最初に異常を検知したのは、六眼システムだった。
東京全域の呪力循環を管理する中枢モニター。
その一角で、警告表示が赤く点滅する。
『結界外縁部に異常反応』
『未登録呪力パターンを検出』
『侵入経路予測開始』
警告音が鳴る。
研究棟の中央制御室。
五条悟はモニターを見上げた。
「ふーん」
軽い声。
だが、その指は高速でキーボードを叩き、情報がスクリーンを凄まじい速さで流れる。
ホログラムが東京呪力結界を形造り、侵入者を描いていく。
数。
配置。
呪力総量。
侵入経路。
その全てが妙だった。
「傑」
「私も見ている」
五条傑は脳内に補助装置を埋め込んでいる。
データを解析する。
モニターには東京結界の立体図。
その外周をなぞるように、複数の反応が移動していた。
「呪霊ですか?」
伊地知が尋ねる。
五条は首を横へ振った。
「違う」
その声からいつもの軽さが消える。
「呪霊もいるけど主体は人間だね」
制御室の空気が変わった。
東京呪力結界が完成してから十年以上。
研究所への直接攻撃はほとんど存在しなかった。
理由は単純だ。
割に合わないから。
東京呪力結界で呪力を吸われ。
レギオンで攻撃をされ。
六眼システムで解析される。
アメリカからの外圧だってある。
全部まとめて敵に回す事ができる組織がほとんど存在しない。
だからこそ。
攻めてくる時点で異常だった。
「総監部がついに処分を決意したかな?」
五条悟が言う。
「違う」
傑が即答した。
「もっと悪質だ」
その瞬間。
研究所全域へ警報が響いた。
『警戒レベル3』
『全職員は防衛配置へ』
『非戦闘員は避難区画へ移動してください』
赤いランプが点灯する。
研究員達が動き始める。
混乱はない。
訓練通りだった。
五条は車椅子を回転させる。
「終夜は?」
「大人しくしているよ」
傑が答える。
終夜は製造中の三男だ。夏油の生得領域に保管されている。
ただし、研究所とオンラインで繋がっている。
「生体接続率九十三パーセント」
「高いな」
「侵入者に興味をもったようだね」
終夜。
呪いの夜を終わらせるという名前の子供。
肝煎のプロジェクト。
そして。
羂索が最も欲しがる存在でもあった。
夏油の表情が僅かに険しくなる。
五条も同じ結論に達していた。
「終夜狙いかな」
「だろうな」
「今からモテすぎなんて先が思いやられるよ」
「君の子供だからな」
「傑の子供でもあるよ」
「知っている」
二人は顔を見合わせる。
そして同時に笑った。
相手が何を考えているか分かる。
10年寄り添って生きてきた。
「終夜には指一本触れさせない」
「当然だ」
夏油の周囲に呪霊が現れる。
普通に出したら東京呪力結界の餌なので、特殊処理をしてある呪霊たちだ。
同時に。
格納庫側でも動きがあった。
「三号機起動!」
虎杖が叫ぶ。
狼型レギオンが展開される。
蒼銀の巨体。
首輪から伸びる鎖。
宿儺由来コア。
正常を意味する青い瞳が点灯する。
「行くぞレオ」
レギオンが低く唸った。
その瞬間。
研究所外周の結界が揺れた。
轟音。
衝撃。
空気が震える。
制御室のモニターが一斉に赤く染まった。警報が鳴る。
『第一外壁損傷』
『結界負荷上昇』
『高密度呪力反応』
「おいおい」
黒瀬が顔をしかめる。
「特級かよ」
外部カメラが映像を映し出した。
巨大な呪霊。
それも一体ではない。
三体。
四体。
五体。
あり得ない数だった。
「馬鹿だろ」
虎杖が呟く。呪力結界にすぐに吸い尽くされない、特級クラスの呪霊の大量投入。
これ以上ないパワープレイ。
「こんな戦力どこから持ってきた」
答えは誰にも分からない。
だが。
五条だけは違った。
六眼が捉える。
呪霊の奥。
更に後方。
見覚えのある呪力。
古い。
だが忘れようもない。
「へぇ」
五条の口元が歪む。
「そう来るんだ」
夏油が視線を向ける。
「分かったのか」
「たぶんね」
五条は笑った。
その笑顔を見て。
伊地知が顔をしかめる。
嫌な予感しかしない。
「五条さん」
「伊地知」
「何ですか」
「今日残業確定」
「いつもです」
「それもそう」
制御室の空気が少しだけ緩む。
その直後。
研究所全体が大きく揺れた。
衝撃。
警報。
悲鳴。
結界が軋む音。
そして。
『侵入を確認』
『侵入を確認』
『研究区画Bブロック』
空気が凍った。
早すぎる。
外周防衛を突破された。
「黒瀬」
「了解」
黒瀬もレギオンを展開する。優人命名ナイトくん。
弓を武器とする、黒瀬が内心一番格好いいと思っているレギオンだ。
ナイトくんは黒瀬を抱えた。
「虎杖」
「うっす」
レオくんと名付けられたレギオンが虎杖を乗せる。
「現場へ行け。非番のお嬢様達を叩き起こせ。メカ丸、避難のナビを頼む」
次から次へと指示をする傑。
二体のレギオンが走り出す。
迫り来る呪霊に向けて、虎杖と黒瀬は銃型の呪具を発砲。
戦闘が始まる。
研究所の日常は終わった。
誰もまだ知らない。
この襲撃が。
世界そのものを引き裂くことになると。
まだ誰も知らなかった。
五条 終夜
胎児。
名前の意味は
「呪いの時代の終わり」
育成環境
夏油の生得領域内。
機械接続状態。
予定能力
・ 六眼
・呪霊認識阻害
・呪霊スクリーン投影
・ 構築術式
・指揮官型能力
とにかく能力を盛れるだけ盛る予定。
既にスペックが大変なことになっている。
夏油が凄まじい期待をかけている。
もう灰原のような犠牲は出させない。
呪霊の時代はもう終わり。
呪術社会を終焉に導くのではと恐れられると同時に、全勢力から狙われている。
兄2人から恐れられている。
マシュマロ
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