え、隕石逸らす為だけに転生させられたんすか?   作:饅頭の皮

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7. 配信強制参加から初KASSENまで

 

 

 

元々適性自体はあったのだろう。

 

かぐやちゃんが配信者になって以降、かぐやちゃんを応援してくれる人は右肩上がりで増えていった。

 

元来の人を惹きつけるカリスマ性で客に配信をクリックさせる。

 

開いてみればあら不思議。

 

宇宙人特有の常識はずれな言動と持ち前の愛嬌で、配信が終わる頃にはチャンネル登録をしている。

 

まるでマジックみたいだ。

 

まぁ大袈裟には言ったが、実際そうなってるんじゃないかというスピードで登録者数が伸びている。

 

言ってしまってはなんだが、そこいらの配信者が目じゃないくらいだ。

 

じゃあ、なぜかぐやちゃんは他の人とは一線を画す伸びを見せているのか。

 

一つはまぁ配信頻度だろう。

 

宇宙人のかぐやちゃんの予定に学校なんてものは存在しない。

 

なんなら仕事なんてものも存在しない。

 

まぁ今は配信活動をやってふじゅ〜を稼いでいるから、それが仕事といえばそうなんだけども。

 

と言うわけで、かぐやちゃんは生活の殆どを配信や動画撮影に充てている。

 

回数が多ければ、視聴者が見るコンテンツの量も増える。

 

常に新しいものを視聴者に届けることが出来ているのは、今のネットの流行り的にもかなり追い風になっているようだった。

 

でもこれに関して言えば、一般の人はしょうがない。

 

だって学校はほぼ避けて通れないし、仕事だって蔑ろには出来ない。

 

職業がインフルエンサーですとか配信者ですとかなら話は別だが。

 

そういう意味では、かぐやちゃんと他の人を同列として比較するのは不公平だろう。

 

まぁでも問題はない。

 

だって、行動回数の多さは飛躍要因の割合としては少ない方だから。

 

有利なポイントではあるが決してメインのポイントではない。

 

では何がかぐやちゃんを今巷でちょっと話題の配信者にしたのか。

 

それは、良い意味で厚顔無恥なところであると思う。

 

無知と言っても別に恥じらいがないわけではないが、シンプルに何かをする時の照れや羞恥心みたいなものが少ないのだ。

 

多分照れとかそういう感情よりも、面白そうとかやってみたいの感情が強いのだろう。

 

他人が多少二の足を踏んだり臆したりするような場面でも、かぐやちゃんは勿論止まらない。

 

だから、グリーンバックも何もない俺の部屋、黒一色で無地のダボダボTシャツでも、ダンス動画を撮るし。

 

告知したツクヨミ路上ライブの観客が、たったの三、四人でも最後まで歌い切るし。

 

盛れなかったメイクの動画も失敗版としてアップするし。

 

女の子がしちゃいけないような顔で、太巻き食べる配信するし。

 

作り上げたペットボトルロケットの試射を、そのまま配信部屋にしてた俺の部屋でぶっ放すし。

 

そのどれもが、一生懸命で全力で、それでいて心底楽しそうにやっているのだ。

 

いや楽しそうに部屋の中でロケット打つな、賃貸なんだぞ。

 

まぁそれが見ている人からしたら、好印象に残っているのだろう。

 

実際に投稿された動画のコメント欄には毎回と言って良いほど、何やっても楽しそうなかぐやちゃんが好きといったニュアンスのコメントが残されている。

 

他人を楽しませる為には、まず自分が楽しむ。

 

照れや恥じらいに邪魔されずにそれを無意識で出来てしまうのは、間違いなくかぐやちゃんの長所だ。

 

そして、厚顔といったが別に礼節を欠いているとか図々しいといった訳ではない。

 

…いや、人によっては図々しいと言う人もいるのかな?

 

身近に数字を持っているインフルエンサーに、デビューして間もないにも関わらずコラボするのって。

 

変に遠慮せずに周りを頼る事がある種得意なかぐやちゃんは、コラボに関しても積極的だった。

 

特に多かったのは、「ROKA」と「まみまみ」という方とのコラボだ。

 

このお二方は、ツクヨミ内では10万人を超えるファンを持つ人気インフルエンサーである。

 

まぁ蓋を開けてみたら、何時ぞやのカフェに居た酒寄さんの友達一号と二号だった訳だが。

 

いやというかあの三人、今はかぐやちゃんも輪の中に馴染んでるから四人か。

 

スペックおかしくねぇか?

 

なんでもできる超人、ファン十万人越えインフルエンサー二人、駆け出しのスーパールーキー配信者(こっちも大概なんでもできる)。

 

加えて全員顔面偏差値青天井。

 

キセキの世代かよ、一極集中させるなこんな劇物みたいな才能達を。

 

まぁその酒寄さんの友達一号と二号も配信活動のような事をやっていると聞き、かぐやちゃんは即座に一緒に動画を撮ろうと提案していた。

 

元々二人もかぐやちゃんとは仲良くなりたかったし、もっと知りたかったとの事でこれを快諾。

 

身内贔屓じゃんとか、それってお前の功績って言えるのとか、そういうあんまり良くない意見がくる可能性になんて目もくれず。

 

やりたいという自身の欲求に良い意味で忠実だったかぐやちゃんは、このコラボでより勢いをつけることが出来た。

 

遠慮なんて言葉が無さそうに距離を詰めてくるのに、不快感を一切感じさせないかぐやちゃんの立ち振る舞いは、多くの人を虜にしている。

 

焼け焦がしていると言っても、過言じゃないかもしれないね。

 

そういう部分もかぐやちゃんの長所と言えるだろう。

 

まぁ色々と語ったが、言いたいことは一つ。

 

かぐやちゃんはとても魅力的で、今や多くのファンを持つ配信者の一人だ。

 

なので、一配信者としての自覚を持って行動する必要がある。

 

そう、だから…あの…えー…

 

 

 

四人でのコラボ配信に俺居るの良くないから帰っていい?

 

 

 

その言葉を聞いて笑顔でだめと断るかぐやちゃん。

 

ん〜そっか駄目かぁ〜いや〜困ったなぁ〜!

 

そう言いながら、お宅の娘さんに配信者として守るべきラインとか大事な事とか教えてないんかという意を込めて酒寄さん、もといいろPの方を見る。

 

頭のデカい狐の着ぐるみは、イタズラがバレた子供の様に、慌てて視線を横に逸らした。

 

着ぐるみの中からは、やたらと綺麗な口笛も聞こえてくる。

 

あれ面倒臭いからそのまま放置してた感じだな…。

 

あんたがプロデューサーだろう、しっかりしてくれ…。

 

まぁなんでこうなったのか、事の経緯を説明しよう。

 

夏休みに入ってかぐやちゃんと友達二人の関係が始まりだした訳だが。

 

そうなると勿論配信だけでなくプライベートでも遊ぶ様になる。

 

例に漏れず、かぐやちゃんとその二人、予定が空けば酒寄さんも一緒に遊ぶ様な仲になった。

 

その際に、稀にだが俺も呼ばれる事があった。

 

呼んだのは勿論かぐやちゃんで、最初は普通に断っていた。

 

しかし、かぐやちゃんの兄という設定なのに変に余所余所しすぎると疑われるかも、という酒寄さんの意見もあって結局ご随伴に預かる事にした。

 

遊ぶと言ってもツクヨミ内をぶらついては手頃なスペースで雑談する事がメインだったのだが、逆にそれが良かったのか、酒寄さんの友達一号と二号の両方とある程度仲良くなる事が出来た。

 

最初にツクヨミ内で顔を合わせた時は警戒されたけど…。

 

最初の時だけ、かぐやちゃんが情報共有忘れてて事前情報なしで対面しちゃったんだが…。

 

その時に、友達一号改め綾紬さんからは壺を売りつけられる…?と言われて、二号改め諫山さんからは怪しい宗教に勧誘される…?と言われた。

 

えなになに心当たり全くないんだけど!?

 

面食らってたら隣で酒寄さんが、初対面の時に良い稼ぎ話があるって誘われたなどとほざき始めた。

 

言ってないが!?!?!?

 

どうやらカフェであった時の印象の中に胡散臭いというのがあったらしく、そういう発言にいたったとの事。

 

因みにこの事を知ってたから悪ノリしましたと後から酒寄さんに言われた。

 

君は俺の社会的評価をおもちゃか何かと勘違いされていらっしゃる?

 

まぁそんなこんなで、ちょこちょこ四人の遊びに付き合う事があった。

 

で、今回もその一環だろうな〜という事で誘いは了承。

 

ただ残業があったので遅れる旨だけ、酒寄さんに連絡を入れた。

 

その後、残業中だと言っているのに趣味の天体の話をしてくる同僚の絡みに耐え、ぶつかりおじさんに駅でぶつかられるというアクシデントにも挫けずに帰宅。

 

ダイヤモンドだけでできた惑星とか微妙に気になる話してくるな。

 

あとおじさんに謝ろうとして声かけたのにガンスルーされた…泣きそう。

 

そのまま着替えだけ済ませてツクヨミにログインして、集合場所に指定されてるゲーム専用施設のエントランスホールへ向かった。

 

初めて来たが為に施設の説明をしてくれているFUSHIの話を全スキップし、酒寄さんになにこれどないすればええのー?と聞いて、あれやこれやと操作している内に広い個室みたいなとこに五人でワープした。

 

ほへ〜なんかいい作りしてんね〜と間抜けな面で部屋を見渡していたのも束の間。

 

視聴者の皆んなに向けて、今からβテストとして追加された新モードのZINTORIをやっていく旨の宣言をしているのが耳に入った。

 

思わずへぇ???と気の抜けた声を上げた。

 

えちょい待ち視聴者ってなにどうした?

 

すごい勢いで振り返ってみれば、何処にいたのか今まで気づかなかった浮遊型カメラに向けて話しかけてるかぐやちゃん。

 

嫌な予感がして、大分慣れ親しんできた空中のウィンドウを操作し、かぐやちゃんのチャンネルを開く。

 

嫌な予感が的中したのか、そこにはオンエアの文字。

 

恐る恐るコラボ配信という題名がついてるサムネイルをタッチするとあらびっくり。

 

見覚えのある美少女四人とフルフェイス骸骨の不審者。

 

顔面格差社会を表現した一人ブスの五人囃子みたいな光景が画面に広がっていました。

 

かぐやちゃん配信してんの!?聞いてないんだが!?

 

そう言ってかぐやちゃんに物凄い勢いで近づいて肩を掴み揺らす。

 

揺らされるかぐやちゃんは、エーイッテナカッタカナーと棒読み気味で返してきた。

 

はめられた…!

 

それでまぁ流石に良くないでしょって事でなんとか言いくるめようとして、冒頭に戻るわけだ。

 

結局帰宅に関しては、にべもなく断られた訳だが。

 

だが俺は諦めん…諦めんぞ!!

 

とりあえず、はめた本人のかぐやちゃんと恐らく共犯である酒寄さんは、現状頼りにならん。

 

という訳で人気インフルエンサーのお二人に協力を仰ぎに行った。

 

こ、これコラボ配信って事は二人も配信してるよね!?さ、流石に男が出るの不味いよね!?ね!?

 

悲しいかな、大丈夫ですの5文字で片付けられました。

 

あの俺が大丈夫じゃないんです。

 

ムンクの叫びかと言わんばかりに悲壮感に満ち溢れた顔をしていたら、かぐやの兄なんだから配信でても問題ないでしょと酒寄さんが言ってきた。

 

確かにそうではある…。

 

過去の配信、とりわけ雑談配信の中でかぐやちゃんはよく俺や酒寄さんの事を話しているのだ。

 

その時に、俺のことに関しては兄として視聴者に話している。

 

そこの辻褄合わせに関してはちゃんと指導してくれたのねプロデューサー。

 

とは言っても、身内(仮)だからといって出しゃばっていい訳ではないんですけどね…。

 

こうなったらかくなる上は、視聴者に頼るしかない。

 

俺は近くに浮いてるかぐやちゃんの物であろう浮遊型カメラに向き直り、神妙に語り始める。

 

兄とはいえど、視聴者が見にきているのはかぐやちゃんだろ?

 

視聴者のニーズの中心はかぐやちゃんだ。

 

そこに俺が居たんじゃ、注文してた品と違うものが来た様なもんじゃないか。

 

そもそも配信という形で配信サイトに公開している以上、配信している間は少なくとも視聴者のニーズに応えてあげる責任が、配信者にはあると俺は思っている。

 

それに世の中には、親族といえど推しの近くに異性がいるのが我慢ならない人も居るんだ。

 

色んな人が見る配信なんだぞ?色んな配慮をしなくちゃいけないのは当然。

 

そんなのしてたらキリないって思うかもしれないけど、俺の件はできるしやるべき配慮だ。

 

というわけでぇぇぇ!!!

 

視聴者諸君!!!君たちからも俺がいらないという事をコメントしてやってくれぇ!!!頼むぅ!!!

 

さっきまでの神妙な雰囲気は何処へやら、浮遊型カメラの前で手を合わせて頭を下げる成人男性。

 

しかし残念かな、同じくかぐやちゃんの配信を手元で開いた酒寄さんがコメントを一部抜粋して読み上げてくれたが。

 

 

 

「やれよ」

 

「にげるな」

 

「丁度切らしてたからいる」

 

「妹の言うこと聞けないの?そんなんじゃ甘いよ」

 

「NO残業で帰りたいから頑張って上司に言い訳してるワイみたいで草、帰らせないよ〜ん」

 

 

 

旗色が悪いみたいっすねこれは。

 

ついでに口も悪いなネット民は。

 

一縷の望みをかけ、綾紬さんや諫山さんの方を見る。

 

しかしこちらも同じ結果、帰らなくていいという意見が大半だった。

 

それでいいのか視聴者よ…。

 

というかコメント欄を見る限り、視聴者に頼み込む前のニーズや責任云々の話が逆に墓穴を掘ったらしい。

 

これのせいで、俺が視聴者の事を考えてくれてある程度配慮もできる良い人みたいな感じになってるな…。

 

妹と、ひいては視聴者までにも配慮した提言ができる兄上優しいしぐう有能というコメントが目に入る。

 

いや違います炎上したくないから命乞いしてるだけです。

 

かぐやちゃんの配信の事とか視聴者のニーズの事とか殆ど口から出任せで言ってるだけなんです。

 

しかし、こうなってしまってはもうどうしようもない。

 

万策尽きて地面に手をつき自身のネットでの立場にサヨナラバイバイを告げていると、かぐやちゃんが隣にしゃがんできた。

 

そして一言。

 

 

 

「かぐやと…一緒に遊ぶの…いや…?」

 

 

 

いやいやいやそぉんなことはけっしてないよぉ!?

 

でもその男女間の複雑なあれこれとかねぇ色々…。

 

なんとか弁明しようとする俺だが、そのタイミングで酒寄さんがまたコメントの一部を抜粋して読み上げてくれた。

 

 

 

「妹泣かせるってマ?」

 

「お前だけ月に帰れカス」

 

「かぐやちゃんの故郷が汚れるから帰るなカス」

 

「じゃあ土に還れカス」

 

「月の兎は皆んなお前のこと嫌いだって」

 

「お兄ちゃんの風上にも置けない」

 

「臭いから風上に置くなそんなカス」

 

 

 

お前ら人間じゃねぇ。

 

結局視聴者含め全員からOKが出てしまった為、この日初めて俺はかぐやちゃんの配信枠にゲストとして参加するのだった。

 

 

 


 

 

 

まぁそんな訳で、四人のコラボに巻き込まれる感じで参加する事になった。

 

こうなったらもうやるしかない。

 

今回五人で集まった理由は先述した通り、βテストとして追加されたモードで遊ぶ為だ。

 

ルールに関しては、配信という体裁をとっている以上説明が必要だった為、酒寄さんが改めて皆んなに説明してくれた。

 

いろPいつもありがとう。

 

聞いた感じのZINTORIのざっくりルールとしては、五対五で行われるチーム戦。

 

マップの両端にそれぞれのチームのリスポーン地点があり、試合中に体力が0になった場合は無制限で何回もそこから蘇れるらしい。

 

マップには、両リスポーン地点から少し行った所に一箇所ずつ、両リスポーン地点から同じだけ離れたマップ中央に一箇所の計三箇所に、拠点と呼ばれる場所がある。

 

勝利条件は至って簡単。

 

この三つの拠点のうちの二つ以上を占領し、各チームに設けられているゲージを進めて、パーセントを先に100にした方の勝ちだ。

 

まぁFPSとかで良くありそうなルールだな。

 

そもそもツクヨミでの戦闘が今回初めてなので、まだいくつか聞きたいことはあったが、習うより慣れろというかぐやちゃんの一声で、とりあえずマッチングにエントリーする事に。

 

しかしここで一悶着。

 

初心者である俺の武器どうする問題だ。

 

そんな概念を知らない俺は、丸腰のままマッチング準備完了の操作をウィンドウからしていたところ、綾紬さんが慌てて止めてくれた。

 

このKASSENには、剣にハンマーに銃に槍にと多種多様な武器が用意されている。

 

果たして何を使うのが正解か。

 

といっても別にガチでやる訳じゃないから好きなのでいいと言われた。

 

ん〜まじでなんでもいいんだよなぁ…。

 

ゲームに関しては一にも二にも先にまずやってみてから考えるスタンスの俺からしたら、最初の一歩目なぞぶっちゃけどうでもいい。

 

かぐやちゃんがコメント欄で俺に使ってほしい武器のアンケートを取ろうとしていたが、碌なことにならないと酒寄さんが止めていた。

 

うん…だってもう既に武器は甘えとか丸腰で行けみたいなコメントで溢れてたし…。

 

それに加えて酒寄さん曰く、まだ武器格差の調整みたいなのが行き届いてない為、良くない武器を意図的に握らせられる可能性もあるだとか。

 

ゲームあるある来たな、環境の調整が一生上手くいかないやつ。

 

まぁそんなこんな紆余曲折あり、最終的にはこの中で一番KASSENが上手い酒寄さんに決めてもらった。

 

酒寄さんが選んだのは長距離用の銃、所謂スナイパーと呼ばれる物だ。

 

パーティーの武器構成として、かぐやちゃんがハンマー、酒寄さんが双剣、諫山さんも双剣(であってるよな?食器?)、綾紬さんが鉤爪と、ものの見事に近距離戦特化な構成になっていた。

 

そこで一人くらいは遠距離専門がいた方が良いよねっていうので、長物をチョイスしたらしい。

 

成程これは理にかなっている。

 

ということで初期装備である飾り気なしの無骨なスナイパーを装備して、準備完了の操作をした。

 

ここで俺がやるべきことは二つ。

 

キルをすること?いや違う。

 

でしゃばらないことと足を引っ張らないことだぁ!!!

 

目の前にマッチング完了のウィンドウが表示され、部屋の壁に設置されていた馬鹿でかい扉が開いた。

 

自身の両頬を叩き気合を入れ、眩い光の向こうへ扉をくぐって進んでいった。

 

テンション違いすぎだろと苦笑いしている四人が見えたが、こっちは炎上しない為に必死なんだ。

 

っしゃぁ!!!いくぞぉぉ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて気合を入れた最初の試合を終えた俺は。

 

仁王立ちでブチギレている酒寄さんの前で正座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

い、一体何が…行けなかったんでしょうか…。

 

い、いろPさ〜ん?お、落ち着いて深呼吸でも〜…。

 

そう言った瞬間、酒寄さんは持っていた双剣を地面に突き刺す。

 

あ、ヤバいですねこれは。

 

あまりの威圧感に顔を上げれずに項垂れる。

 

周りの三人は苦笑いしながら、この状況を静観していた。

 

いやあの助けてほしいんですけど。

 

因みに三枠分の視聴者は、みな一様に草やwwwというコメントをして面白がっていた。

 

いやあの助けてほしいんですけど!?

 

しかしその思いも通じず、威圧感に反してやたらと優しそうな声で酒寄さんが語りかけてきた。

 

曰く、貴様に与えた作戦はなんだと。

 

与えられた作戦は至ってシンプルだった。

 

前には出ずに拠点制圧にも直接身体で参加しないで遠くから射撃、もしくは裏取りしてくる敵の索敵と射撃による撃退である。

 

その作戦を答えると、堰を切ったように酒寄さんが叫び出した。

 

 

 

「じゃあなんで中央の拠点制圧時に私の隣にいたんですか!?なんで後ろ下がらずにそのまま近接で戦闘し始めちゃうんですか!?しかもいの一番に先陣切って!!挙句スナイパーの銃口持って棍棒みたいに振るい始めるし!!そっちのキル数の方が射撃のキル数より三倍は多いし!!」

 

 

 

い、いやちゃうねん…。

 

裏取りしてきた敵にな?弾が全然当たらなくてな?

 

そのまま放置する訳にもいかんし、しゃーなし近距離戦闘でしばき上げたのよ。

 

その時丁度拠点の近くでさ?

 

しかも制圧まであとちょっとだから、制圧したから下がろうおもてな?

 

ほんで制圧終わったらその瞬間にまたぎょうさん敵が来てな?

 

下がるに下がれずそのまま…ズルズルとな…。

 

その波退けた後余裕あったのに何かと理由つけて居座ってましたよね、と底冷えしそうな声で酒寄さんに指摘された。

 

はいすいません隠れてチマチマ射撃するより近距離でドンパチかます方が楽しくて居座りました。

 

素直に土下座すると酒寄さんは顔を手で覆いため息を吐いた。

 

ぬ、ぬぐぅ…いや、しかしまだ一戦目!

 

むしろここで近接向きな戦い方を好んでいると知れたのはデカいんじゃないかなぁ!

 

そう言いながら自身の武器スロットを操作する。

 

次に装備したのはハンマー。

 

流石にこのムーブで長距離武器を握らせるのはまずいとのことで次に何を使わせるかという話になったが、その際にかぐやちゃんがおそろっちにしようと提案してきた。

 

近接五人になるけどさっきの試合も途中から遠距離要員いなかったし、まぁいけるやろ!

 

自覚あったんですねという諫山さんのツッコミは聞かなかった事にして、準備完了の操作をする。

 

つ、次こそは無難に試合を終わらせるぞ!

 

ん?いろPさんどした?

 

…え、下手したらトラウマものだから、敵の口に銃口突っ込んでから撃つのやめろって?

 

いやでも、この方が確実にキルできそう…顔だったら判定何処でもダメージ一緒?

 

アッハイ…スイマセン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で武器を変えての二戦目を終えた俺は。

 

仁王立ちでブチギレている酒寄さんの前で正座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

い、一体何が…行けなかったんでしょ(ry

 

酒寄さんは怒りを抑えれないのか、踵をつけたまま爪先で地面を叩き続けている。

 

…なんか既視感あると思ったらあれだ、馬がキレてる時に地面蹴るあれに似て待って待っていろPさんその剣を納めよういや待って馬面は本当に言ってn。

 

弁明虚しく、酒寄さんが振るった凶刃は俺の首を跳ね飛ばした。

 

いやしかしね?俺もあんなにハンマーの才能がないと思ってなくて…。

 

首がない事を特に気にも止めず会話をし続ける俺に、ドン引きながらあれは才能がないという類いじゃないと言う綾紬さん。

 

それに続けるように、貴方に与えた作戦は何か復唱するように酒寄さんが言ってきた。

 

えー作戦はですね、間合い管理難しいし後隙が大きいからROKAさんとツーマンセルで基本前衛を任せて、相手の隙を見て重い一撃を入れる感じです。

 

 

 

「だったら何で前衛張ってる私と同じラインで戦ってるんですか!?しかもよく見たらハンマー持ってないし!!何ですかぶん投げたら戻ってこなかったって!!当たり前でしょうが!!探して戻ってきた後戦い出したと思ったら、敵との間合いガチ恋距離だし持ち手の部分しか使わないし!!」

 

 

 

い、いやちゃうねん…。

 

ROKAさんの相手してる前衛が結構強めでな?

 

倒されそうになったんだけど、距離ちょっと遠くて攻撃届かんおもてな?

 

その位置からハンマー投げてカバー通したねん。

 

なんかいろPさんの武器とかは投げても戻ってきてたからな?

 

俺のも勝手に戻ってくると思ったら、そのまま空の彼方に消えてってな…。

 

私のはブーメランも兼ねてるから戻ってくるんだと、頭を抑えて天を仰ぎながら叫ぶ酒寄さん。

 

あ、そういう機能とかちゃんと付いた武器なのね…。

 

え、間合い管理が終わってるのは?

 

すいません身体が闘争を求めた結果、ハンマーを振るうより先に拳を振い足を出してしまいました…。

 

なんでハンマーをちゃんと使ってくれないのと俺の肩を掴んで揺らしまくるかぐやちゃんを他所に、間合い管理のガバの理由を聞いてくる諫山さんの質問に答える。

 

それを聞いた諫山さんは苦笑いを浮かべながら、これなら何も持たせないで格闘スタイルで戦わせた方が良さそうだねと言った。

 

ほーんと思いながら武器スロットのハンマーを外して武器一覧をスクロールしていると、諫山さんの言っていた格闘スタイルなるものであろう、手甲と脚絆を見つけた。

 

早速装備してみたが、その横から酒寄さんが諫山さんの発言に対しての懸念事項を挙げた。

 

この格闘武器というのは、とにもかくにもセンス頼りらしい。

 

まぁ言っちゃえばリアルで喧嘩してるのとあんまり変わんないしね。

 

その上、パンチだけで戦う人や蹴り主体の人、投げや関節技を使う人など、多種多様な戦い方ができる故に方向性を固めづらく本人に合う正解の型が見つけにくいらしい。

 

更に、当然のように武器を持っている相手と比べてリーチがかなり短い為相手との戦闘で勝ちを拾いにくい。

 

他にも、使い手があまり居ないからアプデで強化が殆どされていない、武器の拡張性が少ない等々…。

 

格闘使いが嘆いているコメント欄の様子も鑑みるに、かなり初心者には向いてなさそうな武器だ。

 

ん〜…まぁ、一旦格闘でやってみるよ。

 

何事もまずやってみない事には始まらないし何も分からないからな。

 

そう言ってウィンドウから準備完了の操作を行う。

 

コメント欄には同志が増えるチャンスが来たのを喜んでいるのか、格闘はいいぞおじさんや格闘から逃げるなおじさん、もはや待ちきれないのか格闘武器用開幕初動指示コメおじさんもいた。

 

よし、今度は失敗しないぞ。

 

ちなみに応援コメントに混じってどうせまた正座コースとかコメントしてた奴は、後で見つけ出して個人的にシバきます。

 

三度目の正直という言葉はこの時の為にある。

 

既に嫌な予感がしているのか苦笑いしている綾紬さんと諫山さんを尻目に、かぐやちゃんと二人でえいえいおーと鬨の声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして拳で語る事を決意した三戦目が終わった俺は。

 

仁王立ちでブチギレている酒寄さんの前で正座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度あることは三度あるという言葉はこの時の為にある。

 

なんつって〜…あ、あはは…は…ハイ…スイマセン。

 

もはや反応すらしなくなった酒寄さんの圧に負け素直に謝罪をする。

 

誤解の無いように言っておくが、今回に関しては酒寄さんから与えられた作戦はちゃんとやった。

 

ゲームにも勝った訳だし。

 

じゃあ何で酒寄さんがこんなにキレているのか。

 

従来から三段ほど声が低くなった酒寄さんが、配信者がゲーム配信をする上で大事な事は何だと思うか聞いてきた。

 

あ〜…い、色々とあるとは思いますけど、やっぱ…その…正々堂々というか、く、クリーンにプレイする事…かなぁ〜…。

 

 

 

「そこまで分かってて!!何で最初に接敵した時の行動が指で相手の目を刺し潰すことなんですか!?その後顔面に膝入れるのも治安悪すぎますよ!?しかも三回!!それにリスポーンした敵の武器を遠くに蹴り飛ばすのも駄目です!!武器無し相手にほぼ蹂躙だったじゃないですかあんなの!!」

 

 

 

か、開幕初動指示コメおじさんがコメントでやれって言ってました!!!

 

躊躇なくコメント欄の視聴者に責任をなすりつけようとするが、そのコメントを拾う方が悪いと双剣の峰で頭を叩かれた。

 

はい、コンプライアンス違反ですね。

 

いや〜…なんかやってる時は別にそんな怒られるような事やってないって感じなんだけどさ。

 

戦闘終わって改めて言葉にされると、まぁまぁえげつない事してる…かもな。

 

いやでも勝負事に正々堂々なんぞ持ち込まれましても…。

 

こちらからは卑怯とは言うまいなとしか返せん訳でして…。

 

未だにぶーたれる俺の頬を両側から握りながら、ガチ勝負系配信じゃなくてエンジョイ系配信でうちはやってるんですと恐ろしい笑顔で言ってきた。

 

着ぐるみなのに笑顔貫通して見えたよ、恐ろしいね。

 

まぁ確かにそういう意味では俺は空気読めてなさすぎたと反省し、三人の浮遊型カメラを集めて土下座しながら謝罪をした。

 

コメント欄は八割が困惑で、残りの二割はやれ金の卵だのジャパニーズホープだのこれは学会送りだの大分怪しいコメントで埋まっていた。

 

怪しいコメントは一旦スルーし、困惑気味のコメントに目を軽く通す。

 

性格と戦い方がチグハグって…視聴者から見たらそ、そんな変かね?

 

ん?雰囲気とか態度とかが柔らかめなのに敵の倒し方だけピンポイントで怖い…?

 

そ、それは〜…シンプルにごめんなROKAさん…。

 

俺としては一生懸命戦ってるだけで、特段こういう倒し方しよう!みたいなのって考えてないんだ…。

 

俺の謝罪を受けて、優しい事自体は分かっているから気にしないでと、手をアワアワさせながらフォローしてくれる綾紬さん。

 

そしてそのまま、何か投げても問題のない物を握らせるのはどうかという改善提案までしてくれた。

 

投げてもいい物、例えば投擲武器とかならバトル中にまた探し回る必要はない様な仕様がある筈だし、それを握っている間ならステゴロも多少は鳴りを顰めるのでは。

 

そういう意図の入った提案を受け、そいつは名案だと即座に武器一覧のウィンドウを開く。

 

投擲武器の中にはナイフや斧、果てはヨーヨー等があり、とてもバラエティに富んだラインナップだった。

 

その中から俺が選んだのはダイナマイトだった。

 

爆破までの時間管理が難しいが、爆風による当たり判定が大きい為比較的に当てやすいところに目をつけた。

 

格闘武器の特徴でもある中途半端に余る武器スロットに、ダイナマイトをセットする。

 

何を選んだのかと問われたので素直にダイナマイトと答えたら、酒寄さんから本当に大丈夫なのかという意が込められた視線を向けられた。

 

準備完了の操作をしていた俺はそれを受け、背を向けたままサムズアップを返した。

 

この流れ見飽きた、はいはい正座などで溢れかえっているコメント欄が目に入るがそんな事で挫ける俺ではない。

 

今度こそ、俺は怒られる事なく、コンプラ遵守のクリーンなプレイでゲームを最後までやり切る。

 

確固たる決意を元に、配信時間的にも恐らく最後になるであろう一戦に臨むのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして運命の最終戦を終えた俺は。

 

仁王立ちでブチギレている酒寄さんの前で、頭からたんこぶを三段生やしながら正座していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あれ?ツクヨミって腫れるみたいな概念ないと思うんだけどな…。

 

コメント欄では、あほくさ、知ってた、解散、もう見たなど好き放題言われていた。

 

っていうか配信枠を立てている三人共が、最終戦後に俺が説教されるかのアンケートをマッチング前にコメント欄に貼り出していた。

 

お、おでのしんようが…。

 

仲良くなってそう時間が経ってない二人にもそこそこ雑に扱われてきている事実に心を痛めていると、例の如く覇王色みたいなオーラを出してる酒寄さんが、三戦目を振り返って貴方がやらなきゃいけない事はなんだと質問してきた。

 

はっ!!クリーンなゲームプレイとコンプラの遵守であります!!

 

 

 

「だったら相手の口にダイナマイト捩じ込んで爆破するなんて選択肢は取らないでしょ!?馬鹿なんですか!?しかもその後残った相手の身体をスケボー板みたいにして山の斜面降ってくるとか!!道徳心はどこに置いてきたんですか!?挙句、それで合流した後に「自分盾あるんでタンクします!」って!!敵からの攻撃全部首無しの相手の身体を盾にして受けるし!!」

 

 

 

ち、ちが…俺はそんなつもりじゃ…。

 

くそぅ…俺は…こんな戦い方しか…できないっ!!

 

悔やんだところで何も変わらない。

 

ていうか本当に変えられないんだよ。

 

なんか…気づいたらそういう戦闘の仕方しちゃうっていうか…常に最善策を考えてたらこうなったというか…。

 

しかしそんな事は関係ないとばかりに、酒寄さんからの叱責は止まる事を知らず雨のように俺に降り注ぐ。

 

その後ろでは、かぐやちゃんは天使だけどお兄ちゃんは悪魔だったみたいだねぇ〜、お兄ちゃんにあんまり似なくて本当に良かったねぇ〜なんて話しながら、諫山さんと綾紬さんとかぐやちゃんが配信を閉じる挨拶をしていた。

 

コメント欄でも、心のノートで焼き芋焼いてそう、ナースコールのボタンでモールス信号して遊んでそう、産道通らず腹を食い破って出てきたタイプの悪魔等好き放題言われていた。

 

まさに四面楚歌。

 

孤立無援の状態では、ヒートアップする酒寄さんを止めることなぞついぞ叶わず。

 

結局配信が終了した後もひたすら説教され続けることとなった。

 

 

 

因みに三人は先にログアウトしていった。

 

助けを求めてはみたが、諫山さんからはしっかりこってり絞られてくださ〜いと笑顔で手を振られ、綾紬さんからは自業自得だと思いま〜すと笑顔で言われそのまま青い花弁になって消えていった。

 

な、仲良くなれたなぁ〜…嬉しいなぁ〜…。(泣)

 

 

 

 







今回の話で出てくるKASSENに関する話は全てオリジナル設定です。原作にそんなものはないっ!

主人公のステゴロ能力が無駄に高いのは純粋な才能によるものです。いうて人より上手くできるってレベルなので、普通にKASSENをやり込んでる様な人には負けます。なんなら今回の四試合における主人公のKDは1をわってます。所詮凡人よ。

やたらと人の心がないキルの仕方をするのもこの才能に依るところが半分です。もう半分の理由は月人と戦ってる際に説明するかもです。でも別に物語において重要な要素とかではないです。

ちなみにこの配信以降主人公は、「日本KASSEN格闘武器学会」という名のツクヨミ内でも指折りにヤバいと噂されている界隈から無限に勧誘される羽目になりました。

あと主人公に「チクっとしますよ〜」と採血のノリで喉にライフル弾をぶち込まれた敵チームの女性プレイヤーは無事に性癖が歪み、優しい口調で酷いことされるASMRでないと満足できない体になりました。お前のせいです。あ〜あ。
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