美醜逆転の世界でレンタル彼氏をしてみた   作:主義

9 / 12
次の選択

 

「さて、どうしたものか」

 

 

宿屋に帰ったものの、これからどうするべきか。宿屋に入る時は奴隷の首輪が見えないように必死に隠したものの、絶対にバレていないという保証はない。

 

 

「こういう時こそ、魔法が使えればいいんだがな」

 

魔法の中には姿を認識させないものもあると言う。だが、俺は魔法は得意ではない。というか使えないし、そんなものが使えればもっと違う方法で金稼ぎをしていた。

 

 

 

 

奴隷の子供に視線を移し、改めて観察する。

 

奴隷はたぶん、女だろう。顔には色々と痣や傷跡が残っているが、それでも見える範囲で判断するのであればかなり顔立ちは良い。顔立ちが良いというのは前の世界での価値観でだ。この世界ではブスと呼ばれるような部類だ。

 

 

首には奴隷だと証明する首輪がしっかりと付いている。服はほとんど破れているので、着ていないと言ってもいいかもしれない。

 

 

 

観察をしていると奴隷の子供は何かを俺に伝えようとしてくる。

 

 

「あ…あ……り」

 

伝えたい言葉は聞こえてきた感じから推測するに『ありがとう』と言ったところか。

 

 

「ああ、喋らなくていい。お前は大人しくそのベッドで休んでいろ」

 

すると奴隷の子供が少し戸惑いながらもベッドの上に横になった。

 

 

 

こいつの言葉がたどたどしい理由は分からないが、考えられる理由としては長い間、何も喋っていないか言葉を覚えられるような環境にいなかった。

 

 

奴隷となる理由はそれぞれだ。中には昨日まで人間だったが、一晩したら奴隷に成り下がっている者もいるぐらいだ。だから、こいつがどんな理由で奴隷に落ちたのかは分からない。

 

攫われたのか、家族ごと没落して奴隷に落ちたのか、親に売られたのか、考えられるだけでも色々なものがある。

 

 

 

いや、結局、こいつがどんな境遇なのかはどうでもいい。大事なのはこれからどうするかだけだ。

 

 

奴隷に人権がないので攫うこと自体は問題ない。問題なのはそいつの首輪に名前がしっかりと記載されていることだ。もし、名前の記載がなければそれは飼い主の問題なので、問題はそこまで大きくならないとは思うが、しっかりと名前が書かれているのだ。

 

こいつの所有者が誰なのかを示すために。

 

 

 

 

 

 

大きく分けて、二つの選択肢しかない。

 

一つ目はこいつを治安維持部隊に引き渡すか、適当なところに捨てる。そうすれば一先ず、攫ったものの大きな問題に発展することはないはずだ。

 

 

二つ目はこいつと一緒にいる覚悟を決めること。そうなるとこの街に長居するのはまずい。こいつの所有者も奴隷がいなくなれば何かしらのアクションを取って来る可能性が高い。その場合、この街に留まればいつか見つかる。

 

 

 

 

 

どちらの選択肢を取るか。俺の利益だけを求めるのであれば絶対に一つ目だ。これからこの街でレンタル彼氏という商売をしていこうとしている時に問題を起こすべきではない。それにこの奴隷を助けなくてはならない理由があるわけでもない。

 

 

 

 

そうなんだ。

 

捨てる決断をすればいい。

 

それなのに、あの記憶が邪魔してその決断が出来ない。

 

 

 

 

 

葛藤をしているといつの間にか、奴隷がベッドから下りて、俺の足元まで来ていた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「…あ…あぃ……かと…ぅ」

 

 

「……ああ」

 

別に俺は子供のことを好きじゃない。俺が好きなのは金だ。金はいくらあってもいいし、人間が生きていく上で絶対に必要なもの。

 

所詮、全ては金だ。

 

金があれば貧しさも孤独も感じることもない。

 

 

 

 

 

だが……金もそれぞれだ。

 

 

 

 

将来への投資としてお金を使うのは別に悪い話じゃない。この奴隷が奴隷を解放され、大人になり、俺に感謝すれば身の回りの掃除や食事などをしてくれるかもしれない。

 

 

 

未来の家政婦のためと割り切って、投資するというのは別に悪い話ではないだろう。かなりリスクのある家政婦育成だが、一から育てられると思えばいいのかもしれない。

 

 

 

そこまで考えて俺は結論を出すことにした。このまま悩んでいても、いつまで決断を出せずに進んで行きそうな気がするし。

 

どこかでしっかりと決断をして、進んで行かないといけない。

 

 

「この街から出るか」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。