呪術廻戦二次創作一発ネタ集   作:かりん2022

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そろそろ感想が欲しいです……。


カースチェイン〜第21話・尋問〜

 黒瀬武道は目を覚ました。

 

 知らない天井だった。

 

 正確には、知らない部屋だった。

 

 白い壁。

 

 硬い椅子。

 

 縛られた身体。

 

 そして外からしか開かないらしい扉。

 

 黒瀬は三秒ほど考えた。

 

「誘拐……?」

 

 真っ先に浮かんだ結論だった。

 

 昨日の記憶を辿る。

 仕事を終えて、スーパーで半額弁当を買って、帰宅した。

 玄関を開けたら首筋に衝撃。

 

 終了。

 

「誘拐だな」

 

 かなり確信を持った。

 そのまま静かに部屋を見回す。

 服はそのままだが、ポケットに入れた鍵の感触がない。

 ポケットの中まで綺麗に漁られたらしい。

 

 誘拐だった。

 

 だが、誘拐だとしても疑問がある。

 なぜ、一般人である自分を?

 

 研究?

 

 黒瀬はそこで固まった。

 

「研究か……?」

 

 嫌な予感がした。

 

 自分には金はない。

 

 コネもない。

 

 社会的地位もない。

 

 だが研究データならある。

 

 それなりに。

 

 結構。

 

 割と。

 

 あとは被験者の家族とか。

 

「いやいやいや。副作用で幻覚消えなくなった人は治せたし」

 

 首を振る。

 流石に考えすぎだ。

 そんな大層な研究じゃないし、死人も出てないし、副作用も解決した。

 

 ただの趣味だ。

 趣味の超能力研究。

 

「……」

 

 今思うとだいぶ怪しかった。

 そんなことを考えているうちに扉が開く。

 スーツ姿の男女が入ってきた。

 雰囲気が公務員っぽかったので、黒瀬は少し安心した。

 怪しい宗教団体ではなさそうだ。

 だが次の瞬間、別の可能性が浮かぶ。

 

「警察……?」

 

 男は何も答えない。

 黒瀬はさらに考える。

 待て。

 警察なら令状は?

 説明は?

 そもそも初手気絶させるってどうなの?

 

 警察はそんなことしない。

 

 たぶん。

 

 すると。

 

「違法捜査……?」

 

 男の眉がぴくりと動いた。

 

「安心してください。違法ではありません」

 

 黒瀬の背筋に寒気が走る。

 

「公安……?」

 

 男が深くため息を吐いた。

 黒瀬は戦慄した。

 当たった。

 たぶん。

 知らないけど。

 たぶん。

 

 男は向かいの椅子に腰を下ろした。

 

「黒瀬武道さんですね」

「はい」

「少しお話を聞かせてください」

 

 警察っぽい身分証明を提示される。公安かもしれない。

 遠くてよく見えない。

 

「弁護士は」

「呼べません」

 

 終わった。

 

 男は資料を取り出す。

 見覚えしかなかった。

 研究ノートだった。黒瀬のものだ。

 

「あー……」

 

 これは本格的に終わった。

 男が淡々とページをめくる。

 

「こちらは?」

「研究ノートです」

「何の研究ですか」

「超能力です」

 

 男が黙った。

 

 黒瀬も黙った。

 

 気まずかった。

 

「超能力」

「はい」

「本気で?」

「本気です」

 

 黒瀬は研究者だった。

 

 そこだけは譲れない。

 

 男は頭を押さえた。

 

「こちらの薬品について説明を」

「どれです?」

「全部です」

「多いな……」

 

 本当に多かった。

 趣味だから。

 いや趣味で済むだろうか。

 すまないからこんな状況になっているのだろう。

 大変なことになってしまった。

 

「まずこちら」

 

 試験管の写真。

 見覚えがある。

 

「知覚拡張剤です」

「効果は」

「集中力向上」

「副作用は」

「幻覚」

「幻覚」

 

 男が顔をしかめた。

 黒瀬も顔をしかめた。

 やはり幻覚は不味かったかもしれない。

 

「危険では?」

「副作用を消す薬も開発してます」

 

 即答した。

 

「それで許されると思ってるんですか」

「許されないですか」

 

 男が沈黙した。

 黒瀬も沈黙した。

 その沈黙が答えだった。

 

「人体実験も?」

「しました」

「しました」

「同意書あります」

「そういう問題ではありません」

「そこをなんとか」

「なりません」

 

 ならないのか。同意書が万能ではないことくらい知っている。

 ただ、どこまで有効なのかは知らない。

 今になって調べておけばよかったと思った。

 

「幻覚とはどんなものですか」

「人によります。見える時と見えない時があります」

「具体的には」

「巨大な虫だったり」

「……」

「人影だったり」

「……」

「動物だったり」

「……」

「おどろおどろしい見た目で、廃墟とか夜とかだと見えやすいです。不安を視覚化してしまうのだと思います」

 

 黒瀬は真面目に説明した。

 本当にそう考えている。

 男はさらに頭を抱えた。

 黒瀬には理由がわからなかった。

 

「こちらは?」

「オーラ増強剤です」

「副作用」

「幻覚と筋肉痛です」

「他には」

「壁が壊れました」

「壁」

「壁です」

「どうして」

「強化されすぎて」

 

 男が無言になった。

 黒瀬も無言になった。

 事故だった。

 研究に事故はつきものだ。

 たぶん。

 

「こちらのサークルは?」

「あー……」

 

 黒瀬は目を逸らした。

 そこも見つかったか。

 

「超能力研究会です」

「会員数」

「三十二人」

「活動内容」

「研究です」

「具体的には」

「研究です」

「具体的に」

「超能力の」

 

 男が机に額を打ち付けた。

 黒瀬は申し訳なくなった。

 たぶん忙しい人なのだろう。どうぞ自分のことは放っておいて自分の仕事に注力してほしい。

 

 それから数時間。

 質問は続いた。

 黒瀬は正直に答えた。

 隠しても仕方ないからだ。

 だが答えれば答えるほど男達の顔色が悪くなる。

 意味がわからなかった。

 

 やがて尋問は終わった。

 

 部屋に一人残される。

 黒瀬は天井を見上げた。

 

「……」

 

 冷静に考える。

 状況を整理する。

 誘拐された。

 たぶん公安。

 研究ノート押収済み。

 薬品押収済み。

 サークルもバレた。

 人体実験もバレた。

 同意書はある。あるのだが。

 

「これ、駄目かもしれないな……」

 

 ゲームオーバー。一体何が悪かったのか。

 黒瀬は何も反省してなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下では伊地知が頭を抱えていた。

 

「どうでした」

 

 補助監督が聞く。

 伊地知は疲れ切った顔で答える。

 

「呪霊については全く知らないようでした。全て幻覚だと」

「それは……全くの非術師の素人が、本当に術師になる薬を?」

「むしろ非術師だからかもしれません」

「これは呪術界の規定的にどうなるんですか? 非術師でしょう?」

「ですが放置もできません。厄介です」

 

 伊地知は部屋を移動した。

 部屋の机に、大量の資料が並べられている。

 人体実験記録。薬品データ。資金管理表。会員名簿。

 

 そして大量の研究ノート。

 

「本人は何も知りません。超能力研究だと思っています」

「違うんですか」

「ある意味では正しいですね。そして本物です」

 

 余計に厄介だった。

 

「処分はどうなりますかね」

 

 補助監督が呟く。

 伊地知は答えなかった。

 答えられなかった。

 ただ一つだけ分かる。

 高専がこの男を無罪放免で帰す未来は。

 

 存在しない。




マシュマロ
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