呪術廻戦二次創作一発ネタ集   作:かりん2022

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この話で二章終わり。


カースチェイン〜第11話・出発〜

第十一話 出発

 

 新の同行が正式に認められたのは、その日の夜遅くだった。

 

 総監部から戻ってきた文面は相変わらず冷たかった。未成年者の同行を許可するものではなく、六眼システム補助演算担当者としての帯同を特例的に承認する、という書き方だった。そこには総監部らしい責任回避と、研究所側への牽制が滲んでいたが、それでも許可は許可だった。伊地知は文面を何度も読み返し、不備がないことを確認してからようやく肩の力を抜いた。新はその隣で画面を見つめていたが、喜ぶより先に、これで本当に行くのだという実感が胸に沈んでくるのを感じていた。

 

 翌朝、研究所の中央会議室には転移同行者が集められていた。夏油は終夜の維持槽と接続した状態で参加しているため、会議室の奥には専用の簡易接続装置が据えられている。終夜はまだ完全に取り出せる状態ではない。だから夏油は、終夜を抱えたまま動くことになる。無茶な構成だと新は思ったが、誰もそれを口にしなかった。悟を迎えに行くための作戦は、最初から無茶の上に成り立っている。

 

 席に着いている顔ぶれは多かった。伊地知は全体の進行と総監部への報告窓口を担当する。エリオットは転移炉と現地通信の技術支援。黒瀬は探索主任として先行調査と危険判断を担う。大きな黒いトランクが椅子の横に置かれており、その中にレギオンが入っていることを知っている者達は、誰もそれに足をぶつけないよう自然と距離を取っていた。真希と真依は戦闘班と技術者としてそれぞれ参加する。真希はいつも通り不機嫌そうに腕を組み、真依はそんな姉を横目で見ながら、こちらはこちらで面倒くさそうに椅子にもたれていた。だが二人とも、行かないという選択肢は最初から持っていない顔をしている。

 

 虎杖悠仁は脹相、壊相、血塗の九相図三兄弟に囲まれるように座っていた。虎杖本人は少し緊張した顔をしているが、兄達の方がよほど深刻そうだった。特に脹相は、悠仁の椅子の背に手を置きながら会議室全体を睨むように見ている。誰かが悠仁を危険な場所へ連れて行くのではない。自分が悠仁を守るのだ、という顔だった。血塗は少しそわそわしていて、壊相が時折小声で落ち着かせている。メカ丸は通信端末越しの参加だった。肉体の問題もあり、直接同行は難しい。それでも彼は現地で使える遠隔支援機体を提供し、通信の中継補助も担当することになっていた。

 虎杖も未成年じゃないのかと新が聞いたのだが、悩んだ新と対照的に虎杖はあっけらかんと行くに決まってるじゃんと返した。軽かった。少し複雑である。

 

「では、最終確認を始めます」

 

 伊地知の声で会議が始まった。机の中央に立体地図が展開される。転移先は不明。座標は確定していない。分かっているのは、五条悟と優人が通常空間上には存在しないこと、転移痕跡が並行世界干渉に近いこと、そして指輪の呪力交換期限が一ヶ月しかないことだけだった。新はその数字を見るたびに喉が詰まる。一ヶ月。既に数日が過ぎている。悟お父さんが何も食べず、ろくに寝ず、優人を守ろうとしている姿が簡単に想像できてしまうのが嫌だった。

 

 夏油は静かに説明を聞いていた。顔色は良くない。終夜との接続を維持しているせいもあるだろうし、眠れていないせいもあるのだろう。それでも声を出す時は揺れなかった。彼は悟の不在を嘆くためではなく、悟を迎えに行くためにそこにいた。

 

「最優先は悟と優人の確保だ。発見後は安全な場所まで退避させる。交戦は避ける。こちらの世界と同じ構造とは限らない以上、現地の術師組織や呪詛師との接触は慎重に判断する」

 

 黒瀬が頷いた。

 

「探索は私が担当します。呪詛師界隈、表社会、結界反応、全部見ます。ただし、現地の情報網に深入りする場合は単独判断しません」

 

「本当だな」

 

 真希が横から言った。

 

 黒瀬は少しだけ笑った。

 

「信用がないですね」

「あるから釘刺してんだよ」

 

 そのやり取りに、会議室の空気が少しだけ緩んだ。こういう軽口が出るだけでも随分ましだと新は思った。ここ数日、研究所はずっと息を詰めていた。悟がいないというだけで、皆が大きな声を出すことを避けていた。けれど今は違う。緊張はある。恐怖もある。それでも前を向いている。

 

 エリオットが次に説明したのは、現地での通信と補給だった。研究所ごと転移するとはいえ、全機能を即座に使える保証はない。通信障害、電力不足、結界干渉、想定外の法則差。いくらでも問題は起こり得る。メカ丸がそこへ遠隔支援案を重ね、必要なら小型機を複数投入して現地の地形と呪力分布を測定すると告げた。真依はそれを聞きながら眉を寄せたが、何も言わなかった。自分達が行く場所が未知である以上、情報は多い方がいいと理解しているのだろう。

 

 虎杖は途中で手を挙げた。

 

「俺は何すればいい?」

 

 あまりにまっすぐな質問に、夏油は少しだけ表情を和らげた。

 

「君は戦闘班だ。ただし優先するのは戦うことじゃない。優人を安心させることだ」

 

「優人?」

 

「君とは仲が良いだろう。あの子は悟を守るためなら無茶をする。もし見つけた時、私や新より先に君の言葉が届くこともあると思う」

 

 虎杖は一瞬驚いた顔をした後、すぐに頷いた。

 

「分かった。優人を見つけたら、まず大丈夫って言う」

 

「頼むよ」

 

 脹相がその横で深く頷いていた。弟の役目が認められたことが嬉しいらしい。真希は少し呆れた顔をしたが、何も言わなかった。

 

 新はそのやり取りを見ながら、自分の役割を改めて考えていた。六眼システム補助演算担当。呪力反応の照合。悟と優人の痕跡確認。研究所側と探索班の橋渡し。やることは多い。怖くないわけではない。けれど、何をすべきかは分かっている。怖いから行かないのではなく、怖いから準備をする。それが新にできる正しいやり方だった。

 

 会議が終わりに近付く頃、伊地知が最後の項目を読み上げた。

 

「転移開始は本日二十三時。東京呪力結界の最終移譲処理は二十二時三十分までに完了予定。以降、研究所は独立結界へ移行し、転移炉を起動します」

 

 その言葉で、会議室は一度静まり返った。ついに行くのだ。誰もがそれを理解した。

 

 夏油はゆっくりと立ち上がった。終夜との接続装置が微かに音を立てる。まだ本調子ではない身体で立つ姿に、新は思わず手を伸ばしかけたが、夏油は視線だけで大丈夫だと告げた。

 

「ここまで来られたのは、皆のおかげだ」

 

 夏油の声は静かだった。けれど会議室の端まで届いた。

 

「悟と優人が消えてから、研究所は何度も止まりかけた。それでも誰も諦めなかった。東京を見捨てないために結界を引き渡し、研究所を守るために準備を進め、二人を迎えに行くためにここまで来た。これから向かう先がどんな場所かは分からない。危険もある。失敗する可能性だってある」

 

 そこで夏油は一度言葉を切った。左手の指輪へ視線を落とし、すぐに顔を上げる。

 

「それでも行く。悟が諦めているかもしれないなら、私達が諦めない。優人が一人で背負っているかもしれないなら、私達が迎えに行く。だから全員、無事に帰ることを前提に動いてほしい。救出作戦だ。殉職前提の特攻ではない」

 

 真希が鼻で笑った。

 

「当たり前だろ。勝って帰る」

 

「そうね。無駄死にとか趣味じゃないし」

 

 真依が続ける。虎杖も大きく頷き、九相図三兄弟もそれぞれの形で同意した。黒瀬はトランクの取っ手に手を置き、エリオットは端末を閉じた。伊地知は深く息を吸い、メカ丸の端末からは短く「了解」と返る。

 

 新はその光景を見ていた。

 

 ここに悟はいない。優人もいない。けれど、二人を迎えに行こうとしている人達がいる。自分もその一人だ。

 

 夏油がこちらを見る。

 

「新」

 

「はい」

 

「補助演算責任者として、頼むよ」

 

 その言葉に、新は背筋を伸ばした。子供としてではなく、研究所の一員として呼ばれたのだと分かったからだ。

 

「任せてください」

 

 声は震えなかった。

 

 夜が来る。

 

 研究所の外では、東京呪力結界の管理権移譲が進んでいた。悟が作った巨大術式が、研究所の手を離れていく。それは寂しいことだった。けれど、置いていくのではない。守るために託すのだ。

 

 そして研究所は、悟と優人を迎えに行く。

 

 新は指先で端末を握り直した。

 

 優人がどこかで間違った手段を選びながら走っているなら、自分は正しい道を選んで進む。

 

 それでも目的は同じだ。

 

 家族を取り戻す。

 

 二十三時。

 

 転移炉が起動した。

 

 研究所全体に低い振動が走り、結界が幾重にも展開される。モニターに表示された数値が次々と上がっていく。誰も声を出さなかった。夏油は終夜の接続装置に手を添え、新は六眼システムへ意識を繋ぐ。

 

 遠く。

 

 届かない場所にいる悟と優人へ向けて。

 

 研究所は動き出した。




禪院 真依

禪院家から出向しているメカニック。電力を呪力に変換する技術で、
大量の呪術機械の部品を作る。
機械化を支える第一人者。

呪力がないなら他から持って来ればいいじゃない。
それが出来る装置ができるまで長かったが、そこまで行けばこっちのもの。

部品を次から次へと生産し、それを組み立てた機械で更に呪力供給をする永久機関が完成した。

来る日も来る日も部品の製造だけで終わる日々。
研究に次ぐ研究で女の子として綺麗にできてもいない。
年頃だけど浮ついた話も一切ない。

五条と夏油の結婚あっての今の研究所生活とわかっている。
わかっているが、年齢の問題はあるが、顔も良くかなりの好条件な五条との婚約の話を、
なんで嫌がってしまったのだろうかとちょっぴり後悔している。

このままの日常が続けば結婚はとてもできそうにない。

なお、禪院家は夏油傑を出入り禁止にしている。

幼女より男との結婚がマシだと言わんばかりの妨害したんだからそれはそう。







マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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https://odaibako.net/u/karin2022v
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