスに惚れ惚れしていたが、その時自分との会話にそれなりに時間を食っているのを今更に心配した。
ヤチヨさんはトップライバー、中身が超人とはいえ一分一秒も惜しい筈。
自分から会話の風呂敷を畳むように言葉を紡ぐ。
あぁそうだ。
ライブの方ですか、人生で一番と言っても良いくらいとても楽しませていただきました。
次回のカップ戦の報酬ライブも期待しております、それではまた。
そう言ってヤチヨさんに背を向けながら軽く手を振ってツクヨミをログアウトする。
あまりにも相手の意図と空気が読めてしまい、気持ちよくなりながら青い花弁になってツクヨミの空に散っていくのであった。
人の機敏はかなり察することができるのに、致命的な部分で意図の汲み間違える男。
てか書いてる時に思ったんですけど、ヤチヨ視点不気味すぎんか。
ヤッチョ「あー彩葉もちゃんと来てくれいや待てお前誰だそこの男ガチで知らん」
ヤッチョ「私がかぐやの時いなかったしちょっと探りを…え、警戒してんのバレてる」
ヤッチョ「えまってさか…って絶対彩葉の苗字だよねなんで知ってんの」
ヤッチョ「あぁそういうことかって…えちょっと何処まで知って…手を出さないってまさか輪廻のことまで知ってるの!?」
ヤッチョ「それまでに沢山別のライブもあるのに、ヤチヨカップのライブを次って言ってる…この人本当に…何者?」
あとツクヨミのユーザー名の話とかは勝手に生やしました。
現状がいろで、プロデューサー始めてからいろpに変わったってことにしますすいません。