信じがたい顔をして、夏油は五条を見た。
「悟。一体どうしたんだ。ヘドロが急に一晩休憩するって」
「無理言って一晩だけ、傑の事自由にしてもらった」
「馬鹿なことを! そのためになにを差し出した!!」
夏油は五条を締め上げる。
「心配すんなって。今は自分の事だけ考えればいい」
「悟。君はあの悪意の具現化のような女を知らない。あいつがどんな醜悪な手を使うか……っ」
「そうみたいね。まあ、どうにかするよ。それより、ごめん。お前をAFOに……悠仁に渡したくない」
パキ。
音がして、夏油の全身から力が抜けた。
付き人の女の子から聞いていた。夏油に埋め込まれたいう事を聞かせるための装置。夏油を落ち着かせる時までは、五条は誓って夏油のことだけを考えていた。
でも、悠仁に渡したくない、と答えるのと、装置を作動させるのと、五条に抗いがたい欲求……夏油をAFOや生徒に渡さず、自分のものにしてしまいたいという欲求が溢れ出してどうしようもなくなった。
「さ、とる……?」
「悠仁と番わせる時の為に体に細工されてるんだってな。これで5時間動けないんだっけ」
これ以上進めば、絶対に後悔する。傑も傷つくだろう。
「私を殺すのか……。仕方ない、ね」
「自分を誤魔化そうとしてる? そんなわけないだろ」
五条はずっと、傑にゴミみたいに捨てられたと思っていた。信じられなかった。
違った。
傑も不本意だった。信じてないのは自分の方だった。
ずっと得体の知れない女に脅されていた。
気づいてあげられなかった。
悠仁に奪われると聞いて、それより前に奪っておきたいと思った。
散々な目に遭わされて、ようやく古巣に帰ったら裏切りとか、傑が本当に可哀想だけれども。
自分の衝動を抑えられないので仕方ない。
「やめろ。悟、私の子供は器にされるんだぞ」
「その時はその時でしょ」
「いやだ! いやだ……!! 君にそんな事をしてほしくない」
「俺はしたい」
最初、傑は嫌がった。でも、最後には屈服した。正直興奮した。
でも、プライド高い傑をこんな酷い形で折ってしまった。
俺は欲しかったものを手に入れた代わりに、本当に傑に嫌われてしまった。
傑を解放した時、罪悪感と満足感でぐちゃぐちゃだった。
医務室で、五条はがっくりと項垂れていた。
つい先ほども、医務室を出る夏油に挨拶をして無視されたのだ。
無視をした、というのは夏油に不公平な表現かも知れない。
五条の挨拶に目をあげ、絶望を瞳に宿して、下を向いて去っていった。
「傑がずっと俯いて碌に話してくれない……」
「当然だろくぅず。望み通り妊娠してんぞ。命じられた種以外を芽吹かせた事で夏油の立場も最底辺だ。呪術師としても、呪詛師……じゃなくて、ヴィラン? に従って悪事を働いてたのは事実って厳しい目で見られてるしな。昨日、水掛けられて震えてたぞ。すぐに保護して腹の子を器にしたいなら丁重に扱えって言っといたが」
「は? それを黙ってるわけ? 傑が?」
「お前が止め刺して全部諦めさせたんだろ」
「ぐっ どうしたら傑が笑ってくれると思う……?」
「それは無理だろ。10年敵に捕まって悪事に加担させられて、トドメに親友からのレイプだ。AFOをぶっ飛ばすのは最低限、覚悟決めて長期戦でケアしてけ」
「総監部もさっさと覚悟決めてほしいよな。俺もせっついてんだけど、煮え切らないんだよ。あれ、絶対俺への嫌がらせ入ってるよな。傑は監視の名目で連れてく事はできるけどさ。傑、最近俺が近づくと怯えんだよ」
「それこそ自業自得だろ。夏油、これで虎杖にも顔向けできなくなっただろ。あいつマジで居場所ないんだよ。お前が無理やり居場所になるしかないだろ。もう悪になるつもりでいけ」
「わかった……。覚悟決めないとね」
僕は傑を追いかける。
「改造は成功のようね。男を誘うのが随分と上手になったようで。2回目はちゃんと器候補を作ってもらうからね。ああ、練習の段取りを組んであげるわ」
「好きにすればいい」
全て諦めた顔で言い捨てる傑。
責め立てていたのは、傑と2人きりになるのに協力してくれた女の子だった。
「あまり傑を虐めないでくれる?」
「五条様……っ♡」
意識的に目の包帯を取り、上目遣いをする。
「この前はありがとう。ここにいるのは俺の子だから、大事にしてあげて欲しいな」
「五条様の子……」
傑は呼吸を乱していた。よほど傑を傷つけてしまったらしく、あまり近づくと過呼吸になるのだ。そんな傑を冷たい目で見る女の子。
可愛い普通の女の子に見せかけてるけど、僕にはわかる。
この子は武術の心得はあるし、ヘドロにいう事を聞かせられるぐらい、超能力者組織では高位の人間。
「ねぇ、僕と健全デートしない?」
「え!?」
「その代わり、僕の目が行き届かない時、傑の事を守ってくれたり、僕と傑がデートできるようにして欲しいなって」
傑が震える。
女の子はじっと傑と僕を見比べた。
傑は孤立無縁で俯いている。
僕は、女の子の手を口元に持ち上げてキスをした。
「五条様……♡ わかりました。貴方様のお望みのままに……♡」
「ありがとう。連絡先交換しよ。僕の非番の日送るね」
「はい♡」
「さ、悟……」
僕は傑の肩を抱いて、総監部に傑の監視を申し出た、というかゴリ押した。
伊地知の運転で現場まで行く間、後部座席で傑に語りかける。
「傑。俺さ、どうしてもAFOって奴に、もうお前の一欠片だって渡したくない」
「……悟」
「だから、全部奪う。ごめんな、傑」
「私は、弱い。強い君は、好きにすればいいよ」
言ったな。
流石に最後まではしなかったものの、キスをして、触れて、現地に着くまで傑を確かめた。
まさか、腐った蜜柑みたいなムーブを自分がする事になるなんて思わなかった。
総監部は早く覚悟を決めて超能力者共をぶん殴る許可を出して欲しい。
ゲスイ真似して体だけは手に入れたけど
心は一向に手に入るあてがない、無様な五条はこちらです。
マシュマロ
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