アストラルチェインとの設定を混ぜたパラレル呪術廻戦と原作軸のクロスオーバーです。五夏。
数々の技術で呪術社会を変革した彼は、夏油傑と結婚し、子供達に囲まれながら幸せに暮らしていた。
――研究所ごと異世界へ飛ばされるまでは。
そこは呪術が未だ秘匿されている世界。
そして、そこには高専教師の五条悟と、呪詛師の夏油傑がいた。
車椅子の研究者五条悟と、最強の術師五条悟。
家族持ちの夏油傑と、離反した夏油傑。
二つの世界が交差するとき、呪いの鎖が動き出す。
これは、最強になれなかった五条悟が、世界そのものを書き換えた物語。
カースチェイン〜プロローグ・分岐点〜
東京都内の五条家別邸。
六歳の五条悟は縁側で大福を頬張っていた。
「おいしい」
「ようございました。訓練の後にもおいしいおやつを用意してございます」
「今日の訓練は簡易領域だっけ?」
「さようでございます」
もう一度ばくり。庭の池で鯉がぱちゃりと跳ねた。和やかな空気が流れる。
奥義を幼児が日常として習う異常。六眼を持つ神童。
生まれながらの無下限呪術師。
呪術界の均衡を変える存在である。
周囲は六眼の誕生に騒いでいるが、本人にとってはどうでもいい話だった。
大福は美味しいし、今日は天気が良い。訓練も面白い。
それだけで十分だった。
だが。
六眼は異変を捉えた。
呪力。
巨大な呪力を結界の外。遙か遠くから感知した。
普通の術師なら知覚すらできない距離。だが六眼は捉える。
何かが来る。
何かおかしい。
悟は立ち上がった。
轟音。
音速にも近い速度でぶつかるそれに結界が揺れる。
空気が震える。
にこにこ悟を見守っていたお付きの者が五条を守るように立ち、五条家の警報が鳴り響いた。
「敵襲!」
「特級だ!」
「結界を維持しろ!」
術師達の怒号。
悟は呆然と空を見上げる。
巨大な呪霊。呪力の密度も濃い。特級呪霊だ。
それが結界へ体当たりしていた。
ありえない。こんな所に特級呪霊がピンポイントで襲ってくるなど。異常事態だった。
しかし、五条家の結界はそんな簡単に破れないはずだった。
だが呪霊は最初から弱点を知っているかのように結界を削っていく。
誰かが導いている。誰かが操っている。そんな違和感。
裏に呪詛師(人間)がいる。六歳の悟にもそれは理解できた。理解できたからどうなるものでもないのだが。
結界が砕けた。
術師達が飛び出す。
戦いが始まる。
悟は見てしまった。
護衛が死ぬところを。
呪霊に噛み砕かれるところを。
血が飛ぶ。
肉が散る。
六歳の子供には十分過ぎる地獄だった。
「悟様!」
誰かが叫ぶ。
「逃げ――」
言葉は最後まで続かなかった。
呪霊の腕が護衛を吹き飛ばしたからだ。
心を置き去りに、身体が訓練通りに動く。構える。呪力を練る。
六眼は周囲の呪力を捉え続ける。
呪霊。
術師。
血。
恐怖。
膨大な情報。
そして。
呪霊がこちらを見た。
狙いは最初から一人だった。
五条悟。
六眼。
呪術界の未来。
呪霊が迫る。
護衛は間に合わない。
無下限呪術はまだ未完成。
即座に無限を展開したものの、呪霊は領域を展開し、圧倒的な呪力差で無限を削り取った。
悟は初めて死を理解した。
そして。攻撃が届いた。
◇
悟は生きていた。
目を開く。
白い天井。
薬品の匂い。
病室。
身体が重い。
起き上がろうとする。
動かない。
違和感。
もう一度。
動かない。
足が。
動かない。
「……?」
状況を把握しようと様子をうかがうと、病室の外で話していた大人達の声が聞こえた。
悟は聞いてしまった。
「命が助かっただけでも奇跡です」
「脊髄損傷は重い」
「回復の見込みは」
「限りなく低い」
沈黙。
誰も何も言わない。
やがて。
別の声がした。
「悟さまがここで亡くなられたとしても」
静かな声。
「天元様の仰るには、六眼が殺された時でも、同化の際には新たな六眼が現れたそうだ」
「必要であれば、次の六眼が現れるだろう。恐らく、五条家の術師の何れかに。ただし、六眼は一代一人限り。悟様がいる限り、次の六眼は現れない」
わかりたくなかった。でも、五条は五条家当主として育てられてきた。痛いほどに、その必要性が理解できてしまった。
「滅多な事を言うな!」
沈黙。
病室の空気が凍る。
悟は動かない足を見た。
動かない。
何度命令しても。
動かない。感覚すらない。
六眼は残った。
術式も残った。
だが。
自分はもう以前の自分ではない。
窓の外では夕日が沈んでいた。
悟はただ。
その光を見つめる。
そして小さく呟いた。
「死ぬのが正しいのか」
誰にも聞こえない声。
「俺は死にたくない。どうすれば生き残れる」
その問いに答える者はいない。
残された時間は残酷に時を刻む。
その時、世界は分岐した。
マシュマロ
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