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その日のお昼。夏油はようやく腰を据えて資料を読む時間を確保した。
せっかく悟を部屋に連れ込もうとしたのに、無視できない面会者が来て、悟がラルゥに回収されてしまったのだ。
内容は、五条悟似の子供に対する探りだった。全く油断も隙もない。
なんとか誤魔化し、悟をラルゥから取り返しに行くと、お茶会中だった。
盛り上がっている所を回収。自室に連れ込む所を、自分達も興味があると止められて、その場で資料を広げる事となった。
真奈美さんとラルゥが美味しいサンドイッチを昼食として用意してくれた。
悟がお手洗いに行っている間(1人で出来るようだが、当然かなりの時間を要する)に優人がノートパソコンの顔認証を突破し、滑らかにパソコン操作して極秘資料をプリントアウトしていて、動揺が隠せない悟。君、気づかなかったのかい……。
ちょっと悩んだ悟は、問題を放置。
悟が死んだ後は当然、優人にノートパソコンを譲るべきだからだ。
帰れたらその時にはセキュリティの変更をすればいい。
優人は既に美々子と菜々子、利久から尊敬の目で見られている。
武勇伝が効いたらしい。呪詛師たるものこうでなくては。とか、半分呪霊だし、とか話している。かなり気にしているようだが、サンドイッチを悟の口に突っ込んで誤魔化す。
悟はノートに題名だけ書き、うんうん唸る。
ノートには、『呪詛師でもできる呪霊インフラの整え方』だった。
「できると思うかい?」
「傑は欲しいんだろ」
「欲しいけど」
「優人もいるし、なんとかなるんじゃない。優人。1週間で全部教えるから」
「うん!」
「その代わり、あんま人を殺すなよ。後、優人を頼んだ」
「っ!! 任されたよ、悟」
悟はノートに必要なことを書き込んでいった。
書き込みながら、説明してくれる。
「一番必要なのは、呪力を電力へ変換する装置だ。これには絶対に必要な協力者がいる。禪院真依だ」
「禪院真依……」
確か、出来損ないという話だったが。
「構築術式で作った部品は呪力を操る機械と相性がいい。当然」
「それはそうだろうね。でも、大量な部品が必要なのじゃないかい?」
真依の呪力は少なかったはずだ。
「禪院真依を素材にした、優人を作ればいい。構築術式と高い頭脳と大きな呪力を持つ研究者をね。その程度の事は今ある道具でも出来る。でも、万全を期すためには、無理やりじゃなく自主的な真依の協力が必要だ。それも、出来れば重い愛が必要。万って呪具化した1000年前の術師もいて、呪術的にはそっちの方が都合がいいんだけど、そいつ宿儺が大好きだから、味方にするのは難しいかな。ん、いや、こっちでは宿儺をレギオンに改造してないから良いのか?」
「愛? 愛が必要なのかい?」
「愛情は最も重い呪だよ。愛を持って素体を生み出し育て受肉させる。それが最大効率を叩き出す。呪術を研究するなら、愛は絶対必要」
「愛……」
「僕も愛情いっぱい材料にしたんだよ。愛情を物質化しないとだから、ほんとに沢山愛情が必要だったんだよ」
優人がムフーッと自慢する。女性陣はほえー。
「まあ、男女で子供を作るわけじゃないからね。いろいろなものを愛情で補わないとだったし」
「真依さんは真希さんが一番好きだよ。後、恵くんが好きって言ってた。資料はお父さんがこの辺に隠してたはず」
優人はパソコンをカタカタ。悟は唖然。
「隠してたって?」
「傑お父さんから」
「ああ、資料隠したり嫌がってたって言ってたね……」
「真依さんは真希さんの天与呪縛が、万は好きな相手が問題かなー。子供に愛情は受け継がれるし、宿儺一家が暴れたらとっても困るもんね」
「天与呪縛の外し方がわかれば楽なんだけどね。まあでも、恵の呪力を混ぜれば回避は出来るかな」
「こっちの真依さんは研究者してる? 研究者じゃないなら、子供作らせて奪った方が楽だと思う」
「息を吸うように悪いこと言うね……。ええっと、一応、手元に電力を真依の吸収できる形の呪力に変える装置はあるんだ。ただ、ある程度の知識がないと、装置を作るのは難しいし、優人の言うように子供を作った方が楽ではあるかな。本物の子供と違って、術式は親のものを引き継ぐし」
「禪院真依は研究者ではないよ。今学校に通ってるから、任務中に接触は可能かな。説得できるかは難しいと思うけど」
「ある程度実績を積んでおくと良いかもね。他にも、エリオットや黒瀬、メカ丸は協力をお願いすべきだと思う。こっちで何やってるかはわからないけど」
「非術師の呪力研究者だっけ」
「そう。エリオットを仲間に引き入れるのが簡単で効果もでかいと思う。あいつのコネならアメリカの方で総監部にバレないうちに研究を進められる。説得材料にしても、データはある。機械の実物もある。呪霊操術もある。説明は可能だ。設備を整えて実績を用意した上で禪院真依と与幸吉の勧誘に動けばスムーズにことが進むと思う」
「非術師か……」
「傑。呪霊をこの世から駆逐するには、非術師の力は絶対に必要だよ」
真剣な顔で、悟は告げた。
「僕が開発したのは、呪力工学だ。工学に必要なのは、何より数の暴力と試行錯誤なんだ。人手、予算、そして理論。極論、非術師を術師にするのは研究が進めば可能だよ。どれだけ多くの人の力を借りれるか。それが重要なんだ。それで、それはお前の得意分野だろ」
「悟……」
「傑。どれだけ本気で、呪霊のない世界を作りたいと思ってる? 研究中に、僕が悩んでたら、傑は言ったんだ。術師だけが負担を負うなんて間違ってる。非術師も協力すべきなんだって。それで、今では僕の世界では呪力について情報公開されてるし、普通に非術師が呪力の研究所で働いてる。お前が僕に言ったんだ。非術師を頼れって」
真剣な眼差しに射抜かれる。
非術師も必要だったと言うなら、私が両親を殺した事は無駄になる。
非術師を憎んではいけないと言うなら、私が間違っていたのを認める事になる。
術師だけが負担を負うのは嫌だと言うのは私も思っている。だから私は非術師の排除を選んだ。向こうの私は非術師に協力を求めた。
自分が間違ってるのを認めるのは苦しかった。でも、理想を叶えるには必要だと悟はいう。
灰原。私はどうしたらいい。
「私、は……非術師が嫌いだ」
「うん」
「両親だって殺した」
「うん」
「今更、どの面下げて必要だっていうんだ」
優人があっけらかんと言った。
「有用性を示すなら殺さないでやる?」
「優人」
「だって傑お父さん王様になるんでしょ? 一番偉い人! 良いじゃん、呪術界も天元様もぶっ飛ばしてテッペン取っちゃおうよ!」
「優人」
「悟お父さんは俺の好きにさせてくれるって言ったじゃん! それに傑お父さんが王様なら俺だって次の王様だもん! それに傑お父さんが敵を前に臆すなんてらしくないよ!」
「優人」
「エリオット達は有能だから殺される心配ないしね! 俺、無能の友達いないの。やったね!」
「優人」
美々子と菜々子と利久は目を輝かせる。
ミゲル達はやんややんやと王子を囃し立てる。
子供達のふれあいは悪い影響を与え合い、地獄を生み出していた。
そして、夏油は思い知る。
悟は確かに天才なのかもしれない。
でも、悟の世界で呪術界をぶっ壊したのは、悟ではなく自分だったのかもしれないと。
「そういえば、夏油様は五条悟を探してここに来たりしないの?」
「僕と傑は一ヶ月ごとに呪力を交換しないと死ぬ」
「夏油様から聞いた」
「だから、一ヶ月以内に並行世界に飛んだ僕達を探して、転移してこなきゃいけない。傑が死んだ後のみんなを守るための対応もある。僕ならなんとかなるけど、傑は無理でしょ。傑は研究者じゃないし」
「そんなの、たいしたことじゃないよ。私が菜々子を失ったら、絶対助けに行くもん」
「美々子。私も、美々子を失ったら絶対助けに行く」
「確かに、話に聞く傑ちゃんだったら、悟ちゃんを諦めはしないんじゃないかしら。話を信じるなら、天元様に喧嘩を売って呪術界を爆破しておいて呪詛師になってない相当ビックな人らしいし」
「悟主体ジャナクテ夏油主体ッポイシナ」
「理想実現間近で五条様を手放すなどあり得ないかと」
五条は苦笑する。
「そうだと嬉しいけどね。ま、もし来たら全部粉砕して僕を連れ戻すでしょ」
「迎えに来るじゃなく連れ戻すな辺り、ほのかに悟ちゃんの扱いが透けて見えるわね……」
「並行世界に転移できるかが最大の壁なんだよね」
「待ってそれ、もし転移成功したら向こうの私にぶっ飛ばされるってこと?」
「浮気相手は殺すでしょ」
「浮気してないよ!?」
「浮気してもらうもん。俺、悟お父さんに生きてて欲しいし」
「それで傑ちゃんが殺されちゃったらどうするの?」
「傑お父さんがいてくれるから問題ないよ?」
「優人」
優人が呪詛師の希望の星すぎる。
流石に育て方を間違えたかなと、育児本を夏油に強請る悟なのだった。
夏油は、まず初めにエリオットを仲間に入れるべく海外への遠征を決めた。
そして、研究所の五条悟捜索は、困難を極める事になる。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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https://odaibako.net/u/karin2022v
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